RFIDでどう変わる? アパレル業界のICタグ活用事例

近年、国内ではDXの実現が急務となっているものの、アパレル業界ではデジタル化そのものが遅れている傾向にあります。アパレル業界のビジネスモデルは実店舗を中心とした販売形態が主体であり、有形商材を取り扱う性質上、デジタル化やDXとの相性がよいとはいえません。そんな中、大きな注目を集めているのが「RFID」です。本記事ではアパレル業界のDX実現に欠かせないRFIDの特長や活用事例について解説します。

RFIDとは?

RFIDは「Radio Frequency Identification」の略称で、無線通信に使用される電磁波の周波数帯を利用し、RFタグ(ICタグ)のデータを非接触で読み書きする自動認識技術を指します。身近な例だと、交通系ICカードや電子マネー、セルフレジなどで活用されている技術です。専用の端末でRFタグをスキャンすることで情報を瞬時に読み取ったり書き換えたりできるため、棚卸や検品作業などで活用する取り組みが注目を集めています。

RFIDの仕組みと特徴

RFIDの主要なコンポーネントはRFタグとRFIDリーダー/ライターの二つです。RFタグはICチップとアンテナで構成されており、情報を読み書きできる記録媒体として利用されます。RFIDリーダー/ライターはRFタグのデータを読み書きする端末です。RFIDは、このRFタグとRFIDリーダー/ライター、およびそれらの情報処理を制御する管理システムを含めた総称を指します。

RFIDは複数のRFタグを遠距離から一括読み取りできると共に、対象が段ボールのような遮蔽(しゃへい)物に隠れていても識別可能です。それにより、RFタグを取り付けた商品をRFIDリーダー/ライターでスキャンし、プロダクトの詳細情報や倉庫内の在庫状況などを瞬時に確認できます。在庫管理や物流業務の大幅な効率化が期待できるため、バーコードに代わる新技術として小売業や物流業、製造業などで導入が加速しています。

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RFID導入で何が変わる? アパレル業界の活用事例

アパレル業界ではRFIDの普及が加速しており、特に「棚卸」「検品」「会計」「マーケティング」の分野で活用されています。具体的な活用事例は以下のとおりです。

1. 棚卸業務の負担を大幅に軽減

これまでのアパレル業界では、バーコードと専用のリーダーを用いた在庫管理が主流でした。しかし、バーコードの読み取りはわずか数cmの距離しか対応できず、さらに一つ一つの商品を手元でスキャンしなくてはなりません。それに対してRFIDは短くとも10cm前後、長いものであれば10m前後の読み取りに対応可能です。RFリーダー/ライターをかざすだけで離れた場所でもRFタグを一括読み取りできるため、棚卸業務の効率化とヒューマンエラーの削減につながります。

2. 入出荷業務のコストや検品ミスを最小化

RFIDはバーコードとは異なり、ある程度の遮蔽物があっても非接触通信が可能です。それゆえに、入出荷時にパレットごとの一括読み取りに対応できるため、搬入や搬送に関わる業務負荷を大幅に軽減できます。また、RFIDの導入によって検品時の目視や帳票の読み上げといった作業を削減し、検品ミスの最小化に寄与する点もメリットの一つです。さらにリアルタイムな在庫情報を把握できるため、過剰在庫による管理コストの増大や在庫不足による販売機会の損失を回避できます。

3. 店舗での会計業務を効率化

RFIDの特性は在庫管理や物流業務だけでなく、店舗における会計業務の効率化・自動化にもつながります。従来はスタッフがレジで商品のバーコードを一つ一つスキャンして精算するという処理が一般的でした。RFIDはレジ通過時に複数の商品を一括でスキャンできるため、店舗の会計プロセスを効率化・自動化できます。それにより、店舗スタッフの業務負荷軽減と人件費の削減に寄与すると共に、レジの待ち時間短縮による顧客満足度の向上が期待できます。

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4. マーケティングに活かせる正確な情報の収集

RFタグを取り付けた商品は、顧客や消費者の購買行動データを収集・蓄積できる点が大きな特長です。顧客の嗜好(しこう)や購買行動を把握することで、データを起点としたマーケティング戦略を立案・策定できます。例えば、「商品を手に取った回数」や「商品が試着された回数」といった購買行動を分析し、その知見を販売促進や広告活動に活用できます。また、RFIDを用いて店舗内の顧客動線を分析することで、商品の配置やディスプレイの最適化を図ることも可能です。

一方でデメリットも! RFID導入時の注意点

RFIDは在庫管理や物流業務の効率化が期待できる一方、幾つかの懸念事項が存在します。RFID導入時の注意点として挙げられるのが以下の3点です。

導入時のコスト負担が比較的大きい

RFIDの導入時はRFタグとRFIDリーダー/ライター、管理システムの実装が必要であり、ITインフラの構築に相応のコストを要します。RFタグの価格相場は通常タグ1枚につき10円程度となっており、コストダウンが進みつつあるものの、バーコードのような従来の管理方法と比較すると高額です。また、導入時の初期費用だけでなく、インフラストラクチャーの継続的な管理コストも発生します。そのため、利益率の低い商品を大量に管理する場合、キャッシュフローの悪化が懸念されます。

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利用環境によっては性能が低下する

RFIDは周波数帯によって特性が異なり、在庫管理や入出荷業務などの分野では、広範囲かつ複数の読み取りを得意とするUHF帯(注)を使用するのが一般的です。しかし、UHF帯は水分や金属の影響を受けやすく、通信環境によっては性能の低下が懸念されます。例えば金属製品にUHF帯のRFタグを取り付けた場合、金属面の反射波によって電波干渉が発生し、読み取りを阻害するケースが少なくありません。そのため、対象が金属製の場合は通常タグより高価な金属タグが必要です。

  • (注)UHF帯:Ultra High Frequency。RFIDの周波数帯の一つで、通信距離が長く、一括読み取りに適しているため、在庫管理や検品などに多く使用される

既存在庫へタグを取り付ける必要がある

RFIDを導入する場合、既に保有している在庫一つ一つにRFタグを取り付ける工程が必要です。これは多大な時間と労力を要する作業であり、特に在庫量が多い組織にとって非常に大きな負担となります。また、取り付けたRFタグが正常に機能するかどうかの確認作業も必要です。アパレル業界の商品はサイズやカラー展開が多く、RFタグの取り付けに伴う作業負荷が大きいため、RFIDの導入をためらう企業が少なくありません。

RFIDの導入は、“費用対効果”で検討を

RFIDは初期投資が高額である一方、在庫管理や物流業務の効率化、ヒューマンエラーの最小化といったメリットが期待できます。特にアパレル業界のように大量の商品を取り扱うビジネスモデルの場合、棚卸や入出荷管理、検品作業などの負担を大幅に軽減できるため、中長期的なコスト削減が期待できます。RFIDを導入する際は短期的な成果を求めるのではなく、自社の課題や財務状況を明確化したうえで、中長期的な視点で投資計画を立案・策定することが重要です。

冒頭で述べたように、アパレル業界はビジネスモデルの特性上、デジタル化やDXと相性が悪い傾向にあります。しかしRFIDは在庫管理や検品作業、会計業務などの負荷を大幅に軽減し、DXの実現につながる強力なソリューションとなります。サプライチェーン全体の最適化を図ると共に、新たな顧客体験価値を創出するためにもRFIDの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ:RFIDを活用した業務効率化は、大塚商会へご相談ください

RFタグのデータを非接触で読み書きする自動認識技術のRFIDを導入すれば、棚卸の業務負荷軽減や検品ミスの最小化、店舗における会計業務の効率化などが期待できます。

大塚商会のアパレル向け販売・在庫管理システム「ApaRevo」は、「大車輪SaaS」と連携することでRFIDを活用した在庫管理が行えます。また、店舗や倉庫ではRFIDで商品のおおまかな位置を特定し、商品を探す手間を削減できます(逆探知機能)。業務効率化を目的としたシステム導入を検討する際には、RFIDの導入が最善かどうかの判断も含めて大塚商会へご相談ください。

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