小売業界は今後どうなる? 現状の課題と未来を作る四つの要素

人口減や消費行動の変化などを受けて、小売業は徐々に「モノが売れない時代」に入りつつあります。このような厳しい状況下で企業が生き残るためには、現状の課題を正しく理解し、次の時代に向けた新しい戦略を立てることが重要です。そこで本記事では、小売業が抱える現状の課題を分析すると共に 、将来の生存戦略に役立つ取り組みについて解説します。

これからは「モノが売れない時代」に?小売業界が抱える現状の課題

小売業界が抱える現状の四つの課題

矢野経済研究所の調査によると、小売業の国内市場規模は人口減の影響を受けて、2030年には2022年比で約14%縮小すると予測されています。小売業がなくなることはないにせよ、消費者の数自体が減っていく状況下で、市場の衰退を防ぐのは困難です。こうした厳しい社会情勢に加え、小売業界は以下のような課題に向き合い、新たな戦略を考える必要があります。

参照:2030年の小売市場に関する調査を実施(2023年)(矢野経済研究所)

「モノを買う」という意識の変化

シェアリングエコノミーやサブスクリプションサービスの普及を受けて、現代では「モノを買うこと」と「所有すること」が同一視できなくなりました。消費者は「必要なときだけ使う・共有する」という意識を持つようになったため、食品などの生活必需品を除き、単純に「モノを売る」という形態の小売業は通用しにくくなっている状況です。

慢性的な人手不足

少子高齢化は消費者だけでなく、労働者の減少にも直結する社会問題です。特に小売業界の場合、低賃金や長時間労働などの課題もあり、他業界と比較して離職者数が多い傾向があります。例えば、厚生労働省の調査によると、小売・卸売業界における一般労働者(いわゆる正社員)の入職超過率は-0.8%となっており、人手不足をアルバイト・パートで補っている現状が分かります。

また別の資料を見ると、小売業の2024年11月における新規求人数は医療・福祉業界、サービス業(他に分類されないもの)に次いで多く、人手不足が業界全体の課題になっていることが浮き彫りになっている形です。たとえインバウンドなどで需要が増えても、人員が確保できなければ事業は継続できません。そのため、今後は「人手不足倒産」が増えることが懸念されます。

参照:雇用動向調査:結果の概要 令和5年 産業別の入職と離職(厚生労働省・PDF)

参照:一般職業紹介状況(令和6年11月分)(厚生労働省・PDF)

実店舗のショールーム化

経済産業省の「令和5年度電子商取引に関する市場調査」の結果によると、国内物販系分野のEC化率は毎年大きく上昇しています。特に、書籍・映像・音楽などの分野は約53%、生活家電などの分野は約42%と、ECが占める割合は非常に大きいです。加えて、生活雑貨・家具(約31%)、衣類(約22%)などの従来は「店頭で実際に見て買った方がいい」とよくいわれていた分野も、着実にEC化が進んでいます。

他方、EC化が進む弊害として、実店舗がショールーム化している現象も見受けられます。企業としては、実店舗を置く意義の見直しも含めて、いかに自社で商品を購入してもらうか検討することが重要です。

参照:令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省Webサイト)

「2024年問題」に起因する物流危機

物流の「2024年問題」も、小売業と深く関係する課題です。2024年問題とは、働き方改革関連法案に従ってドライバーの労働時間などの改善に物流業界が取り組むと、ドライバー不足が現状よりもさらに悪化し、社会全体で輸送能力の不足が生じるというジレンマを指します。

経済産業省の資料によると、この2024年問題の影響で、小売業でも2030年までに9.4%の割合で輸送能力不足が生じる見込みです。これにより店舗への納品が滞ったり、今後さらに拡大が予想されるEC需要に対応できなくなったりすることが懸念されます。

【出典】持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ (経済産業省・PDF・p4)

【2025最新】小売業界の今後は? 未来につながる四つのキーワード

小売業界の未来につながる四つのキーワード

上記のような課題を受けて、いま小売業界では今後の生き残りを懸けたさまざまな工夫が行われています。そこで特に注目されているのが、以下で紹介する四つのキーワードです。

1. AI活用

現在では、ECだけでなく実店舗でもAI活用が進んでいます。例えば、カメラ画像をAIによって解析する技術(コンピュータービジョン)を使えば、顧客属性を分析してマーケティングに活用したり、万引などの不審行動の発見をしたりしやすくなります。また、パン屋のように、バーコードがない商品を扱う場合でも、AIが商品の種類や値段を自動で素早く識別してくれるので、従業員の負担やミスを減らしつつ、顧客の利便性を上げることが可能です。

2. パーソナライズ化

AI活用は、マーケティング活動を顧客それぞれに合わせてパーソナライズ(個別最適化)するためにも有用です。価値観の多様化が進む中、顧客をひとくくりに扱ってアプローチする手法は、その効力を衰えさせつつあります。そこで重要になってきたのが、顧客の属性や過去の購買履歴・行動履歴などを分析し、個別最適化された提案を行うパーソナライズです。この手法を使えば、過去の購買傾向から顧客が欲しがりそうな商品をレコメンドしたり、チャットボットなどでそれぞれの顧客に合わせたメッセージを送ったりしやすくなります。

3. サステナビリティ

現在の消費者や投資家は、サステナビリティに高い関心を寄せています。しかし企業としては、取り組みの必要性は重々承知していても、予算や人的リソースなどの問題から本格的に施策を実行するのはなかなか難しいのが実情です。

サステナビリティへの取り組みを無理なく取り入れ、継続するには、自社の側にも利益につながるようなアプローチを考えることが求められます。例えば、データに基づいて在庫管理や受発注業務を適正化することで、余剰在庫や廃棄ロスを削減廃棄し、利益率の向上と環境負荷の軽減の両立を図ることが可能です。

4. OMO・オムニチャネル

実店舗のショールーム化や物流危機などの課題を解消すると共に、顧客体験の向上にもつながる施策として期待されるのが、OMOやオムニチャネルといわれる考え方です。これらのマーケティング方法では、EC・実店舗といったチャネル間を自由に行き来し、融合させることで、顧客体験の効果を相乗的に上げることを目指します。例えば小売業なら、「Webサイトで商品を注文して実店舗で受け取る」「ECサイトで探した商品を店舗で試着する」などの例が挙げられます。こうした施策を実施するためには、店舗とECの在庫を一元管理するなどのシステム構築が必要です。

OMOマーケティングとは? O2O・オムニチャネルとの違いや戦略のコツ

小売業界で今後生き残っていくために、いま企業にできること

上述した施策を実行するためには、顧客の購買情報や在庫情報などのデータを、リアルタイムかつ正確に収集・分析することが前提として必要です。現状では、予算やリソースの不足が原因でデータの収集・分析に未着手であったり、部門や店舗間を横断したデータ活用に課題があったりする企業も少なくありません。しかし、小売業界の今後を見据えた場合、まず各種のデータを収集し、一元的に管理できるシステムの構築が最優先になると考えられます。

システム構築などを通して、業務プロセスやビジネスモデルを変革するうえで、相応の負担は避けられません。今後さらなる競争の激化が予想される小売業界で生き残るには、積極的に施策を講じていくことが求められます。今回ご紹介した四つのキーワードを念頭に置き、課題解決に取り組んでみてください。

ECを含む在庫情報や顧客情報の一元管理は、大塚商会へご相談ください

少子高齢化による市場の縮小、消費者の価値観や行動の変容など、小売業界にはさまざまな課題が存在します。こうした課題に取り組むための方法としては、販売管理システムや顧客管理システムの導入などを通して、データ活用を推進するのが有効です。

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