AIでマーケティングが変わる!? アパレル企業の活用事例

近年、AI技術の進化は著しく、アパレル業界においてもその活用が進んでいる状況です。特にマーケティング領域でのAI活用は、顧客ニーズを正確に捉え、質の高いサービスを提供するうえで不可欠になりつつあります。そこで本記事では、アパレル業界のマーケティングにおいてAIをどのように活用できるか、その具体例や期待される効果などを解説します。

マーケティングには「AI」が使える！三つの導入メリット

マーケティングには多様な定義がありますが、広義に捉えると、「商品・サービスを効率的に売るために企業が行うあらゆる活動の総称」です。事業を成功させるには適切なマーケティング施策が必要不可欠であり、近年ではその補助手段としてAIを活用する事例が増えつつあります。AIをマーケティングに活用するメリットとしては、主に次の三つが挙げられます。

収集したデータを有効活用できる

第一のメリットは、顧客データや売り上げデータなどの膨大な情報を効率的に分析できることです。従来、こうしたデータの収集や分析には多大な時間と労力が必要でした。しかし、AIならば、人間とは比べものにならないほど迅速に処理可能です。収集したデータをデータサイエンティストといったビッグデータの扱いに長（た）けた人材が分析することで、企業は信頼性の高い意思決定が速やかにできるようになり、マーケティング戦略の精度を高められます。

購買行動の変化に対応しやすい

第二のメリットは、現代の複雑化した顧客行動に対応しやすくなることです。インターネットやSNSなどの普及に伴い、現代の消費者の行動は非常に複雑かつ流動的になり、従来のマスマーケティングの有効性に陰りが出るようになりました。現代の消費者に刺さるマーケティング施策を講じるには、従来以上に精度の高い顧客分析・市場分析が欠かせません。その点、前項で述べたようにAIを用いてデータを収集・分析すれば、顧客や市場の変化へ柔軟に対応して施策を講じやすくなります。

人材不足の解消につながる

第三のメリットは、今後もさらなる人材不足が予想されているマーケターの穴を補えることです。本来、マーケティング活動には高度なスキルが必要であり、時間もかかります。他方、優秀なマーケターを十分に確保・育成することは、多くの企業にとって困難な課題です。その点、AIを活用することで、データ分析も含めた数多くの業務を自動化ないしは効率化すれば、人間の手作業を大幅に軽減できます。これにより、人手不足を緩和し、その分のリソースを他へ回すことができるようになります。

AIが生かせるマーケティング分野とアパレル企業の活用事例

AIはマーケティング分野において、具体的にどのように活用されているのでしょうか。以下では、AIがその力を発揮する代表的なマーケティング分野や、アパレル企業の活用事例を紹介します。

需要予測・トレンド分析

AIの導入効果が高い分野として真っ先に挙げられるのが、アパレル業界においてもマーケティング分析になります。例えば、AIに過去の売り上げデータや市場動向などを解析させることで、顧客や市場の需要予測やトレンド分析が可能です。これにより、企業は生産体制や在庫管理を最適化し、無駄なコストを削減できます。例えば、アパレル企業の中には、SNSを解析してトレンドを把握し、需要予測を行っている企業も存在します。

パーソナライズマーケティング

パーソナライズマーケティングとは、顧客一人一人の嗜好（しこう）や行動履歴に基づいて、最適なマーケティング施策を行う手法です。顧客の購買履歴やウェブサイトの閲覧履歴の分析にAIを活用することで、個々の顧客に合わせた商品やサービスの提案がしやすくなります。例えば、ある紳士服の大手企業は、AIを使ってパーソナライズされたダイレクトメール（DM）を顧客へ送付し、来店率をアップさせることに成功しました。

ロイヤリティマーケティング

ロイヤリティマーケティングとは、顧客ロイヤリティの向上を目指す施策のことです。AIを活用することで、顧客とのコミュニケーションを強化し、顧客ロイヤリティを効果的に高められます。昨今では、AIチャットボットやデジタル店員、仮想試着などのツールを導入する企業が増えていますが、これらも広義の意味では顧客体験を改善し、顧客ロイヤリティを向上させるための施策と捉えられます。例えば、ある大手ブランドはAIチャットボットを導入したことで、オペレーターの電話対応が終了した時間帯にも顧客対応ができるようになり、購買意欲を逃さない対応を取れるようになったことで売り上げを20%もアップすることに成功しました。

店舗マーケティング

AI活用というとデジタルマーケティングばかりをイメージされることが多いですが、店舗マーケティングにも活用できます。例えば、店舗内にAIカメラを設置し、顧客の行動を収集・分析すれば、どの場所にどのような商品を配置すると売り上げの増加に効果的かを分析できます。また、来店者の属性や行動パターンを把握することで、最適な方法・タイミングでプロモーションを打ち出しやすくなります。実際にあるアパレル店舗では、AIを活用して入店者数や滞留時間を分析し、レイアウトの改善やスタッフの配置に役立てています。

アパレル業界におけるAI、IoT活用のすすめ～店舗における顧客の行動把握を実現～

「AI×マーケティング」実現へ向けた企業の課題点

上記のようにAIマーケティングは豊かな可能性を秘めていますが、その導入に当たっては幾つかの課題や注意点があります。AIマーケティングを成功させるには、特に以下の二つの課題を事前に留意しておくことが重要です。

情報管理体制の整備やプライバシーへの対応

AIにマーケティング分析をさせる際には通常、顧客データの収集・分析も行うことになります。しかし、顧客データは重要な個人情報でもあるので、個人情報保護法に基づいた適切な取り扱いをしなければなりません。例えば、顔認証システムを搭載したAIカメラが収集した情報は、購買データと個人が強く結びついた形で収集されるため、データには個人の趣味趣向や行動傾向といった情報が含まれます。これらの映像データなどが万が一漏えいしてしまうと、プライバシーの侵害につながり、企業の信頼を損なう恐れがあります。

収集した顧客データは、不適切な使用や情報漏えいなどが起こらないように、適切なプライバシーポリシーやセキュリティ体制を整備することが必要不可欠です。さらにデータ分析に際してもAIアルゴリズムの透明性を確保し、何らかのバイアスや差別が持ち込まれないように心掛ける必要があります。このようにAIを活用して顧客情報の収集・分析を行う際は、企業倫理や個人情報保護の観点から配慮することが重要です。

AI人材の育成とツール選定

AIを効果的に活用するうえでは、AIリテラシーの高い人材の確保・育成が必要不可欠です。AIが収集したビッグデータを扱う人材としてデータサイエンティストが挙げられます。データ収集やクレンジング（整理や最適化）、データ解析、統計処理、機械学習モデルの考案、評価などを行う人材が必要であり、育成プログラムなどを利用して社内で人材を育てるか、データ分析専業の企業へ分析を委託し、活用方法を提案してもらうなどの選択肢があります。

データ分析ツールを自社へ導入する場合、自社に適した慎重な製品選定も欠かせません。ツールの導入目的や機能要件を明確化したうえで、意図に沿う、使いやすいツールを選ぶようにしましょう。

自社の人材状況や身を置く業界を勘案し、どのようなソリューションを取り入れるべきかは企業それぞれで異なるため、判断にお困りの場合はぜひ一度、大塚商会へご相談ください。

まとめ：積極的なAI活用で、新たな価値を創造しよう

AI技術を活用したマーケティングは、需要予測やトレンド分析、パーソナライズマーケティング、ロイヤリティマーケティング、そして店舗マーケティングと多岐にわたる分野で効果を発揮します。ただし、AIマーケティングの導入に当たっては、データの取り扱いやAI人材の確保、適切なツールの選定など、幾つかの課題があるのも事実です。AI活用に際してのお困りごとは、ぜひ大塚商会にご相談ください。