委託販売とは? 主な仕組み・メリットと対策すべき三つの課題

販売チャネルの拡大や事業のスリム化のために有用な施策として、「委託販売」が挙げられます。これは特にアパレル業界で多用されている販売手法ですが、一般的な卸売販売との違いなど、具体的な内容は知らない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、委託販売の基本的な仕組みや卸販売との違い、メリットなどを紹介します。導入時の注意点なども解説します。

委託販売とは? 取引の基本的な仕組みと流れ

委託販売の基本的な仕組み

委託販売とは、自社(委託者)の商品の販売業務を小売店や代理店などの第三者(受託者)に代行してもらう販売手法です。委託販売において、商品の所有権はあくまでも委託者側に残り、受託者は委託された商品を自社の店舗やECなどで販売します。

つまり、受託者に商品を買ってもらう(卸売りする)のではないため、委託者側に売上が生じるのは、受託者を仲介して実際に商品が消費者に売れたときになるのが特徴です。受託者への販売手数料は、売上の一定割合を差し引いて支払うことになります。

委託販売の基本的な流れは、以下のとおりです。

ステップ1
委託者が商品を受託者へ積送する
ステップ2
受託者が消費者への販売を担当する
ステップ3
売上報告書を通して、受託者が販売実績を委託者に知らせる
ステップ4
報告に基づいて、委託者が受託者へ販売手数料を支払う

最終的に売れ残った在庫に関しては、所有権を保持している委託者へ返却されます。

卸売販売との大きな違いは、「在庫リスク」と「価格決定権」

「商品の販売を第三者に任せる」というと、卸売販売を連想する人もいるでしょう。しかし、委託販売と卸売販売は大きく異なります。

ステップ1
メーカーが小売業者に商品を売る
(例:メーカーがジュースを80円で小売業者に売る)
ステップ2
小売業者が仕入れ値に上乗せして、消費者に商品を売る
(例:小売店がジュースを100円で消費者に売る)

卸売販売の場合、メーカー側から見ると、ステップ1の時点で在庫を手放し、売上を確保することが可能です。反面、在庫の所有権は購入者である小売業者に移るため、商品を最終的に何円で売るか(価格決定権)も小売業者にゆだねることになります。小売業者は余剰在庫が生じると、仕入れ値が丸損になってしまうため、ときには大幅に値引きしてでも商品を売らなければなりません。

対照的に委託販売の場合、小売業者が商品を預かった時点でも、所有権はメーカー側にあります。利益が出るのも、小売業者が実際に商品の販売に成功した時点です。そのため、在庫リスクはメーカー側が最後まで受け持たなければなりません。その代わり、商品の価格決定権も、メーカー側が最後まで握れます。

つまり、卸売販売は「在庫リスクを減らせるが、最終的な価格決定権を手放す」のに対し、委託販売では「在庫リスクを抱えるが、最後まで価格決定権を保持できる」という点が、両者の大きな違いです。

例えば、高級路線で売りたい商品などは、過度の値引き販売をされると価格戦略やブランド戦略に支障が出るリスクがあるため、メーカー側が価格決定権を握れる委託販売が向いていると捉えられます。

メーカー企業が委託販売を行う主なメリット

メーカー企業が委託販売を導入するメリットは、「事業のスリム化」と「販売チャネル拡大」の二つに集約できます。それぞれの内実は以下のとおりです。

自社のリソースを開発・製造に集中して回せる

委託販売を活用することで、メーカーは商品の販売活動や店舗の開設・運営といった負担を減らせます。これにより、人材や資金などのリソースを、本業とする開発・製造へより集中させることが可能です。コストパフォーマンスの観点から見ても、自社で販売業務をするのが不慣れな場合は、専門の小売業者などに委託した方が優れた結果になることが期待できます。

販売チャネルの拡大や、ブランド価値の向上につながる

委託販売を活用すれば、自社店舗の開設・増設をしなくても、百貨店や専門店、ショッピングモール、ECサイトといった幅広い販売チャネルを活用可能です。これにより、従来の販路だけではアプローチできなかった新たな顧客層へのリーチが可能となり、売上の増加が期待できます。さらに信頼性の高い委託先を通じて商品を販売することで、その委託先が持つブランド力や知名度の恩恵にあずかれる点も大きな魅力です。

一方でデメリットも? 委託販売で直面しやすい“三つの課題”

委託販売で直面しやすい“三つの課題”

委託販売は大きなメリットがある一方で、幾つかデメリットもあります。特に注意したいのが、手数料・在庫管理・取引管理という三つの負担です。

1.手数料の負担

委託販売をする際は、委託先へ販売手数料を支払う必要があります。手数料の相場は、実店舗の場合で売上の30~60%程度です。一般的には、大手百貨店やショッピングモールなど、集客力の高い施設ほど高い手数料が発生します。

一方、ECサイトの場合は20~50%程度が相場です。ECの場合も、サイト規模が大きいほど手数料は高くなる傾向にあります。

委託販売を導入する場合は、この販売手数料を差し引いても十分な利益を確保できるように利益計画を立てなければなりません。必要に応じて、販売価格の見直しや委託販売以外の販路も視野に入れて検討しましょう。

2.在庫管理・棚卸の負担

委託販売では通常、所有権を自社で保持しつつも、実際の商品は委託先である小売業者やECサイトなどの第三者に預けることになります。しかし、この「預け在庫」の管理に苦労することも少なくありません。

まず預け在庫は、委託先の管理下に置かれるため、自社で正確かつリアルタイムに把握するのが難しくなります。委託先ごとの特性や販売報告のタイムラグなども考慮しながら、機会損失や余剰在庫のリスクを低減できるように在庫調整することが必要です。

また、委託先から提出されたデータと実際の在庫が一致しているかチェックするために、棚卸作業をするのも手間がかかります。特に社内システムが使えないからといって、紙リストを用いた手作業で棚卸作業をしようとすると、その作業負担は非常に煩雑になります。

こうした問題に対応するには、預け在庫の管理もしやすい在庫管理システムや、ハンディターミナルを用いた効率的な入出荷検品システムなどの導入が重要です。

3.複雑化する取引管理・経理業務の負担

とりわけ複数の販売チャネルを抱えている場合は、取引管理や経理業務の複雑化にも備える必要があります。販路を広げるために、複数の業者に委託・卸売をしたり、自社の店舗やECと併用したりすることを検討している方も多いでしょう。

しかしそうすると、チャネルごとに取引条件やワークフロー、売上・精算のルールが変わり、管理業務が煩雑になりがちです。委託販売一つ取っても、委託先ごとに手数料の計算や支払処理、販売・在庫管理などをする必要があるため、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。

こうした肥大化する管理負担に耐えるためには、委託販売を含む各種販路における取引条件や売上・支払状況を一元管理できる販売管理システム、基幹業務システムの導入が有効です。管理業務に問題が生じると、経理処理のミスや支払遅延、契約違反といったトラブルにつながる可能性があるため、事前に対策を講じておきましょう。

このように委託販売には一定の負担も伴います。システム導入で対応する場合も一定のコストはかかるため、メリット・デメリットの双方をきちんと把握したうえで、導入を検討することが大切です。

委託販売の課題解決へ向けて、まずは業務システムの見直しを

委託販売は、販路拡大など多くのメリットがある一方で、在庫管理などの煩雑化といった課題も伴います。こうした課題を解決するためには、複数の販路へ柔軟に対応できる基幹システムの導入が有効です。

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