第141回 「“今”を生きる」を考える

「経営における不易流行」に関するワークショップを担当する機会がありました。最近「“今”を生きる」ということを誤解しているのではないかと感じる機会がありましたので、今回は、「不易流行」と絡めて「“今”を生きる」ことの本質を考えてみたいと思います。

「“今”を生きる」を考える

こんにちは!

「暑い、暑い」と騒いでいた季節がようやく過ぎ、いきなり季節が進んでしまった印象がありますが、皆さん体調を崩したりはしていませんでしょうか。

季節外れのインフルエンザ流行や、大騒ぎはしなくなったものの新型コロナウイルスもまた微妙に増加したりしていますが、一時期に比べ、明らかに揺り戻しも含めてリアルな活動が増えています。

先日も、とある経営者の皆さんのリアルなお集まりの場「経営における不易流行」に関するワークショップを担当させていただく機会がありました。

その中だけではありませんが、最近「“今”を生きる」ということを誤解しているのではないかと感じる機会が何度かありましたので、今回は、「不易流行」と絡めて「“今”を生きる」ことの本質を考えてみたいと思います。

最近の退職者の傾向

最近の「労働市場の流動化・活性化」をネガティブに捉えるつもりは全くありませんが、退職理由を聞いていて、少し気になる「発言の傾向」があるように感じています。

どんな傾向か……。それは「今を大切にしたい」「今の状況から将来が見えてこない」「将来よりも、充実した今を生きたい」的な発言の傾向です。

この類いの理由で退職をされる方は、新しい環境・新しい会社に移られても、同じような環境に直面した際に同じような理由でまた場を変えていくことになってしまうのではないでしょうか。

「組織における社員の当事者性」という文脈的にいえば、「自分」という存在自体が、現在、組織において生じている事象に何かしら影響を与えている、もしくは受けているという実態に自らが気付いたうえで、その事象の解決に向けた実践・行動をするということだと思います。

つまり、上述したような発言・表現は「組織における当事者性が低い」あるいは「当事者としての実践・行動をしていない」ことを表していることになってしまいます。

ということは「“今”を生きる」というのは、「たった今」という時間軸を切り取って、「その瞬間さえ良ければ、楽しければ良い」という刹那的な感情論ではないということがいえるのではないでしょうか。

「戦略的思考」と「短絡的思考」

「『たった今』という時間軸を切り取って、『その瞬間さえ良ければ、楽しければ良い』という刹那的な感情論ではない」だとすると、どう考えれば良いのでしょうか……。

個人的には、前回「第140回 視点を変えるポイント」の中で、「思考性を拡張するポイント」としてご紹介をさせていただきましたが、特に「視点の数を増やす」「時間軸を長くして考える」ことが重要になるのではないかと思っています。

第140回 視点を変えるポイント

  • 視点の数を増やす×時間軸を長くして考える≒戦略的に考えられる/戦略的思考
    が可能になり、逆にいえば上述した「刹那的な感情論」につながるのは「短絡的思考」の結果だともいえるのではないかと思い、
  • 刹那的な感情論≒短絡的思考≒視点の数が少ない×時間軸が短い
    ということになるのではないでしょうか。

戦略的に「“今”を生きる」を実践するということは?

ということを踏まえると、「“今”を生きる」というのは、「長期的な時間軸を前提にした自分自身のありたい姿・ゴール」を設定したうえで、そのゴールに向けた逆算思考を通じて、“今”何をすべきか? と向き合うことなのではないかと思います。

ただ、その時の「自身のありたい姿・ゴール」の設定の仕方が難しく、例えば「プロ野球選手になる・経営者になる・〇〇という職業につくなど」といった「結果」をゴールにするのではなく、その向こう側にある「何のために?」の部分を明らかにして言語化していくことがポイントだと思います。

ここは「“目的”と“目標”」の違いであり、過去「第126回 具体と抽象の往復運動による概念化能力」でもご紹介させていただいた部分になりますが、この認識も正しくご理解いただかないと誤解を生んでしまうかもしれません。

第126回 具体と抽象の往復運動による概念化能力

課題の分離

「“今”を生きる」を考えるにあたっては、もう一点、抑えておきたいポイントがあります。それは「セルフマネジメントにおける“課題の分離”」という視点です。

「セルフマネジメント」において、大切なことは「コントローラブルか、アンコントローラブルか」の切り分けだと言われています。つまり「自分自身でコントロール可能か、コントロールできないことか?」の切り分けの話になります。

当たり前のことなのですが、多くの人は、この「アンコントローラブル」なことにいら立ち、腹を立てたり、困った気分になったりしていることは少なからずあるかと思います。

ということで、このことをアドラー心理学では「課題の分離」と表現しており、「自分を変えることができるのは、自分しかいません」ということになるのです。

つまり「“今”を生きる」の本質的な思考は

  1. 長い時間軸での価値観/目的レベルでのありたい姿・ゴールを明確にする
  2. そこに向かって考えられる戦略シナリオを想定してマイルストーンを設定する
  3. その時間軸を短くしていき、月次・週次・日次(にちじ)にブレークする
  4. さらにそれを“自分でコントロール可能な点”に絞って実践する

という手順になるのではないでしょうか……。

このことを「不易流行」と絡めると、組織・企業であれ、個人であれ、自身の変えない普遍的な価値観をベースに、そこに向かう道筋は社会の動向・世界情勢を踏まえながら柔軟に変化させながらも、行くべきところへ行くために全力で取り組むということになるのだといえます。

最近では、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2023」が発表されましたが、その評価基準が大きく刷新された四つの視点「(1)志(2)便益(3)挑戦(4)継続性/再現性」を見ても、「“今”を生きる」の視点で見ても含蓄があるのではないでしょうか。

発表!「マーケター・オブ・ザ・イヤー2023」 6人の変革者たち(日経クロストレンド)

その中でも、特に「スープストック」の「離乳食炎上」に対する対応は、「“今”を生きる」の本質を理解するには良い例の一つのような気がします。

スープストック「離乳食炎上」への対応が秀逸な訳(東洋経済オンライン)

この例は企業における話ですが、個人に置き換えても同じように自分の人生の経営者/オーナーとして、自分で考え、自分で「解」を出して、その「解」を正解にしていく姿勢を持っていきたいと思います。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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