新型コロナウイルスの世界的まん延が経済に及ぼした影響は大きく、さまざまな業界が事業戦略の見直しをせざるを得ない状況になっています。ただし、注目すべきはコロナ禍によって伸びている業界と苦戦している業界とが混在している点です。化粧品業界は後者側の業界であり、直面している状況は厳しく、早急な対策が求められます。本記事では、化粧品業界で事業運営に携わっている方に向けて、現状課題やそれらを解決するための方法について解説します。
化粧品業界の今後はどうなる? 現状や課題、最新の動向をご紹介

目次
化粧品業界の動向
生活必需品である化粧品は、長らく景気に左右されない業界とされてきました。GDPが成長すると化粧品の消費金額も増加するという相関関係があり、安定的に成長してきた市場だったと評価できます。実際に化粧品業界出荷額は2012年以降、右肩上がりの傾向にあり、2019年度には過去最高を記録するという順調ぶりでした。しかし、新型コロナウイルスの影響やそれに伴うインバウンドの激減により、2020年に入ってから国内での需要が大きく落ち込んでいます。2020年度の市場規模は、東日本大震災が起きた2011年以来9年ぶりに10%近く減少すると予測されています。
参考:化粧品市場に関する調査を実施(市場調査とマーケティングの矢野経済研究所)
販売チャネルの多様化
販売チャネルの多様化もまた化粧品業界では見逃せないトレンドの一つです。従来では、百貨店やドラッグストア、その他量販店、訪問販売、通信販売などの販売チャネルが主流でした。売上の大きな柱である店舗販売に、インターネットの普及による消費者の購買行動の変化を受けて、ネット通信販売などの無店舗販売が加わった形です。
近年ではそこに加えて、オムニチャネルやセレクトショップ、バラエティーショップでの販売が注目されています。オムニチャネルとは、オンラインストアや実店舗、販売・流通といった複数のチャネルを連携させて、総合的な販売チャネルを構築する手法です。どのチャネルからもスムーズに購入できるようになることで、顧客にシームレスな購買体験を提供でき、結果的に顧客満足度の向上につながると期待されています。
化粧品業界における課題
続いて、化粧品業界が直面している課題についても見ていきましょう。具体的には次の三つの課題があり、それぞれについての販売戦略の見直しが急務です。

需要の落ち込み
前述のように新型コロナウイルスの影響により、好調から一転、化粧品業界は苦戦を強いられています。まず外出自粛や時短営業、インバウンドの激減により、高級化粧品や海外ブランドを扱う百貨店やドラッグストアなどの各店舗の来客数が大きく減少しています。加えてマスクの定着化が進んだことから、リップやチークなど、マスクで隠れるパーツのメーク用品の販売数が伸び悩んでいるのも大きな特徴です。在宅勤務が普及して対面の機会が減ったことも、メーク用品の需要の落ち込みに影響していると考えられます。新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら、今なお世界中で猛威を振るっており、インバウンド需要が戻ってくるのにはまだ時間がかかると見られています。
EC化が進まない
他業界と比べて、EC化が進んでいないのも化粧品業界の大きな課題だといえます。ECの市場規模は年々拡大傾向にあり、2019年度の全産業のEC化率の平均は6.76%でした。これに対し、化粧品・医薬品の業界のEC化率は6%と平均を下回っている状況です。
EC化が進んでいない背景については、次の三つの理由が挙げられます。
まず「直接肌につける」「高額な商品も多い」という商品の特性から、実店舗でスタッフのアドバイスを受けながら選びたいというニーズが高いためといえます。
次に若年層では低価格帯の商品の需要が高く、こうした商品を多く取り扱っているドラッグストアやバラエティーショップなど、店頭で購入する人が多いのも要因の一つです。
そして、販売チャネルが多数存在することもEC化の障壁になっています。
国内ターゲットの減少
「少子化による人口減少」は、化粧品業界にとって最も深刻な課題だといえます。世界においても急速なペースで少子高齢化が進む日本では、今後も人口は減少していくと見られています。化粧品業界に限ったことではありませんが、国内ターゲットが減少する可能性が高く、従来型の戦略のままでは国内の売上高は縮小していく一方でしょう。現状を打破するには、事業のグローバル展開や新規ビジネスの開拓が必須になるといわれています。
化粧品業界は今後どのような変化をしていくのか
化粧品業界の今後の展望についてもチェックしておきましょう。化粧品業界に今後起きるとされている変化は次の三つです。

DtoCモデルの拡大
まずDtoCモデルが拡大傾向にあります。DtoCとは企業自身でECサイトを構築し、消費者にダイレクトに自社商品やブランドを訴求するビジネスモデルのことです。SNSの普及により企業が消費者とじかにコミュニケーションを取れるようになったことで確立された手法であり、国内外のさまざまなメーカーがDtoCに取り組んで成功を収めています。仲卸や販売店を通さないため利益が大きく、顧客との関係強化やブランディングにつながるのがメリットです。ただしその分、社内にECサイトを運営するスタッフやWebマーケティングに詳しいスタッフを確保しておく必要があります。
他業種の参入増加
化粧品業界に既に起きている動きとして、多業種の参入があります。例えば医薬品や化学メーカーなどの異業種が、自社で開発した独自技術を化粧品分野に生かすケースが増えています。本業で培った技術を応用でき、競合に対して明確な差別化が図れることが、多業種から化粧品業界に参入する企業が増えている背景です。その一例が、富士フイルムの「アスタリフトシリーズ」です。同社では、写真という化粧品とは全く異なる分野での技術を基礎に、独自性の高い商品の開発に成功しています。
越境ECの利用増加
コロナ禍においては越境ECも盛んに行われるようになっています。越境ECとは、ECサイトを通じたグローバルな取引のことです。前述の国内需要減少とインバウンドの激減に伴い、越境ECを活用して海外販売網を広げる動きが加速しています。日本にいながら海外の顧客にもマーケティングのチャンスを広げられるのが越境ECを利用する最大のメリットです。越境ECへの参入を機に、長年親しまれた漢字のブランドロゴをアルファベットに変えるなど、本格的にグローバル展開に注力するブランドも現れています。
不況知らずといわれてきた化粧品業界ですが、新型コロナウイルスの影響を深く受け、大きなターニングポイントを迎えています。外部環境に影響されにくいビジネスモデル構築において、インターネットは欠かせません。自社ECサイトを構築して効率の良いビジネスを展開したり、それをきっかけにグローバル展開を進めたりすることが重要です。
まとめ
新型コロナウイルスによる打撃や少子化による人口減少によって、化粧品業界はかつてないほどの苦境に立たされています。ただし、生活様式に大きな変化が起きている状況は、新たなビジネスチャンスを発掘する絶好の機会でもあります。自社事業を安定させ、さらに今後に向けて発展させていくためには、トレンドの波を捉えて、それにうまく乗ることが重要です。EC化を進め、従来型の実店舗に依存したビジネス構造から脱却しましょう。柔軟な発想で新しい生活様式でのニーズに応えていくことが、ウィズコロナ・アフターコロナを生き抜くカギとなるでしょう。

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