ISDN終了はもうすぐ! 効率化を目指したシステムと対策について解説

ISDNのデータ通信回線サービス(INSネット)が、2024年をもって終了します。これにより、INSネットを利用していたEDI・POSなどが使えなくなるため、企業は対策を講じなくてはなりません。実際、流通業・小売業・アパレル業など、さまざまな業種において少なからず影響が及ぶと予想されます。そこで本記事では、INSネットが終了する理由と、業務にどのような影響があるのかを解説します。そのうえで、INSネット終了に備えて企業が取るべき対応についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。  

なぜISDNが終了すると流通や発注業務に影響があるのか?

1998年からサービスを開始したNTTのISDNデータ通信回線サービス「INSネット」が、2024年に終了することはご存じでしょうか。

本サービスは、リリース当初から多くのユーザーに利用されていました。しかし、光回線などのはるかに高速な通信回線の登場を機にユーザー数は当初と比べ大幅に減少しています。さらにISDN設備の老朽化に伴い、IP網設備へ切り替えることになり、INSネットが終了する運びとなったのです。

とはいえ、現時点でINSネット利用者が完全にいなくなったわけではありません。光回線などに移行した大部分の個人ユーザーとは違い、一部の業種、企業では、まだ利用を続けているところもあります。

ISDNの終了で流通や発注の業務が止まってしまう可能性も

INSネットの終了が、業務に大きく影響すると考えられる企業は少なくありません。仮に通信用回線としてISDNを採用していた場合、例えば以下のシステム・端末が使えなくなるためです。

  • 多くの業種で受発注業務の際に利用する「EDIシステム」
  • クレジットカード決済の際に利用する「CAT端末」
  • 商品在庫などを管理する際に利用する「POSシステム」
  • 警備会社が監視映像を送受信する際に使う「警備端末」
  • 入出金の際に利用する「銀行ATM」
  • 病院や薬局が診療報酬を請求する際に使う「レセプト(診療報酬明細書)オンライン請求」
  • 企業内でデータバックを行う際に使う「WANシステム」

これらは、いずれも各業界で非常に重要な役割を担うシステムであり、使えなくなると業務がストップしかねません。もし、サービス終了までに通信回線の切り替えなどが間に合わなかった場合、システムそのものが使えなくなってしまう可能性があるのです。

スーパーや飲食店、アパレル業界は特に注意

INSネットのサービス終了による影響が特に大きいと考えられるのが、スーパーをはじめとした小売業のほか、飲食業やアパレル業です。というのも、これらの業界で長年の間ずっと利用されているPOSシステムやEDIシステムは、多くの場合、ISDNによるデータ通信を採用しているためです。

さらに注意が必要なのは、ずっと前からEDIシステムやPOSレジを使っていた企業・店舗では、利用回線を意識していない人が多い点です。これらの人は、システムで今後廃止される予定の通信回線を使っていることに気づいてすらいません。

その結果、INSネットが廃止され、実際に業務が止まってしまってから原因に気づく可能性もあります。サービス終了時点から回線を切り替えて業務再開できるようになるまで、どれほどの時間がかかるかは状況によりますが、少なくとも企業や店舗にとって小さくない損失が生じることは明らかです。

2024年はまだまだ先? 今すぐシステム移行を検討する理由

2024年と聞くと先のことのように思えますが、あまり悠長にしていられる時間はありません。現在、INSネットを使用している場合は、できるだけ早急に移行を検討すべきです。以下、その理由について解説します。

ISDNはコストが高く通信も遅い

ほかの通信回線と比べると、現時点でISDNは通信速度が極端に遅いうえ、コストも割高になっています。実際どの程度の差があるか、現在、最もよく使われている光回線とISDNを比較してみましょう。

通信速度

光回線
最大 1Gbps(2Gbps~10Gbpsのサービスもあり)
INSネット(ISDN)
最大 64Kbps

一般的な光回線(最大1Gbps)と比べ1万5,000分の1以下に相当します。

  • * 1Gbps=1,000Mbps、1Mbps=1,000Kbpsとして計算した場合

コスト

光回線は利用者が増えたことにより、料金も安くなっています。月額料金で見ると、光回線(フレッツ光)はINSネット(フレッツISDN)と比べ、最安で半額程度の料金から利用可能です。

つまり、通信速度やコスト面で比較すると、INSネットは光回線に大きく劣っていることが分かります。それゆえINSネットは、もはや時代遅れと言わざるを得ません。

物理的に光回線に移行できない可能性がある

いざ光回線に移行しようとしても、工事ができない可能性もあります。まず、光回線の設備(基地局)が近隣に設置されていない地方などのエリアであれば、残念ながら光回線を利用できません。

また、建物が古い場合(だいたい築年数20~30年以上)、光回線の工事ができないこともあります。たとえ工事が可能だったとしても、建物の管理業者から許可を得られず光回線工事ができないケースも少なくありません。

ISDN終了で業務を止めないために企業が対応すべきこと

では、2024年に迫るINSネット終了に備え、企業は一体どのような対応を取ればよいのでしょうか。ここでは、企業が取るべき対応・考えられる対策をご紹介します。

光回線など、ほかの通信手段を確保する

まずは、ISDNに代わる新たな通信手段を確保することが先決です。移行先として最適なのは、やはり現在、主流とされている光回線が挙げられます。光回線なら通信速度が速く、切り替えることで業務効率化も図れます。

しかし、先述したように提供エリア外だったり、建物が古かったりする場合、光回線に必ずしも移行できるとは限りません。また、INSネットの提供が終了する2024年に近づくほど、工事が混み合い、移行が間に合わなくなる可能性もあります。移行が可能であるなら、なるべく早めに実行に移す必要があります。

建物が対応していない場合は移転の検討も必要

建物が光回線に対応していない場合は、回線工事が可能な立地にオフィスを移転することも視野に入れるべきでしょう。オフィス移転には相応の費用や時間がかかりますが、INSネットの終了によって生じ得る損失を考えれば、必要な投資とも捉えられます。長期的な視点で、光回線に移行したほうがコスト面・効率面共にパフォーマンスが高くなるので、選択肢の一つとしてご検討ください。

「メタルIP電話上のデータ通信」を一時的に利用する(デメリットもある)

新たな通信手段をすぐには用意できない場合、NTTが提供している「メタルIP電話上のデータ通信」サービスを利用する方法もあります。これは、INSネットが終了する2024年1月までに切り替えが間に合わないユーザー向けのサービスです。これを利用すれば、INSネット終了後も通信手段を確保できます。

ただし、通信の質に関してはINSネットに劣る面も見られ、通信環境によっては大幅な伝送遅延が発生する場合もあります。また、本サービスは2027年ごろまでの提供を予定されており、あくまで当座の補完措置に過ぎません。そのため、いずれにしても将来的には光回線への移行が必要です。

無線で使える「モバイルWi-Fi」を利用する方法も

「光回線が利用できず、オフィスを移転するほどの余裕もないが、通信環境は改善したい」という場合は、無線で使える「モバイルWi-Fi」の導入がおすすめです。モバイルWi-Fiなら回線工事を行うことなく、通信手段を確保できます。近年では光回線と遜色ない通信速度のモバイルWi-Fiも提供されているので、それらを利用すれば通信環境の改善も実現可能でしょう。

ただし、モバイルWi-Fiには通信制限が設けられていることも多く、また建物の構造によっては接続が安定しないこともあるため、注意が必要です。

まとめ

より高速・安価な光回線の普及や設備老朽化により、ISDN(INSネット)は2024年に終了が予定されています。それに伴い、INSネットを利用していたEDIシステムやPOSシステムなどが使えなくなります。業務を止めないためには、光回線への移行を主眼に置いた対応が求められます。現在INSネットを利用されている場合は、今回ご紹介した内容を参考に速やかに対策を講じましょう。

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