在庫消化率とは? アパレル経営改善へ向けた在庫管理の考え方

シーズンやトレンドによって売れ筋商品が頻繁に変わるアパレル業界において、在庫消化率を上げることは非常に重要です。特に原価率の高騰に苦しんでいる企業にとって、在庫消化率を適切に管理することは、粗利率を改善して経営を安定させる鍵となります。そこで本記事では、在庫消化率の基本的な意味や計算式から消化率を上げる方法まで、解説します。

アパレルにおける在庫消化率とは?

「在庫消化率」とは、仕入れた商品のうち何%が売れたかを示す指標です。例えば消化率が70%なら、仕入れた商品の70%が売れ、残りの30%が売れ残っていることになります。
商品の売れ行きを判断するためには、単に売上高を見るよりも、この在庫消化率を確認した方が明瞭です。在庫消化率が良いということは、予想どおり、あるいは予想以上に商品の売れ行きが良いことを示します。逆の場合は値下げやセールなどのテコ入れを検討しなければいけません。
特にアパレルの場合は、シーズンやトレンドが移り変わると、在庫を売り切るのが難しくなるため、消化率を上げることは非常に重要です。このように消化率の管理・向上は、仕入や販売計画を最適化し、アパレル経営を成功するための鍵になります。

在庫消化率の計算方法

在庫消化率は、一定期間における「総販売数÷在庫数」で計算可能です。例えば、ある期間における期首の在庫が400点、期中の仕入数が600点、販売数が700点だった場合、在庫消化率は「700÷1,000」で0.7、つまり70%ということになります。

経営判断に生かすべき「消化率」二つの指標

消化率を経営判断に活用する際には、「プロパー消化率」と「残品率(最終消化率)」という二つの指標も重視すべきです。これらは商品の売れ行きについて、より深く内情を理解したり、異なった視点から考えたりするために役立ちます。それぞれの指標の概要は以下のとおりです。

プロパー消化率

プロパー消化率とは、全体の販売金額のうち、定価で販売できた商品の売上が占める割合を指します。計算式は、一定期間における「定価で売れた金額÷総販売金額」です。
このようにプロパー消化率は数量ベースではなく、金額ベースで計算する点に特徴があります。数量ベースで消化率を考えると、商品ごとに販売単価が異なるため、商品の価値を正確に評価できなくなってしまいます。プロパー(定価)で売れた商品は値引きして販売した商品よりも粗利率が高いため、粗利の向上を図るためにはプロパー消化率にも注目することが重要です。

残品率(最終消化率)

残品率とは、定価販売およびセール販売を経て、最終的に残った在庫の割合を示す指標です。「在庫数÷累積仕入数」で割り出した最終消化率の逆数が残品率となります。例えば、累積仕入数が1,000個で残っている在庫数が700個の場合、最終消化率は70%、そして残品率は30%ということになります。
残品率が示すのは、値引きしても売れ残ってしまった商品の割合、言い換えれば損失です。プロパー消化率が高くても、残品率が高い(最終消化率が低い)状態では、余剰在庫にコストが発生しているため、満足に利益が出ていない可能性があります。そのため、経営を改善するためには、プロパー消化率を上げるだけでなく、残品率(最終消化率)の改善も必要です。

アパレル在庫消化率の理想と平均値

ここまで解説してきたように、アパレル経営を成功させるためには在庫消化率を上げることが重要ですが、そもそもどのくらいの数値なら「消化率が良い(悪い)」と言えるのでしょうか。2022年度に実施された環境省の調査によると、アパレル業界の平均消化率(最終消化率)は約70%とされています。また、売れ残った商品のうち、約2%が廃棄処分されているそうです。

令和4年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務(環境省・PDF・p6)

なお、プロパー消化率については、一般にアパレル業界の平均は30~40%程度、多くの企業が目標としているのは60~90%程度です。
最終消化率は100%が理想ではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、消化率が100%ということは、欠品が生じている可能性、つまり販売機会を逃していることを示唆します。
そのため、消化率100%は必ずしも最善ではなく、消化率が少し下がっても仕入の追加などを通して販売数をさらに伸ばせないか検討する必要があります。

【注意】販促費など、その他の経費にも注目を

粗利を考えるうえでは、販促費やECの販売手数料、クレジットカードや電子決済の手数料など、その他の経費にも注意が必要です。いくらプロパー消化率が高くても、これらの経費が高いならば実質的な利益は低くなります。
また、タイムセールやポイント割引などで生じた値引き額を販促費として計上している場合は、実質的には値引きしているにもかかわらず、プロパー消化率が高く出ている恐れがあります。

消化率を上げる!経営改善につながる在庫管理の考え方

消化率を上げるためには、仕入金額を下げるか、販売金額を増やすことが一般的な手段です。しかし、原価の高騰や市場の読みにくさから、仕入コストを削減することには限界があります。従って、経営を改善するには、販売金額をいかに増やしていくかが特に重要です。トータルの消化率やプロパー消化率を上げるためには、次で紹介するような仕方で、適切に在庫管理することが鍵となります。

売れる・売れない商品をデータで把握する

まずは売れ筋の商品と売れない商品をデータに基づいて把握することが大切です。予想以上に売れて欠品が出ている商品がないか、逆に売れる見込みのない商品を抱え込んでしまっていないか確認しましょう。
消化率が90%以上の商品は、欠品が起こる可能性が高いため、仕入数を増やすことを検討すべきです。逆に消化率が50%以下の商品については、販促活動の強化やセールによる売り切りなどを検討し、最終消化率を改善することが求められます。
さらに売れる商品と売れない商品、それぞれの理由を顧客のフィードバックなどを通して詳しく分析することも今後の経営のためには不可欠です。

フォロー出荷や店舗間移動を適切に行う

商品の売れ行きは店舗ごとに異なります。そのため、グループ全体で在庫消化率を上げるためには、各店舗の在庫消化率に即して倉庫からの出荷配分を調整したり、在庫が余っている商品を売れ行きの良い店舗へ移動したりといった取り組みが必要です。

店舗間移動に伴う在庫管理については以下の記事を参照ください。

店舗間移動を適正化! 複数店舗の在庫管理方法

現状で大ざっぱな基準で出荷配分を行っている場合、まずは消化率に基づく出荷配分処理ができる在庫管理システムを導入することをおすすめします。
このように店舗間で在庫量を調整することによって、全体の消化率を上げ、利益を最大化することが可能です。

在庫消化率の向上は、アパレル経営を成功させるためには避けては通れません。ここで解説したことを参考に、ぜひ改善に取り組んでみてください。

まとめ:消化率改善の第一歩は在庫の適正管理から

在庫消化率に基づいて適切な在庫管理を行うには、店舗ごとの在庫数や売上、販売数などのデータをリアルタイムかつ正確に把握することが重要です。
在庫分析・可視化システム「LTV-Zaiko」は、販売・在庫管理システム「ApaRevo」とのデータ連携により、消化予測日の分析ができます。余剰となる可能性のある商品を一覧で確認できますので、より早い対策につなげられます。
消化率に基づいた適正な在庫管理をお考えの方は、大塚商会にぜひご相談ください。

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