アパレルにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)事例紹介

IT技術によってビジネスモデルに変革をもたらす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ですが、アパレル業界はDXに乗り遅れているといわれています。今回は、なぜアパレル業界のDXが進んでいないのか、そうした中でもDXに向けてどのような取り組みがなされているかなどをご紹介します。デジタル技術の活用を進め、顧客がオンラインでも安心してアパレル商品の買い物を楽しんでもらえるように、ぜひ参考にしてみてください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)について

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、2004年にスウェーデンの大学教授であるエリック・ストルターマン氏が提唱した概念で、ITが人々の生活をあらゆる面でより豊かに変化させることを意味します。スペルは「Digital transformation」と書きますが、略称は「DX」である点に注意が必要です。

DXは業界問わず重要なキーワードとなっており、「コト」ビジネスの文脈でいいますと、デジタルの活用により業務プロセスやビジネスモデルを変革することを指します。DXは、しばしば「IT化」や「デジタル化」と混同されますが、デジタル技術の活用はあくまで手段に過ぎません。ツールやシステムなどの活用を通じて、ビジネス環境の変化に対応し、業務改革や新しい価値の創出につなげるのが目的です。

特に日本では、今後の労働人口の減少が見込まれており、業務の生産性を向上させることが求められます。そのために、デジタル技術を活用して業務プロセスを改革したり、新たなビジネスモデルを作ったりする必要があります。インターネット社会を迎え、グローバル競争が激しさを増す中、海外企業や革新的な企業と競争するためには、DXは不可欠といっても過言ではありません。

アパレル業界でDXがあまり進んでいない理由は?

幅広い業界でDXへの対応が鍵となっていますが、中でもアパレル業界は一般論としてDXの波に乗り遅れているといわれています。以下では、その理由について見ていきましょう。

試着ができないので通販に不向き

アパレルの商品特性上、どうしても「試着」のプロセスを無視することはできません。サイズや色などが合うか、通販サイトだけでは現物を手に取って確認できませんので、消費者が不安を感じるのも無理はありません。

また、業界内にまん延する「接客や実店舗での試着が必須である」という固定観念も、デジタル化への対応が遅れている一因です。実店舗でなければ試着が難しく、ECサイトでの販売には適していないという考えが、DXの遅滞を招いています。

後述しますが、既にAIなどを活用し、オンライン上で試着に代わる手段が実現可能となっています。それにもかかわらず、まだまだDXが普及していない背景には、業界の固定観念が影響しているとも考えられるでしょう。

消費者のニーズとなる情報の不足

従来のアパレル業界では、どちらかといえばアパレル業界側がトレンドを作り、消費者に提供するという「トップダウン型」の商売でした。しかし、消費者行動のデジタル化が進み、SNSなどで消費者が積極的に情報発信を行えるようになったことで、主導権が移り変わりつつあります。

しかしながらアパレル業界は、かねて実店舗に依存していたため、消費者のデータ収集・分析を積極的に行ってきませんでした。その結果、消費者の多様化するニーズを把握しきれていないのが現状です。

オフラインに依存したビジネスモデルでは、POSレジだけでは性別や年齢といった属性ごとのニーズとのひも付けが難しく、データを起点にしたマーケティングが積極的に行われてきたとはいえません。細分化された消費者のニーズに応えられておらず、同じような流行のファッションを提供する企業が多く、結果として他社ブランドとの差別化ができていない状況があります。

オンラインでの販売やマーケティングは、「マスマーケティング」ではなく個々のニーズに応じた「One to Oneマーケティング」であることが特徴です。しかしアパレル業界では、その基になるデータがそもそも不足しているため、DXがあまり進んでいないのです。

DXの取り組み事例

とはいえ、アパレル業界のすべての企業がDXに対応できていないわけではありません。以下では、アパレル業界のDXに向けた取り組みについてご紹介します。

展示会・ファッションショーのデジタル化

アパレル業界では大抵、世間に新作を発表したり、バイヤーとの商談の場を設けたりするうえで、展示会やファッションショーがその役割を担うことが多くあります。しかし新型コロナウイルスの影響により、リアルな場での開催が難しくなりました。中止または延期になる展示会やファッションショーもある一方で、最近ではこれを機にオンライン上でファッションショーなどが実施されるケースも増えてきています。
近年さまざまな分野で活用が進む3DCGの技術を用いて、ファッションショーをデジタル上で臨場感のある形で開催し、観客から評価されている事例も多いようです。

実店舗では販売しない戦略

ネットショッピングが普及している状況を踏まえ、実店舗の位置づけを見直す企業も増えています。例えば、実店舗では商品を販売せず、採寸や試着を提供するという取り組みがあります。これは店舗で顧客の興味を引き、通販での販売につなげることを目的とします。あるいは、実店舗に新商品のサンプルを置いて顧客の反応を探るなど、リサーチを目的とした取り組みも行われています。

近年ではアバターでのコーディネートや、実店舗で試着した商品がアプリに登録されるなどといった、実店舗と連動しながら通販での購入を促進するような仕組みが、技術的にも可能になっています。こうした実店舗での販売にこだわらない戦略も、徐々に広まりつつあります。

RFIDタグを活用した在庫管理

在庫管理もDXにより効率化できます。「RFID」とは、一つ一つの商品にさまざまな情報を付加し、非接触でその情報を読み取れる仕組みです。これにより、商品をユニークIDで管理でき、消費者に届くまでの商品の流れを効率的に管理できます。

RFIDの仕組みにより、レジを無人化し、顧客自身で会計を行ってもらうことも可能です。また棚卸しについても、バーコードなどを一つ一つ読み取るのではなく、RFIDを非接触でまとめて読み取ることで、大幅な効率化を実現しています。

このようにRFIDタグの活用は、店舗スタッフの負担軽減や人件費の削減に寄与しています。それぞれの商品をデジタルで容易に管理できることから、在庫管理の効率や精度の改善につながっています。

AIを用いたデジタル採寸

AIを用いたデジタル採寸も進んでいます。これは実店舗に行かなくても、スマートフォンの専用アプリなどで撮影を行い、そのデータを基に手軽に採寸できる技術です。身長や体重、年齢、性別などの情報を入力したうえで、全身の写真を複数の角度から撮影します。このデータをディープラーニングで蓄積した大量のデータと照合しながら、身体の各部位を高い精度で採寸できるというわけです。

この採寸データを活用することで、実店舗に行かずともECサイト上で、自身の体形にぴったり合った服を探すことが可能になってきています。ECサイトでの買い物において大きなハードルであった「採寸」を、AIを用いたデジタル採寸で解消することで、消費者に安心して通販を楽しんでもらえるようになりつつあります。

DXがアパレル業界の未来を作る

業界問わずDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されている中、アパレル業界ではその対応が遅れています。しかし、その大きな理由であった「オンライン上では自分に合ったサイズの服か分からない」という悩みも、IT技術の発展により生まれたデジタル採寸により、だんだん解消されるようになってきました。多様化する顧客ニーズへの対応や、新たなビジネスモデルの展開につながるDXへの取り組みは、今後のアパレル業界を生き残るために必要となるでしょう。

関連ソリューション

この記事に関連する製品

アパレル・ファッション業向け 販売・在庫管理システム「ApaRevo」

「ApaRevo」はアパレル業界やファッション業界特有の業務をトータルでサポートする販売管理システムです。色サイズ別管理はもちろんのこと、マルチチャネル販売への対応や、リアルタイムな売上・在庫情報と多彩な分析機能により、販売機会損失や不良在庫を抑止し、企業の体質強化と売り上げアップを実現します。また、POSやEC、EDIなどとのシームレスな連携が実現します。

ECサイト一元管理システム ネクストエンジン

「ネクストエンジン」は楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど、複数の販売チャネルの受注管理、在庫自動連携、商品ページ情報の一括変換など、ネット通販の運営に必要な機能を備えたASPです。

こちらの製品について詳しく見る

カスタマイズできるクラウドEC MakeShopエンタープライズ

「MakeShopエンタープライズ」は、カート業界流通額が10年連続No.1、11,000店舗導入のノウハウが詰まったクラウド型のECシステム。低コストでお客様のご要望に沿った柔軟なカスタマイズが可能です。

こちらの製品について詳しく見る

スマートなのに高機能! クレジット決済機能付き高機能モバイルPOSレジ スマレジ

「スマレジ」は、iPadやiPhone、iPod Touchを利用した、高機能モバイルPOSレジです。これまでPOSレジを導入できなかった小規模な小売店や、路面店などでも導入可能なパッケージです。基本レジ機能はiPhoneアプリのため、動作が軽快。データは全てクラウドサーバーに保存されるので、インターネットをご利用できる環境であれば、どこからでも売上データなどを閲覧することができます。

こちらの製品について詳しく見る

小売~飲食業など100業種以上対応 パソコンPOSシステム BCPOS

「BCPOS」は、バーコードを使った販売・在庫管理から、モード切替によるタッチパネル対応で、飲食業からサービス業までの対応を可能としています。売上連動の顧客管理でポイント発行まで実現します。

こちらの製品について詳しく見る

倉庫管理システム(WMS) W-KEEPER

「W-KEEPER」は、在庫型倉庫管理・通過型倉庫管理に対応した倉庫管理システムです。無線ハンディターミナル入荷/出荷検品・Web照会の機能があり、お客様の業務に応じた機能を選択していただけます。在庫型倉庫管理システムは多言語対応で、無線HTTシステム・Web照会・通過型倉庫管理・汎用インターフェースの各機能はオプションとしてご提供します。

こちらの製品について詳しく見る

関連記事

アパレル業界のIT導入事例ダウンロード

大塚商会のERPソリューションが現場の課題をどのように解決し、成功へと導いたのか。導入前の課題、導入後の効果、当社との出会い・活用法、今後の展開など、ライフデザイン・アパレル業のお客様の事例を集めました。

ダウンロード資料:PDF・32ページ(6事例)

事例集をダウンロードする

「ApaRevo」製品カタログダウンロード

アパレル・ファッション業界特有の業務をトータルでサポートする販売管理システム
「ApaRevo」のPDFカタログをご用意しています。ご検討資料としてお役立てください。
ダウンロード資料:PDF・12ページ

カタログをダウンロードする

アパレル・ライフスタイル業界向け 特設サイト「ライフデザインナビ」

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しています!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

製品導入に当たって、疑問・質問はございませんか? お取引実績130万社の経験からお客様のお悩みにお答えします。資料のご請求、お見積りから、実機でのデモ希望など、お気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

卸販売について

ページID:00200602