サプライチェーンマネジメント(SCM)とは? アパレル物流の改善策

経済のグローバル化が進展する中、製品の製造や供給に関わるルートは以前にも増して複雑化しています。こうした環境下で、事業活動の効率化を図るために重要になっているのが、サプライチェーンマネジメント(SCM)です。本記事では、アパレル業界の物流を主な対象とし、SCMの基本的な意味や導入メリット、業界特有の課題、そして改善に向けた具体的なアイデアを解説します。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは「供給プロセス全体を管理する」こと

アパレル業界のサプライチェーンマネジメント(SCM)

サプライチェーンマネジメント(以下、SCM)とは、原材料の調達から製品の製造、物流、販売に至るまで、供給に関わる全てのプロセス(サプライチェーン)を統合管理することです。例えばアパレル業界の場合、原料の仕入先から縫製工場、倉庫、物流業者、そして小売店やECサイトに至るまでの一連の供給網を適正管理することを指します。

近年のサプライチェーンは、経済のグローバル化によって複雑性を増すと同時に、自然災害や感染症の流行、国際情勢の緊張など、さまざまなリスクに見舞われています。こうした環境下でSCMは、部門間や企業間でリアルタイムに情報を共有し、柔軟かつ迅速な判断を可能にする仕組みとして非常に重要です。特にトレンドの移り変わりが激しく、商品ライフサイクルの短いアパレル業界においては、需要変動に即応できるSCMの構築が競争力強化の鍵となります。

取り組むメリットは? アパレル物流特有の課題とSCMの必要性

アパレル業界における物流は、他業界と比べて特有の課題を抱えています。こうした業界特有の課題を解決するためにも、SCMの導入は有効です。

課題1.商品の保管から配送までにより多くのコストがかかる

アパレル商品は、繊維の種類や服の形状などに応じて適切な保管方法が求められます。温度や湿度の管理はもちろん、虫害や型崩れを防ぐための対策も必要であり、保管には繊細な配慮が欠かせません。

また、商品はサイズやカラーごとに多品種少量で保管されることが多く、在庫管理の工数や倉庫スペースも増加します。さらに荷役・梱包(こんぽう)作業の負担も大きく、物流コストが大きくなりがちです。

その点、SCMを導入することで、物流の全体最適化を促進できます。例えば、倉庫配置や輸送ルートの再構築により、保管・輸送の無駄を削減可能です。また、工場や店舗の立地を考慮した配送計画の見直しや、サードパーティー・ロジスティクス(3PL)との連携による業務効率化で、全体の物流コストを抑えられます。

課題2.需要予測が難しく、在庫の過不足が発生しやすい

需要予測による在庫管理の最適化

アパレル業界はトレンドの移り変わりが激しく、正確な需要予測が困難です。過剰在庫による保管コストの増大や廃棄ロス、セールの乱発による収益性の低下などに悩む企業は少なくありません。かといって在庫量を減らせば、欠品によって販売機会を逃す恐れがあります。

そのため、SCMにおいても正確な需要予測による在庫の最適管理は重要なテーマです。例えば、AIを活用し、売上実績や市場動向などのデータをリアルタイムに収集・分析することで、より精度の高い需要予測ができるようになります。在庫管理システムによって、在庫状況を店舗横断的に一元管理すれば、在庫の店間移動をスムーズにすることも可能です。

課題3.出荷前の業務負担がリードタイムにも影響する

アパレル業界では、出荷前の検品・検針作業が欠かせません。衣類の汚れや縫製の乱れ、針の混入などをチェックする必要があるため、出荷準備には多くの工数が必要です。加えて、値札の取り付けやブランドタグの装着といった「流通加工」も必要なため、これらがリードタイム(顧客に届くまでの時間)を長引かせる一因となっています。アパレル商品は返品率が高い傾向にあり、その対応業務も物流部門の大きな負担です。

その点、SCMを通じてこれらの業務を可視化・標準化することで、業務効率化と作業負担の軽減が図れます。特に検品工程の自動化や、返品処理におけるワークフローの最適化などにより全体のリードタイムを短縮し、顧客満足度の向上が可能です。

アパレル物流を改善! 自社でできるSCMの最適化アイデア

最適なSCMを実現するための鍵は、最新のテクノロジーの活用です。以下では、IT活用を軸にSCM改善に役立つ具体的なアイデアを三つ紹介します。

1.システム導入による情報の一元管理と部門間の連携強化

最初に着手したいのが、販売管理システムや在庫管理システムなどの基幹業務システムを導入することです。こうしたシステムの導入によって、情報を一元管理し、部門間や店舗間の連携を強化できます。

従来、販売・在庫・仕入などの情報は、部門ごとに分散して管理されがちでした。しかし、これでは販売実績や在庫状況を正確に把握するのに時間がかかり、タイムリーな意思決定が困難です。その点、基幹業務システムを導入し、部署間でリアルタイムに情報を共有すれば、販売動向に応じた柔軟な在庫補充や、余剰在庫の削減が容易になります。

2.受発注業務や検品作業を効率化する“DX”の推進

近年では、受発注や検品といった現場業務にもデジタル技術の導入が進んでいます。例えば、POSレジやハンディターミナル、販売管理システムなどの導入は、手作業の多かった業務を自動化・省力化し、作業スピードと作業品質を同時に向上するために効果的です。

また、倉庫管理システム(WMS)を導入すれば、商品ごとの在庫状況をリアルタイムに把握し、棚卸しの精度や出荷準備の効率も大きく改善できます。これにより、出荷リードタイムの短縮や、欠品・誤出荷の防止が可能です。

さらにこうしたITツールを使うことで、業務に関する多種多様なデータをデジタルで収集・管理できるようになります。蓄積されたデータは、さらなる業務改善やDX推進の基盤になります。

3.RFIDやAI需要予測など、最新技術を活用した在庫管理の最適化

より高度なSCMを実現するには、RFIDやAIといった最新技術を活用することが重要です。例えば、RFIDタグを用いることで、商品や資材の流れをリアルタイムに可視化できます。従来のバーコード管理に比べて読み取り速度が速く、一括スキャンも可能なため、棚卸しや出荷検品の手間を大幅に削減可能です。

また、AIによる需要予測は、過去の販売実績のみならず、気候やイベント情報など複雑な条件も含めて分析できます。これにより需要の変化に正確かつ柔軟に対応し、余剰在庫や機会損失の発生を防ぐことが可能です。さらに自動搬送ロボットによる倉庫内作業の自動化など、最新技術を活用できる範囲は多岐にわたります。

SCMにおけるよくある課題とマネジメントの失敗を回避するコツ

SCMは、企業に数々のメリットをもたらす一方で、その構築と運用には多くの課題が伴います。例えば、SCMでは素材の調達から製造・物流・販売・在庫管理まで、広範囲にわたる業務を管理することが必要です。しかし、各工程を精緻に設計しようとするあまり複雑な仕組みになり、かえって非効率になってしまうケースも少なくありません。

SCMには多くのコストがかかるため、こうした失敗は可能な限り避けたいところです。そのためには、自社の規模や業態に合わせた柔軟な設計が可能で、拡張性に優れたシステムを選ぶことが重要です。加えて、使いやすいユーザーフレンドリーなシステムであれば、現場にも無理なく定着させられます。

SCMの成功は、自社に適したシステムを導入できるかに大きく依存します。どのようなシステムが必要か、自社の目標や課題を踏まえ慎重に検討しましょう。

自社に合ったシステムの導入がサプライチェーン最適化の第一歩

アパレルは、商品の多様性やトレンドの変化の激しさから、物流に関してさまざまな課題を抱えやすい業界です。こうした課題に対応するためには、サプライチェーンマネジメント(SCM)の最適化が欠かせません。

大塚商会では、アパレル業界特有の業務に対応する販売管理システム「ApaRevo」や、EC販売に強みを持つ「ネクストエンジン」、倉庫管理や倉庫内のオペレーション改善に活用できるクラウド倉庫管理システム「ロジザードZERO」など、各企業の課題や環境に応じた柔軟なソリューションを提案可能です。SCMの改善に向けたシステム導入をご検討の際は、ぜひご相談ください。

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