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需要予測も可能になる? AIはアパレル産業をどこまで変えるのか?
社会のあらゆる領域で、AIの活用について盛んに議論されている現在、アパレル業界にもその波は押し寄せてきています。とはいえ、アパレルは他業界に比べてITの導入が遅れている傾向にあり、AIがどのように役立つのかイメージしにくい人も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、AIを中心としたIT技術が今後、アパレル産業をどのように変えていくのか、またどのようにすればうまく活用できるのかを解説します。
アパレル業界で期待されるAI活用
まずは、アパレル業界において現在活用されているAI技術、もしくはAI技術の活用が期待されている業務・サービスについてご紹介します。
需要予測
アパレル業界におけるAIの活用法として、第一に挙げられるのは、時系列分析や画像認識技術を利用した「需要予測」です。
「時系列分析」では、AIで過去の売上データを分析し、将来の需要予測を実施します。また、「画像認識技術」では、大量の画像を解析し、個々のアイテムを素材・模様・色・シルエット・フィット感などの細かい要素に分解します。そうして細分化した特性の組み合わせと、売上の傾向を突き合わせることで、客観的な需要予測ができるようになります。
つまり、時系列分析と画像認識を組み合わせて分析することで、顧客の需要に関する法則性をより精密に把握し、需要予測の正確性を上げることが理論上可能とされています。
MD業務
AIを活用して「MD業務」をサポートすることも可能です。
MDとは、「いつ・何を・いくらで・どのように販売するか」を考える業務です。アパレル業界は、他業界と比べて主観や経験が重視されやすい傾向にありますが、トレンドが細分化・多様化されている現代では、生産量と販売量の見込み違いが発生しやすくなっています。
しかし、AIを活用することでば、ビッグデータを基にしたデータ解析が可能となり、市場全体の動向を定量的に把握しやすくなります。これによって、トレンドを大きく外してしまうことで生じていたセールの常態化や余剰在庫を抑制し、またプロパー消化率の向上から利益の最大化が期待できます。
顧客対応
「顧客対応」に関しても、将来的にAIの活用が期待できる分野です。
ネット通販が普及した現在、顧客に自動応答する「AIチャットボット」をECサイトに導入する企業が増えています。例えば、国内のアパレルブランドA社は、自社アプリにおいてAIチャットボットを用いた買い物アシスタントサービスを2018年より運用開始しました。このAIチャットボットは、人気商品やおすすめコーディネートの案内をはじめ、これから向かう実店舗の在庫状況などもユーザーへ案内が可能というものです。
AIチャットボットを活用すれば、24時間365日体制で稼働できるので、カスタマーセンターの業務効率化や顧客満足度の向上への効果も期待できます。
サイズ判断・仮想試着
AIによるサイズ判断やバーチャルな仮想試着も、今後さらなる進化をもたらすといわれているサービスです。
これは画像認識技術を用いて、AIが顧客のボディラインなどを分析し、それにフィットする商品を自動で選択・仮想試着できるという技術です。ECサイトでの買い物では、「イメージと違う」「サイズが合わない」などの問題が発生しがちですが、このAIサービスをアプリなどで提供することによって、改善が見込まれます。
また、こうした試みは実店舗でも実用可能で、例えば国内の衣料品メーカーB社は、試着室に設置した3DボディスキャナーでAIが顧客を採寸し、最適な商品を提案するというサービスを導入しています。AIによる自動採寸・仮想試着は、実際の服を使うより手間や時間を省けるほか、緊急の社会的課題となっている感染症対策としても有効といえます。
AIをうまく活用するために必要な条件
AIはアパレル業界において、さまざまな活用の可能性を秘めていますが、何の準備なしにAIを導入しても、その機能を最大限に生かすことはできません。とりわけ需要予測などの分析作業にAIを活用したい場合、その分析精度を高めて業務革新を実現するためには、主に以下の条件を整える必要があります。
- 大量のデータ
- データフォーマットの標準化
- 想定外の外部要因の影響を受けにくくする
まず、AIの予測分析とは基本的に過去のデータから規則性を分析して予測するものです。その分析精度を高めるためには、参考例となるビッグデータが要求されるほか、データフォーマットの標準化も必要です。また、アパレルのトレンドは流行の芸能人のファッションなどにも大きく影響を受けますが、現在のAIはそうした想定外の外的要因までも予測に反映させることはできません。それゆえ、AIに予測分析させる際には、人間側でデータの工夫をしたり、分析結果の背後にある要因をさらに解釈したりする必要があります。
このように現状のAI技術では、完全にAIに仕事を委ねることは難しい状況があります。そのため、AIを活用していくうえでは、データ解析能力などのAI特有の長所と、直観や感性、クリエイティビティなどの人間ならではの長所をいかに組み合わせられるかがポイントです。
AIと並んで話題のRPA
上記のように、AIを活用していくにはさまざまな条件が必要であるため、全ての企業がスムーズに導入するにはまだハードルが高いかもしれません。そこで、少しハードルを下げた選択肢として、「RPA」の導入についてご紹介します。
RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)は、企業の「管理間接業務」を自動化するテクノロジーです。RPAは、定型的な事務作業などを自動で遂行することが可能なため、昨今の人手不足や働き方改革に対応できる技術として、活用が期待されています。アパレル業界であれば、例えば財務・経理業務における集計処理、定型化された売上日報の作成やメール送信を自動化することで、業務効率化や人件費の削減、業務処理品質の向上などを実現できる可能性があります。
AIとの違いは、学習を経ることで状況に応じて自身で判断を行えるようになるAIに対して、RPAはあらかじめ設定したルールに基づく業務を実行します。ルール外のイレギュラーな対応には、反応ができません。AIを導入し活用していくことにハードルを感じる場合は、人手が足りない管理間接業務を整理して、RPAを導入することで、デジタル化の一歩を検討してみてはいかがでしょうか。
「ApaRevo」と「SMILE V 会計」の連携
AIの準備段階としてRPAの有効性について紹介しましたが、具体的なシステムとして、大塚商会ではアパレル業向けの基幹業務システムである「ApaRevo」と会計システムの「SMILE V 会計」をご紹介します。
「SMILE V」シリーズでは、基本的な基幹システムの機能のほかに、RPA機能を搭載し、これまで手作業で行っていた作業工数を大幅に削減することが可能です。例えば、適正在庫割れ商品のリストを日時指定して自動出力したり、売上実績レポートのテンプレートを設定しておくことでExcelファイルを自動作成したり、一連の定型作業の自動化が実現できます。
さらに、「ApaRevo」と「SMILE V 会計」を連携することで、販売管理と会計システムをシームレスにつなげ、ボタン一つでデータの自動生成が可能になるなど、大幅な業務効率化にもつなげられます。「ApaRevo」は他システムとの連携も可能なため、「ApaRevo」を基幹業務システムとして導入をすることで、将来的にさらにAIを活用していくための体制を整えていくことが可能です。
「ApaRevo」と「SMILE V 会計」を導入し、業務の標準化を実現した具体的な導入事例を紹介していますので、製品導入の際にご活用ください。
まとめ
AIやRPAの存在は、不況といわれるアパレル業界にさまざまなチャンスをもたらします。ただし、他業界と比べてIT化が遅れているアパレル業界では、まずは積極的に既存のIT技術を活用し、デジタル化の基盤を整えていくことが急務といえるでしょう。本記事で紹介したデジタル化はアパレル業界においても活用できます。その選択肢として「ApaRevo」と「SMILE V 会計」を導入し、業務の自動化をご検討してみてはいかがでしょうか。
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