化粧品・美容業界のDX戦略! 事例や推進のポイントを解説

国内ではテクノロジーの進歩・発展に伴って市場の成熟化が加速しており、化粧品・美容業界では経営体制の抜本的な変革が必要とされています。そこで重要課題となるのがデジタル技術の活用による変革「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進です。本記事では化粧品・美容業界でDX戦略を推進するポイントや、企業の成功事例などを網羅的に解説します。

化粧品・美容業界で進むDXの動き

化粧品・美容業界でDXの推進が求められている理由の一つは「見込み客や顧客の購買行動の変化」です。マスメディアが主流だった一昔前の時代では「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字からなる「AIDMA」という購買行動が一般的でした。しかし、現代は社会のあらゆるシーンでデジタル化が進み、「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の「AISAS」と呼ばれる購買行動が一般的となっています。

つまり、従来の購買行動に「オンラインでの情報検索と口コミの共有」というプロセスが加わり、見込み客や顧客が多様な情報に触れる機会が増大したため、競合他社との差別化が困難となっているわけです。さらに2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大によって対面販売が制限され、化粧品・美容業界は大きな打撃を受けました。

このような背景から、化粧品・美容業界では新しい時代に即した経営体制の構築が求められており、デジタル技術の戦略的活用によるDXの推進が重要課題となっている状況です。

化粧品・美容業界のDX事例5選

DX戦略を推進するためには他社の成功事例を学び、その本質を抽出して自社のビジネスモデルに応用することが大切です。ここでは化粧品・美容業界のDX事例5選を紹介しますので参考にしてください。

UX向上・環境配慮にフォーカスした価値の提供|某化粧品会社A

化粧品・美容業界におけるDX戦略の事例として紹介したいのが、AI技術を用いたメーク診断やARによる髪色シミュレーションなど、デジタル技術の特性を生かした新しい顧客体験価値の提供です。ユーザーは多彩な化粧品をオンライン上で自由自在にシミュレーションできるため、店舗に出向かずとも商品の購入によるベネフィットをイメージしやすくなります。

また、こうしたサービスを展開することで、毛束色見本を店舗に並べる必要がなくなる点も大きなメリットです。さらにネットでの先行販売を通じて需要予測の精度を高め、在庫ロスの削減と商品廃棄による環境負荷の低減を同時に実現しています。

専任コンサルタントによるオンラインカウンセリングの実現|某化粧品会社B

新しい時代に即したDX戦略の事例として挙げられるのが、某化粧品会社が提供するオンラインカウンセリングです。これはスマートフォンを通じて専任のビューティーコンサルタントに相談できるサービスであり、カウンセリングの予約やスタッフの指名、商品の購入といった一連の購買体験をオンライン上で完結できます。

このサービスの特筆すべきポイントは、美容部員との深い信頼関係の構築が顧客のロイヤルカスタマー化につながる点です。また、優れたビューティーコンサルタントのカウンセリングを可視化し、顧客からのフィードバックと併せて分析することで、美容部員の総合的なスキル向上にも役立てられます。

データに基づくテーラーメイドな顧客体験の実現|某化粧品会社C

ある化粧品会社はスマートフォンのカメラによる肌分析サービスやオンラインカウンセリングなどのWebサービスを提供し、オンライン上で収集した顧客情報を店頭での接客や商品開発などのオフラインチャネルで活用するといった戦略を展開しています。

この戦略の目的はテーラーメイドな顧客体験の実現です。オンラインとオフラインのあらゆるチャネルを連携し、商品の認知から成約に至るカスタマージャーニーを分析することで、顧客一人一人にパーソナライズされたサービスの導線を設計できます。このようなオンライン・オフラインの垣根を越えたマーケティング手法は「OMO(Online Merges with Offline)」と呼ばれ、DXを実現するために欠かせない施策として注目を集めています。

カウンセリングだけにとどまらないコミュニケーションツールの開発|某化粧品会社D

化粧品・美容業界における重要課題は見込み客の顧客化と顧客のロイヤルカスタマー化であり、そのためにはユーザーとの深い信頼関係を構築しなくてはなりません。その実現に成功したDX事例として挙げられるのが、某化粧品会社が提供する肌分析アプリです。

この肌分析アプリは単に肌状態を分析するだけのツールではなく、店頭同様の丁寧なカウンセリングが可能なコミュニケーションツールであるという特性を備えています。よってそれぞれのニーズに寄り添いながら継続的なコミュニケーションを図れるため、信頼関係の構築と顧客エンゲージメントの総合的な向上が期待できます。

全社的なデジタルトレーニングによるスピード感ある順応|某化粧品会社E

事業領域におけるDXとはデジタル技術の活用による経営改革を意味する概念であり、その実現には組織風土や企業文化の抜本的な変革が必要です。グローバル規模で事業を展開する某化粧品会社では、組織のトップを含む全ての従業員にデジタルトレーニングを実施し、全社的な人材育成を通じて経営体制の変革を推進しています。

また、変化の加速する現代市場に対応するべく、アイデアの着想からプロダクトのリリースに至るスピード感を重視しているのも同社の特長です。全社的なデジタルトレーニングとスピード感のあるプロダクト設計により、自社を取り巻く環境の変化に対して的確かつ柔軟に対応できる組織体制の構築に成功しています。

化粧品・美容業界でDX戦略を推進するためのポイント

化粧品・美容業界に携わる企業がDXを実現するためには、幾つかの押さえるべきポイントが存在します。とくに重要なポイントとなるのが以下の3点です。

OMOを見据えたユーザー体験(UX)の向上

無形商材が軸となるWebメディア運営企業やソフトウェア企業などとは異なり、化粧品・美容業界はあくまでも有形商材を取り扱うビジネスモデルです。そのため、単に販売チャネルをオフラインからオンラインへ移行するのではなく、店舗とECサイトそれぞれのメリットを最大限に生かすような仕組みづくりが求められます。

例えば、某化粧品会社Aの事例のようにバーチャル空間でさまざまな化粧品を試せるサービス環境を構築できれば、これまでにない顧客体験価値を提供すると共に、オンラインとオフラインそれぞれのチャネルで顧客接点を最大化できる可能性が高まります。

パーソナライズされた情報・価値の提供

現代は市場の成熟化と共に商品・サービスがコモディティ化していく傾向にあり、いかにして競合他社にはない付加価値を創出するかが重要課題となります。他方、肌質によってコスメや基礎化粧品の合う・合わないは大きく異なるため、ユーザーにとっては「自分の肌に適した化粧品の発掘」が重要な関心事項です。

オンラインカウンセリングのようなサービスを実施することで、個々に適した化粧品を提供できる可能性が高まります。それによって信頼関係が構築されれば顧客満足度の最大化につながり、顧客のロイヤルカスタマー化と競合他社との差別化を図る一助となります。

日常的かつ継続的な視点に基づくアプローチ

ビジネスにおいて売り上げを拡大する基本的な方法は「新規顧客を獲得する」「顧客単価を上げる」「購買頻度を高める」の三つです。

ただ、新規顧客を獲得できたところで、既存顧客のロイヤルカスタマー化を促す仕組みがなければ顧客単価と購買頻度の向上は見込めません。そこで重要となるのが日常的かつ継続的な視点に基づくアプローチです。某化粧品会社Dの肌分析アプリのように、商品の販売後も継続的なコミュニケーションを実現できれば、顧客のロイヤルカスタマー化を促進すると共に、ユーザーの肌質の変化や新たな悩みなどに対して柔軟に対応できる可能性が高まります。

DXはデジタル技術の活用による変革を意味する概念ですが、それは販売経路をオンライン上のチャネルに移行するといった単純な戦略ではありません。デジタル技術が有する特性を最大限に活用しながら、見込み客や顧客にパーソナライズされた新しい顧客体験価値を創出することが化粧品・美容業界におけるDXの本質です。ぜひ本記事で紹介した企業事例を参考にしながらDX戦略に取り組んでみてください。

まとめ

市場の成熟化に伴って商品・サービスがコモディティ化していく現代では、いかにして差別化を図るかが重要課題です。そのためにはオンラインとオフラインの垣根を越えたマーケティング戦略と、個別のニーズに的確に合致した顧客体験価値の提供、そして日常的かつ継続的な視点に基づくアプローチが求められます。化粧品・美容業界のDXを実現するにあたっては、これらのポイントを押さえながら中長期的な視点でマーケティング戦略を設計することが大切です。

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