EC業界は今後どうなる?市場動向と最新のトレンド

この記事では、EC業界の市場動向と最新のトレンドについて解説します。市場規模とEC化率の上昇、スマホを通じたEC利用の拡大といった最新の動向を紹介し、これから注目するべきトレンドに焦点を当てます。また、今後の課題として集客・マーケティング上の問題やセキュリティ対策に関する課題と対応策をご紹介します。

EC業界の市場規模と最新の動向

市場規模・EC化率は共に上昇傾向

経済産業省が2024年9月に公表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によれば、EC業界の市場規模とEC化率は、BtoCおよびBtoBともに上昇傾向にあります。

BtoC市場の規模は、2019年の約19兆3,000億円から2023年には約24兆8,000億円に達しています。BtoB市場も同様に拡大を続けており、2019年の約352兆9,000億円に対して2023年は465兆2,372億円です。

EC化率(実店舗とECを含む全商取引に対するECサイトでの取引の割合)も拡大しており、BtoC市場のうち物販系分野では2023年のEC化率が9.38%と、2019年の6.76%より大幅に増加しています。BtoB市場においては40.0%で、こちらも2019年の33.5%より増加する結果となりました。なお、BtoB市場のEC化率が高くなっているのは、本統計におけるECの定義の中に電子データ交換(EDI)が含まれているためである点に注意が必要です。

出典:「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」P.5-9(経済産業省・PDF)

スマホを通じたEC利用の拡大にも要注目

さらに注目するべき動向として、スマホ経由のEC利用が急速に増加している傾向が挙げられます。前述の「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によれば、2023年のBtoC市場(物販系分野)において、全てのEC取引のうちスマホ経由の取引が占める割合が58.7%に達しています。2016年には31.9%、2019年が42.4%だったことを踏まえると、ここ数年で飛躍的にスマホ経由のEC利用が拡大していることが読み取れます。

その要因として、スマホアプリのサービス提供が増加している点が報告書内で指摘されています。現在では多くの企業がスマホに実装されている機能を活用したアプリを提供しています。例えば、プッシュ通知を利用して消費者への能動的なコミュニケーションを図ったり、カメラ機能を使ったAR(拡張現実)技術を実装して試着体験を提供したり、二次元コード決済の導入によってよりスムーズな購買体験を実現したりと、新たなEC体験を提供しています。

出典:「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」P.42-43(経済産業省・PDF)

今、EC業界で注目される「五つのトレンド」

拡大を続けるEC業界において現在、注目を集めている技術や施策があります。ここでは特に注目されている五つのトレンドをピックアップして紹介します。

1. D2C・DNVBの増加

D2C(Direct-to-Consumer:消費者直接取引)、およびDNVB(Digitally Native Vertical Brands)は、近年のEC業界において特に注目されているトレンドです。D2Cは、製造者が中間業者を介さず、直接消費者に商品を販売するビジネスモデルを指します。DNVBもD2Cと同様にECチャネルのみを通じて商品・サービスを顧客に直接届けるブランドを指しますが、とりわけ1990年代から2000年代に生まれたデジタルネイティブ世代  を対象にし、ブランド価値の創造と向上に重きを置いているという特長を持ちます。

これらのビジネスモデルは、EC市場規模の拡大やSNSの発達を背景に増加傾向にあります。ブランドはSNSを活用して消費者と直接コミュニケーションを図ることによって、顧客のニーズを把握し、パーソナライズされた商品・サービスの提供を実現しています。

例えば、化粧品ブランドのグロッシエやメンズケアブランドのハリーズなどは、D2Cの成功例として知られています。これらのブランドは、SNSを活用したマーケティング戦略と消費者のフィードバックを製品開発に生かして、急速に成長しました。

DNVBとD2Cとの違いについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

次に注目すべきビジネスモデルDNVBとD2Cの違いとは?

2. O2OからOMOへの変化

従来のオムニチャネルやO2O(Online to Offline)は、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)へと変化しています。

オムニチャネルは、オンラインとオフラインの両方を活用して顧客に一貫した購買体験を提供する戦略です。例えば、店舗で商品を見てオンラインで購入する、またはその逆も可能にするアプローチです。O2Oは、オンラインで集客し、オフラインで販売する手法。オンライン広告を見た顧客が店舗を訪れて、商品を購入するという流れです。

OMOは、オンラインとオフラインとを融合させる新しいビジネスモデルです。両者を区別することなく、いかにより心地良い買い物体験を提供できるかが今後のEC業界で成功するためのポイントです。具体的な事例としては、オンラインで注文し、オフライン店舗で試着や受け取りができるサービスや、店舗内でスマホを使って商品の詳細を確認したり、レジを通さずに決済したりする体験などが挙げられます。

OMOマーケティングについて、詳しくは以下の記事を参照してください。

OMOマーケティングとは? O2O・オムニチャネルとの違いや戦略のコツ

3. AI技術の発展

AI技術の発展により、従来の「検索して商品・サービスを探す」という購買行動が変化することが予測されています。AIを活用したレコメンデーションエンジンやチャットボットといった技術によって、消費者に対してパーソナライズされた商品提案やサポートを提供できるようになるためです。

レコメンデーションエンジンとは、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴を分析して個々の消費者に最適な商品を提案するシステムです。  消費者は検索する手間を省くことができ、自身に適した商品を簡単に見つけられるようになります。

また、チャットボットとは質問に自動で返答するシステムを活用することで24時間体制での顧客対応が可能になり、問い合わせやサポートの質も向上します。

他にもAIを活用した画像認識技術の活用によって、消費者がアップロードした画像から類似商品を検索したり、バーチャル試着体験を提供したりすることも実現可能です。このような新たな購買体験を提供することでECサイトは顧客満足度を高め、リピーターを増やす機会を得られます。

4. 越境EC市場の拡大

前述の「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」では、越境EC市場の拡大についても取り上げられています。日本・アメリカ・中国の3カ国による関係を見ると、2023年の米・中経由の日本における購入額が4,208億円(対前年比6.4%増)であったのに対し、日本経由のアメリカでの販売額は1兆4,798億円(同13.3%増)、日本経由の中国での販売額は2兆4,301億円(同7.7%増)でした。

この調査結果は、日本のEC業界が国境を越えた取引の可能性を広げつつあることを示しています。その一方で、アメリカや中国と比較すると、日本国内の越境EC市場はまだ成長の余地があります。また、国際的な市場での存在感を高めるためには、地域ごとのニーズに応じた商品やサービスを提供することが重要です。

出典:「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」P.10(経済産業省・PDF)

越境ECと日本企業について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

越境ECを活用している日本企業例を紹介

5. ID決済の需要増

ID(Identity Payment)決済とは、事前に登録をしているアカウント情報を使用して決済する手段のことです。代表的なものに、Apple Pay、Google Pay、PayPal、楽天IDなどがあります。これらは、ユーザーの個人情報を安全に保ちながら、簡単かつ迅速な購入体験を提供しています。

ID決済には、国内外を問わず消費者からのニーズが高まっています。スマホの普及に伴ってモバイル決済の利用が急増していることからも、EC業界はID決済の導入を進める必要があります。また、国際的な市場では、異なる通貨や地域に対応するための多言語対応や、地域ごとの法規制に準拠する必要があります。

今後どうなる? EC業界の課題と、これからへ向けた対応策

EC業界の成長が続く中、企業が自社ECを構築し、販路を拡大していく動きはこれからも進展することが予測されます。自社ECの構築・運用にあたっては、特に「集客・マーケティング」と「セキュリティ対策」が課題となりやすく、これらの課題をどのように解決していくかが企業の成功を左右します。

以下では、これら二つの課題の詳細と、取るべき対策について紹介します。

集客・マーケティング上の課題

集客・マーケティング上の三つの課題

ECサイトの数が増加している現在において、多くの企業がECサイトを構築した後に直面するのは、「集客できない」「商品の魅力が伝わらない」「リピーターやファンがつかない」といったマーケティング上の課題です。これらの課題を克服するためには、幾つかの効果的な施策が必要です。

集客の強化
SEOやSNSマーケティング、コンテンツマーケティングなど、多岐にわたる戦略を駆使してターゲットの顧客にリーチする必要があります。効果的なキーワード選定や魅力的なコンテンツを通じて、サイト訪問者を増やすことが重要です。
商品の魅力を伝える
商品・サービスの魅力を効果的に伝えるためには、ビジュアルコンテンツの充実がカギです。実物が伝わるような商品画像や動画を活用することで、商品の価値を視覚的に訴求できます。また、商品の詳細な説明や使用方法を具体的に明示することも重要です。他にもユーザーレビューを設けることで、実際に購入・体験したユーザーからの口コミを活用するという施策もあります。
リピーターの獲得
リピーターやファンを増やすためには、顧客管理を精密に行い、パーソナライズされたPRを実施することが有効です。CRM(顧客関係管理)システムを活用して顧客の購買履歴や嗜好(しこう)を分析し、個々の顧客に合わせたプロモーションや特典を提供することによって、顧客のロイヤルティ向上が見込めます。

例えば、メールマガジンやSNSを通じて特定の顧客層に向けたキャンペーン情報を発信したり、購入後のフォローアップを行って顧客との関係を築いたりする施策が挙げられます。このような取り組みはパーソナライゼーションと呼ばれています。

パーソナライゼーションについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

パーソナライゼーションとは? マーケティング手法と活用事例を紹介

セキュリティ対策における課題

セキュリティ対策における二つの課題

ECを安定的に運営していくにあたって、セキュリティ対策は極めて重要です。顧客の個人情報などを扱うECサイトは、セキュリティリスクに対して万全の対策を講じる必要があります。以下に代表的なリスクとその対策を紹介します。

不正アクセスやデータ漏えいのリスク
ECサイトの運営では不正アクセスやデータ漏えいのリスクを考える必要があります。対策としては、SSL証明書による通信の暗号化や、ファイアウォールでの不正アクセスへの対応、2段階認証の実施など、基本的なセキュリティ対策を強化する必要があります。また、定期的なセキュリティ診断を行い、脆弱(ぜいじゃく)性を早期に発見・修正することも重要です。
クレジットカード情報の保護
クレジットカード情報の保護は特に重要です。クレジット取引セキュリティ対策協議会が策定した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画」では、クレジットカード情報の漏えいリスクを低減するために、カード情報の非保持化やトークナイゼーションと呼ばれる暗号化技術の導入が推奨されています。

出典:クレジットカード取引における セキュリティ対策の強化に向けた実行計画(経済産業省・PDF)

これからのECは、自社に合ったシステムの構築が最重要

市場の拡大が続くEC事業で成果を上げるためには、集客やマーケティングを強化することが求められます。ECと実店舗が一体となったサービスの提供体制や、安定的な運用が可能な仕組み作りなど、立ち上げ段階から自社に適したシステム構築を行うことがポイントです。システム構築に関してお悩みの場合は、国内外を対象としたECの構築から販売管理・顧客管理システムとの連携まで一元的なシステム構築が可能な大塚商会にぜひ一度ご相談ください。

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