Part.2 基調講演「ものづくりエンターテイナー企業としてのDX取り組み事例」 

DX改革のヒントになるものづくりエンターテイナー企業のリアルボイスを公開します。

DXの推進は、企業が将来にわたって競争力を維持し続けるために必要な経営課題の一つです。しかし、DXという言葉自体が独り歩きをしてしまい、逆にDXの推進を難しく考えている企業も多いのではないでしょうか。

株式会社テルミックは、中小企業で認定されることは少ないにもかかわらず、2022年2月に経済産業省が定める「DX認定事業者」に選定されています。製造業のDX化をいち早く実践し、全国から見学依頼が絶えないDX先進企業であるテルミックの取り組みから、DXに着手する方法や実践のヒントを見つけていきましょう。

基調講演 企業紹介

株式会社テルミック

1990年に愛知県刈谷市で創業した、治具部品加工、金型用部品加工、精密部品加工などを行う企業。「ものづくりのエンターテイナー」を経営理念に掲げ、製造業に携わる人たち全てを楽しく、ワクワクさせる会社を目指しており、IT技術の導入やWebマーケティングの強化といったDXをいち早く実践している。中部IT経営力大賞2020大賞(2020年)、あいち女性輝きカンパニー優良企業(2020年)、地域未来牽引企業認定(2020年)、刈谷市ハーモニーカンパニー認定(2020年)、健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定(2022年)、DX認定事業者(2022年)、かりや健康づくりチャレンジ宣言『優秀賞』受賞(2022年)など、数多くの賞や認定を受けており、その躍進の秘密を知りたいと毎年1,000社近くの企業が見学に訪れている。

「ものづくりのエンターテイナー」として積極的にIT化・DXを推進

注目1 営業スタイルの変更

テルミックでは、生産管理グループの営業は外勤をやめて、全て社内に常駐するように変更しました。その結果、外出によるムダな時間やコストが削減できただけでなく、顧客への対応も早くなり、信頼度や受注率がアップしました。

生産管理システムが支える女性活躍

生産管理システムによって案件情報が管理・共有されているため、過去のデータを分析して適切な見積りや受発注ができます。営業スタイルを標準化することによって、製造業になじみの少ない若い女性の内勤営業でも受注がとれるようになり、女性が活躍しやすい環境を構築できました。

Webマーケティングによる新規顧客開拓、既存顧客の深耕拡大

  • * 画像提供:株式会社テルミック

2020年8月に営業戦略チームを立ち上げ、営業活動の全体最適を図りました。SNSやリスティング広告、Webサイトなどを活用したマーケティングを強化することで、新規顧客の開拓や既存顧客の深耕を拡大しています。

注目2 生産管理システムを活用して自社のビジネスモデルを構築

生産管理システムをオーダー開発して、受発注情報・顧客情報・製品情報などを一元管理できるようにしました。その結果、製品情報の「見える化」や情報管理の効率化が実現しました。

部品加工の依頼に対して“見積り~納品”まで一括管理するサービスを確立

テルミックでは、従来、メーカーは、加工工程ごとに複数の外注先に対して、部品加工の見積りや注文の依頼を出さなくてはならず、非常に手間がかかっていました。そこで、テルミックがプラットフォームになり、全工程を一括手配する仕組みを作り上げました。顧客はメール・FAXをテルミックに送るだけで、完成した部品を手に入れられます。この仕組みを作り上げたこともあって、受注実績は56万件を突破し、多くのお客様に選ばれています。

競争の激しい製造業の中で生き残るためには、自社独自のビジネスモデルを持つことが重要です。実際に、テルミックではこの“見積り~納品”まで一括管理するサービスによって競争力をつけ、DXを推進しました。

注目3 モノとヒトの「見える化」そして、IoE化

テルミックでは、位置情報や業務内容、稼働状況など、役職に関係なく全社員の情報の「見える化」に取り組んでいます。

工場やオフィスのあらゆるところで効率化

カメラを配置

社内の至る所にカメラを配置し、モニターにまとめて映し出すことで離れている拠点間の「見える化」を図っています。例えば、ほかの拠点の社員に電話をかける前にそのモニターを見れば、顧客との電話中や不在であることが分かります。また、社内で担当者が席にいるかどうかが分かるので探し回らなくてもよくなり、仕事の効率化が図れます。

社長自ら作成したスタンディングテーブル

テルミックでは以前よりペーパーレス会議を進めています。
会議室には社長が自ら作成したスタンディングテーブルがあり、タッチパネルモニターがはめ込まれています。モニターに図面を出して操作しながら打ち合わせをしたり、勉強会をしたりとさまざまな用途で活用できます。

スタンディングテーブルのタッチパネルで、資料配布も不要になりました。また、会議室にはカメラ付きのホワイトボードが設置されており、ほかの拠点の人ともオンライン会議がしやすくなっています。

社長自ら作成したスタンディングテーブル

  • * 写真提供:株式会社テルミック

社有車・配送車には車両管理システムを導入

社有車や配送車には車両管理システムを導入しています。車両管理システムとは日報自動作成・車両予約・危険運転可視化・リアルタイム位置情報などを管理できるシステムです。GPSで取得した車両の走行情報を全社員に共有しているので、顧客からいつ届くかという問い合わせがあったとしても、大体どのくらいで到着するかを把握して伝えることができます。ムダのない配送ルートの構築により、従業員間での連携も取りやすくなったりと、生産性が大幅に向上し、日報自動作成により、配送の日報を書く手間が省け、事務効率化が図れました。

モノがインターネットにつながるIoTから全てがつながるIoE

テルミックではIoT(Internet of Things)からIoE(Internet of Everything)へ発展させ、全てをインターネットでつないでどこからでも共有できるようにしました。例えば、営業成績はアニメで順位が分かる大きなモニターを設置し、大口受注を獲得すると音楽が鳴るなど、カジノのジャックポットをイメージして作り、楽しく競争してもらう工夫をしています。オンライン会議のツールは2008年から導入しており、現在では朝礼や会議をオンラインで実施しています。

結局DXとは今あるITを利用して会社を、そして縁ある人全てを豊かにすること

DXとは、今あるITを利用して会社を豊かにすることです。製造業の場合で言えば、DXを使ってより多くのことに取り組み、製造業を盛り上げ、会社を豊かにして皆の給料を上げることといえます。自社を豊かにすることはもちろんですが、私たちテルミックは取引先や工場見学に来ていただいた会社などテルミックと縁ある全ての人々に豊かになっていただきたいという思いから、DXのノウハウを公開しています。

まずは足元を見直すことがDXの第一歩

ITスキルを持っている人材がいないから「何をすればいいのか分からない」「DXがなかなか進められない」と思うかもしれませんが、まずは身近なことから始めるのがDXのポイントです。

6Gの時代を見据えて、ネットワーク環境の高速化

4Gから6Gになると、100倍〜400倍の情報量を同じ時間で送れるようになると言われています。2030年は6Gの時代といわれているので、今から準備が必要です。そこで確認しておきたいのが、会社のネット環境です。例えば、LANケーブルは7まであって数字が大きいほど通信速度が高速になります。ハブもギガ対応、メガ対応とさまざまで、Wi-Fiも多台数を同時に接続できるWi-Fi6があります。ネットワーク環境が悪いと、できることが限られてしまうだけでなく、社員の方のストレスにもなりかねません。まずは会社のネットワーク環境を見直すことが、DXの第一歩になります。

共有ツールOffice 365の導入

テルミックではMicrosoftのOffice 365を導入しており、クラウドサービスを利用して社員がさまざまなデータを共有できます。これはDX化の第一歩とも言える取り組みでした。そのほかにも、社内チャットや社内掲示板、電子承認システムといったオンラインツールの活用や、ディスプレイ2画面に加えてビデオ通話用のカメラ・ヘッドセットも全社員に支給しています。

  • * 写真提供:株式会社テルミック

OCRシステムの導入

テルミックでは、OCRシステムを導入しています。従来は、検査梱包(こんぽう)が終わった製品の検査表をスキャンして取り込んだ後に人の手でファイル名を変更していましたが、多い時は1日に800件近い検査表を取り込まなければならず、膨大な時間がかかっていました。しかし、OCRシステムの導入後は検査表をスキャンするだけでファイル名が自動で変更されるようになり、作業時間を大幅に削減できました。

  • * 写真提供:株式会社テルミック

RPAツールを導入して煩雑な業務を自動化

テルミックでは、単純なデータ入力やコピペ・転記作業を自動化できるRPAツールを導入しています。例えば、月に50時間以上かかっていた集計業務を自動化しており、RPAツールが業務時間外に集計した結果を翌朝には社員が確認できるようになりました。

また、バーコードをスキャンすると、多くのファイルの中から該当する図面や工程情報の書類が自動印刷される仕組みを構築し、書類を探す手間や照合させる手間をゼロにすることに成功しました。

参考ページ
製造業でもテレワークできる業務とは? RPA活用による業務改善

IoT導入による工場の「見える化」とは~工場の「見える化」

  • * 写真提供:株式会社テルミック

工場の「見える化」とは、工場の稼働状況や生産実績などをいつでも、どこでも、誰でもすぐに把握できるようにすることです。工場内だけでなく、工場から離れた本社などからも工場の様子を把握できるようにすれば、より効果が高まります。
テルミックでは、無人搬送用ロボットが障害物を避けて、製品を目的地まで自動で運ぶという仕組みを取っています。

人間が運ぶと、移動の途中でどうしても別の作業を行ってしまいがちです。しかし、無人搬送用ロボットは「目的地のコンベアまで運ぶ」ということのみに専念しますので、離れた目的地に物を運ぶ場合はロボットのほうが無駄なく運ぶことが可能なのです。
人間による運搬途中の無駄な作業を削減し、24時間稼働することを可能にするのが、無人搬送機です。

このようにIoTを活用すれば、無駄な作業の削減だけでなく、生まれた時間で生産性や品質の向上が期待できます。
人間の工数を削減し、進化し続けることは製造業の共通課題といえるでしょう。

まとめ

今回は、DX先進企業である株式会社テルミックのさまざまな取り組みをご紹介しました。製造業がDXを推進するうえで、ヒントになる情報が多かったのではないでしょうか。

「製造業に携わる人たち全てを楽しく、ワクワクさせる会社」を目指しているテルミックでは、同じ製造業の企業に向けて自社の取り組みを積極的に発信しています。360度ビューによるVR工場見学や、YouTube動画を通じた情報発信、中小企業のスマート工場化をテーマにしたセミナーなどを行っているので、ホームページからぜひアクセスしてみてください。

株式会社テルミック Webサイト

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