デジタルトランスフォーメーション(DX)がカギをにぎるアパレルの未来。生き残りのポイントをさぐる

情報通信技術の進歩に伴い、あらゆる産業がIT化の恩恵によって飛躍的な発展を遂げました。しかし、産業の発展とともに市場競争は激化の一途をたどり、消費者ニーズも多様化かつ高度化しています。そんな時代背景のなか、アパレル業界に求められているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現です。そこで本記事では、アパレル業界が抱える課題を考察するとともに、DX実現による生き残り戦略について解説していきます。

アパレル業界を取り巻く状況

衣・食・住にあたる産業は、決して失われることのない普遍的な業界とされていました。しかし、時代が変化するにつれて、従来の経営戦略が通用しなくなりつつあります。まずは、近年のアパレル業界を取り巻く状況について見ていきましょう。

低価格化が進んでいる

近年、アパレル業界全体における消費者心理は低価格志向へとシフトしつつあります。世界同時不況といわれる中、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の災害も相まって、ファッションにお金をかける消費者が減少傾向にあるのが実情です。
また、グローバル化によって縫製工程が海外へとシフトし、製造原価が削減されたため、高品質な製品を低価格で提供可能になったのも大きな要因といえるでしょう。

フリマアプリの影響による低迷

情報通信技術の発達とモバイルデバイスの普及によって、フリマアプリのようなリユース市場が拡大しています。このフリマアプリの台頭が、アパレル業界が伸び悩む要因の一つとなっているのです。
フリマアプリは、中古品とはいえ良い商品が安く購入できるため、アパレル業界におけるメインターゲットである若年層を中心に利用者が増加しています。こうした消費者行動の変化が、アパレル業界において強烈な逆風となっています。

消費者の志向の二極化

低価格志向へとシフトしつつあるアパレル業界ですが、ラグジュアリーなハイブランドを求める消費者も一定数存在します。ファッションはトレンドの移り変わりが激しく、製品ライフサイクルの短縮化が顕著な業界です。そのため、トレンド重視のアイテムは安価なものを短いサイクルで購入し、流行に左右されにくいアイテムは高級なものを購入するなど、明確に使い分ける消費者が増加しています。

アパレル業界の課題と問題点

現代日本は人口の減少や少子高齢化など、さまざまな問題を抱えています。こうした社会問題が、アパレル業界にも多大な影響を与えていることは否定できません。ここでは、アパレル業界の課題と問題点について解説します。

消費者の支出の減少と高齢化問題

人口減少と少子高齢化によって市場競争力が低下し、日本経済は戦後最悪の落ち込みとなっています。景気の低迷に比例して消費者の所得も減少しているため、アパレル業界に限らず多くの産業が業績低迷に苦しんでいるのが実情です。
また売上高の低迷には、品質向上によって商品を長く使用可能になったため、購入頻度が低下しているという理由もあります。長期的な観点から見て、日本経済そのものが縮小傾向にあるため、マーケットを海外へと移行する道もあるものの、課題は山積みです。

実店舗の存在意義のゆらぎ

インターネットの発達とデジタルデバイスの普及によって、ECサイトで時間も場所も問わず商品を購入できる社会になりました。アパレル業界も例外ではなく、さまざまな企業が衣料ブランドのECサイトを展開しています。しかしながら、ECサイトの台頭によって実店舗の必要性が希薄化し、業務減少に伴って人件費の調整が困難になるといった課題が顕在化しています。

SPAのビジネスモデルが通用しない可能性

アパレル業界を席巻していた「SPA(製造小売業)」に変化が訪れています。卸売りをせず、製品を自社の小売店で販売するSPA企業は、アパレルビジネスの主流を占めていました。しかし、天候や気温などによっても変動するアパレル需要予測の難しさ、多くの企業がSPA手法を取り入れたことによる商品の同質化などの影響により、最近ではSPA型のビジネスモデルが機能しなくなりつつあります。ITによって、アパレル需要予測の精度をあげたり、企業ならではの工夫を商品に施したりなど、今後SPAを続ける上では対策が必要になるでしょう。

諸外国の台頭による日本の立ち位置の変化

情報通信技術の発展は企業のグローバル化を促進し、さまざまな海外ブランドが日本に進出しました。日本のアパレル市場は国内外ブランドによる群雄割拠の様相となり、競争力に劣る企業が徐々に淘汰(とうた)されていったのです。生産力に優れる中国や米国と今後どのような関係を築いていくのかが、アパレル企業にとっての大きな課題となるでしょう。

DXとともに歩むアパレル業界の生き残り戦略

低迷するアパレル業界に求められているのが、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現です。DXとは最先端のデジタル技術を活用して、企業経営の在り方そのものに変革をもたらす取り組みを指します。ここでは、DXの実現によるアパレル業界の生き残り戦略について解説します。

D2Cビジネスで新たなユーザーを開拓

「D2Cビジネス」とは「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシュマー)」の略称で、主にECサイトを利用することで、中間業者を通さず直接消費者に商品を届けるビジネスモデルです。消費者との心理的距離が近く、潜在需要をつかみやすいというメリットがあります。ブランド独自のスタイルで顧客創造に取り組むD2Cビジネスは、アパレル業界の新しいトレンドとなりつつあります。

サブスクリプションの検討

近年、アパレル業界で普及しつつあるのが「サブスクリプション」モデルです。月額課金制のことで、ルイ・ヴィトンやエルメスなどのハイブランド品を借りられるサービスや、スタイリストが洋服を選定してくるサービスなどが挙げられます。近年、さまざまな業界でWebサービスやアプリケーションのサブスクリプション化が進んでおり、その流れはアパレル業界にも波及しているのです。

より柔軟に、またローコストで事業を拡大できる

最先端テクノロジーを導入することで、生産管理や在庫管理、財務管理などの業務プロセスが効率化され、組織全体の労働生産性の向上に貢献します。また、生産性の向上によってリソースが最適化されるため、人件費や管理費といったさまざまなコストの削減につながるでしょう。DXを実現することで、より柔軟かつローコストな事業拡大が可能となります。

SNSでブランドの価値を上げる

現代ではインターネット利用人口の約80%がSNSを利用しているとされ、特に若年層のSNS利用率は右肩上がりに上昇しています。アパレル業界のメインターゲットである若年層は、テレビや雑誌よりもインターネットから情報を得る機会が多い傾向にあります。例えば、ファッションショーの配信やオンラインでのコーディネート提案など、SNS上で情報発信することによってブランド価値の向上につながるでしょう。

脱アパレル・顧客の体験がブランド付加価値を上げる未来

顧客はブランド志向から、体験や経験といったプロセス志向へと変化しているため、人とモノをつなぐ「ストーリーの創造」が重要になりつつあります。これからの時代において価値を生むのは、「モノ」ではなく「コト」、つまり顧客体験です。そこにしかない価値が大切であり、優れた企業は付加価値の高い顧客体験を提供しています。
例えば、ファッションブランドの「MARC JACOBS」と「VALENTINO」は、Nintendo Switch用ソフト『あつまれ どうぶつの森』とコラボレーションし、それぞれのブランドが公式から出したデザインをゲーム内でキャラクターに洋服として着せることができるという、これまでにない顧客体験を創造しました。世界最大の家具メーカー「IKEA」は、ただ家具を販売するだけでなく、トレジャー施設としても楽しめる顧客体験を提供しています。

アパレル業界は現状低迷こそしているものの、決して未来が暗いわけではありません。こうした既成概念にとらわれない、柔軟かつ創造的な顧客体験を提供することで、アパレル業界にも新たな可能性が切り開かれるでしょう。

積極的なDXでアパレル業界の未来をつかむ

多様化する消費者ニーズや、激化するトレンドサイクルに対応するためには、DXの実現が不可欠です。アパレル業界ではファストファッションやフリマアプリの普及により、低価格志向が進んでいます。このような時代背景のなか、アパレル企業が高い市場競争力を確立するためには、最先端の情報通信技術を活用した経営戦略が欠かせません。今回の記事を参考に、ぜひDXの実現にお役立てください。

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