アパレル業界のマーケティング戦略とは？ 五つの手法と成功例

Webマーケティング

「Webマーケティング」とは、オンライン上のチャネルを介したマーケティング活動の総称です。主な施策として、ランディングページを活用した販売促進やWeb広告による広告宣伝、コーポレートサイトを通じた広報活動などが挙げられます。

短期的な成果の創出には適していませんが、比較的低コストで地理的な制約にとらわれない集客が実現します。後述するSNSマーケティングやコンテンツマーケティングもWebマーケティングの一分野です。

SNSマーケティング

「SNSマーケティング」は、InstagramやX（旧Twitter）などのソーシャルメディアを活用する手法です。店舗スタッフによる、SNSでの最新のファッショントレンドや新商品の情報などのリアルタイム発信が、販売促進や広告宣伝に効果的であることを示す研究データがあります（注2）。

直接的な販売には不向きですが、不特定多数の潜在層や見込み客を対象とした、ブランドの認知拡大を図れる点が大きなメリットです。

アパレル店舗販売員を活用したSNSプロモーションの販売促進効果に関する研究（J-STAGE Webサイト・PDF）

コンテンツマーケティング

「コンテンツマーケティング」とは、ユーザーにとって有益な情報を提供して見込み客を獲得・育成し、購買意欲の醸成や信頼関係の構築につなげる手法を指します。オウンドメディアによるリードジェネレーションや、メールマガジンを介したリードナーチャリングなどが代表的な施策です。

短期間での成果は期待できませんが、コンテンツが資産として蓄積されるため、中長期的に安定したリードを獲得できるメリットがあります。

カスタマーマーケティング

「カスタマーマーケティング」は、既存顧客との関係性を強化し、顧客ロイヤルティの向上を促進する手法です。代表的な施策として、購入履歴に基づく個別的な提案やパーソナライズされたキャンペーン配信、商品の共同企画や限定イベントの招待などが挙げられます。

顧客一人一人に合わせたアプローチには相応のリソースが必要ですが、パーソナライズドオファーによって、顧客満足度の最大化に寄与し、LTV（顧客生涯価値）の向上が期待できます。

オムニチャネルマーケティング

「オムニチャネルマーケティング」とは、実店舗やEC、モバイルアプリ、カタログなどの複数のチャネルを統合する手法です。例えば、ECと実店舗を横断したポイントの管理や、ECの在庫を活用した店舗への商品出荷・補充など、オンラインとオフラインの垣根を超えた購買体験を提供できます。

ただし、実店舗とECの在庫情報や顧客情報を統合する必要があり、ITインフラを構築するハードルが高い点がデメリットです。

アパレル業界必見！ オムニチャネル戦略でデジタルトランスフォーメーション（DX）を実現

オムニチャネルに必要な在庫管理とは？ システム選びのポイントも解説

“UGC”を活用したマーケティングで自社コンテンツも充実化

A社は、「UGC」と呼ばれるユーザーが制作したコンテンツを活用するアンバサダーマーケティングを推進している企業です。あるキャンプブロガーが、自社製品である溶接用ヤッケを紹介した投稿をきっかけに売り上げが急増しました。

これを起点に自社製品の愛用者を公式アンバサダーとして起用し、ユーザーのメディアでアイテムを紹介してもらう仕組みを整備しました。その結果、広告感が薄い自然なPRが期待できると同時に、アンバサダーの写真や動画を自社メディアに活用して、コンテンツの充実化を図ることに成功しています。

会員証をスマートフォンアプリに変更し、顧客とのコミュニケーションを改善

アッシュコンセプト株式会社では、店舗とECの顧客情報の管理体制が統一されておらず、顧客の属性や購買履歴などがサイロ化している状態でした。また、紙媒体のDM発送作業による店舗スタッフへの負担や、郵送による情報のタイムラグが課題として挙げられていました。

これらの課題を解消すべく、ポイントサービス付きの会員用アプリをリリースします。POSシステムやCRMを連携して顧客情報を一元管理するほか、会員用アプリを介して、新商品やフェアの案内などを一斉発信できる体制を整備しました。その結果、1,000人から5,000人以上へと会員登録者数を増やすことに成功しています。

『ApaRevo』と『スマレジ』を組み合わせて業務変革

市場調査や競合調査を十分に行う

マーケティング活動を推進する際は、市場や競合他社の動向を調査し、勘や経験などの曖昧な要素に依存しない戦略を立案しなければなりません。

代表的なフレームワークである「3C分析」では、市場の将来性や需要を分析する「Customer（顧客）」、競合他社の市場占有率やプロダクトの特徴を評価する「Competitor（競合）」、自社製品の長所・短所や経営資源などを分析する「Company（自社）」の3要素に基づいて戦略の方向性を定めます。

ファッショントレンドを分析する

アパレル企業におけるマーケティング戦略の重要課題は、トレンドの把握です。ファッションのトレンドは移り変わりが早いため、常に最新の流行を把握しなければなりません。

従って、ファッションショーやストリートスナップ、ファッション系インフルエンサーの動向などを分析し、消費者の関心が向かう先を理解する工程が必要です。これにより、データ分析を起点とする需要予測や、トレンドを先取りしたマーケティング戦略の立案・策定が実現できます。

施策の効果を評価する

マーケティング戦略は、一度の実践で終わらせるのではなく、継続的な改善が求められます。PDCAサイクルの「Plan（計画）」→「Do（実行）」→「Check（評価）」→「Action（改善）」を回し続けることが望ましいです。

特にECやランディングページなどのデジタルチャネルでは、PVや滞在率、直帰率、スクロール深度、検索流入キーワードなどを調査する工程が欠かせません。そして、ユーザー動向を多角的に分析し、その洞察に基づいて戦略の修正・改善を図ることで、コンバージョン率の向上が期待できます。

トレンドの移り変わりが早いアパレル業界では、市場の動向や顧客ニーズの変化に対する、即時的な対応が不可欠です。そのためには、市場調査や競合分析を実施すると共にトレンドの潮流を捉えつつ、データに基づく継続的な改善を図ることが求められます。これにより、顧客ニーズの発掘とブランド価値の向上に寄与し、市場の競争優位性を確立する一助となるでしょう。