東大×大塚商会 対談セミナーレポート

経営者がシステム検討する前に考えておくべきこと

ものづくりの企業では生産管理などのシステム導入が進んでいますが、一方で期待どおりにその導入効果が上がらないという実態も課題になっています。その課題解決策を見いだすため、東京大学 先端科学技術研究センター 研究顧問 西岡 潔氏をお迎えし、「スピード経営で競争を勝ち抜く! 東京大学 先端研 研究顧問が語る『経営者がシステム検討するために考えておくべきこと』」をテーマに座談会を開催しました。

プロフィール

西岡 潔 氏(東京大学 先端科学技術研究センター 研究顧問)

2012年、東京大学 先端科学技術研究センター 特任教授に、2017年から同研究顧問、愛媛大学客員教授に就任。多くの企業経営改革や人材育成、生産管理やビジネスプロセスモデルの革新を指導すると共に、九州大学、岐阜大学などの大学・大学院において日本の将来を担う若手エンジニアの育成に精力的に取り組んでいます。

酒田 裕之(株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ グループ長 部長代理)

基幹業務システムの営業を経て、製造業に特化した営業支援、マネージャーを35年間務め、2004年に生産管理システムの「実稼働主義」を提唱。現製造特化チーム(製造SP)の基盤を作りました。現在、製造SPの責任者に従事。チーム一丸となってお客様の実稼働をサポートしています。

柵山 英之(株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SP1課 課長代理・セールスリーダー)

大塚商会で製造業のシステム導入における問題解決策を知り尽くした専門組織「製造SP」において営業を担当。大塚商会に転職する以前は、製造業にて生産技術関連を手掛け、生産設備の製作、PLC(Programmable Logic Controller)を駆使した開発などを通じてFA(Factory Automation)に精通していました。その経験を生かし、現在は主に生産管理システムを活用したIoTソリューションを展開しています。

  • * 肩書きは2018年12月時点のものであり、閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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全体最適で実現するスピード経営

企業の差別化を図るためのスピード経営。その実現に向けての新しい経営資源の考え方、工程構造別のスピード化のポイントなどについて紹介します。

「スピード経営」と「実稼働主義」の組み合わせ

柵山:本日は「スピード経営で競争を勝ち抜く!東京大学 先端研 研究顧問が語る『経営者がシステム検討する前に考えておくべきこと』」をテーマにお話を伺います。まずは東京大学の先生と大塚商会がかかわりを持つようになった経緯についてご説明ください。

酒田:大塚商会の製造SPというグループは、かれこれ14年前に発足したプロジェクトから発展しましたが、その発端は、製造業のお客様が運用されている生産管理システムに課題があるということでした。ほとんどのお客様が、期待どおりの効果が上がっていない、当初の目的が実現できていないというお悩みを抱えていました。この原因は何かを考え、課題解決をお手伝いできないかということでプロジェクトが立ち上がりました。この趣旨をある会合でご説明したところ、出席されていた西岡先生から「全くそのとおりだ!」とご賛同いただき、それをきっかけとしてお付き合いさせていただいています。

柵山:製造SPが掲げている「実稼働主義」という言葉は酒田さんが考えられたとのことですが。

酒田:そうですね。システムを稼働させたら、そこで終わりではなく、その導入目的が実現できること=実稼働と定義して、そこまでお手伝いさせていただきたいという思いが込められています。

柵山:その会合は私も参加していましたが、大勢の企業様が集まる場で、「簡単じゃない」と酒田さんが発言されていて、そこで共感された西岡先生も同様に「簡単じゃない」とおっしゃり、意気投合しましたね。

西岡氏:私は社内外のさまざまなシステム活用状況を見てきましたが、効果的に稼働していないという例は山のようにあります。そうした経験があったからこそ「実稼働主義」という言葉には大変驚きました。せっかくコストを投入してシステム化したのだから、多少効果的ではなくても「それなりにうまくいっています」というようなことを皆さんおっしゃいます。しかし、よく見ると本来狙っていたとおりのものができていないケースが数多くあるのです。そこで大塚商会さんは実際に効果を上げるように稼働するまで責任を持つという思いが「実稼働主義」という言葉に込められていると感じ、興味と関心を抱きました。

「人」「モノ」「金」に「情報(ソフト)」「時間」を加えた新経営資源

柵山:「スピード経営」の西岡先生と「実稼働主義」の酒田さんという組み合わせになりますが、「スピード経営」とはどのような取り組みであるかご紹介ください。

西岡氏:経営層の皆さんは「人」「モノ」「金」をどのようにやりくりするのかということが経営の基本になると認識されていると思いますが、この時代これだけではいい経営を行うことはできません。私は1997年、新日鐵の工場長に就任しましたが、そのときに「人」「モノ」「金」に加えてさらに二つ重要な経営資源があると考えました。一つは「情報(ソフト)」です。「モノ」は製品とか設備を言いますが、工場の中をいかにスピーディーに製品を流すのか、そのためにいかに上手に設備を使いこなすのか、ということが極めて重要です。今はIoTやICTが注目される時代になっていますが、IoTやICTはあくまでも道具、手段に過ぎません。単なる手段であるこれらを導入すること自体が目的になってしまっているケースが多いことがとても危惧されます。情報(IoTやICT)をうまく使って「モノ」を上手に効率的に制御するシステムを作り上げることが重要なのです。そしてもう一つの重要な経営資源は「時間」だと思っています。「時間が大事ではない」という人はいませんし、「早くやれ」「急げ」と言わない上司や経営者はいないでしょう。しかし、どうすれば早くできるのかということまで言える人は多くありません。つまり時間は大事だと思いながら、多くの場合、時間に追われて仕事をしているというわけです。ここで大事なことは、時間を経営資源として考えるということです。経営資源として、時間を手のうちに入れて制御することができてはじめて、工場全体のスピードを上げ、競合他社との差別化を図ることが可能になります。

柵山:昔から言われている「人」「モノ」「金」という経営資源に対して新経営資源といえますね。

西岡氏:はい。その新経営資源を生かす方法を考えるために、まずはものづくり会社の基本構造について説明したいと思います。ものづくりの会社には「製造」「研究開発」「営業」の三つの仕事があります。こうしたものづくり会社にとっての経営とは何かと質問すると、いろいろな答えが返ってきます。しかし、私の中では20年前からその答えは変わらず、「全体最適をいかに実現するか」が経営であると考えています。どんなに強い製造現場を有している会社であっても、販売が弱ければ利益にはつながりません。あるいはどんなに優れた研究開発力があっても、マーケットで受け入れられない商品は売れないし、製造現場に問題があれば利益を生み出すことにつながりません。つまり「製造」「研究開発」「営業」について個別の最適化を行っても会社の利益にはならないのです。当然ながらそれぞれにおいては部分最適を目指して頑張る必要はありますが、それらを全体として最適化することによって初めて利益の上がる会社になります。我々は、どうしても部分最適を図ろうとする傾向があります。例えば50の設備があれば、その50の設備(プロセス)それぞれの最適化、スピードアップ、能率向上には取り組んでいますが、それぞれの設備が最適化されただけでは、コストは削減できるものの、工場全体のスピードが上がることにはつながりません。コスト改善という目的であれば部分最適で済みますが、工場全体のスピードを上げる、スループットを最大化するという目的では、50の設備(プロセス)を連動させてうまくコントロールする全体最適の取り組みが必要になります。そしてそのためには生産管理のシステム活用が不可欠です。

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全体最適で実現するスピード経営

  • 「スピード経営」と「実稼働主義」の組み合わせ
  • 「人」「モノ」「金」に「情報(ソフト)」「時間」を加えた新経営資源

スピード経営実現に欠かせないシステム導入を成功させるために

  • システム導入の必要性
  • システム導入に成功する理由と失敗する理由

経営に役立つシステム導入とは

  • 企業が儲かり、働き方改革を実現できるシステム導入
  • 大きなメリットをもたらすパッケージ活用
  • IoTを活用して機械から正しいデータをリアルタイムに取得

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