鞄・バッグ業界のEC化~市場動向とシステム構築の課題点

近年、EC(電子商取引)はあらゆる業界で成長を続けており、鞄(かばん) ・バッグ業界も例外ではありません。ユーザーが通販で好みの商品を選んで購入するのが当たり前になった今、企業はEC化に向けてどう対応していくべきなのでしょうか。本記事では、鞄・バッグ業界における市場の傾向や、Webサイトを使った通販システム構築の課題について解説します。

EC化率は? 鞄・バッグ業界におけるEC市場の動向

衣類・服飾雑貨など のEC化率は上昇傾向

経済産業省の調査によると、衣類・服飾雑貨業界のEC市場は近年、着実に拡大しつつあります。2023年(令和5年)の日本国内のBtoC EC市場全体の規模は24.8兆円に達し、前年比で9.23%増加しています。

衣類・服飾雑貨分野においても市場規模は拡大しており、2022年は2兆5,499億円(前年比5.02%増)、2023年には2兆6,712億円(前年比4.76%増)となりました。EC化率も上昇傾向にあり、2022年の21.56%から2023年には22.88%に達しています。インターネットを通じた購買が消費者においても一般的になりつつあり、衣類・服飾雑貨のオンライン通販は今後も成長が期待できる分野です。

参照元:令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省Webサイト)

鞄業界全体の市場規模も拡大。EC市場も活発に

ECを含む、鞄業界全体の市場規模も拡大傾向にあります。矢野経済研究所によると、2022年度における国内鞄・袋物小売市場規模は、前年度に比べ24.6%増の1兆3,255億円となり、特に高級ブランドバッグや結婚式などオケージョン用のバッグ、エコバッグの売り上げが伸びており、ビジネス用リュックサック の需要も堅調に推移しています。また、原材料価格の高騰に伴う商品単価の上昇も、売り上げ拡大の一因と考えられます。

国内外の旅行需要の回復に伴い、2022年度の旅行鞄市場は前年度比27.5%増となりました。インバウンド需要の拡大により、旅行先でお土産を入れるために一人旅向けの小型スーツケースや抗菌・抗ウイルス機能のついた キャリーケースを買う旅行客が増えています。

EC市場においても旅行鞄の拡大が顕著です。新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に需要が落ち込んでいたスーツケースやキャリーバッグは、旅行需要の回復と共に 大きく市場を拡大しています。ECデータラボによると、大手ECモールでは2023年1~3月にスーツケース・キャリーバッグの売上が前年同期比280%と大幅な成長を見せました。

さらにリモートワークの普及が続く中でも、オフィスカジュアル化に対する需要からビジネスバッグの市場規模は縮小しておらず、リュックサックなどのカジュアルなアイテムが人気を集めています。このように、消費者ニーズへの対応や、商品ラインアップの多様化の影響もあり、鞄業界だけで見てもEC市場は拡大傾向にあります。

鞄メーカーがEC化に取り組む四つのメリット

業界全体でEC化が進む今、鞄メーカーがEC化に取り組むことで主に次の四つのメリットを得られます。

1. エリアや時間の制約がなく、販売機会を広げられる

EC化によって店舗の立地や営業時間に縛られず、24時間365日いつでも商品の販売が可能です。販売機会の増加により、toB、toCともに売上アップや新規顧客の獲得、リピーターの増加が期待できます。国内はもとより海外からの注文も受け付けられるため、海外拠点を作るのが難しい場合でもグローバルに取引できるのもポイントです。

セールやキャンペーンなどのイベント開催時や、季節商品のように短期間の販売でも、ECサイトを通じて告知・販売すれば全国の顧客にアプローチできます。

顧客にとっても、都合のよい時間に手間をほとんどかけずに購入できるのは魅力的であり、顧客の利便性の面でもECサイトの販売は店舗に比べて有利といえます。

2. デジタルシフトで業務効率化やコストカットが実現する

従来、鞄の卸売企業 であれば電話やFAXでの注文対応が一般的でしたが、ECによって業務がデジタル化され、効率化を図れます。例えば販売管理システムとECとを連携することで、 複数のカラーバリエーションがある鞄でも在庫確認が容易になり、各カラーの在庫や店舗ごとの在庫を瞬時に把握できます。注文や在庫管理がオンラインで完結するため、二重入力などのヒューマンエラーやトラブルの減少、業務のスピードアップが期待できるでしょう。

また、実店舗に比べて大幅な運営コストの削減も可能です。EC化に伴う初期投資は必要ですが、代わりに実店舗の賃料や光熱費、人件費といった維持コストを削減できるため、長期的には大きなコストカットにつながります。コストカットした分、利益率の向上が見込めるでしょう。

3. ブランドの本質的な課題やニーズの把握につながる

ECサイトではアクセス履歴などの販売に活用できるデータがサイトに残るため、実店舗よりも多くの顧客データを収集しやすく、ブランドの本質的課題やニーズの把握に役立ちます。例えば 、顧客それぞれのアクセス解析データからアクセス履歴や各商品ページの滞在時間を調査すれば、どのような商品がいつ、どのような層に人気があるのか、一方でどの商品が不人気なのかを容易に把握できます。これらのデータを基 に商品ラインアップや価格設定、アプローチ方法の見直しが行えるため、ブランドの競争力向上につながります。

また、ECサイトを通じて顧客の動向を探ることで、顧客ロイヤリティの向上が図れるのも覚えておきたい点です。例えばECサイトでは顧客に対するアンケートも容易に実施できます。また、鞄の修理依頼や、各種問い合わせへの対応といったアフターサービスも提供しやすくなります。顧客との直接的なコミュニケーション機会を多く持てるため、顧客に寄り添った対応ができればブランドとしての魅力は一層高まります。

4. “オムニチャネル化”で実店舗との相互送客も行える

ECサイトで近隣店舗の紹介をしておけば、商品をチェックした後 、実際の商品を確認するために実店舗へ足を運ぶ顧客の増加が期待できます。つまり、ECサイトと実店舗との連携を強化することで、双方からの顧客誘導が可能になります。一方で、店舗での購入体験がオンラインへアクセスするきっかけとなり、以後は手軽に注文できるECサイトでリピート購入するケースも考えられます。

ほかにも、ECサイトで注文した商品を実店舗で受け取れるサービスや、近くの店舗の在庫を確認できるサービスなど、ECサイトと実店舗を相互に利用するきっかけとなるパターンは数多くあります。

このように、顧客との接点をオムニチャネル化していくことで、ECサイト、実店舗の関連性が強まり、相互送客が可能になります。売上の向上だけでなく、ブランドの統一感や一貫性が顧客に伝わることで、ブランディング効果も期待できるでしょう。

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鞄・バッグ業界のECサイト構築時によくある課題

メーカー・顧客ともに利便性が高いECサイトですが、実際に構築する際は、鞄・バッグ業界にありがちな課題にも留意する必要があります。

実店舗とECサイトの在庫情報が連携できていない

ECサイトを十分に活用するには、実店舗との連携が必要不可欠です。Webサイトを構築しただけでは実店舗との情報の一元化ができていない状況では、運用に非効率を生む可能性があります。

例えば、在庫の連携ができていないことによりECサイト上で「在庫切れ」と表示されてしまうことで、本来販売できたはずの商品が売れず、販売機会を逃してしまうことがあります。また、在庫の現状を把握できていないと、過剰在庫や欠品リスクが増加し、コストがかさむケースも考えられます。各チャネルでの在庫管理が煩雑になり、業務ミスやオペレーションの複雑化を招く可能性も考慮しなくてはなりません。

もし、あらかじめ各チャネルの在庫情報を一元化できていれば、リアルタイムで在庫状況を把握できるため、商品の欠品を防ぎ、販売機会を最大限に生かせます 。適切な量の在庫確保によりコストを正常化できるほか、在庫の数や保管場所が明確になることでオペレーションもスムーズに進むでしょう。

ECと店舗の在庫は一元化すべき? これからの在庫管理

PCやインターネットを使った注文に抵抗のある取引先も多い

鞄・バッグ業界ではEC化が増加傾向にありますが、特に卸売業者の取引先には、PCやインターネットを使った注文に抵抗のある企業がまだ多いのが現実です。せっかくECサイトを構築しても、活用されないのでは意味がありません。

オンラインでの受発注へスムーズに切り替えるためには、PCに不慣れな担当者でも簡単に利用できるシステムの構築が重要です。例えば、スマートフォンやタブレットからでも手軽に注文ができるシンプルなインターフェイス のシステムを構築するとよいでしょう。ECサイトでの受発注が従来の方法よりももっと簡単かつ便利であると認識してもらうためにも、導入のハードルを下げる意識がEC化成功への鍵となります。

ECサイトをうまく活用している企業の事例

最後に参考として、鞄・バッグ業界でECサイトを構築し、マーケティングや自社のブランディング、業務効率化にうまく活用している企業の事例を幾つか ピックアップして紹介します。

EC運用の内製化でブランド力を強化

老舗の革製品メーカーは、ECサイトの運用を内製化することでブランドパーソナリティー を維持しています。以前はECモールへ出店し販路を確保していましたが、ECモールではデザインに制約があり、他店と同じ形式で表示されるため、自社の製品のブランディングに最適とは言いにくい 状況でした。

そこでECサイトを自社運営に切り替え 、SNSも活用することでSNSからの流入を狙い、効果的にユーザーを獲得しています。同社の鞄は職人の手仕事により丁寧に制作されたものばかりのため、ECサイトもまたこだわり抜くことで、統一感を生み出し、ブランドの世界観を魅力的に伝えられるように工夫しています。

業務システムを連携。一元管理で業務効率化を実現

ランドセルやスーツケースを製造・販売する株式会社協和では、もともとは別々に管理していたEC管理・運用を含む各業務システムをアパレル向けの販売管理システム「ApaRevo」とその関連ソリューションで一元管理できるように再構築し、業務効率化を実現しました。

同社は自社ECのほかに楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングなど複数のECサイトに出店していたため、ECサイト一元管理システム「ネクストエンジン」の導入により、各EC店舗の管理一元化に成功しています。

さらに得意先とのやり取りには、EDIシステム「EOS名人.NET」、工場とのやり取りにはBtoB向けのWeb受発注システム「MOS」を活用することで、オンライン受注も迅速かつ低コストに対応できるようになったのがポイントです。

事例についてさらに詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。

各種システムを統合化して業務効率を向上

鞄・バッグ業界のECサイト化には、実店舗とECサイトの在庫情報の連携などの課題もあります。しかし、ブランディングや業務効率化に成功している企業もあり、多くのメリットが期待できます。

ECサイトの活用や効率化支援は、大塚商会へご相談ください

近年、鞄・バッグ市場でもEC化が進んでいます。Webサイト構築によって販売機会が拡大し、コスト削減や競争力強化にもつながります。多くのメーカーにとってECサイトの活用は急務です。

オンラインの活用やそれに伴う効率的な業務システムの再構築を検討する際は、業界ならではの商習慣に対応する必要があります。大塚商会は、鞄・バッグ業界に合わせた柔軟なシステム連携やカスタマイズが可能で、サポートも充実しています。鞄・バッグのメーカーに導入実績もありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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「ApaRevo」はアパレル業界やファッション業界特有の業務をトータルでサポートする販売管理システムです。色サイズ別管理はもちろんのこと、マルチチャネル販売への対応や、リアルタイムな売上・在庫情報と多彩な分析機能により、販売機会損失や不良在庫を抑止し、企業の体質強化と売り上げアップを実現します。また、POSやEC、EDIなどとのシームレスな連携が実現します。

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EDIシステム EOS名人.NET

「EOS名人.NET」は得意先のオンライン受注への要請に応えるためのソフトウェアです。データの送受信だけでなく、データの訂正や緊急発注入力、納品書や一括納入明細書、ピッキングリストの発行など、EDI業務全体をカバーします。

BtoB Web受発注システム MOS

「MOS(Mobile Ordering System)」はクラウド型のモバイル受発注システムです。Webブラウザーを閲覧できるスマートフォン、タブレット端末、PCでの利用が可能。基幹業務システム「SMILE 販売」と「MOS」との連携で取引先の発注業務をモバイル発注に切り替えることで、これまで人がFAXや電話などで受け付けし、手作業でデータ化していた受注業務の手間をなくすことができます。

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