アタリマエの否定から始めるDXの取り組み

早くからICT活用に取り組む自治体が、民間企業のDX担当者によるセミナーで職員のマインドセットを変革

大阪府堺市 導入事例

官公庁・自治体1,001名~製品の導入・活用支援営業・業務プロセス効率化

いち早く庁内業務のICT活用を推進してきた大阪府堺市。満を持したDX推進に際し課題として浮上したのが、既存の業務改善にとどまらないデジタル活用を前提としたマインドセットの変革だった。セミナー形式で民間企業のDX先進事例を当事者から学ぶ取り組みは、その実現に大きな役割を果たしつつある。

  • 自治体DX

大阪府堺市

導入先の概要

業種
地方自治体
事業内容
行政
従業員数
5,431名(2022年4月現在)
ホームページ
https://www.city.sakai.lg.jp/

導入の狙い

  • 利用者や職員のメリットまで考えた業務全体を見直せる人材を育成したい
  • DX推進に向け、職員のマインドセットを変革したい

解決策

  • DXを先進的に取り入れる民間企業の担当者を招いた腹落ちするセミナーを開催

導入したメリット

導入システム

製品カテゴリー製品名・型番お問い合わせ
 DXマインドセット醸成セミナー-

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導入事例詳細

ICT活用の先進自治体が直面した、職員間の意識のズレ

大阪府の中南部に位置する政令指定都市、堺市の人口は約81万人。府下では大阪市に次ぐ規模を持つ同市は、世界最大級の墳墓である仁徳天皇陵古墳を含む世界遺産「百舌鳥(もず)・古市古墳群」などがあり、歴史遺産でも広く知られる。意外なことに、古墳群をはじめとする地域の古代史は、現在の堺市の産業に大きな影響を与えている。大規模な墳墓の構築には、鋤(すき)や鍬(くわ)を鍛造する技術が不可欠なため、仁徳天皇陵古墳の造成では全国から鍛冶職人が集められた。その際にこの地に根付いた鍛冶技術集団の存在がこの地を発展させ、戦国期の火縄銃の大量生産、さらには今日の自転車産業などで世界に知られるものづくりの集積地につながったと考えられることがその理由だ。

また、市の南側に広がる泉北ニュータウンは高度経済成長期の住宅需要に応えるため、大規模な計画的市街地として整備され、1967年のまちびらき以来、日本を代表する大型ニュータウンとして成長を遂げてきたが、入居者の高齢化や働き方、買い物などの人々のライフスタイルや価値観の変化などの社会環境の変化に直面している。同市は現在、泉北ニュータウンの活性化や中小製造業の支援に積極的に取り組んでいる。

ICTイノベーション推進室 室長 中井 忠氏

堺市は現首長の旗振りの下、2019年以降、自治体業務や市民サービスへのICT活用を積極的に推進してきた。ICTイノベーション推進室 室長の中井 忠氏はこう説明する。

「民間に比べて地方自治体がICT活用に後れを取っていることは明らかです。そうした状況を踏まえ、現在の首長が2019年に設立したのが、私たちが所属するICTイノベーション推進室です。堺市役所でICTをフル活用させて市民サービスを向上していきたいという想いを持った職員も募って設置しており、庁内各部署のICT化を支援することが主な役割です」

全国の自治体に先駆ける形で紙資料のデジタル化に代表されるデジタイゼーションの取り組み、またオンライン化やRPA活用に代表されるデジタライゼーションのプロセスを順調にたどってきた堺市は、次のプロセスとして、それらの有機的な融合という新たな段階に立っている。国主導で進む行政DXも追い風に、2022年4月にはICTイノベーション推進室内にDX企画担当と名付けられた新部署を創設。庁内の既存システムの融合やDX推進を支援する取り組みを開始している。

先進的なDX企業の担当者を講師に招いたセミナーを実施

ICTイノベーション推進室 主幹 江本 依子氏

こうした中、新たな課題として浮上したのが、実業務を担う原課とDX企画担当の認識のズレだった。DX企画担当職員で今回のセミナー実施を企画したICTイノベーション推進室 主幹の江本 依子氏はこう振り返る。

「昨年のチーム立ち上げ以来、多数の部署からICT活用に関する相談が寄せられていますが、大部分が既存業務を特定のツールに置き換えたいというデジタイゼーションやデジタライゼーションにとどまる内容でした。確かに業務は省力化される可能性がありますが、市民の利便性向上を含め、費用対効果が十分であるかどうかについては疑問が残ります。庁内全体がDXに取り組むためには、まずマインドセットを変えることが必要ではないかと考えるようになりました」

マインドセット変革の手段としてICTイノベーション推進室が注目したのは、先進的なDX企業の担当者を講師役としたセミナーの実施だった。

「以前から取引がある大塚商会さんとの対話の中で、民間企業の先進的な取り組みから学ぶというアイデアが浮かび上がりました。民間企業に着目した理由は大きく二つあります。一つは自治体規模の違いもあり、現時点では先進的な行政DXの事例をそのまま本市に当てはめるのは難しいという点です。もう一つは、DXに関しては民間が進んでいるという現実です。マインドセットの変革において、担当者自身に民間の先進的な取り組みをご説明いただく機会を設けることは、極めて大きな意味を持つと判断しました」(中井氏)

ただし、民間企業のDX担当者を講師にしたセミナーだけでは行政DXの全体像は理解できない。そこで大塚商会に協力を仰ぎ、行政DXの概念や考え方を解説するセミナーとの二本立てで実施されることになった。

立場を越え、民間企業のDX担当者の言葉に共感

堺市が大塚商会の協力を受け2023年3月に実施したセミナーには、DX企画担当をはじめとするICTイノベーション推進室の職員が参加した。まずはサポートする側のマインドセット変革を確実に行う必要があると考えたことがその理由だ。

ANAシステムズ フィールドITサービス部の下村 亮氏による、国内線自動チェックイン機の廃止に至るDXの取り組みについて、当たり前を否定する大事さをお話しいただいた

そして、民間企業の先進DX事例として講師に招いたのは、スマートフォンによる搭乗手続きをはじめとするANAのDX推進を支えるANAシステムズ株式会社の2名の社員だった。

まずは大塚商会から、世界における日本の現状と最新のデータを基にした未来予測から、迅速な変革の必要性を説明。大塚商会が取り組んだ具体的な行政DX例として、とある自治体における新型コロナワクチン接種の情報登録業務をリデザインした事例を通して、当たり前を否定する重要性を説いた。

ANAシステムズ フィールドITサービス部 部長の菊池 範幸氏には、ANAグループが最優先に大事にしている安心・安全のマインドと、その働き方についてご紹介いただいた

そして、民間企業の先進的なDX事例として、ANAシステムズ株式会社のフィールドITサービスに所属する下村 亮氏と菊池 範幸氏が登壇。国内線の自動チェックイン機を廃止するに至ったDXとしての考え方とその過程、またANAグループとして最優先にしている安心・安全をマインドにした働き方について解説された。

今回のセミナーで強調されたキーワードは、「アタリマエを否定」して「なぜ?」「どうして?」「必要?」か、だ。単にデジタルツールに頼るのではなく、業務自体を根本から見直し、利用者と職員にとって価値のある仕組みを徹底的に考えたうえでリデザインすることこそがDX推進であることを、このセミナーを通して講師陣は強く訴えた。

ICTイノベーション推進室 阪井 志帆氏

セミナーを受講したICTイノベーション推進室の阪井 志帆氏は、セミナーに参加した意義が大いにあったと振り返る。

「今回のセミナーは、この1年間に手探りで取り組んできた行政DXの認識を深めるうえで大きな役割を果たしたと感じています。ANAシステムズさんのお話で強く感じたのは、全員が同じ方向を向くことの重要性です。また安心・安全を最優先する前提のもと、上司や部下を意識することなく意見を出し合える組織文化がDX推進において大きな役割を果たしたことも強く印象に残りました」

ICTイノベーション推進室 主査 前田 隆行氏

また、ICTイノベーション推進室 主査の前田 隆行氏は自身の理解について次のように説明する。

以前はDXに難しさを感じていましたが、セミナーを受講することで苦手意識は薄れたと感じています。異動前にマイナンバーカードの交付に携わってきた経験を生かし、今後はマイナンバーを起点とした業務の利便性や効率性を積極的に考えていきたいですね」

ICTイノベーション推進室 DX企画担当課長 甲田 裕紀氏

同じく、ICTイノベーション推進室 DX企画担当課長の甲田 裕紀氏は次のように語る。

「私はこれまで会計監査の部署に在籍し、単に数字を追うだけでなく、事務手続きの妥当性に関する監査なども行ってきました。その中で強く感じたのが、なぜ必要なのか担当者自身も説明できない形骸化した手続きの多さでした。それだけに『なぜ、どうしてそれが必要なのか常に問いかけながら業務に向き合ってきた』というANAシステムズさんの言葉は、とても強く印象に残りました」

全庁的なDX推進でも、セミナー活用を検討

マインドセット変革を目的としたセミナーの効果は、主催者側も高く評価する。

「民間企業においては売り上げや利益が大きな意味を持つため、民間と行政では、DXの考え方は大きく異なります。それが『行政DX』という言葉が必要になる理由でもあるわけですが、安心・安全を最優先しているANAシステムズさんの取り組みは、まさに自治体の取り組みと共通する部分が多いと感じました。講師の取り組みを自分たちの仕事に置き換えられる部分もあり、単に刺激になるお話というだけではない有意義な時間になったと感じています。理論的な説明から入った方が分かりやすいという人がいれば、むしろ身近な事例から説明された方が分かりやすいという人もいます。今回の二本立てのセミナーは、行政DXの入り口として、とてもバランスの良い内容になったと感じています」(江本氏)

堺市役所では現在、「DX PRO」と名付けられたDX人材を各部で1名育成すると共に、彼らが部門横断型のプロジェクトチームを構成し、DXを推進するという青写真を描いている。今回の成功を受け、次回はDX PROと部長級を対象に同様のセミナー開催を計画しているという。

自治体業務の効率向上を目的の一つとする行政DXだが、ICT導入が新たな業務負荷につながるというケースは実は少なくない。その分かりやすい例が、オンライン申請の導入である。やみくもな導入の結果、申請書類を前提とする従前の窓口業務に加え、新たな業務が生じることがその理由だ。

「自治体業務のデジタル化は、費用対効果の観点まで含め検討していく必要があります。そうした意味でも今回のセミナーは、自治体がDXを推進する意義や効果を整理していく上で大きな意味を持つと考えています」(中井氏)

大塚商会が提供するマインドセット改革を目的としたセミナーは、デジタル化の基本的な取り組みを終えた堺市のDXをさらに推進すると期待されている。

大塚商会担当者からのコメント

「お客様との相談を前提に行政DXをきめ細かく支援していきたいと考えています」

現時点では行政DXの取り組みの方向性は、各自治体がそれぞれ判断せざるを得ないのが実情です。大塚商会はお客様との相談を通し、かゆいところに手が届く存在になることを目指しています。

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  • 印刷して稟議書に添付して
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  • * 本事例中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞などは取材時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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