- 業種
- 建設コンサルタント
- 事業内容
- 架空・地中送配電線建設ルート調査、測量、地盤調査、支持物設計、土木構造物設計、技術計算など
- 従業員数
- 76名(2025年8月現在)
- ホームページ
- https://www.dengi.co.jp/
地下電力網整備に3次元モデルを活用

九州電技開発株式会社 導入事例
建設業1~100名CAD(設計支援ツール)サービス&サポート(たよれーる)製品の導入・活用支援社員育成・人材開発営業・業務プロセス効率化
送電線や配電線の調査・測量・設計などを手掛ける建設コンサルタントの九州電技開発株式会社は、福岡市中心部の天神地区で進む地下電力網整備プロジェクトにおいて、初めてBIM/CIMを導入した。同社は、大塚商会が提供する研修やサポートなどを活用してスキルを磨き、同プロジェクトを順調に推進している。
- 業務効率の向上
- 生産性向上
- 長時間労働の是正
- 事業価値の創造
2025年6月取材
九州電技開発株式会社
導入先の概要

導入の狙い
- 国が推し進めるBIM/CIM適用の原則に対応したい
- 自社の業務対象が広がる中、より短時間で円滑に業務を完了したい
解決策
- BIM/CIMツールの導入
- 大塚商会が主催する研修に参加してスキルを向上
- 大塚商会が提供するサポート『たよれーる』の積極的な活用
導入したメリット

導入システム
九州電技開発株式会社 導入事例(PDF:3,246KB)
導入事例詳細
福岡市が航空法の高さ制限緩和によって中心部の天神交差点から半径約500m圏内の建物容積率を引き上げる国家戦略特区「天神ビッグバン」を活用し、更新期を迎えた建築物の建て替えを促進している。地区内の電力供給量は大幅に増加し、それを補う電力網の整備も進行中だ。地下埋設される電力供給ルートは幹線道路に沿うように湾曲し、しかも地下鉄や河川に加え、下水道などの埋設物も錯綜(さくそう)する。調査・設計を担う九州電技開発は、3次元モデルデータを効果的に活用し、円滑な業務を実現している。
(本記事は、日刊建設通信新聞の連載「BIM/CIM未来図」の内容を転載したものです)
3次元活用で電力網整備の円滑化、ケーブル一本までモデル化

(左から)坂本氏、蝶氏、平井氏
「3次元モデルがなければ成立していない」。同社地中線技術部配電土木グループの蝶高志課長は、市中心部で取り組む調査・設計業務について、そう強調する。業務を受注した2021年当時は国土交通省がBIM/CIMの原則適用に向けて積極的に推進していた。民間からの受注が中心の同社だが、経営陣からは将来を見据えてBIM/CIMへの対応を求める声が上がっていた。受注のタイミングとも重なり、このプロジェクトが「初めて本格的に3次元モデルデータ活用に挑む」トライアルプロジェクトになった。

管路内イメージ
ルートは、電力施設から推進管内を通って電力供給網を構築する長さ約370mにも及ぶ。同社の業務はルート周辺の現況把握に加え、計画トンネルと既設物の干渉や回避、さらにはトンネル内の配管計画など多岐にわたる。既に長さ約120mの1期工事は完了し、現在は残り約250mの2期工事が進行中だ。「業務を進めながら、BIM/CIMツールを使いこなすスキルを身に付けてきた」と強調する。
業務の着手前に取り組んだのは、ツールの選定だった。販売代理店の大塚商会に相談し、いくつかのソフトを比較検証した。社内標準ツールとして使っていた2次元汎用(はんよう)CAD『AutoCAD』との相性を考慮し、最終的にオートデスクが提供するBIM/CIMツールの採用を決めた。「そもそもどのようなツールがあるのかも分からない状態だった。業務内容を踏まえ、大塚商会側からトレーニングの枠組みまで考慮したプランを提示してもらえたことが決め手となった」と振り返る。
導入したのは、土木設計ソフト『Civil 3D』、点群編集ツール『ReCap Pro』、BIMソフト『Revit』、統合ツール『Navisworks』などとなり、多様な業務に対しても柔軟に対応できる最適なラインアップを組んだ。同グループはAutoCADを使って2次元設計を進めた後、3次元データ化する流れで対応しており、設計変更時には2次元図面を修正し、それを再度3次元化している。
電力施設と管路を接続する立ち上げ部分では電力ケーブル1本まで細かくモデリングして収まりの位置や角度を確認。推進管内の配管類は設置作業性を考慮して詳細なモデリングを行うなど、3次元による視覚化効果を最大限に生かした設計を実現している。地上部では点群データを取得し、道路上に立て坑の作業ヤードを構築する際には通行車両から信号機をどの位置に設置すべきかなども3次元で細かく検証した。
業務には蝶氏、平井貴明係長、坂本望美係長の3人で挑んだ。BIM/CIMツールの基礎的な操作を学びながら、それを業務で実践する流れとなり、当初は悪戦苦闘の日々が続いた。しかも他の業務も同時並行で進めてきただけに、3人は「大塚商会のサポートがなければ、ここまで順調には進まなかった」と口をそろえる。
疑問解消しながら業務と向き合う、大塚商会のサポートが力に

架台3次元モデル
九州電技開発の配電土木グループでは、福岡市の中心部における電力供給ルート整備に伴う調査・設計業務を受注したことが、BIM/CIMに取り組むきっかけになった。業務を担当した蝶高志課長、平井貴明係長、坂本望美係長の3人は初めてのBIM/CIMツールに向き合いながら、着実に操作スキルを磨いてきた。
業務に着手した2022年2月のタイミングには、大塚商会のBIM/CIM研修を受講し、採用を決めたオートデスクのBIM/CIM関連ツールの基本操作を一通り学んだ。業務を進める中で操作の疑問が生じた場合には、大塚商会が提供する業務サポートサービス『たよれーる』を積極的に活用した。
その中でも「BIM/CIMテレホンサポート」は豊富な業務経験を持つCADエンジニアに電話で業務上の困りごとを相談できることから、3人は業務開始当初だけでなく、現在もなお有効活用しているという。社内標準設計ツールに位置付けるAutoCADの活用経験が3年あった坂本氏は「実際の業務に当てはめてツール操作の疑問点を聞くことができ、このサービスのおかげで円滑に業務を進めることができている」と強調する。
BIM/CIM研修ではテキストに沿ってツールの使い方をマスターしていったが、実際の業務ではゼロからツールを設定する必要がある。テレホンサポートではパソコンの画面を共有しながら質問していくスタイルになるため、ピンポイントで疑問点を解消することができる。「1回当たり1時間ほどの説明を聞き、週1ペースで利用してきた」と振り返る。

橋梁下越しモデル
大塚商会には案件ごとにモデルを構築するため、業務内容を細かく伝え、業務の流れに沿った操作テキストも作成してもらった。電力施設と管路の立ち上げ部分を担当した平井氏は土木設計ツール『Civil 3D』を活用し、電力ケーブル1本まで細かくモデリングしながら収まりを確認してきた。「AutoCADとCivil 3Dの操作感が似ている点でも覚えやすかった」と振り返る。
建物との取り合い部分をBIMソフト『Revit』を使って取り組んできた坂本氏は「自分の頭でイメージしながら設計できることが3次元設計の進め方だけに、まずモデルを作っていこうという意識が芽生えた」ことを実感している。推進管内の配管設置部分で3次元によって取り付けやすさを細かな部分まで追求してきた平井氏も「施工や維持管理の次工程を意識しながら設計する大切さを改めて感じた」と強調する。
電力施設の接続部を起点として、推進工により長さ約120m地点まで掘り進める第1期工事区間では平井氏がCivil 3D、坂本氏がRevit、そして蝶氏がモデル統合を担う明確な役割分担で業務に取り組んできた。現在進行中の長さ約250mの第2工事区間では、3人とも各ツールの操作を一通り習得したことから、あえて担当を決めず、それぞれのスケジュールに沿って作業を進める流れに変えた。
業務は、AutoCADを使って2次元で先行的に設計を進め、成果となる平面図と縦断図をCivil 3Dで統合して3次元化を進めている。蝶氏は「設計変更が出てきた場合、2次元に戻って修正した上で再度3次元化する流れになるが、将来的には最初から3次元設計に取り組み、より効率的に業務を進める流れを確立したい」と先を見据えている。福岡市中心部の調査・設計業務をきっかけに、グループ内では他の担当者にも3次元スキルを学ばせる動きが出てきた。
施工、維持管理に展開する流れに、新たなメンバーも3次元活用
九州電技開発の配電土木グループは8人体制。福岡市中心部の電力供給ルート構築に伴う調査・設計業務では、蝶高志課長、平井貴明係長、坂本望美係長の3人がBIM/CIMツールの操作を習得しながら、3次元モデルデータの活用によって業務の円滑化を実現している。蝶氏は「予想を上回るほど3次元活用の効果が大きいことを実感した。グループでは新たに3人の技術者にもBIM/CIM研修をスタートしており、他の業務にも活用の幅を広げていきたい」と明かす。
これまで同社は送電線や配電線など九州電力送配電からの仕事が大半を占めていたが、近年は再生可能エネルギー関連や無電柱化事業などの調査・設計を手掛けるケースも増えてきた。業務の対象は多岐にわたり、各担当は常に複数の業務を掛け持ちしている。最近では橋の中に電力ケーブルを設置する橋梁添架や、小規模変電所の調査設計も増加しており、より短時間で円滑に業務を完了する手だてとして、3次元データの活用を推し進めている。
橋梁添架では管や電力ケーブルの取り合いを3次元で詳細に検証でき、小規模変電所では設置後の状況を見える化することで、関係各所や住民との協議に3次元が有効に機能する。「われわれ3人が市街地の調査・設計業務を通して実感したように、新たな3人にもBIM/CIMの有効性を体感してもらい、業務ツールとして効率的に使ってもらいたい」と考えている。

橋梁接続部検討モデル(上)とMHケーブルモデル
3次元モデルデータを活用する際、グループ内では徹底してモデルを作り込むのでなく、短時間で効果的な成果を出せることを常に心掛けるようにしている。平井氏が「橋梁添架や変電所では1、2日程度で仕上げて説明する迅速さが重要になる」と言うように、3次元の活用を前提にするのではなく、あくまでも業務効率化の手段として、より効果を発揮する業務に限定して活用する方針で取り組んでいる。
福岡市中心部の調査・設計業務では、3次元モデルデータの活用によって業務の円滑化や設計精度の向上を実現した。しかしながら3次元化は自主的に対応しているのが現状で、しかも2次元設計の後に、その成果を使って3次元化する流れになり、業務量も時間も増してしまう。蝶氏は「将来的に3次元モデル業務の受注を実現していきたい」と期待している。その先に見据えるのは「3次元設計を確立し、成果としての3次元モデルデータを施工や維持管理にも展開していく」ことだ。
3次元モデルデータの活用は、設計の収まり確認にとどまらず、事業者や関係各所との協議を円滑化する有効な手段になる。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略が拡大する中で、配電や送電の分野でも3次元モデルデータの活用がクローズアップされる可能性を秘めている。同社が市街地で自主的に進める3次元対応が業務の円滑化に寄与している成果も、その後押しになりそうだ。蝶氏は「国土交通省のBIM/CIM原則適用の流れが、今後の民間インフラ事業にも着実に広がってくる」との期待を強く持っている。
社内では送電土木グループもBIM/CIMへの関心を示しており、3次元対応の準備を開始した。両グループを管轄する地中線技術部ではオートデスクのさまざまなツールを活用できるAECコレクションのライセンスを増強した。3次元モデルデータ活用の効果を実感した配電土木グループをきっかけに、同社はBIM/CIMへの一歩を力強く踏み出した。
大塚商会担当者からのコメント
「最新のツールを使いこなしていただくためのサポートも充実しています」
九州電技開発株式会社様は、BIM/CIMを活用されるご担当者や部署を拡大する予定です。今後も大塚商会では、新たなツールご提供などのハード面はもちろん、研修やサポートといったソフト面でも手厚くご支援します。

- 印刷して上司への説明に
- 印刷して稟議書に添付して
- 印刷して会議資料に
九州電技開発株式会社 導入事例(PDF:3,246KB)
- * 本事例中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞などは取材時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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