「特別支援学校は、体に障害があって車いすを使って生活していたり、知的障害があったり、聴覚や視覚に障害のある子が通っている学校です。一人一人に指導計画があるので、小・中学校、高校と同じ内容で学習している子から、自分の発達年齢に合った学習をしている子まで、本当にさまざまです」
特別支援学校・東京都立あきる野学園 菱 真衣(ひし まい)
2023年9月1日公開分のClassRoomCLIPの番組サマリーをお届けします。
今週のClassRoomCLIPも、Zoomを使って収録しています。
番組サマリー
ClassroomCLIP第12回目は、特別支援学校・東京都立あきる野学園の菱 真衣(ひし まい)先生にご登場いただきました。
iPadのアクセシビリティ機能を生徒がカスタマイズ
同じ教室の中でも、教えることがバラバラですから、教える側(がわ)としても難しいですね。今、菱先生のいらっしゃるのはどういう学校なんですか?
「私の学校には、体の障害のある子たちがいる部門と知的障害の二つの部門があります。私は知的障害教育部門の高等部で教えています」
菱先生は授業でICTを使ってすごく成果を上げていらっしゃるそうですが、どのようなデバイスを使っているのでしょう?
「iPadを使っています。昨年度までは、体に障害のある子たちにICTを使っていましたが、やはり手に障害があったりすると、できないことがいっぱいあるんですね。例えば、プリントに文字を書くとか、そのプリントをファイルにとじるとか。今までずっと先生に支援してもらってたところを、iPadがあると音声入力もできますし、プリントファイリングも、フォルダーに入れてしまえばいいので、手先の小さな動きでいろんなことができます。自分でできる活動がかなり増えましたね」
iPadには、アクセシビリティの機能がたくさんありますが、実際に使われますか?
「はい。アクセシビリティは、最初少し教えたら、どんどん生徒が自分でカスタマイズして使っていました。例えば、スクリーンショットを撮るためには、トップボタンとホームボタンを同時に押す必要があります。それが機能的にできない子が、アクセシブタッチを使って、ワンタッチでできるようにするとか。自分ができない操作を代替する機能がいっぱいあるので、そうしたことを私がびっくりするようなペースで、やっていましたね」
特別支援学校だからこそ、iPadで大きな可能性が広がる
今度、AppleからVision ProというARデバイスが出ます。私も体験しましたが、視線入力で、目で見たところが反応します。また可能性が大きく広がるかもしれませんね。
「今でもパソコンで視線入力ができるものもありますが、結構セッティングが大変で、初めの一歩がなかなか踏み出せないことも。Vision Proで手軽にできたら、もっと活用の幅が広がっていくんじゃないかなと可能性を感じています」
特別支援学校も今はiPadを使うことが多いのでしょうか? それとも、先生がチャレンジされている方なんでしょうか。
「iPadの活用は、特別支援学校ではかなり早かったんです。これまでできなかったことができるという意味で、相性がいいんですね。これまでのノートと鉛筆を使ったりする学習もすごく大事なことだと思うんですけど、それができなかった子たちには、ICTだからできるっていうことが多いんじゃないかな、と」
iPadを使うのは難しいのかなと思っていたんですが、逆なんですね。デバイスだからできるということがあるわけですね。ARも活用されていますか?
「はい。始まりはコロナウイルスの影響で文化祭ができなくなってしまって。生徒が紙粘土などで作ったフィギュアなども自分の親に見てもらえないというところから始まりました。写真を撮って、学校のホームページにあげましたが、それではリアリティーがない。そこでいろいろ調べて、ARで作品を3Dスキャンできるようなアプリを使ってスキャンしたんです。
さらにARだったら、作品展示の会場も自分で作れるな、と気付きました。私が使ったのは、Appleの『Reality Composer』というアプリなんですが、テーブルや周辺のものもいっぱいデータとして入っているので、自分で展示スペースをデザインすることができます。作品を見るのにも、展示スペースが狭くて車いすで入れなかったりすることもまれにありましたが、ARだったら自由にどこでも見に行ける。そうしたところに可能性を感じて、子どもたちと取り組んできました」
最初は、特別支援学校でどうやってiPadやICTデバイスを使うんだろうと不思議でしたが、むしろ特別支援学校だからこそ、iPadの大きな可能性が広がっているということなんですね。
「もう子どもたちが先生に提案していくような感じですね。iPadを使って、自分の生活を変えている姿を見て、先生たちも頑張らなきゃ、と。そんな雰囲気です」
学外でも子どもたちにAR体験を実施している。
写真はTES(Tokyo Education Show)での様子。
GUEST PROFILE
菱 麻衣(ひし まい)
東京都立青峰学園を経て、令和5年度より現職。Apple Distinguished Educator class of 2023。
「Reality Composer」を活用したARの実践で、ICT夢コンテスト2021 文部科学大臣賞
令和四年度文部科学大臣優秀教職員表彰「社会に開かれた教育実践奨励賞」
特別支援学校で学習や生活を豊かにできるようなテクノロジーの活用を目指し、日々取り組んでいる。
障害のある子どもたちが社会とのつながりを持てるような探究学習にも力を入れている。
- *本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。
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