NHK学園高等学校 保坂 英之

2020年2月14日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

番組サマリー

大量の校務情報を管理するための校務支援システム

NHK学園高等学校は、日本で初めて開校された広域通信制課程の高校で、創立57年になります。一般の高校と比べて生徒数も多く、単位制課程のため履修科目が多様であるなど、校務で扱う情報量が多いのが特徴です。これらの情報を的確に管理するため校務支援システムを導入しています。

校務というのは学校独自の事情や環境に即して業務が決まります。そのため、パッケージ製品を完全に適合させるのは簡単ではありません。そこで本校では、柔軟にシステムと業務を適合できるようチームを作り、校務支援システムを内製化しています。

データ入力作業の負担を軽減する自動認識技術とは?

バーコードはシール化

校務情報にもさまざまなものがありますが、生徒情報、成績情報、学費情報など幅広い情報をデータ化しています。データ化にあたっては、バーコードやQRコードといった自動認識技術を積極的に活用しているのが特徴です。従来はキーボードを使って手入力していた業務を機械的に自動入力する形に変えました。これによって入力作業の迅速化はもちろん、正確性の向上にもつながっています。

QRコードの活用で3日かかっていた出席情報を即時データ化

生徒が授業を受けると出席確認用紙に教員が押印し、目視でそれを確認してデータを入力していました。年間通して延べ4万件程の出席情報をデータ化するのはものすごい労力です。生徒にはオンライン上で提出物や出席状況、成績情報などを確認できるシステムも導入していますが、どうしても出席情報のデータ化が遅延してしまうという課題を抱えていました。

また、通信制では授業に出席する生徒が固定されないためクラス名簿のようなものはありません。そこで、「出席をとる」→「情報をデータ化する」という2段階の作業を一つにまとめることにしました。出席確認の際、生徒はQRコードが印刷された生徒証を提示、教員が専用のスマートフォンでそれをスキャンして登録できるというものです。これにより、長い時には3日程度かかっていた出席情報のデータ化が即時にできるようになりました。

QRコードは生徒証に印刷して生徒に配布

当初は非接触型ICカードの利用も検討しましたが、コストが高いことがネックでした。その点、QRコードはコストが低いことに加えて、読み込みスピードも高速。さらに、スマートフォンのカメラ性能が上がってきたことで、対象距離も長く取れるなど、かえって運用面でのメリットも大きかったと言えます。

QRコードを使ったスマートフォン出席システムでの出席確認の様子

校務支援システム導入で失敗しないためのポイントとは?

スマートフォン出席システムは、私を中心とした教員チームが内製で開発したものになります。校務支援システムを内製化することで、コストを低く抑えることができ、リリース後も柔軟に改修できるメリットがあります。一方で技術習得に向けてのハードルが高く、どの学校でもすぐにまねができるというものではありません。

しかしながら、業務を理解している教員や事務員が自ら解決できる技術を身につけることで、学校のICT化は飛躍的に発展していくと考えています。例えば、教員免許のような位置づけでプログラミングの開発力のある人材を登用・育成し、学校への配置が実現できれば、真の意味での学校ICT化への近道なのではないでしょうか。

ICTは手段であって目的ではありません。課題が何であるかを整理し、ICT化によるメリット・デメリットを想定したうえで、トータルで利益が大きいと判断したときに初めて導入すべきです。このプロセスなしに導入を進めれば、安定感を欠くものになってしまいかねません。それを正しく判断するためにも、現場からのボトムアップの構造が大切だと考えています。

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

保坂 英之(ほさか ひでゆき)

NHK学園高等学校

2007年より数学科教諭として従事。校務情報をデータ化し、適切に運用・管理することが学校運営には必要であると感じ、校務支援システムの内製化に取り組む。あるものを使うより必要なものを作るほうが得意。我流でPHP・SQL等を磨き実務レベルでの構築が可能。そのスキルを活かして学校ICT化に寄与してきた。MS認定教育イノベーター、異能vation2018 ジェネレーションアワード部門賞。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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