関西大学初等部 堀 力斗

2020年7月17日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

今週のTeacher's CLIPも、ZOOMを使った収録でお送りしています。

番組サマリー

「いかに使うか」ではなく「何ができるか」を考えるICT活用

関西大学初等部は、大阪にある関西大学の併設校として2010年度に開校した小学校です。
開校以来、ICT活用に力を入れており、2014年度にはiPad一人1台の活用を1学年で開始しました。そして、徐々にその対象学年を広げ、2020年7月には1年生から6年生までの全学年で個人持ちのiPadを活用する事になりました。

「思考力育成」という目標達成のためのiPad活用

本校では「思考力育成」をテーマに教育を行っています。この目標を達成するため、「iPadをいかにうまく使うか」ではなく「iPadで何ができるか」を考えて取り組んでいます。また、授業デザインをよりクリエイティブなものに改革するため、日々、試行錯誤しながら実践を重ねているところです。

さまざまな教科で活かせるプログラミングの考え方

プログラミングの考え方を活用した「シーケンス作文」

プログラミング教育においても「思考力育成」を軸に組み立てています。
1年生~2年生は「Tynker」と「Code Spark」、3年生~6年生は「Swift Playgrounds」を活用して学習を進めています。ある教科の特定の単元の中でプログラミングを学ぶのではなく、「アンプラグド」な活動と、実際の「コーディング」を組み合わせて、プログラミングの概念を理解していきます。

プログラミングの授業は、1年生~2年生が図書の時間、3年生からは総合の時間を使って行います。習得したプログラミングの概念は、各教科の学習にも活かされています。例えば、「シーケンス」の概念を習得したら、それを国語の作文の中で活かすなど、プログラミングを通じて学んだ考え方は、非常に汎用性のあるものだと考えています。

子供たちが夢中になって創造しオリジナルの表現をする瞬間

基本的な流れは、Appleが提案する「Everyone Can Code」のカリキュラムに沿って授業を進めています。子供たちは「アンプラグド」な活動をした後、実際に「コーディング」を行います。生活とのつながりを考えながら、その概念を身につけていくわけです。本校では「アンプラグドな活動」を独自にアレンジする事で「プログラミングの概念」をイメージさせやすくしています。

パターンブロックを使って「ファンクション」を学習

例えば、「ファンクション(関数)」の概念を取り上げたときには、パターンブロックで「世界に一つだけの花」を作り、名前を付ける活動を行いました。また「デバッグ」のときには、「どうやってもゴールできないスゴロク」で実際に遊んでみて、自ら気づかせる。そうして、「どうすればゴールできるようになるか修正してみよう」という活動に取り組みました。

夢中になって何かを創造する時間、プログラミングを学習する過程でオリジナルの何かを表現できる瞬間を大切にしています。6年生になると、実際にアプリケーションをデザインする取り組みを行いました。プロトタイプは「Keynote」を使って作成。子供たちはお互いのアイデアを交換しながら、より良いアプリ作りについて話し合いました。

プログラミング教育を行う上で一番大事にしたい事とは?

「プログラミングを学ぶのはハードルが高い」というイメージが、なかなか一歩を踏み出せない原因だと考えています。そんな私も「Everyone Can Code」に出会う前は、一度もプログラミングに触れた事がありませんでした。しかし、経験の有無や年齢にかかわらず「だれでもコーディングができ、それを活かして何かを生み出していける」という考え方に勇気をもらいました。

プログラミングで学んだ事が、教科や実生活で活かされる。子供たちの「つながった!」という笑顔には感動を覚えます。大切なのは、プログラミング教育で何を身につけさせたいかです。たくさんの知識を覚えさせるのではなく楽しみながら表現していく。この「表現したい」という気持ちこそ、子供たちはもちろん、教師である私たち大人にとっても大事にすべきものではないでしょうか。

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

堀 力斗(ほり りきと)

関西大学初等部

Apple Disinguished Schoolとして認定を受けた関西大学初等部で、情報教育主任を務める。1年生から6年生までの一人1台環境を整備し、先進的で創造的な取り組みを学校を挙げて展開中。小学校段階においては、いち早く「Swift Playgrounds」でのプログラミング学習を実践し、外国語活動とプログラミングを組み合わせたカリキュラムも提案している。2017年Apple Distinguished Educatorに認定

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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