和歌山大学教育学部附属中学校では、2015年に108台の共有iPadを導入しました。始めのころは先生が授業でiPadを活用することに慣れる時期だったと言えます。iPadは共用のため、授業のたびに配付するのが面倒で、生徒の思考も授業ごとにプチプチ切れる感じがありました。発想した瞬間から完成までをシームレスにすることで生徒たちの可能性はもっと広がると考えました。
和歌山大学教育学部附属中学校 矢野 充博
2020年8月21日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。
今週のTeacher's CLIPも、ZOOMを使った収録でお送りしています。
番組サマリー
共有iPadから一人1台へ。その思いを実現した「Team iPad」
「Team iPad」の尽力で実現した生徒一人1台のiPad
そこで一人1台のiPad導入に向けて、2018年に教員五人でチームをつくりました。その名も「Team iPad」。このチームの一員であったことは今でも誇りに思っています。彼らとたくさんの学校を訪問しました。授業を見せていただいたりお話を聞かせてもらったり。チームで協力しながら一人1台環境の実現に向けた準備を進めていきました。
保護者と教員の気持ちに寄り添った一人1台への準備
一人1台の実現にあたって一番気掛かりだったのは、保護者の皆さんの理解を得ることでした。そこで導入前に保護者アンケートを実施し、不安に感じることを調査することにしました。アンケートによると保護者が抱える不安は大きく3点。「壊さないか」「目的外の使用をしないか」「費用はどれくらいか」でした。これらについて、さまざまな機会で説明をしてご納得いただきました。
また、教員向けの講習会や校内研修を実施し、授業で実践してもらえるよう「iPadだからできること」を紹介しました。例えば、理科の授業中に顕微鏡で見たものを共有したいときには、iPadで写真に撮りコメントを書き込みます。これを「ロイロノート・スクール」で提出することで、生徒に比較しながら説明させることができます。個人で学んだことを学校全体に広げることで、これまでとは違った学びが増えていきました。
動物園で観察・スケッチした動物の特徴をグループ発表
自分のiPadを持つことで生まれた生徒たちの前向きな学び
生徒たちはiPadを文房具として日常的な学びに活用
生徒にとっても「自分のiPad」ですので、愛着を持って文房具として活用するようになりました。メモを取ったりアイデアをまとめたり、授業中に先生に聞くほどでもないような質問は、iPadを使って自分で調べたりもしています。また、ムービーやレポートを作成するには結構な時間が必要ですが、生徒自身の都合の良いときに学びを続けています。
また、新型コロナウイルス感染症による休校時には、すぐにリモートでの授業を進めることができました。アニメーションを作ったり、学年全体で作った歌を各自が録音し、合成して合唱に仕上げたり。生徒たちが前向きにチャレンジしてくれたことが何よりの成果だったと考えています。ここでも生徒の自己表現をサポートするツールとして、iPadが役に立ってくれました。
生徒と教員が共につくる魅力的な学校
「AR」(拡張現実)や「VR」(仮想現実)を受け手側でなく、制作する側に立って、自分の考えを表現する方法を学ぶ。そんな、iPadでしかできない学びをどんどん実践していきたいと考えています。また生徒自身がチームをつくり、問題解決をしていくことで、身近な地域に影響を与えられるような行動力のある人になって欲しいと思っています。
そのためには、私たち教員も学び続けることが必要です。全員が「Apple Teacher」の資格を取得して、将来的には「Apple Distinguished School」に認定してもらえるような、注目される学校にしたいと考えています。学校の魅力をあげていくことこそが、「教育の質」を向上させる一番の近道だと信じ、これからも魅力的な学校づくりをしていきます。
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GUEST PROFILE
矢野 充博(やの みつひろ)
和歌山大学教育学部附属中学校
理科教諭(研究主任・ICT教育主任)。2006年より和歌山大学教育学部附属中学校に勤務。同校の一人1台iPad導入の整備、理科とiPad活用セミナー(Science Night cafe)、各地でのサイエンスショーへの参加など多岐にわたり活躍している。授業では、ロイロノートやApple Books、AR、VRを活用した学習を進めている。iPhoneやドローンを使った写真撮影に興味がある。Apple Distinguished Educators, Class of 2015、日本理科教育学会員
- *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。
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