郡山ザベリオ学園小学校 大和田 伸也

2020年10月16日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

今週のTeacher's CLIPも、Zoomを使った収録でお送りしています。

番組サマリー

一人1台がなくても無理なく始められるICTモデル

郡山ザベリオ学園小学校は、福島県の中央に位置する郡山市にあるカトリックのミッションスクールです。幼稚園から中学校まであり、幼・小・中一貫校でもあります。また、ミッションスクールとして、周りの人の幸せを自分の幸せのように思えるような子どもたちの育成を目指しています。

共有iPadが児童一人ひとりのポートフォリオに

各教室にはプロジェクターとミラーリング用機器が設置されています。小学校の全教員が1台ずつiPadを保有し、子供たちは51台の共有iPadを自分自身のアカウントで運用しています。子供たちのデータは、無償で提供されている200GBの「iCloud」に保管され、在学中は学年が持ち上がっても学習の記録、ポートフォリオとして使えるようになっています。

また、授業ではiPadの純正アプリや無償アプリのみを活用しています。一人1台の端末がなくてもICT教育を行うことができます。今後、一人1台になっていくと、ますます授業の幅が広がっていくはずです。これからICT活用を本格的に始める学校の皆さんにとっても、一つのモデルになるのではないかと思っています。

きっかけは卒業記念品として贈られた6台のiPad

今ではiPadが授業になくてはならない存在に

ガンと闘病しながらも亡くなる直前まで学校に来ていた2代前の学園長が、これからの教育のためにICT機器は必要不可欠だと考え、各教室にプロジェクターとPC1台を設置してくれました。今では教室にプロジェクターがある光景は当たり前になりましたが、当時は地域の中でも最新の設備が備わっている恵まれた環境のある学校だったと言えます。

しかし、どちらかといえば従来型の教育を行うためのICT環境であったため、卒業記念品として6台のiPadをいただいた当初は、授業にどのように使うか、私自身かなり戸惑ったのを覚えています。これからICTを導入する学校でも同様に、いきなり端末だけが届いてもいわゆる「文鎮」になってしまう可能性があるのではないでしょうか。

そんなときに私が出会ったのが「Apple Teacher プログラム」です。Appleがさまざまな情報を提供している「Apple Teacher Learning Center」というウェブサイトの中で、先生たちが実際の授業でどのようにiPadを活用しているのか紹介されていました。そこからたくさんのヒントをもらい、授業の中でやってみようと思ったのがきっかけとなりました。

授業での活用に悩まれている先生は、まず「Apple Teacher」を目指してみるといいと思います。iPadの操作はもちろん、授業での活用方法のアイデアも得ることができます。特に、日本の教育の実践例だけではなく、ICT教育が進んでいる海外の教育者の実践例も学ぶことができますので、大きな発見につながるはずです。

「先生、授業でiPad使う?」 子供たちの期待にこたえる授業へ

時代の流れが速いように、学び方の変化も大きくあって当然だし、これからの学びを意識した授業をすることを心掛けています。iPadという魔法のような道具があり、その小さな箱の中には数々の学び方ができるアプリがあります。授業のゴールは同じでも、そこに向かう方法は幾つもあり、それを授業の中で「学びの個別化」として実現できるよう日々考えています。

低学年の算数の授業では、定規を使って線を引いたり作図をしたりする場面がたくさんあります。細かな作業が苦手な児童も多く、図形の持つ面白さや美しさにつながらないケースも少なくありません。そこで、紙の上で線を引いたり作図をしたりした後の発展的な学びとして、iPadを用いた作図をすることもできるようにしています。

国語の授業では「考えの見える化」にiPadを活用しています。クラスの中には、いろいろな子供たちがいます。そんな中、自分の意見をなかなか言えなかったり、書けなかったりする児童の手助けになるのがiPadの共有ファイルです。先に自分の考えを書いた子が、自分のノートの写真を撮って共有ファイルにアップすることで、考えがなかなか浮かばない子にとって、大きなヒントになります。

子供たちは毎日のように「先生、明日の授業でiPadは使いますか?」と帰りの会で聞いてきます。そして、前の日に聞いたにも関わらず、朝の会でも「先生、今日は授業でiPadを使いますか?」と尋ねてきます。そんな子供たちを前にして、ワクワクする授業をしないわけにはいきません。学びの目的を達成するためにiPadをどう学びに取り入れていくか、日々試行錯誤しています。

かけ算九九の答えをiPadを使って探す児童

共有ファイルで解答を共有することが思考のヒントに

見えないゴールへの挑戦! 一緒に試行錯誤する仲間を

iPadを活用した授業に取り組まれている先生は世界中にたくさんいます。そんな先生たちも、日々、授業の在り方を研究し、試行錯誤を繰り返し行っているのです。だから、今不安を抱えている先生方も「新しい世界にチャレンジして楽しんでみよう」くらいの気持ちで取り組んで行って欲しいと思います。

私たちが向かおうとしているゴールはだれにも分かりません。だからこそ失敗を恐れず、新しい教育の在り方を一緒に模索していってくれる仲間が増えてほしいと思っています。そして、困ったときには、いつでもTwitterなどで気軽にご連絡ください。iPadの授業での使い方はもちろん、おすすめのアプリなどどんなご相談でもお待ちしています。

ICTは子供たちの学びを変え、子供たちを笑顔にします。教育の主役は、私たち教員ではなくこれからの未来を築いていく子供たちです。同じ思いを持つ先生方と一緒に、ぜひ未来のための授業を試行錯誤しながら作っていけたらと思います。

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

大和田 伸也(おおわだ しんや)

郡山ザベリオ学園小学校

卒業記念品として頂いた6台のiPadから、ICT教育の可能性を模索し現在に至る。4Cs(Creativity, Critical Thinking, Communication, Collaboration)を授業づくりの基本とし、未来を生きる子どもたちのための、未来を見据えた授業づくりを研究中。現在は、ICTの授業活用が難しいとされる、低学年の2年生を担任。さまざまな授業でiPadを取り入れ、先進的な学びに取り組んでいる。2019年、Apple Distinguished Educatorとして認定される。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

バックナンバー

過去のバックナンバー一覧
Teacher's CLIP バックナンバー

ナビゲーションメニュー