日本の学校では、先生が黒板に板書を書いて生徒がノートに写すというスタイルが 一般的でした。今でもそういった授業形式がありますが、私の授業では、生徒が板書を写すという作業はほとんどありません。 その日の授業内容をまとめたいわゆる「授業ノート」は、あらかじめ私の方で作成し、生徒に配信しています。
近畿大学附属高等学校 小谷 隆行
2021年5月21日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。
今週のTeacher's CLIPは、Zoomを使って収録しています。
番組サマリー
板書の時間を大幅に削減する「セミ反転授業」
小谷先生がiPadで作成した「授業ノート」
以前、何かの記事で読んだことがあるのですが、50分間の授業で板書を写している時間は20~30分程度にも及ぶそうです。この板書やノートテイキングの時間を大幅に削減することで、授業の中でアウトプットを中心とした活動ができるようになりました。このような授業スタイルを「セミ反転授業」と呼んでいます。
教え合い、競い、表現する! アウトプット型授業へ
グループワークで演習に取り組む生徒たち
削減した時間は、アウトプットに時間を割くようにしています。演習の際も、一人で考えるのではなく何人かのグループに分かれ、お互いに相談しながら進めます。分からない生徒は気軽に質問できますし、理解している生徒は、他人に教えることでさらに理解を深めることができます。双方にとって大きなメリットがあるわけです。
また、時には早押しのクイズ形式で確認テストを行ったり、グループごとに答えを考えてその解答の速さを競ったりといったことも行っています。生徒たちがゲーム感覚で学び、授業を楽しめるような要素を積極的に取り入れるようにしています。
さらに、ICTを導入する以前はなかなか取り組めなかったことが可能になりました。例えば、iPadのドローイングアプリを利用して、元素記号のデザインを作成したり、クロマキー合成した動画を使って学習した内容をプレゼンしたりとアウトプットの幅が大きく広がりました。
明確な基準と相互評価で「アウトプット」を評価
課題を提示するときには生徒たちに基準を示します。例えば、プレゼンテーションを作成するときには、文字だけではなく図やグラフを織り交ぜる、写真を効果的に用いるなど、資料作成の基準を示したり。発表のときにも原稿を読みながらだと何点、原稿を見ずに聞き手の方を向きながらプレゼンすると何点など、点数の基準を示すこともあります。
授業内容の振り返りをKP法を用いて説明する生徒
また、教員だけが一方的に評価するのではなく、生徒同士で相互評価するといった取り組みも行っています。他者の評価を聞くことによって、自分の成果物に足りないものは何なのか、どのように工夫すればより良い作品となるのかを考える機会を設けるようにしています。
ICT活用のポイントは「手段」と「目的」の見極め
「ICTを使うことが目的となる授業はしない」ことを常に心掛けています。GIGAスクール構想で多くの学校に端末が配備され、「とりあえず使わないと」と考える先生も多いかと思います。しかし、大切なのは理想とする授業や活動を実現するために、ICTの力が必要になるような授業設計を考えることではないでしょうか。
番組視聴はこちらから
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GUEST PROFILE
小谷 隆行(こたに たかゆき)
近畿大学附属高等学校
近畿大学附属高等学校で理科(化学)を担当する。校内では「教育改革推進室」という部署に所属し、評価制度の改革や観点別評価の導入に向けさまざまな取り組みを実施している。学校でiPadを導入した2013年より積極的にICT教育を取り入れ、「iTunes U」やさまざまなアプリケーションを活用した授業を展開してきた。2017年にはApple Distinguished Educatorに認定されている。
- *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。
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