BOM(部品構成表)とは?BOM構築の目的や種類、システム導入のメリットを解説

2024年10月22日更新

製品を効率的に製造するには、その製品がどのような部品構成で作られているかをひもといたBOM(部品構成表)が必要不可欠です。一方で、Excelや図面によるBOMの管理に限界を感じている製造業の方も多いのではないでしょうか。この記事では、BOM構築の目的やBOMの種類といった基礎知識のほか、BOMシステムを導入するメリット、導入の課題、導入事例などをご紹介します。

BOMとは

BOMとは、Bill Of Materialsの略で、製品を製造するうえで必要な部品情報や、構成情報をまとめたモノづくりの基本情報となります。必要な部品の品目コード・品名・仕様・数量などの情報や、それらの部品がどのような組み合わせになっているのかを把握することができます。BOMは設計部門や生産部門はもちろん、調達部門や保守部門などの製造業のあらゆる部門が業務で活用する重要な情報です。

「部品表(サマリー型)」と「部品構成表(ストラクチャー型)」

BOMの構造は「部品表(サマリー型)」と「部品構成表(ストラクチャー型)」の二つに分類されます。

部品表(サマリー型)は部品の種類と数を並列に並べた構造となっており、簡潔で見やすく一覧性が高い点が特徴です。同じ部品が複数の箇所で使われる場合であっても、リスト上では一つにまとまって合計数量が記載されるため、一目で必要な部品の種類と数量を把握できます。

部品構成表(ストラクチャー型)は部品の親子関係と必要数量が階層構造で表現されており、製品構造や製造の流れを把握しやすいのが特徴です。また、各部品やユニットがどの部品で使用されているかが分かりやすくなっているため、モジュール化・流用化もしやすくなっています。

複雑化する製品に対応するなら、ストラクチャー型でのBOM構築が最適

部品表(サマリー型)と部品構成表(ストラクチャー型)にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、昨今の複雑化する製品を効率的に管理するには、部品構成表(ストラクチャー型)がおすすめです。

部品表(サマリー型)は製品の全体像を大まかに把握するには有用ですが、全ての部品を一括で管理するため、部品を調達するタイミングを細かく調整するのが困難です。そのため、本来は必要のないタイミングでまとまった量の部品を調達してしまうケースが多く、キャッシュフローの悪化や余剰在庫の発生を招きやすいという課題があります。また、設計変更が発生した際に影響を受ける部品や製造プロセスを特定するのが困難であり、製造効率が低下する恐れもあります。

一方、部品構成表(ストラクチャー型)は製品構造や製造の流れを把握しやすくなっており、次のようなメリットを得ることができます。

  • 各部品が製造する工程に合わせて階層的に整理されているため、必要な部品を適切なタイミングと量で調達でき、キャッシュフローの改善に貢献する
  • 各部品の親子関係が階層構造で表現されているため、設計変更が発生した際の影響範囲を把握しやすく、設計の手戻りやミスが減少する
  • どの部品がどのタイミングで組み立てられるべきかを把握しやすいため、ムダな作業や待ち時間が減り、生産性が向上する

これからの製品開発はますます複雑化していくと考えられるため、部品構成表(ストラクチャー型)でのBOM構築が成功の鍵となってくるでしょう。

BOMを構築する目的

現代の複雑化した製品を製造するには、その製品がどのような部品構成で作られているかをひもといたBOMが必要不可欠となっています。部品が数点しかないシンプルな製品であれば、図面さえあれば製造することもできますが、多数のモジュール・ユニットを組み合わせる必要があったり、部品点数が膨大な製品であったりした場合、図面だけで製造するのは極めて困難といえます。

また、BOMは設計・調達・製造・販売・保守といった製造業のあらゆる部門の壁を取り払う「共通言語」といえる存在です。BOMがなければ各部門が独自の管理を行ってしまい、認識違いやトラブルが発生しやすくなります。「共通言語」であるBOMを正しく構築して全体の業務効率化を図ることは、製造業にとって重要な取り組みです。

BOMの種類

主に製造業では、

  • E-BOM(Engineering-BOM:設計BOM)
  • M-BOM(Manufacturing-BOM:製造BOM)
  • P-BOM(Purchasing-BOM:購買BOM)
  • S-BOM(Service-BOM:サービスBOM)

の四つのBOMが部門によって使い分けられています。四つのBOMは基本的には同じものをベースとしていますが、各部門が業務を進めるうえで必要な情報を付与して構築されています。

それぞれのBOMの概要や用途について解説します。

E-BOMとは

E-BOM(Engineering-BOM:設計BOM)は製品の設計仕様を満たすための部品構成情報です。部品の品目コード・必要数量・単位・仕様などの情報がまとまっています。

E-BOMはモノづくりの上流側である設計部門が構築するBOMであり、ほかのBOMの源となる存在です。モノづくりの根幹を支える役割を持っていることから、E-BOMの構築には三つの重要なポイントがあります。

1.コード化

E-BOMの構築で最も重要なポイントは、全ての部品に品目コードが付与されて一意の認識が可能になっていることです。図番(図面番号)のみで品目コードはないという企業は多いですが、実際は同じモノであっても図番が違えば同じモノとして認識されず、似て非なるモノが大量に生まれてしまう恐れがあります。一方、品目コードはモノに対して一意の認識ができるように採番されるため、各部門が同じモノを認識しながら業務を進められます。

2.ユニット化

E-BOMの構築では、ほかの製品への流用を考慮して部品をユニット化しておくことも重要です。製品をある特定の機能を持ったユニットの集合体と捉えることができれば、類似品を製造する際に一部のユニットを入れ替えたり、不足する部分だけを再設計したりするだけでよくなります。また、同じ部品・ユニットを複数の製品で使い回せるため、調達や製造時のコスト削減にもつながります。

3.階層化

E-BOMは下流側の作りやすさも考慮しながら構築する必要があります。例えば、E-BOMで全ての部品が並列に表現されていると、製造担当者がM-BOMを構築する際に毎回工程順に並び替えなくてはなりません。また、どの部品がいつ必要なのかが分からないため、調達担当者が全ての部品を一括で発注してしまってキャッシュフローを悪化させる恐れがあります。このような事態を防ぐためにも、E-BOMの段階で工程順に階層化しておくことが重要です。

M-BOMとは

M-BOM(Manufacturing-BOM:製造BOM)はE-BOMにモノづくりの情報を付与した部品構成情報です。製品を実際に製造するうえで必要な組み立て順序や加工工程はE-BOMに含まれていないことが多いため、製造部門がそれらの情報を付加してM-BOMを作成します。その後、M-BOMの情報を基に生産管理システムなどで生産管理を行うのが一般的です。

上流側にあたる設計部門のE-BOMと、下流側にあたる製造部門のM-BOMは、密接に関わっています。製造部門はM-BOMの質を高めて効率的なモノづくりを目指しますが、元となっているE-BOMの精度に左右されてしまうのが実情です。全社的な効率を向上させるためには、M-BOMをフィードバックして設計者のモノづくりに対する意識を高めていき、E-BOMの精度を向上させていく必要があります。

P-BOMとは

P-BOM(Purchasing-BOM:購買BOM)は購買・調達業務に特化した部品構成情報です。E-BOMをベースに、生産管理システムなどを使って購入先・外注先・発注ロット・発注単価といった調達業務に必要な情報を付加して作成されます。調達部門はP-BOMを活用して適切な発注数や発注時期を検討し、製品の製造に必要な部品や材料を過不足のないように調達していきます。

S-BOMとは

S-BOM(Service-BOM:サービスBOM)は保守・サービス業務に特化した部品構成情報です。昨今では顧客満足度の向上を目的に製造業のサービス化が進んでいることから、S-BOMの重要性が高まっています。

S-BOMは保守業務に必要な部品情報などをまとめたものですが、構築するうえで三つのポイントがあります。

1. E-BOMを保守の目線で再構築する

製品の保守業務では、故障や消耗した部品・ユニットを外して新しいモノに交換するといった作業が発生します。その際に、脱着用の治工具が必要になることも多いでしょう。そのため、S-BOMはE-BOMをそのまま流用するのではなく、必要に応じて脱着用治工具やマニュアルを加えておく必要があります。

2. ユニットを積極的に活用する

保守業務においては、ユニットを分解して部品を一つずつ交換するよりも、ユニットごと交換してしまった方が早いケースがあります。E-BOMやM-BOMで作成したユニットをS-BOMでも積極的に活用し、作業効率を向上させましょう。

3. 製品としての付加価値を付ける

製造業の中には、保守を無償で対応している企業もあります。しかし、保守にはコストがかかっているため、適切な対価を支払ってもらえるように工夫すべきです。製品ごとに保守部品キットやマニュアルを整備したり、梱包(こんぽう)資材を用意したりして、単なる交換部品ではなく製品としての付加価値を高めるようにしましょう。

システムを用いたBOM構築のメリット

BOM構築の際に活用されるシステムには、次のような種類があります。

BOM管理システム
PDMとはあえて切り離し、部品、BOMの管理だけに特化したシステム。生産管理システムとの情報連携に寄与し、PDMに比べると安価
PDM(製品情報管理)システム
CADデータやBOMなどの製品に関する情報を一元管理できるシステム

これらのBOM管理システムを用いてBOMを構築するメリットをご紹介します。

部門間で共有しやすくなる

Excelや図面でBOMを構築していると、ほかの部門にBOMを展開する際に転記作業や誤認識、情報のタイムラグが発生する恐れがあります。しかし、システム上にBOMを構築すれば、全部門が同じBOMを見て情報を共有できるため、転記作業やミスの削減が期待できます。

過去の設計資産を有効活用できる

BOM管理システムでは、過去に製造した製品のBOMや部品情報をデータとして蓄積できます。紙の図面を探して過去の設計情報を調べなくても、システム上で検索すればすぐに情報を得られるため、設計の標準化や流用化がしやすくなります。設計者は必要最低限の設計のみを行えばよくなり、業務の効率化につながります。

生産管理システムと連携できる

BOM管理システムによっては、生産管理システムとの連携が可能です。E-BOMをBOM管理システムで構築し、その情報を基にM-BOMやP-BOMを生産管理システム上で構築するといった運用ができます。設計から生産へのBOM連携がスムーズに行えるのはもちろん、生産情報を設計にフィードバックしやすくなるため、設計の最適化が図れます。

BOM管理システム導入における課題

BOM管理システムの導入には、乗り越えなければならない課題もあります。課題も正しく理解したうえで、導入を検討するようにしましょう。

品目コードの整備

BOMを構築してモノづくりを効率化するためには、全ての部品・ユニットに品目コードを付与する必要があります。また、品目コードだけでなく、名称の付け方や検索性を高めるための分類・属性の付け方などもルール化しておかなくてはなりません。

これらの情報を過去に製造したものも含めて付与していくのは、大変な労力がかかります。RPAのような自動化ツールも最大限に活用しつつ、人の手でも地道に作業していく必要があります。

設計者の意識改革

BOMをシステム上で構築するには、設計者の協力が不可欠です。品目コードの付け方や部品のユニット化・階層化などの設計時のルールを明確にして、設計者が独自の方法で設計するのを防がなくてはなりません。

設計者は今までのやり方に慣れているため、せっかくルールを作っても浸透せずに元のやり方に戻ってしまう恐れがあります。BOMシステムを導入する際には、適切なBOMを構築するメリットを設計者に共有しながら、経営者や設計部門長が熱意を持って推進していく必要があります。

部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」

大塚商会では、BOM構築に特化した部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」をご提供しています。「生産革新 Bom-jin」は図面や技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理し、設計技術部門内での品目コードの付け方や設計ルールを統一することで、ものづくりの要となる部品構成表(ストラクチャー型)のBOM構築を支援。製品開発が複雑化していく中であっても、BOM構築を通じて設計業務の効率化やキャッシュフローの改善、製造現場での生産性向上に貢献します。

さらに「生産革新 Raijin」などの生産管理システムとの連携によって、設計部門のE-BOMとものづくりのためのM-BOMを密接につなげたり、生産実績を製品設計にフィードバックしたりすることが可能です。このように設計部門と生産部門が双方向に連携する仕組みを構築し、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

BOM管理システムの導入事例

大塚商会の部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」を導入し、自社の課題を解決した企業の事例を幾つかご紹介します。

株式会社ワイエイシイデンコー

  • 事業内容

    フラットパネルディスプレイ用熱処理装置、電子部品用加熱装置などの設計・製造・販売

設計コストの削減や流用化・標準化による原価低減を目的に「生産革新 Bom-jin」を導入。従来は共用できる構成部品が多いにもかかわらず毎回一から設計していましたが、流用できる設計データを最大限に利用することで設計コストが削減し、より核心的な設計に注力して顧客ニーズに応えられるようになりました。また、3D CADとの連携で部品の手配漏れゼロ(1製品あたり)を実現するなど、BOMがDXの基盤として有効活用されています。

事例詳細をPDFでご覧いただけます。

導入システム:生産革新 Bom-jin

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  • 形式:PDF
  • ページ数:5ページ

株式会社東伸

  • 事業内容

    産業用自動化機器(主にスリッター、リワインダー)の設計・製造・販売およびシステム開発

社長直属の全社改革プロジェクトを立ち上げ、BOMによる標準化・流用化設計の実現に着手。過去図面の整理・整頓といった準備段階を経てから、「生産革新 Bom-jin」を導入しました。導入後は品名や品番の付け方のルール化(標準化)に加え、設計資産の流用によって設計効率が向上。全社員の標準化・流用化に対する意識も確実に高まり、コスト削減、納期短縮、品質向上などを実現できる業務基盤が整いました。

事例詳細をPDFでご覧いただけます。

導入システム:生産革新 Bom-jin/生産革新 Raijin

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  • 形式:PDF
  • ページ数:5ページ

株式会社キラ・コーポレーション

  • 事業内容

    切削加工自動化ライン、切削加工機、難削材加工機、ボール盤/タッピング盤の製造・販売

設計業務の標準化と生産に至るプロセスの無駄を削減するために「生産革新 Bom-jin」を導入。「生産革新 Bom-jin」に設定されている品目コードや図面番号の付け方をそのままルールに反映することで、設計業務の標準化が実現しました。BOM構築による構成部品の流用化・標準化で設計工数が30%されただけでなく、アフターメンテナンスのパーツリストを簡単に作成するなど、お客様へのサービス向上にも結び付いています。

事例詳細をPDFでご覧いただけます。

導入システム:生産革新 Bom-jin

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  • 形式:PDF
  • ページ数:5ページ

まとめ

複雑化する製品を効率的に製造するためにBOMは重要な役割を担っています。特に設計者が作成するE-BOMの精度が、調達・製造・保守などの下流側に大きく影響するため、全社効率化の意識を持ってE-BOMを構築することが重要です。自社のBOM構築方法を見直し、E-BOMの質を高めていくことで、モノづくり全体の効率化が実現できるでしょう。

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部品構成表管理システム 生産革新 Bom-jin

製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

BOMの検討に役立つ資料

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  • * コンサルタント、同業、生産管理システムメーカーおよび販売店の方のお申し込みはお断りしております。あらかじめご了承ください。

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