BOMの基礎知識と流用化・標準化設計のススメ

2025年 7月15日公開

今、製造業の現場ではBOM(部品構成表)の重要性があらためて注目されています。「生産管理システム導入で失敗しないためのポイント<組立業編>」で触れたBOM(Bill Of Materials)について詳しくご紹介します。

現代の製造業の課題とBOMの重要性

品質の高さが評価されてきた日本の製造業ですが、世界的なDXの流れに乗り遅れ、デジタル競争の面では後れを取る可能性が指摘されています。

その背景には、ITシステムの導入が部分的にとどまり、業務全体でのデジタル化が進んでいない企業が多いことが挙げられます。特に製品構成の複雑化に対応するためのデータ活用が十分でないことが課題となっています。

製造業ではBOM(部品表)の統合、デジタル化、システム間の連携がカギになります。

IT化、ものづくりDXの流れについて

BOMの基礎知識

BOMとは?

「BOM」とはBill Of Materialsの略で、一般的に「部品表」あるいは「部品構成表」と呼ばれるものです。設計部門や生産部門はもちろん、調達部門や保守部門など製造業のあらゆる部門で活用される重要な情報です。部品表と部品構成表は似ていますが、全く異なるものです。

製品がどのような部品構成で作られているかをひも解いたのがBOM

BOM構築において重要なのは「部品表」よりも「部品構成表」です。部品表は単に部品の種類と数を並べたものですが、部品構成表は階層構造で、下位アイテムから上位アイテムへ製造の流れが分かるようになっています。

  • * 本記事ではBOM=「部品構成表」とします。

部品表と部品構成表の違い

BOMはITを活用したモノづくりに不可欠

製品の構成が比較的シンプルな場合、図面さえあれば製造することもできます。しかし、現代の製品は構造が非常に複雑化している場合が多く、図面だけで判断して作るのが難しくなっています。そのため、製品がどのような部品構成で作られているのかをひも解いたBOM(部品構成表)が必要になるのです。

生産管理システムやIoTなどをはじめとするITを活用する際にも、BOMは必須となります。ITは人のように図面が読めないため、ITが製品・部品の存在や構成を認識できるようにBOMを作らなくてはなりません。

また、BOMがあると製品製造に必要なモノと順番が可視化でき、部品調達などの面において、設計段階でキャッシュフローもコントロールできるようになります。

つまり、ITを活用したモノづくりにBOMは必須であり、さらに今後の「モノづくりDX(デジタル変革)」を実現していくうえでもBOMは非常に重要な存在なのです。

BOM構築の本当の目的

BOMの種類

BOMは、大別すると設計段階のE-BOMと製造段階のM-BOMに分かれます。

製造部門が使用するM-BOMは、設計部門のE-BOMを基に必要な情報を追加して作成します。

設計から保守までの流れ

さらに部署での用途によって、次のように4種類に分けられます。

BOMの種類

部署ごとに必要とするBOMが構築されているという実情はありますが、本来は、設計側が製造側とコミュニケーションをとりながら、設計段階で各部署共通の一つのBOMを構築するのが理想です。

デジタル共通言語・部署間の共通言語としてのBOM

なぜならBOM構築の真の目的は、そもそも設計側と製造側の情報を伝達するためのものだからです。そして、さらにBOM構築は「流用化・標準化設計」を実現させるうえでも非常に重要となります。

流用化・標準化設計とは?

原価のコストダウンには上流の改善が必要

これまで製造業は、主に製造段階(下流)の改善で製品原価のコストダウンを図ってきました。しかし、製造原価の80%を確定するのは設計段階(上流)であり、製造段階(下流)でどれほど改善を行ってもコストダウン効果はさほど高くありません。

下流側のみでの改善では、もはや限界にきています。今後、グローバル競争の中で世界の競合企業と戦っていくためには、これまでなかなか改善のメスが入らなかった設計段階での上流改善が不可欠です。

段階別コストダウンのイメージ図

カギは設計段階での部品の流用化・標準化

コストダウンを図るうえで有効な手段は、製造原価の多くを占める材料費を抑えることです。その材料費を抑えるために最も有効なのが、製品や部品の流用化・標準化であり、それを設計段階で行うのが「流用化・標準化設計」です。

流用化・標準化設計で生産効率を向上

「流用化・標準化設計」が実現すると、リスクの高い新規部品の発生を抑えながら、コスト・納期・品質面で安定した部品調達ができるようになります。

設計者が設計段階で仕様要求を満たす既存製品や部品の情報を素早く探せるようにすることが重要で、それにより既存品の流用率を上げることができます。さらに流用率の高い製品や部品を「標準品」として昇格させることで、調達の安定性が増し、コスト削減・納期短縮・品質向上につながります。

流用化・標準化設計によるメリット

製品や部品の流用化・標準化には、材料費を抑えられる以外にもさまざまなメリットがあります。

設計段階のメリット

設計が楽になる
既存の図面を活用し、似た図面を描く作業を削減
スムーズな検索
仕様を満たす設計資産をすぐに見つけ、設計に集中できる環境に
スキル向上に貢献
作業の無駄を省くことで生まれた時間を有効活用し、設計者としてのスキルアップ

製造段階のメリット

原価(Cost)
  • 標準品の活用で材料費を低減し、無駄な新規部品を削減
  • 見積り精度の向上で、適正な受注判断が可能
納期(Delivery)
標準品の在庫確保よる納期の短縮と新規設計の抑制によるスムーズな生産
品質(Quality)
実績のある部品を採用し、安定した品質を確保

このようにこれまで設計者が有していたノウハウをBOM構築で共通言語化・システム化することで、組織として安定的に、高品質な設計が可能となります。

流用化・標準化設計のイメージ

流用化・標準化設計のイメージは「ブロック設計」です。

「ブロック設計」は某ブロックおもちゃのように既存の設計資産を組み合わせることで、多様な仕様に対応できる設計手法です。

流用化・標準化設計のイメージ

  • 不要な新規設計は行わず、できる限り既存のブロックを流用する
  • どうしても新しく設計しなければならないときは、流用することを前提に設計する

こうしてブロック(部品)を絞り、標準化することで、幅広いニーズを網羅しつつ利益率を上げることができるのです。

品目台帳とは?

流用化・標準化設計に必要な品目台帳

流用化・標準化設計を実現するためには、製品を構成する全ての品目を設計資産と捉え、設計者同士で設計資産を共有できるようにしなければなりません。そのために必要なのが品目台帳です。

流用化・標準化設計に取り組む中で、図面ありきで考えようとするケースがありますが、図面だけでは流用化・標準化設計は実現できません。なぜなら、図面は「図面番号(図番)」で管理されており、同じモノでも図番が違えば同じモノとして認識されないからです。

同じモノでも図番が違えば同じモノとして認識されない

最近ではAIによって、類似図面の検索が可能なシステムも出てきていますが、いずれにしても、図面・図番だけでの管理では不十分で、設計段階から品目コードによる管理をすることが重要です。

品目台帳の整備方法

ほとんどの製造業では、品目台帳もしくは品目マスターを製造・購買側で整備していますが、本来は設計側が設計段階で品目台帳を整備するのが理想的です。

品目台帳を適切の整備するために重要なのは、品目コードを用いてモノの識別をし、分類整理する「設計資産の2S(整理・整頓)」です。従来の図面単位での「図面番号(図番)」管理ではなく、品目単位での「品目番号(品番)/品目コード」管理によって、誰もが品目(設計資産)を識別できるようになります。

そして、「設計資産の2S」が実施できれば、必要な部品や設計資産を速やかに探せて使えるようになり、設計資産の流用性が高まります。

設計資産の2Sで行うこと

1.分類・整理

設計視点で同じモノのグループ分けを行います。

2.品目コードと名称の付与

モノを適切に識別する品目コードと品目名をルールに従って付けます。

品目コードと名称の付与

3.属性の整備

似ているようで違うものに対して、スペックでモノ探しができるように属性を整備します。

属性の整備

BOM構築のメリット

BOM構築でできること

設計資産の2Sを実施し、品目台帳が整備できたら、いよいよ流用化・標準化設計のためのBOMを構築します。品目台帳が整っているとカタログフォルダーから適切な部品を選択しやすくなり、設計の生産性・効率化が大幅に向上します。さらに設計前に品目台帳から既存の部品を検索して探すことを運用ルールにすれば、似て非なる図面や品目の新規作成を防ぐことができます。

このようにBOM構築は生産性の向上やコスト削減にもつながるため、継続的な業務改善に欠かせないものとなります。

Bom-jinの構成編集の画面イメージ

BOM管理システムでできること

エクセルではなく専用の部品構成表(BOM)管理ツールを導入することで、品目台帳やE-BOMの情報を一括管理でき、リスト作成の効率が向上します。品目ごとにシートを分ける必要がなくなり、転記ミスも防げるなど正確で生産性の高い部品表の作成が可能です。

さらに生産管理システムと連携も可能で、テキスト・CSV経由での一方通行のデータ連携だけでなく、双方向連携できるシステムもあり、設計・生産のプロセスの最適化が図れます。

部品構成表(BOM)管理システムを利用すると、例えば、以下のようなことが可能となります。

1.品目台帳の作成

  • 品目の分類・属性管理
  • 品目コード整備(最新版および履歴管理、自動採番機能)
  • 品目名称のルール化(単語辞書)
  • 図面・ファイル管理 など

2.構成編集

  • 部品構成の管理・編集
  • 類似コピー
  • 構成の正・逆展開
  • 最新版管理と更新
  • 構成間の差異確認 など

3.出図手配

  • 送付書・部品表作成
  • 設計変更時の再出図 など

4.生産管理システムとの双方向連携

部品構成表(BOM)管理システムでは、製品によって、例えば以下のような生産管理システムとの双方向連携も可能となります。

生産管理システムとの双方向連携

BOM構築事例

BOM構築によって、自社のさまざまな課題を解決した企業の事例を幾つかご紹介します。

株式会社ワイエイシイデンコー

ワイエイシイデンコーの製品導入の効果

遠赤外線ヒーター技術で業界をリードする加熱装置メーカーである株式会社ワイエイシイデンコーは、近年右肩上がりの成長を続ける。部品構成表管理システムによる設計業務の流用化・標準化設計に積極的に取り組み、経営体質強化を推進。

ワイエイシイデンコー様インタビュー PDFダウンロード

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BOM構築による実際の現場の変化を知ることができるインタビューです。中堅・中小企業で現場の改革に関心のある方、ぜひご一読ください。

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株式会社キラ・コーポレーション

  • 事業内容

    切削加工自動化ライン、切削加工機、難削材加工機、ボール盤/タッピング盤の製造・販売

切削加工自動化ライン、切削加工機、難削材加工機、ボール盤/タッピング盤の製造・販売を行う株式会社キラ・コーポレーションは、部品構成表管理システムを導入し、BOM構築で標準化設計を実現。標準機の構成比率が3割から6割に倍増し、設計工数を30%削減。

詳しくはこちら

株式会社東伸

  • 事業内容

    産業用自動化機器(主にスリッター、リワインダー)の設計・製造・販売およびシステム開発

産業用自動化機器(主にスリッター、リワインダー)の設計・製造・販売およびシステム開発する株式会社東伸は、社長直属の全社改革プロジェクトを立ち上げ、社員の意識改革を同時に進めながらBOM構築による標準化・流用化設計を実現。

詳しくはこちら

まとめ

BOM構築のために部品構成表管理システムを導入しますと、設計側と製造側との双方向連携ができ、一気通貫のものづくりを実現できます。ただ部品構成表管理システムを利用すればいいというわけではなく、生産管理システムも考慮したうえでのBOM構築が求められます。しかし、実際にはBOM自体、構築できていない企業が多く、似たものを作ってはいても、よく見ると部品表ということもあります。大塚商会では生産管理システムとの連携にも力を入れていますので、お気軽にご相談ください。

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BOMの検討に役立つ資料

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製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

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  • * コンサルタント、同業、生産管理システムメーカーおよび販売店の方のお申し込みはお断りしております。あらかじめご了承ください。

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