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「結局、何から始めればいいの?」 パソコン1台と三つのルールから始める「文書管理」

文書管理は高価なシステムがなくても開始可能。パソコン1台で今日からできる「三つのルール」を教えます。誰でも実践可能なノウハウで、文書管理の「準備体操」を始めましょう。

難しいことは不要です。今日からできる「三つのルール」

「書類を探す時間が、なんだかもったいない……」

「情報は会社の資産だと言われても、何から手をつければいいのか……」

前回の記事をお読みいただいた方の中には、漠然と感じた方もいるかもしれません。日々、目の前の業務に追われている中で新しい取り組みを始めるのは、腰が重いと感じるのも当然のことです。

しかし、「文書管理」は、決して専門家だけが行う難しいものではありません。その本質は、「必要な書類を、会社の誰もが、いつでも、すぐに見つけられるようにしておく」という、至ってシンプルな考え方に基づいています。

今回は、その考え方を実現するために、お手元のパソコン一台からすぐに始められる「三つの基本ルール」をご紹介します。

ルール1:書類の「置き場所」をたった一つに決める

まず、社内のあらゆる書類データを保存する「置き場所」をたった一つに決めましょう。

なぜ置き場所が一つでなければならないのか?

多くの会社でよく見られるのが、営業担当者のAさんのパソコンにはお客様とのやり取りが、経理担当のBさんのパソコンには請求関連の書類が、といったように情報が個人のパソコンの中に「点在」してしまっている状態です。これを情報の「属人化」と呼びます。

この状態の何が問題なのでしょうか。例えば、Aさんが休暇中にお客様から「先日もらった見積りの件で、至急確認したいことが……」と電話があったとします。もしその見積りデータがAさんのパソコンの中にしかなければ、他の社員は「申し訳ございません、担当者が戻り次第、折り返しご連絡します」と答えるしかありません。お客様を待たせてしまうだけでなく、会社として大きなビジネスチャンスを逃してしまう可能性すらあるのです。

具体的な「置き場所」の作り方

置き場所は、社内の皆さんがアクセスできる共有のサーバーや、クラウドストレージサービス(注)の中に「書類保管庫」や「共有データ」といった名前のフォルダーを一つだけ作ります。

さらにその中に「取引先」「社内資料」「経理」といった大まかな分類のフォルダーを作ると、より分かりやすくなります。例えば、「取引先」フォルダーの中には、お客様の名前でフォルダーをさらに作成します。「株式会社A」「B商事株式会社」といった具合です。会社の書類をまるで大きな図書館の本棚に整理していくようなイメージです。

そして、

「書類は、必ずこの中の適切な場所に入れる」

「個人のパソコンのデスクトップには、一時的にも保存しない」

というルールを徹底するのです。たったこれだけで、情報は特定の「個人」のものではなく、会社の誰もが活用できる「共有財産」へと変わります。

  • (注)インターネット上でデータを保管できるサービスのことです。有名なものですとGoogle Drive(TM)や Dropbox(R)、Microsoft One Drive(R)などがあります。

ルール2:ファイルの「名前」の付け方を統一する

書類の置き場所が決まったら、次はファイルの「名前」の付け方です。これは、文書管理において最も重要なルールと言っても過言ではありません。

なぜ、ファイル名が重要なのか?

皆さんのパソコンの中に、「見積書(最新).xlsx」「見積書(修正版).xlsx」「見積書(最終確定).xlsx」といったファイルがありませんか? これでは、どれが本当に最終版なのか、ファイルを開いてみないと分かりません。こうしたわずかな確認作業の積み重ねが大きな時間のロスを生んでいます。

そこで、誰が見てもファイルを開かずに中身が分かるような、統一された命名ルールが必要になるのです。おすすめは、「日付」「取引先名」「書類の種類」を組み合わせる方法です。

具体的な「名前」の付け方

例えば、

「20250819_株式会社A様_御見積書.pdf」

「20250825_B商事株式会社様_ご請求書.pdf」

このようにルールを決めます。ポイントは、日付を「2025 / 08 / 19」のようなスラッシュ区切りではなく、「20250819」と8桁の数字で入力すること。こうすることで、パソコンが日付順にファイルをきれいに自動で並べてくれるようになり、時系列で書類を探すのが非常に楽になります。

もし、見積書に修正版が発生した場合は、 「20250821_株式会社A様_御見積書_v2.pdf」 というように、末尾にバージョン番号を付けるルールにしておけば、どれが最新のものか一目瞭然です。

このルールがあれば、上司から「先月、A社に提出した最終の見積書、見せてくれる?」と急に言われても、慌てる必要はありません。「取引先」フォルダーの中にある「株式会社A」フォルダーを開き、名前で並び替えれば、一瞬で見つけ出すことができるのです。

ルール3:「紙で来たら、まずスキャン」を合言葉に

最後のルールは、今もなお会社に届く「紙」の書類への対応です。せっかくデータの置き場所と名前のルールを決めても紙の書類が個人の机に保管されていては意味がありません。

なぜ、すぐにスキャンする必要があるのか?

会社にある情報が、「データのもの」と「紙のもの」に分かれていると、本当の意味での情報共有は実現できません。

例えば、経理担当者が「B商事様への請求は、確か紙で保管してあるはず……」と考えている一方で、営業担当者は「いや、PDFで送ったデータが最新のはずだ」と認識していたら、いつか必ずトラブルの原因になります。

「情報は必ず1カ所に」。この原則を守るために紙の書類はデータ化して、ルール1で決めた「置き場所」に集約する必要があるのです。

具体的な「スキャン」の習慣化

具体的な「スキャン」の習慣化のためには、簡単な仕組み作りが効果的です。例えば、複合機の横に「スキャン待ちBOX」を一つ用意します。そして、「郵便物などで紙の書類を受け取った人は、まずこのBOXに入れる」というルールを決めます。そして、毎日決まった時間に当番の人がそのBOXの中身をスキャンし、ルールに従ってフォルダーに保存していくのです。なお、このBOXは施錠をしておくことで、スキャン前の原本の紛失や改ざんを防ぐことができます。

スキャンした後の紙の原本は、契約書など法律で保管が義務付けられているものを除き、思い切って処分してしまいましょう。「原本は、念のため……」と全て保管していると結局紙の書類は減っていきません。

まずは1カ月、この「三つのルール」を実践してみてください

いかがでしたでしょうか。

1. 置き場所を一つに決める

2. ファイル名のルールを統一する

3. 紙はすぐにデータ化する

この三つのルールは、いわば文書管理の「準備体操」のようなものです。まずはこの体操を1カ月だけでも続けてみてください。きっと、あなたの会社の「書類を探す時間」は劇的に削減され、社員の皆さんがもっと本質的な業務に集中できる時間が増えているはずです。

そして、この取り組みに慣れた頃、おそらくあなたは次なる課題、あるいはさらなる欲求に気付くはずです。

「ファイル名のルールを、うっかり間違えてしまう社員がいるな……」

「見積書は営業部だけ、給与明細は総務部だけが見られるようにアクセス権を設定できないだろうか?」

「ファイル名だけでなく、『取引先』や『日付』といった情報で、もっと簡単・確実に検索できたら便利なのに……」

そして、この取り組みを始めると、多くの方がこう感じるはずです。

「うちはDropbox(R)を使っているから、それで十分じゃないか?」と。

一見正しいこの考え方、実は大きな落とし穴があります。次の章で、その理由を詳しく解説します。

「Dropbox(R)と何が違うの?」オンラインストレージと「文書管理」を使い分ける会社の新しい常識

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