TNFD提言に基づく情報開示

当社は、「自然や社会とやさしく共存共栄する先進的な企業グループとなる」ことをミッションステートメントの目標に掲げています。2000年にはISO14001の認証を取得し、環境に対する社会的責任として次世代に持続可能な環境を引き継ぐことができるよう、環境保全活動に積極的に取り組んできました。
当社は2025年よりTNFD(注1)の理念に賛同し、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(注2)に基づき、自然との接点や依存関係、インパクト、リスクおよび機会など、自然関連課題の評価を実施しました。
本開示では、その評価結果を踏まえ、TNFD提言に沿った自然関連情報を報告しています。
今後も自然関連情報の開示の充実に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献できるよう取り組んでいきます。

  • (注1)TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):企業や金融機関が自然資本への依存度や事業活動による自然への影響、そしてそこから生じるリスクと機会を把握し、財務情報として開示することを目的に設立された国際的枠組み
  • (注2)LEAPアプローチ:TNFDにより開発された自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ手法

ガバナンス

大塚商会は自然資本をサステナビリティ経営の重要課題と考え、マテリアリティの一つに「地球環境保全への貢献」を掲げています。その一環で、TNFD提言に基づき、戦略への統合、取り組み推進、情報開示を見据えた自然関連課題の検討を進めています。この開示はサステナビリティ委員会で検討を行い、取締役会での承認を受けています。

気候変動関連の報告体制

サステナビリティ委員会については下記リンクをご参照ください。

サステナビリティ委員会について

戦略

TNFDのLEAPアプローチを参考に、自然関連への依存・インパクト、優先地域の評価も踏まえながら、初年度は当社自社操業における3事業(システムインテグレーション事業/サービス&サポート事業/ホテル事業)における直接操業を対象に依存・インパクト/リスク・機会の検討を行いました。

【Locate】事業と自然との接点の特定

自社事業における自然への接点を把握するため、国際的な分析ツールであるENCORE(注3)を活用しながら各事業分野の自然関連の依存・影響の内容と重要性を整理し、依存・影響ヒートマップの形式で評価しました。

  • (注3) ENCORE:自然関連リスクへの暴露を調査し、自然への依存とインパクトを理解するためのツール

依存ヒートマップと影響ヒートマップの詳細は以下のリンクをご覧ください。

依存影響ヒートマップ(PDF:200KB)

【Locate】優先地域の特定

TNFD では、優先地域とは「重要な地域:当社にとって財務リスクの高い地域・拠点」かつ「要注意地域:事業活動の影響を受けやすい地域」と定義しています。また TNFD では「事業活動の影響を受けやすい地域」を以下5つの基準のうち1つ以上に当てはまる地域と定義しています。

自社事業における優先地域を特定するために、重要な自然関連の依存とインパクトを特定したマテリアルな地域として、システムインテグレーション事業とサービス&サポート事業を中心に行う自社ビルとホテル事業を行う宿泊施設で整理し、要注意地域の特定を各種ツールを用いて調査しました。

TNFDの定義

TNFDは、要注意地域を以下の5つの基準のうち1つ以上に当てはまる場所として定義しています。

地域活用ツール
生物多様性にとって重要な地域IBAT(保護地域、KBA、絶滅保護種)
生態系の完全性が高い地域Global Forest Watch(global biodiversity intactness)
生態系の完全性が低下している地域Global Forest Watch(global biodiversity intactness)
水リスクが高い地域WRI Aqueduct(Physical Risks Quantity)
先住民・地域にとって重要な地域Global Forest Watch(Indigenous and Community Lands)

調査結果から3拠点を優先地域として特定しました。いずれもホテル事業を展開する宿泊施設です。

優先地域活用ツール
一宮シーサイドオーツカ
(千葉県長生郡一宮町)
生物多様性にとって重要な地域と隣接(0km)
琵琶レイクオーツカ
(滋賀県大津市)
生物多様性にとって重要な地域と隣接(0km)
いじか荘
(三重県鳥羽市)
生物多様性にとって重要な地域と隣接(0km)
水リスクが高い地域(沿岸部洪水リスクHigh)

IBAT(保護地域)

一宮シーサイドオーツカ

出典:IUCN絶滅危惧種レッドリスト、保護地域および主要生物多様性地域(KBA)データは、統合生物多様性評価ツール(IBAT)(https://www.ibat-alliance.org)から取得したものです。本データは、BirdLife International、Conservation International、IUCN、およびUNEP-WCMCによって提供されています。詳細については、ibat@ibat-alliance.org までお問い合わせください。

琵琶レイクオーツカ

出典:IUCN絶滅危惧種レッドリスト、保護地域および主要生物多様性地域(KBA)データは、統合生物多様性評価ツール(IBAT)(https://www.ibat-alliance.org)から取得したものです。本データは、BirdLife International、Conservation International、IUCN、およびUNEP-WCMCによって提供されています。詳細については、ibat@ibat-alliance.org までお問い合わせください。

いじか荘

出典:IUCN絶滅危惧種レッドリスト、保護地域および主要生物多様性地域(KBA)データは、統合生物多様性評価ツール(IBAT)(https://www.ibat-alliance.org)から取得したものです。本データは、BirdLife International、Conservation International、IUCN、およびUNEP-WCMCによって提供されています。詳細については、ibat@ibat-alliance.org までお問い合わせください。

WRI Aqueduct(沿岸部の洪水リスク)

出典:WRI Aqueduct、2025年10月2日にアクセス
aqueduct.wri.org

【Evaluate】依存と影響の特定

Locateフェーズにて実施した依存・影響ヒートマップの評価により社固有の観点も踏まえシステムインテグレーション事業においては主にIT機器の販売に伴う温室効果ガス・廃棄物の排出より自然に影響を与える可能性が高いことが分かりました。ホテル事業においては、水資源や文化サービスへの依存、外来種の侵入による影響を自然に与えている可能性が高いことが確認できました。

このうち、温室効果ガスの排出による影響の詳細は、TCFDシナリオ分析に記した通りです。

TCFD提言に基づく情報開示

廃棄物の排出については、オフィスで使用するIT機器の新規販売に伴い固形廃棄物は出る一方で、下取りを行い、多くが有価物としてリユース・リサイクルされており、買取業者や産廃業者とコミュニケーションをとり、処理方法を把握しています。

また水の利用については、宿泊施設による水の利用量、排出量を管理していますが水資源の循環を行っており、排水においても国や自治体が定める水関連法令の基準を超えた排水が発生しないように管理することで、自然への依存影響を極力下げています。WRI Aqueductによる分析結果などを踏まえても、現時点では事業単独で自然の状態を大きく変化させるほどではないと考えられます。

なお、当社の優先地域の特定に当たり、ホテル事業の3拠点(一宮シーサイドオーツカ、琵琶レイクオーツカ、いじか荘)は、複数の自然保護地域(IUCN管理カテゴリーIV・V・VI、ラムサール条約湿地等)に隣接する場所に位置していることを認識しました。

これらの保護地域には、野生生物保護区、国立公園、漁業資源保全区域、湿地保全地域など、多様な自然環境が含まれています。

またそのうち、いじか荘についてはWRI Aqueductによる分析の結果、沿岸部洪水リスクHighエリアに面していることを認識しましたが、別途調査を行ったところ、海抜が高いためリスクは比較的低いことが分かりました。現時点では、外来種の侵入を含め、当社の事業活動がこれらの保護地域へ直接的な影響を及ぼしている事実は確認されていません。

今後も、自然環境の保全に配慮し、隣接する保護地域への影響の有無について継続的に監視し、適切な対応を進めてまいります。

またホテル事業は文化サービス(観光客を惹きつける景観美)に依存しています。

そのため、今後は周辺環境の保全活動や地域文化・自然資源の価値を高める取り組みへの参画など、持続可能な観光に貢献する活動を検討していきたいと考えています。

戦略-シナリオ分析

【Assess】リスク・機会の特定

上記の自然との接点および依存・影響の関係を踏まえ、将来的にどのようなリスク・機会から財務的な影響が生じるか、シナリオ分析によって把握しました。その結果、次の表のようなリスク・機会を認識しました。
シナリオの策定にあたり TNFD の推奨するシナリオを考慮し、シナリオ#1 を分析の対象に、影響評価を実施しました。

【Prepare】リスク・機会を踏まえた取り組み

これまでの評価結果をもとにリスク、機会に対して対応策の検討を行いました。

代表的な自然資本に関連するリスク・機会と財務影響と対応策

システムインテグレーション事業/サービス&サポート事業

 想定される
リスクと機会
事業
インパクト
時間軸重要度
評価
対応策
移行リスク水資源に対する規制強化や水価値高騰コスト増長期雨水の利用や社員への過剰な水使用の抑制に関する周知を実施
物理リスク水ストレスのある地域に事業拠点が所在する場合、水資源の制約により従業員にとって十分な量の水が確保されないことによる(トイレ・冷暖房使用制限)ことで事業継続に影響を及ぼすリスク売上機会の損失長期雨水の利用や社員への過剰な水使用の抑制に関する周知を実施
機会販売と同時に下取り・回収を行い下取り等で固形廃棄物は発生するものの、大部分は有価物として再資源化廃棄物を削減することで、CO2削減、コスト削減に寄与売上の向上、ブランド価値の向上
支出削減
短期
  • 再使用可能な機器は継続してリユース業者へ販売し、再使用が困難な機器についても分別を徹底することで、素材として再資源化可能な業者へ引き渡しを実施
  • やむを得ず発生する廃棄物については、焼却や埋立に依存しない処理を行う産業廃棄物処理業者へ優先的に排出
  • リサイクルしやすい商品の仕入れ・購入を推進

ホテル事業

 想定される
リスクと機会
事業
インパクト
時間軸重要度
評価
対応策
移行リスク大量固形廃棄物の増加により、保全重要度の高い自然などに大きな影響を与えることによるレピュテーション低下や操業許可の喪失売り上げ低下、ブランド価値の喪失短期
  • 固形廃棄物を適切に処分できる業者に委託
  • 需給を予測し、食品ロスを減らす
  • プラスチックのアメニティ使用の削減に取り組む
物理リスク水不足(水ストレス)による事業継続リスク事業停止に伴う売上機会の損失長期
  • 温泉やプールの水循環・再利用
  • 過剰な水使用の抑制に関する周知
機会景観保全投資 により観光地の価値向上売上の向上、ブランド価値の向上長期
  • 水源地の涵養のため、森林保護へ投資
  • 琵琶レイクオーツカ:琵琶湖の水質改善のため琵琶湖に生える枯れ葦を使用したレイクパピルス(R)を名刺や封筒に利用
  • 社員による琵琶湖の枯れ葦を刈り取るボランティア活動を実施

これまでの評価結果をもとにリスク、機会に対して対応策の検討を行いました。

自然資本に関連するリスク・機会と財務的影響(PDF:161KB)