大塚商会×アドビ　Creative Cloud動画
第4話『直しで真っ黒』

ここにございましたＣ八、喜六という二人の男。版元の旦那から戻ってきた紙を前にＣ八が腕組みしたままウンウン考え込んでおりまして。

（喜六）
Ｃやん、もうええ加減にしてぇな。さっきから黒っぽい紙を見たままウンウンうなってばっかりで、ちぃっとも中身がどんなんか決めてくれへんやないか、Cやんが中身を決めてくれんことにはこっちも作業に入られへんねんさかい

（Ｃ八）
……これは「おとつい」か……おととい、でもええやないか……大阪イチの……ホンマかいな、ホンマに一番か確認せなアカンやないか……
（喜六）
Ｃやん！

（Ｃ八）
ん？ お、喜ぃ公スマン。版元の旦さんが書いてきた直し、つまり修正部分を再修正しようとしてるねんけど、黒いところに墨文字なもんやから読～み～にくい読みにくい。その上ぐるぐる塗りつぶされてる場所や隙間に入りきらんし、修正が飛び飛びに書いてあったりしてて確認と反映の作業の繰り返しでこっちも大変やねん。もうちょっと待ってくれな。

（Ｃ八）
えーっと、「ココニアタラシホンノセンデンヲイレ」がめついやっちゃ。で……あらー、ココは字と字が重なって読めんがな。ふん、ふんふん。まあ、こんなもんでええやろ。ほな喜ぃ公、後は頼むで。
（喜六）
ぐごごごごごご、ふぇ？ あ、うん……

（Ｃ八）
起きぃ喜六。版元の旦さんにうまいやり方を相談してくるからな！　ちゃんとやっとけよ頼んだぞ。こんちはー、旦さんいたはりますか？
（版元の旦那）
おーＣ八やないかどないした？ ふん、ほう……まあ、店先では話もできんし、ちょっと裏へ回ってくれるか？

（Ｃ八）
実は旦さん、かわら版の直しの件ですねんけどね……
（版元の旦那）
ふんふんふん。いやいや、お前の言い分も分かるけども、私も好きこのんでいろいろと注文をつけてるわけやないんや。

（版元の旦那）
何人も職人を抱えてるとそれぞれ独特の言い回し、言葉の使い方の揺れというものがある。これを整えていくのも版元の仕事なんや
（Ｃ八）
いえ旦さん、直しを入れるのをやめてくれ言うてるんやないんです。

（Ｃ八）
どう直せばええんか、真っ黒になって読みにくい、分かりにくいっちゅーのが困ったとこなんで
（版元の旦那）
どないしたらええんやろなあ。まあこんな時に頼りになるのはやっぱり錆田の先生ということになるかいな。ひとつ、喜六も連れて相談にいってもらえるか

（Ｃ八）
というわけですねんセンセ。なんかええ手はおまへんやろか
（錆田の先生）
長々ようしゃべったなＣ八。まあ茶ぁでも飲みいな。つまりは、元の文章と、版元はんの直しの文章を見やすぅ分けたらええのんか

（Ｃ八）
それも大事なんですが、「もうこれ以上の直しは無い」っちゅーシルシもないと困るんですワ。いままではいちいち旦さんのお帰りを待って、ハンコを捺してもろてましたんや

（錆田の先生）
そら大変じゃな。ここは原点に返って、PDFを使こたらどないや
（Ｃ八）
えっPDF？ それってどこで見ても見た目がおんなじな代わりに、書いたり消したり直したりはできへんものや無かったですか？

（錆田の先生）
それは大きな勘違いやぞＣ八。PDFは、文字の打ち替えや絵の調整なんかもできるし、必要に応じて「それ以上変更でけへんようにする」ことも自由自在なんや。もちろん注釈をいれるのもカンタンやし、最終確認の署名をもらうようにすればハンコ待ちもなくなるで

（Ｃ八）
直しを見落とすことも見間違えることもなく、終わったら署名も入れられる……PDFは役に立つンですなあ。早速PDFをつこて作業に取りかかりまっさ

（Ｃ八）
先生、えらいことになりました！
（錆田の先生）
いったいどないしたんやそんなにあわてて、PDFでうまいこといったんと違うんか

（Ｃ八）
ええ、PDFつこて、なにもかもうまいこといってましてんけど、喜六に直しを頼んだらあいつ「修正すんのはもういやや！」いうてPDFをロックしてしまいましたんや

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