気候移行計画

当社は、「自然や社会とやさしく共存共栄する先進的な企業グループとなる」ことをミッションステートメントの目標に掲げています。2000年にはISO14001の認証を取得し、環境に対する社会的責任として次世代に持続可能な環境を引き継ぐことができるよう、環境保全活動に積極的に取り組んできました。
地球温暖化と気候変動は、私たちの時代の最も緊急かつ重要な課題の一つです。世界気象機関は、2024年の世界平均気温が、産業革命前の水準と比べて1.55℃上回ったと発表しました。日本の気象庁によると日本の平均気温も観測史上最高だったと発表しています。気温上昇は、異常気象、海面上昇、生態系の損失、健康への影響をもたらします。大塚商会では、2050年ネットゼロの実現のため、サステナビリティ委員会で移行計画を検討、取締役会の承認を得て気候移行計画を策定しました。この移行計画はパリ協定・日本国のカーボンニュートラル宣言に整合しています。

ガバナンス

大塚商会は気候変動を重要な経営課題と考え、マテリアリティの一つに「地球環境保全への貢献」を掲げています。
取締役会では、サステナビリティ委員会から気候変動関連の報告を受け、取締役会規程に基づき、重要なリスクおよび機会についての審議・決議を行い、対応の指示およびその進捗に対する確認を行っています。
サステナビリティ委員会は取締役会の直下に属した組織であり、サステナビリティに関する全社方針や目標の策定、推進体制の構築・整備、移行計画の策定・実行及びISO14001のマネジメントシステムを活用した各活動のモニタリングを通して、SDGsの達成に貢献し、ESG課題へ対応しています。また、気候変動関連の新たな取り組みが必要になった場合は、実施の要否を検討し、実行しています。
TCFD提言に沿った開示項目やサステナビリティ委員会で重要と判断された事項については、サステナビリティ委員会の委員長であるCSOが、取締役会にて年に2回(上下決算時)報告を行っています。

気候変動関連の報告体制

気候変動を含むESGを専門領域とする独立社外取締役を迎え、その助言を活用することで、取締役会全体の知識と能力の向上をはかっています。
また、中・長期経営方針に基づく計画を策定する際に、気候変動関連リスクと機会を考慮し、取締役会で決定しています。

サステナビリティ委員会については下記リンクをご参照ください。

サステナビリティ委員会について

戦略

2050年ネットゼロへのロードマップ

大塚商会では、当社連結全体におけるGHG排出量を2030年までにScope 1+2を2021年比で42%削減、Scope3(カテゴリ1、11)を2021年比で25%削減する目標をたて、SBT認定を取得しました。さらに2050年ネットゼロを目指すことを「環境方針」で明記しています。
特にScope2はバーチャルPPAを活用し、2028年には排出量0を実現する見込みです。
今後も、事業活動におけるGHG排出量の削減に取り組み、脱炭素社会への移行を事業機会ととらえ、自社の事業成長と環境負荷の低減の両立を目指します。

財務計画

1.5度目標を達成するために事業で排出するGHG削減を目的として、グループ全体の電力使用量100%をカバーする供給量の小規模分散型太陽光発電所由来のバーチャルPPAを契約しました。2024年から順次供給を開始しており、2050年までに約23億円の間接費増加を見込んでいます。

気候変動への対応は「責任ある企業活動の推進」において極めて重要性が高い課題であるとの認識のもと、Scope3も含むGHG排出量の削減率をKPIとして設定し、サステナビリティ・リンク・ローンを活用しています。

低炭素製品またはサービス

LED照明、BEMS

企業のお客様に消費電力の少ないLED照明を提供し、消費エネルギーの削減を支援しています。現在取り扱っているLED照明とBEMSは省エネルギーに貢献するものであり、売上増が見込まれます。LED照明は蛍光灯と比べ大幅に消費電力が少なく、さらには、数年前のLED照明と最新のLED照明では消費電力が半分になっているケースもあります。LED照明は脱炭素の取り組みに貢献する商品であり、かつ照明という絶対に必要なものであるため、消費エネルギーを減らしたい顧客にとって最初の取り組みとして採用されることが多いです。BEMSは電力使用状況を可視化し、電力の最適利用を支援します。ビル全体だけではなく、フロア単位での管理もできるので、フロアごとに監視・制御方法を調整することができます。効率的にビル全体の電力使用量を管理できます。

ペーパーレス

事業活動におけるDXの進展に伴い、ペーパーレス化が加速しています。特に、環境負荷の低減や業務効率化を目的としたデジタルドキュメント管理システムの需要の増加が見込まれ、当社ではこの領域において積極的な取り組みを行っています。デジタルドキュメント管理に特化した専門部署があり、クラウド型文書管理や電子契約サービスの導入支援など、お客様の業務フローに合わせた最適なソリューションを提案しています。

サーキュラーエコノミー

循環型経済(サーキュラーエコノミー)の浸透により、資源の再利用や廃棄物削減がますます重要視されています。これに伴い、回収サービスや非物理的なサービスの価値が向上し、関連するビジネス機会が増加しています。大塚商会では、無料のトナー回収サービスをはじめ、パソコンや周辺機器のデータ消去・買取りサービス、機密書類の溶解処理サービスなど、リユース・リサイクルを促進するサービスを提供しています。サプライチェーン全体でのサーキュラーエコノミーを実現する新たなサービスの開発に取り組んでいきます。

テレワーク商材

働き方の多様化に伴い、多くの企業でテレワークの導入・定着が進んでおり、それに伴うIT環境の整備が不可欠となっています。大塚商会では、テレワーク環境の構築を支援するハードウェア・ソフトウェア・セキュリティ商材を幅広く提供しています。エネルギー消費の削減につながる省電力型機器やカーボンフットプリントの低い製品の提供を通じ、脱炭素社会の実現にも貢献していきます。

シナリオ分析

サプライチェーン全体を対象に気候変動に伴い生じ得るリスクと機会について洗い出し、事業への影響の分析を行い、2030年・2050年時点の影響について考察しました。

 1.5℃未満シナリオ4℃シナリオ
参照シナリオIEA NZE2050IPCC RCP8.5
世界感産業革命前の水準と比較し、平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ。
持続可能な発展を実現するため、大胆な政策や技術革新が起こり、その分脱炭素社会への移行にともなう社会変化が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。
産業革命前の水準と比較し、平均気温が約4℃上昇すると見込まれている。
成り行き任せに近く、社会の変化は起こらないが、気候変動に伴う異常気象や災害が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。
  • * シナリオ分析を実施した期間(2024年10月~2025年1月)

代表的なリスク・機会における財務への影響

移行リスク

リスク・機会に関する
事業への影響
財務への影響(期間累計)対応策
短期
(2026年)
中期
(2030年)
長期
(2050年)
社有車に使用する化石燃料への炭素税の課税に伴う支出が増加-約4億~
-6億円
0~
-約50億円
社有車の電動車への切り替えを進める
事業活動におけるペーパーレスが進展し、紙需要が減少することに伴い、紙製品の売上が減少0~
-約40億円
0~
-約160億円
紙の代替となるITシステムの積極的な提案

物理リスク

リスク・機会に関する
事業への影響
財務への影響(期間累計)対応策
短期
(2026年)
中期
(2030年)
長期
(2050年)
サプライチェーンが寸断され、事業活動が困難になり、売上が減少影響なし-約7億~
-13億円
-約9億~
-17億円
物流網寸断時にも、別の物流センターからの配送、他の調達先からの調達といった代替策を講じられるサプライチェーンの最適化
データセンターや物流センター等における冷却システムの使用が増加し、エネルギー費用が増加する-約4千万~
-1億円
-約4千万~
-1億円
-約4千万~
-1億円
データセンターは空調コストを低減できる寒冷地、物流センターは太陽光パネル等の再エネ活用可能施設にて運用を継続する

機会

リスク・機会に関する
事業への影響
財務への影響(期間累計)対応策
短期
(2026年)
中期
(2030年)
長期
(2050年)
環境に配慮した商品、サービスのニーズが向上0~
+約230億円
0~
+約560億円
0~
+約1兆円
環境に配慮した商品、ソリューションの提案を強化する(LED・電力販売・サーバー仮想化・BEMSなど)、クラウドソリューションやデータセンター関連の提案を強化する
環境に配慮できている企業の取り組みが評価、認知されることで、新たなビジネスチャンスや新規顧客の獲得につながる0~
+約180億円
0~
+約180億円
環境の取り組みを強化し、環境関連情報の開示、外部機関の評価項目にしっかり対応し、ESG指標の好スコアを取得する
  • * 「―」は事象が発生していないことを、「影響なし」は事象が発生しているが、財務への影響がないことを表す

分析の詳細は以下をご覧ください。

気候変動関連リスク・機会に関するシナリオ分析と戦略(PDF:420KB)

バリューチェーンエンゲージメント

大塚商会では、自社だけでなく、バリューチェーン上のサプライヤーをはじめとする様々なステークホルダーに対して、働きかけを行っています。

当社グループが参画する主なイニシアティブ

JCSSA(一般社団法人日本コンピューターシステム販売店協会)

「ITで日本を元気にする」をスローガンにした団体で、日本企業のコスト削減、生産性向上を支援しています。当社の気候変動の責任者である社長が理事となっており、業界団体の意思決定に関与しています。
節電や省エネに関する会員への周知などは行っていますが脱炭素に関連する意思決定はしておりません。脱炭素社会の実現に向け、業界をけん引できるよう取り組んでいきます。

環境NGOとの取り組み

WWFジャパンに対する寄付を毎年行っており、意見交換をしています。コンサベーション・インターナショナルとともに、アグロフォレストリーの手法を活用したブラジルのアマゾンの森林を再生するプロジェクトを2022年から実施しています。

サプライヤーへのアプローチ

地球上で起きている環境問題や人権・労働問題に対して、地球と社会との調和を保ちながら持続的な成長が可能な商品・サービスの提供を実現するために、サプライチェーンを構成するサプライヤーとの取り組みを強化する必要があります。
大塚商会では2022年にサステナブル調達方針とガイドラインを策定し、サステナブルな調達に理解を求めています。また、2024年からはサプライヤーと締結する契約書にこれらの遵守をもとめる条項を追加しています。
サステナブルな調達活動に関して理解を深めていただくとともに、取り組み状況を確認することを目的とし、2022年から主要なサプライヤーに質問書を送付し、取り組み状況を調査しています。GHG排出量の削減目標の有無やSBT認定の有無、GHG排出量の実績を確認しています。また、GHG排出量の算定をしていないサプライヤーに対しては、算定方法の参考資料を提供しています。

指標と目標

事業活動に伴うGHG排出量を、2030年までに2021年比で以下の通り削減する目標をたてています。
この目標はSBTイニシアティブから「1.5℃水準」(Scope3は「WB2℃水準」)の科学的根拠のある削減目標であると認定を受けています。

Scope 1+2
42%削減
Scope 3
25%削減
(カテゴリ1:購入した商品やサービス、カテゴリ11:販売した製品の使用による排出)

排出量実績と目標

GHG排出量の実績と進捗率

GHG排出量の単位:tCO2

Scopeカテゴリの説明対象となる主な活動基準年
(2021年)
2023年実績進捗率
Scope15,7995,63797.2%
Scope210,1527,75476.4%
カテゴリ1購入した製品サービスパソコン、複合機、サーバー、LEDの仕入れ1,749,9451,995,592114.0%
カテゴリ2資本財自社で使用するパソコン、複合機、サーバー34,12219,57157.4%
カテゴリ3Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動社有車で使用するガソリンの生産等2,9722,58587.0%
カテゴリ4輸送、配送<上流>仕入先から当社倉庫、当社倉庫から顧客への配送21,03845,006213.9%
カテゴリ5事業から出る廃棄物産業廃棄物、事業系一般廃棄物3951,097277.8%
カテゴリ6出張出張で使用する電車、タクシー、飛行機2821,633579.1%
カテゴリ7雇用者の通勤通勤に使用する電車、バス3,5614,118115.7%
カテゴリ8リース資産<上流>借りているデータセンター5,3463,23960.6%
カテゴリ9輸送、配送<下流>全て自社荷主のためカテゴリ4に含むため、カテゴリ9は対象となる事業活動が無い00
カテゴリ10販売した製品の加工該当する事業がない00
カテゴリ11販売した製品の使用パソコン、複合機、サーバー、LED976,277410,85642.1%
カテゴリ12販売した製品の廃棄パソコン、複合機、サーバー、LED127,13812,97910.2%
カテゴリ13リース資産<下流>該当する事業がない00
カテゴリ14フランチャイズ該当する事業がない00
カテゴリ15投資影響が軽微なので除外00
Scope32,921,0772,496,67585.5%

大塚商会は、Scope1,2,3の排出量実績の開示を2021年から毎年行っています。
また、GHG排出量とエネルギー使用量については、2024年実績から第三者保証を受ける予定です。

その他の指標の実績については以下をご覧ください。

サステナビリティデータについて