クラウド型の生産管理システムとは?メリット・デメリットや導入ポイントを解説

2024年10月 3日公開

製造業における業務効率化やDX実現には、生産管理システムが欠かせない存在となっています。しかし、導入には初期費用や運用コストがかかるため、これらの負担を理由に導入をためらう企業も多いのではないでしょうか。また、コスト以外にも、運用体制の構築や導入後の運用に対する不安を抱える企業も少なくありません。本記事では、クラウド型生産管理システムの基本的な概念、そのメリットとデメリット、導入時に考慮すべきポイントについて詳しく解説します。

クラウド型生産管理システムとは

生産管理システムは、製造業における「モノの流れ」と「情報の流れ」を管理するシステムです。生産管理システムを導入してモノづくりに関する情報を一元管理することで、効率的かつ精度の高い生産管理が実現し、業務フローの最適化が図れます。

従来の主流だったオンプレミス型と、インターネット上のサーバーを利用して運用するクラウド型生産管理システムとの違いや、クラウド型の仕組みについて詳しくみていきましょう。

オンプレミス型との違い

オンプレミス型の生産管理システムは、クラウド型とは異なり、自社でサーバーを導入してシステムを運用する方式です。カスタマイズの自由度や拡張性が高く、コストとリソースが許す限り、機能の追加や既存システムとの連携、データ容量の追加などを自社の環境に合わせて柔軟に設計できます。また、自社のネットワーク内で運用するため、ノウハウを持っている企業であればセキュリティ面のコントロールがしやすい点もメリットです。

ただし、初期費用や運用コストが高く、構築期間が長いこと、システムの拡張やアップグレードに新たな機器の購入や設定が必要であることなどがデメリットとして挙げられます。

パブリッククラウド型とプライベートクラウド型の違い

クラウド型の生産管理システムには、大きく分けて、パブリッククラウド型とプライベートクラウド型の2種類あります。

パブリッククラウド型は、ベンダーが提供するサーバー・ソフトウェア・回線などの環境をユーザー全体が共有して利用する形態です。生産管理システムのようなソフトウェアも含めて提供される形態は「SaaS(Software as a Service)型」と呼ばれており、昨今ではあらゆるソフトウェアでこのSaaS型が増加しています。

プライベートクラウド型は、自社専用に構築したクローズドな環境で、クラウドのメリットを生かしながら利用する形態です。一般的には、サーバーやソフトウェアを自社で調達し、データセンターを介してクラウド上で活用することになります。上述したパブリッククラウド型とは異なり、サーバーやソフトウェアを自社で購入またはレンタルする必要はありますが、オンプレミス型のシステムをクラウド型のように運用することも可能です。

クラウド型生産管理システムのメリット

クラウド型の生産管理システムを利用するメリットを見ていきましょう。

業務継続性が向上する

オンプレミス型の場合、自社にサーバーを設置するため、火災や地震などによってサーバーが破損してしまい、重要なデータが消失する恐れがあります。また、不法侵入・盗難によって情報が漏えいする可能性もあるため、特に中小製造業では徹底した対策をとるのが難しい場合もあるでしょう。

一方、クラウド型では災害や不法侵入への対策を十分に行ったデータセンターにサーバーを設置して運用するため、安定稼働できます。昨今では緊急時に備えたBCP(事業継続計画)対策が求められていますが、クラウド型を利用することで顧客からの信用を得やすくなるでしょう。

初期投資を抑えられる

オンプレミス型の場合、自社でサーバーやソフトウェアを購入する必要があるため、一般的に数百万円から数千万円の導入コストがかかります。導入するソフトウェアやカスタマイズの内容に応じてコストは増減しますが、特に中小製造業にとっては気軽に導入しづらいのが実情です。

一方、クラウド型の中でも、パブリッククラウド型の場合はサーバーを自社で購入する必要がないため、導入コストだけでなく設置場所や電気代などの付帯的なコストも抑えられます。ソフトウェアも含めて月額数万円程度から利用開始できるシステムもあるため、初期投資を大幅に抑えて導入できる点が大きなメリットです。

運用負荷を低減できる

オンプレミス型の場合、サーバーやネットワークの監視、セキュリティ対策、バージョンアップ対応といった管理業務が必要になり、担当者の負担が大きくなりがちです。サーバーの管理のために出社しなければならないことも多く、テレワークに対応しづらいといった課題もあります。

一方、クラウド型の場合は管理業務の大半を外部のベンダーに委託できるため、管理担当者の負担を軽減できます。専門知識を持ったベンダーが監視やセキュリティ対策を行うため、自社で管理するよりも安心して利用できるでしょう。また、管理担当者はもちろん、従業員もインターネット経由で自宅や外出先から生産管理システムにアクセスできるため、テレワークを推進しやすくなる点もメリットです。

クラウド型生産管理システムのデメリット

次にクラウド型の生産管理システムのデメリットを見ていきましょう。

カスタマイズ性が低い

クラウド型の生産管理システムは、個別のカスタマイズには対応していないケースもあり、自社独自の運用をしているとシステム化できない可能性があります。その場合は、システムに業務を合わせたり、足りない機能を別のシステムで補ったりする必要がありますが、運用が複雑になる、余計な手間が発生するといったように、一時的に従業員の負担が増えてしまうことがあります。

通信障害に弱い

クラウド型の生産管理システムはインターネットへの接続が不可欠なため、通信障害が発生するとシステムを利用できなくなるリスクがあります。回線が不安定な工場内などでシステムを利用していると、システムの動作が遅くなって業務効率が下がる恐れもあるため、事前にネットワーク環境を整備する必要があるでしょう。

十分なサポートを受けられない場合がある

SaaS型の生産管理システムは導入コストを抑えてすぐに利用できる点がメリットですが、ベンダーによっては導入時のサポートが手薄になる場合もあります。専門的な情報システム部門があり、自社で試行錯誤しながらシステムを導入できるのであれば問題ありませんが、そうではない中小製造業などでは苦労するかもしれません。せっかくシステムを導入してもうまく活用できなければ意味がありません。そのため、ベンダーのサポート体制も吟味したうえでの選定が重要になります。

クラウド型生産管理システムでできること

製造業でよくある課題クラウド型生産管理システムで解決
受注に対しての納期や、まだ出荷できていない受注残の情報が社内で共有できていない得意先からの受注情報が管理できる
  • 「いつ、どこから、何を、幾つ、いくらで、いつまでに」納品するかの管理
  • 出荷できていない受注残を管理
必要な部材の発注状況や納期に対する進捗(しんちょく)状況、まだ入荷していない発注残の情報が社内で共有できていない生産管理システムで製造に必要な材料・部品の発注情報を管理できる
  • 「いつ、どこへ、何を、幾つ、いくらで、いつまでに」発注するかを管理
  • 受け入れできていない発注残を管理
現場に対して漏れなく生産指示できているか、計画に対してどこまで進捗しているかが社内で共有できていない生産指示および実績の管理ができる
  • 生産計画や受注情報、所要量計算、各種マスターの情報を基に、製造現場に対して「何を、幾つ、いつまでに、どのように作るのか」という生産指示書を発行
  • 製造した結果の実績を登録
材料・部品・半製品・製品などの在庫状況や、将来的な見込み在庫数、適正な在庫数を保てているかなど、社内で共有できていない各品目に関する在庫情報を管理できる
  • 「何が、どこへ、幾つ、いつ、入りまたは出ていくのか」を管理
  • 適正在庫や有効在庫を時系列で管理

クラウド型生産管理システムを導入するポイント

ここでは、クラウド型生産管理システムを導入する際に押さえておきたいポイントを解説します。

自社の課題や目的を明確にしたうえで導入する

事前に自社の課題やシステムを導入する目的を明確にしたうえで、生産管理システムを導入しましょう。課題の認識や目的が不明確なままだと、システムを導入すること自体が目的になってしまったり、間違ったシステムを選んでしまったりするリスクが高まります。また、システムを導入して安定稼働に至るまでには、各種マスターの準備やデータの登録・入力などで従業員に負担がかかるため、「何のために準備をしているのか?」「何のために登録・入力しているのか?」といった作業の際に、システム導入の目的が明確になっていると、稼働に向けたモチベーションアップにもつながります。

自社の業種・業態・規模に合ったシステムを導入する

自社の業種や業態、企業規模に合わないシステムを導入してしまうと、余計なコストや手間が発生する恐れがあります。一言に生産管理システムといっても、加工業向け、組立業向けなど得意とする領域が異なり、システム化できる業務内容も変わります。また、オンプレミス型、パブリッククラウド型、プライベートクラウド型といった提供形態によってもコストや環境が異なるので、自社にとって最適なシステムを選ぶことが重要です。システムの導入を検討する際は、事前に導入事例、自社と同規模・同業種の実績が豊富かどうかなどを確認しましょう。

ベンダーと二人三脚で導入を進める

システムを導入する際は、ベンダーとの関係性も非常に重要になってきます。特に生産管理システムは機能が多く、運用も複雑になりやすいので、自社だけで導入しようとすると失敗する恐れがあります。なるべくサポートの手厚いベンダーを選び、自社の課題や目標をしっかりと伝えたうえで、協力しながらシステム導入を進めていくようにしましょう。ただし、ベンダーに任せきりにはならないように、社内でプロジェクトを立ち上げて複数人で推進していくといったことも重要です。

大塚商会のクラウド型生産管理システム

大塚商会では、お客様の要望を製品開発に生かしたオリジナルの生産管理システム「生産革新ファミリー」を提供しています。六つのパッケージシステムの中で、「生産革新 Wun-jin SMILE V Air」は多品種小ロット生産の加工業向けのクラウドSaaS型システムであり、売掛・買掛などの販売管理をベースに工程管理や製造指図書などの生産管理を行える製販一体型のオールインワンパッケージとなっています。初期費用を抑えて利用できるクラウド型システムであることから、小規模な加工業様であっても気軽に導入していただけます。

また、そのほかのパッケージシステムに関してもプライベートクラウド型として提供が可能であり、ネットワーク回線やセキュリティ対策、サーバーの運用も含めたトータルのサポートを行っています。クラウド型の生産管理システムに興味のある方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

製造業にとって生産管理の最適化は重要な取り組みの一つであり、生産管理システムの活用は必須となりつつあります。そのような状況下において、クラウド型の生産管理システムは導入・運用コストを抑えるために効果的な選択肢となるでしょう。メリット・デメリットの両方を正しく理解したうえで、クラウド型生産管理システムの導入を検討しましょう。

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「生産革新 Wun-jin SMILE V Air」は、販売管理をベースに工程管理や製造指図書発行などが行える、カンタン&シンプルなオールインワンパッケージのクラウドSaaS型システムです。「大げさな生産管理システムは必要ない」といったお客様のご要望にお応えします。また、クラウド利用で初期費用を抑えることによって、これまでシステム導入が難しかった小規模加工業様もすぐにご利用いただけます。

製造業の生産管理システム「生産革新ファミリー」

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