工程管理とは? 目的や手法、効率化を実現する生産管理システム導入のメリット

2023年 7月20日更新

生産管理システムを導入することで、製造業にとって大切な納期・在庫・工程・原価の四つの管理ができるようになります。中でも工程の管理は、製造の現場で非常に重要なものです。この記事では、工程管理の目的や手法、生産管理システム導入によって何が効率化されるのか、何が改善できるかについて解説します。

製造業における工程管理とは

工程管理とは

工程管理とは、製品の製造過程における作業を分類化・体系化した「工程」を、効率的な方法で計画・運営することです。工程管理の具体的な内容としては諸説ありますが、主に「工程の設定」「工程計画と負荷調整」「工程の進捗管理」の三つです。

工程管理の目的

工程管理には、主に五つの目的があります。

目的説明
納期遵守何をいつまでに作ればいいのかを把握・管理して、納期どおりに納品できるようにする
作業の標準化による品質の確保各工程の作業内容を明確化・標準化することで、一定品質のものを安定的に生産可能にする
生産リードタイムの短縮各工程の進捗状況を確認しながら調整・改善していくことで、生産リードタイムを短縮する
生産性の向上生産リードタイムを短縮することにより、1日あたりの工場の生産能力をアップする
製造原価の低減製造工程のムリ・ムラ・ムダを省き改善することで、製造原価を低減する

工程管理が重要な理由

適切な工程管理が行われていないと、生産の遅れを認識できずに納期遅延が発生する恐れがあります。実際、製造現場では部品・材料の入荷待ちや設備の故障など、さまざまなトラブルが発生するため、当初の計画どおりに生産できないケースが多くあります。適切に工程管理が行われていれば、状況に合わせた人員配置やスケジュールの調整により、納期を遵守しやすくなります。また、製品を適正な品質やコストで製造するためにも、各工程の作業内容を明確化・標準化して管理する工程管理は欠かせません。

さらに、昨今では製造業を取り巻く環境が次のように変化しています。

  • 半導体をはじめとする高機能部品・材料が納期どおりに入荷しないため、生産計画を柔軟に調整しなければならない
  • 需要変動が激しくなっており、負荷の平準化や生産能力の強化が求められている
  • 人手不足や働き方改革の影響で、より効率的にものづくりをする必要がある

こうした背景から、工程管理の重要性はますます高まっていくと考えられます。

工程管理と生産管理の違い

工程管理は生産管理の一部

工程管理と生産管理は、管理対象となる範囲が異なります。生産管理は、受注から出荷に至るまでものづくりの一連の流れを管理するものです。それに対して工程管理は、製品の製造過程に注目して管理するものであり、生産管理の一部といえます。

実際に、多くの生産管理システムには工程管理の機能が含まれています。工程管理は生産管理の一部であり、互いに連携していることを覚えておきましょう。

工程管理の手順

工程管理を適切に行うためには、PDCAを意識することが重要です。Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(改善)を繰り返すことで工程管理の質が高まり、納期遵守・品質の安定化・生産性の向上といった工程管理の目的を達成できるようになります。

Plan(計画)
何を・いつまでに・どのように作るのか工程計画を立案する
Do(実行)
立案した計画に基づいて生産する
Check(確認)
生産実績を確認して計画との差異や課題を把握する
Action(改善)
現状の課題への改善策を検討して実行する

生産管理システムで改善できる工程の設定

製造工程の設定

ものづくりは「製品のつくり方」を決めること、すなわち、製造における「工程」を設定することが重要です。

ここでのポイントは、あまり細かな単位で製造工程を設定しないことです。なぜなら、工程の進捗管理を行う際に後々大変になってくるからです。工程進捗管理をするうえでは、工程ごとに「着手」と「完了」の実績を登録する必要がありますが、あまり細かく工程を設定し過ぎてしまうと、実績の登録作業の負担が増えてしまいます。

うまく運用するためには、「どのポイントで工程の進捗状況を把握・確認したいか」といった方針を製品ごとに決めたうえで、ある程度ポイントをまとめて設定していくことが大切です。

各工程における作業の明確化

次に、各工程内の具体的な作業内容や手順、使用機械、使用部材、作業場所、製造条件などを明確にしていきます。工程は製品によって異なるので、製品ごとに工程を決める必要があります。

各工程における作業の明確化

標準時間の設定

各工程内の作業が明確化できたら、次に標準時間を設定します。この標準時間の設定が工程管理において実は重要となります。

標準時間とは

標準時間とは、各作業工程において1単位の作業を完了するのに必要となる標準的な時間のことです。「標準工数」と呼ばれる場合もありますが、基本的に「標準工数」=「標準時間」×「人数」となります。

標準時間の設定が重要な理由

1日に行える作業量は、標準時間の積み上げによって決まります。すなわち、標準時間を設定することで、製品1個あたりの製造にかかる時間が分かり、1日の生産量=「生産能力(キャパシティ)」が明確になります。

そして、標準時間は、積算見積りの根拠となるものです。従って、標準時間の設定が重要になってきます。この標準時間の計算を誤ると納期や原価に響き、赤字につながってしまうこともあります。

工程管理では、標準時間がきちんと設定されていることが前提となりますが、”勘と経験”に頼っていたりする会社も多く、正確に把握できていないケースが多いのが現状です。まずは標準時間を決めることが大切です。

標準時間の設定方法

標準時間を設定する際は、各作業の時間をストップウォッチなどで計測し、分析・改善を行い、「作業の標準化」を図っていきながら設定することが一般的です。しかし、最近はIT活用によって作業の標準化もより便利に行えるようになっています。詳しくは、下記のコラムをご覧ください。

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生産管理システムでできる工程計画と負荷調整

工程計画とは

工程計画とは、一般的に各工程に対して製造指示の計画を立てることです(生産計画と同義に捉える場合もあります)。工程ごとに順序に従って、何を幾つ、いつまでに作るかといった製造指示を計画していきます。

各工程の負荷調整

工程計画を立てる際にポイントとなるのは、各工程の生産能力(キャパシティ)に対する負荷状況を確認して作業の優先順位をつけ、ベストなスケジューリングを考えて、生産ラインの最適化を図ることです。この際に重要になるのが「負荷の山積み」と「負荷の山崩し」です。

「負荷の山積み」は、各工程の負荷がどのくらい積み上がっているのかを確認するものです。そして、工数が山積みされた負荷状況に対して、生産能力(キャパシティ)を超える場合に、負荷を分散させるのが「負荷の山崩し」です。

負荷の山崩しには、人が確認しながら手動で行う手法と、生産スケジューラーソフト等のツールを使って自動で行う「自動山崩し」という手法があります。自動山崩しの場合は、案件や工程、機械ごとに優先順位や重みづけ、生産能力などさまざまなパラメーターを生産スケジューラーに日々登録・更新をしていく必要があるため、多くの場合、専任者が必要となります。

専任者を設けることが難しい場合は、「負荷の山積み」だけでも生産管理システムで行うと、工程計画が立てやすくなります。

生産管理システムでできる工程の進捗管理

製造指示に対する実績報告

製造指示書に対する実績報告は、多くの場合、現場担当者により手書きで記入されています。しかし手書きの場合、転記ミスやタイムラグ、記入用紙を紛失する恐れがあります。

そこでおすすめなのが、ハンディターミナルやタブレットの活用や、IoTを活用して生産設備からデータを直接収集する方法です。それにより、正確な情報をリアルタイムで収集、共有することができます。

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製造指示に対する予定と実績の進捗チェック

工程管理では、製造指示に対する実績の進捗状況を見ながら、予定通り順調に進んでいるのか、遅れているのか、納期に間に合うのかどうかを確認していくことも大切です。

工程管理をシステム化するコツ

工程管理をシステム化する方法は大きく三つあります。それぞれの特徴を理解したうえで適切な方法を選択しましょう。

工程管理システムを導入する

工程管理システムは、工程管理に特化したものです。IoTで生産実績を収集するなど、生産管理システムよりも工程管理機能が充実している傾向にあります。小規模な製造業で生産管理システムが必要ない場合や、導入済みの生産管理システムから工程管理のみを切り出して運用したい場合などに活用されています。

生産管理システムを導入する

生産管理システムには、工程管理だけでなく受注管理・発注管理・在庫管理・品質管理といった製造業に必要な機能が網羅的に備わっています。受注状況や在庫状況を基に計画を立案したい場合や、自社の製造現場だけでなく部材・材料の手配なども含めた工程管理を行いたい場合には、生産管理システムの導入が適しています。

生産スケジューラーを導入する

生産スケジューラーは、計画の立案・調整に特化したシステムです。時間単位・分単位で細かく管理する機能や、各工程の生産能力に合わせて自動で負荷の山崩しをする機能など、高品質の機能が備わっています。その分、各種パラメーターなど多くの設定、メンテナンスが必要となります。

自社が「どういったことに悩んでいるのか」「今後どのような管理をしていきたいのか」によって、最適な方法は異なります。自社の課題や目的を整理したうえで、検討することをおすすめします。

工程管理に関する改善事例

生産管理システム導入により、どのように工程管理の課題が解決できるのか、企業様の改善事例を幾つかご紹介します。

豊盛工業株式会社

  • 事業内容

    自動車用のパイプ部品や精密ネジ部品などの製造・販売

『生産革新Ryu-jin』で、製造実績の入力の周知徹底で各工程の生産状況の「見える化」を実現。管理部門・製造部門がそれぞれリアルタイムに進捗を把握し、作業の優先順位をつけられるようになり、計画的にものづくりを行える製造現場を実現。

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日本メタルガスケット株式会社

  • 事業内容

    メタルガスケットおよび各種ガスケットの開発・製造・販売

「生産革新 Ryu-jin」の外部連携機能を活用し、IoTとRPAのシステムと連携させてDXを実現。時点管理システムにより、リアルタイムな稼働実績を収集するとともに、生産終了即時の実績データ連携が可能となり、在庫・生産進捗管理のタイムラグを解消。

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株式会社武井製作所

  • 事業内容

    精密機械加工

ものづくりDXの先進企業として、生産管理システムの導入、IoTによる設備稼働状況の可視化、現場のペーパーレス化、グループウェアによる情報共有などの多様な取り組みを実施。「生産革新 Ryu-jin」の導入は効率的な生産計画立案や適正な在庫管理に大きな役割を果たしている。

詳しくはこちら

マルヱ醤油株式会社

  • 事業内容

    醤油、味噌、つゆ・たれ、ドレッシング、鍋のもとなどの製造・販売

「生産革新 Ryu-jin」をはじめとする基幹業務システムを導入し、煩雑な日常業務を自動化につなげ、独自の帳票類などの出力も実現。各種法改正への対応も柔軟に対応した。より一層の原価管理や品質管理の精度向上に向け、先進的な業務改善に取り組んでいる。

詳しくはこちら

まとめ

工程管理は、製造業のコアともいうべき重要な業務です。一つの作業にかかる標準時間を把握し、一個の製品を製造するのにかかる時間と人をきちんと管理することで、製造コストを抑えつつ一定品質の製品を期日どおりに安定供給できるようになります。

大塚商会では、お客様の現状の課題や目的を踏まえて最適な工程管理の方法をご提案しています。工程管理のシステム化にお悩みのお客様は、お気軽にご相談ください。

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