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工程管理とは? 目的や手法、生産管理システム導入のメリット
生産管理システムを導入することで、製造業にとって大切な納期・在庫・工程・原価の四つの管理ができるようになります。中でも工程の管理は、製造の現場で非常に重要なものです。この記事では、工程管理の目的や手法、生産管理システム導入によって何が改善できるかについて解説します。
目次
製造業における工程管理の目的
工程管理とは
工程管理とは、製品の製造過程における作業を分類化・体系化した「工程」を、効率的な方法で計画・運営することです。工程管理の具体的な内容としては諸説ありますが、主に「工程の設定」「工程計画と負荷調整」「工程の進捗管理」の三つです。
工程管理の目的
工程管理には、主に五つの目的があります。
目的 | 説明 |
---|---|
1.納期遵守 | 何をいつまでに作ればいいのかを把握・管理して、納期通りに納品できるようにする |
2.作業の標準化による品質の確保 | 各工程の作業内容を明確化・標準化することで、一定品質のものを安定的に生産可能にする |
3.生産リードタイムの短縮 | 各工程の進捗状況を確認しながら調整・改善していくことで、生産リードタイムを短縮する |
4.生産性の向上 | 生産リードタイムを短縮することにより、1日あたりの工場の生産能力をアップする |
5.製造原価の低減 | 製造工程のムリ・ムラ・ムダを省き改善することで、製造原価を低減する |
生産管理システムで改善できる工程の設定
製造工程の設定
ものづくりは「製品のつくり方」を決めること、すなわち、製造における「工程」を設定することが重要です。
ここでのポイントは、あまり細かな単位で製造工程を設定しないことです。なぜなら、工程の進捗管理を行う際に後々大変になってくるからです。工程進捗管理をするうえでは、工程ごとに「着手」と「完了」の実績を登録する必要がありますが、あまり細かく工程を設定し過ぎてしまうと、実績の登録作業の負担が増えてしまいます。
うまく運用するためには、「どのポイントで工程の進捗状況を把握・確認したいか」といった方針を製品ごとに決めたうえで、ある程度ポイントをまとめて設定していくことが大切です。
各工程における作業の明確化
次に、各工程内の具体的な作業内容や手順、使用機械、使用部材、作業場所、製造条件などを明確にしていきます。工程は製品によって異なるので、製品ごとに工程を決める必要があります。
標準時間の設定
各工程内の作業が明確化できたら、次に標準時間を設定します。この標準時間の設定が工程管理において実は重要となります。
標準時間とは
標準時間とは、各作業工程において1単位の作業を完了するのに必要となる標準的な時間のことです。「標準工数」と呼ばれる場合もありますが、基本的に「標準工数」=「標準時間」×「人数」となります。
標準時間の設定が重要な理由
1日に行える作業量は、標準時間の積み上げによって決まります。すなわち、標準時間を設定することで、製品1個あたりの製造にかかる時間が分かり、1日の生産量=「生産能力(キャパシティ)」が明確になります。
そして、標準時間は、積算見積りの根拠となるものです。従って、標準時間の設定が重要になってきます。この標準時間の計算を誤ると納期や原価に響き、赤字につながってしまうこともあります。
工程管理では、標準時間がきちんと設定されていることが前提となりますが、”勘と経験”に頼っていたりする会社も多く、正確に把握できていないケースが多いのが現状です。まずは標準時間を決めることが大切です。
標準時間の設定方法
標準時間を設定する際は、各作業の時間をストップウォッチなどで計測し、分析・改善を行い、「作業の標準化」を図っていきながら設定することが一般的です。しかし、最近はIT活用によって作業の標準化もより便利に行えるようになっています。詳しくは、下記のコラムをご覧ください。
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生産管理システムでできる工程計画と負荷調整
工程計画とは
工程計画とは、一般的に各工程に対して製造指示の計画を立てることです(生産計画と同義に捉える場合もあります)。工程ごとに順序に従って、何を幾つ、いつまでに作るかといった製造指示を計画していきます。
各工程の負荷調整
工程計画を立てる際にポイントとなるのは、各工程の生産能力(キャパシティ)に対する負荷状況を確認して作業の優先順位をつけ、ベストなスケジューリングを考えて、生産ラインの最適化を図ることです。この際に重要になるのが「負荷の山積み」と「負荷の山崩し」です。
「負荷の山積み」は、各工程の負荷がどのくらい積み上がっているのかを確認するものです。そして、工数が山積みされた負荷状況に対して、生産能力(キャパシティ)を超える場合に、負荷を分散させるのが「負荷の山崩し」です。
負荷の山崩しには、人が確認しながら手動で行う手法と、生産スケジューラーソフト等のツールを使って自動で行う「自動山崩し」という手法があります。自動山崩しの場合は、案件や工程、機械ごとに優先順位や重みづけ、生産能力などさまざまなパラメーターを生産スケジューラーに日々登録・更新をしていく必要があるため、多くの場合、専任者が必要となります。
専任者を設けることが難しい場合は、「負荷の山積み」だけでも生産管理システムで行うと、工程計画が立てやすくなります。
生産管理システムでできる工程の進捗管理
製造指示に対する実績報告
製造指示書に対する実績報告は、多くの場合、現場担当者により手書きで記入されています。しかし手書きの場合、転記ミスやタイムラグ、記入用紙を紛失する恐れがあります。
そこでおすすめなのが、ハンディターミナルやタブレットの活用や、IoTを活用して生産設備からデータを直接収集する方法です。それにより、正確な情報をリアルタイムで収集、共有することができます。
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製造指示に対する予定と実績の進捗チェック
工程管理では、製造指示に対する実績の進捗状況を見ながら、予定通り順調に進んでいるのか、遅れているのか、納期に間に合うのかどうかを確認していくことも大切です。
工程管理に関する改善事例
生産管理システム導入により、どのように工程管理の課題が解決できるのか、企業様の改善事例を幾つかご紹介します。
豊盛工業株式会社
事業内容
自動車用のパイプ部品や精密ネジ部品などの製造・販売
『生産革新Ryu-jin』で、製造実績の入力の周知徹底で各工程の生産状況の「見える化」を実現。管理部門・製造部門がそれぞれリアルタイムに進捗を把握し、作業の優先順位をつけられるようになり、計画的にものづくりを行える製造現場を実現。
進栄化工株式会社
事業内容
タック紙、両面テープ、印刷用フィルムなどの製造・販売、ラミネート加工、貼り合わせ、抜き加工全般・ハーフカット、断裁加工
多品種少量生産・短納期に対応できるシステムの構築と、製品ごとの進捗状況や在庫の見える化を実現するため、紙の管理をやめて『生産革新 Ryu-jin』等を導入。標準仕様では3工程かかるものを1工程に集約するなど、メーカーと掛け合って自社仕様に改良を加えることで生産性を向上。
まとめ
工程管理は、製造業のコアともいうべき重要な管理です。1つの作業にかかる標準時間を把握し、1個の製品を製造するのにかかる時間と人をきちんと管理することで、製造コストを抑え、一定品質の製品を期日通りに安定して供給できるようになります。
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