製造業において現場改善の一つのキーワードになるのが生産管理システムです。個々の作業を効率化し、属人化しやすい業務を汎用(はんよう)化することで、生産性を高めることができます。生産管理システムの導入に失敗しないために、検討・導入・稼働の三つのフェーズごとにポイントを押さえて導入を進めましょう。今回は、稼働フェーズを成功させるコツをご紹介します。
生産管理システム導入までの流れ<稼働編>
2021年10月15日公開
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目次
生産管理システムの本稼働までの流れ
生産管理システム導入の最後のフェーズが本稼働です。本稼働とは、旧システムおよび旧運用を停止し、現状の業務を新システムのみで運用が可能となることをいいます。旧システムをストップし、新システムのみで従来どおりの生産ができる状態にします。

生産管理システムの本稼働における三つの重要ポイント
本稼働にまで至ればシステム導入もいよいよ大詰めですが、まだ気を抜くことはできません。本稼働フェーズには重要な三つのポイントがあります。
本稼働における三つの重要ポイント
- 移行稼動の問題点の討議
- 本稼働切替基準のクリア
- 本稼働切り替えの移行計画
・並行稼働の問題点の討議
並行稼働時に発生した問題点について、プロジェクトメンバーで討議を行い、対策を決めます。
・本稼働切替基準のクリア(本稼働切替判定)
事前に設定した本稼働切り替えの判定基準をクリアしているかどうかチェックします。本稼働に切り替えてから問題点が見つかった場合、元に戻すことが難しいため、この「切替判定会」が非常に大切です。切替判定会では「切替基準」をクリアしているかどうかをチェックします。切替基準は、基本的な基準に会社独自のチェック項目を加えて作成します。基準は全社で共有し、「○」(合格)の項目をできるだけ多くしてから本稼働するとスムーズに切り替えることができます。

・本稼働切り替えの移行計画
本稼働切替スケジュールを立てます。一斉切り替えの場合は並行稼働で実施した移行計画を見直した計画を、部分切り替えでは旧システムの運用をやめる具体計画を立てて、本稼働への切り替えを行います。通常、切り替えは一日、二日程度で行い、月曜日からの業務に支障がないように土・日曜日に切替作業を行います。
稼働報告会の実施の重要性
生産管理システムの本稼働切り替えが完了したら、「稼働報告会」を行います。稼働報告会とは、キックオフメンバーをはじめとするPJメンバー全員でシステム導入が無事終わったことを報告する会です。稼働報告会では、導入目的を達成しているか、今後の目標、運用上の課題設定、期待する効果や課題を報告会資料として一つにまとめて共有します。
稼働報告会を開催することにより、「生産管理システム」導入の目的をあらためて共有して全社の意識を合わせることができます。

生産管理システム本稼働後の運用ポイント
システムは使い始めてからが本番です。本稼働後に運用しながら課題を洗い出し、改善を繰り返してPDCAを回すことでシステムはより良いものになり、導入の目的を果たすことができます。ここまで達成されて初めてシステム導入完了といえます。
本稼働後の運用ポイント
- プロジェクトの終わりは本稼働ではない
- 導入目的の実現度を棚卸しし、課題を抽出
- プロジェクトは解散せず、継続的に改善活動を行う
本稼働後の定例会実施の重要性
運用で重要なのは、導入目的の実現度を確認する機会を定期的に設けることです。その方法として、「定例会」の実施がおすすめです。運用プロジェクトチームを立ち上げて、四半期に一回、半年に一回、一年に一回など定期的に実施します。
定例会は、単なる「報告の場」ではありません。課題を解決しているか、目標達成しているかの「判断の場」として活用しましょう。目的をうまく実現できていなければ、その要因はどこにあるのかを見極めて対策を講じ、何か問題が起きたときは常に導入目的に立ち返って考えます。運用状況に変化が起きたときはベンダーとも情報を共有しながら、より良い運用を考えていくことが大切です。
定例会のポイント
- 経営層を含むプロジェクトメンバー全員による「判断の場」にする
- 導入目的に立ち返り、必要に応じて柔軟に軌道修正する
- ベンダーと協力しあい、意思疎通を図る
生産管理システム稼働フェーズの導入事例
生産管理システム導入を成功させるには、稼働フェーズとその後の運用フェーズが非常に大切です。稼働・運用フェーズでポイントを押さえた取り組みをし、大きな成果をあげることができた会社の実例を幾つか紹介しましょう。
東邦化研工業株式会社
事業内容
真空蒸着用塗料・一般工業用塗料の開発・製造・販売
本社工場移転に伴い、配合型生産管理システムのバージョンアップを実施。現場社員の意見を随所に反映させることで、在庫管理と発注業務の効率アップを同時に実現するなど、大幅な業務改善を図ることに成功。今後は、新システムの機能をさらに有効活用するとともに、受注処理の自動化などを図ることも視野に入れている。
エブレン株式会社
事業内容
産業用電子機器や工業用コンピューターの設計・製造
拠点で分散運用していた生産管理システムを統合、マスターの統合、負荷状況を「見える化」して生産性の向上とコストダウンを推進。前システム導入時の苦労体験を生かし、導入目的の追求と円滑な導入に成功。導入後も社内プロジェクト検討会を継続実施して活用を続けている。
まとめ
生産管理システムの導入は、実際に効果が見えてくるまで時間がかかります。きちんと効果が出るところまで並走するのが大塚商会の「実稼働主義」です。ベンダー選びはパートナー選び。大塚商会では実稼働主義を掲げ追及する製造業に特化した専門チーム「製造業SP」を持っています。お気軽にご相談ください。
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