製造業の現場で業務効率化を推進するには、生産管理システムの導入が欠かせません。とはいえ、業種・業態ごとの管理ポイントに合わないシステムでは、せっかくシステムを導入しても期待するような効果は得られません。生産管理システムを導入する際は、自社の業種・業態に合ったシステムを選ぶことが重要になってきます。ここでは化学製品や食品など、配合を中心とした業態で生産管理システムを検討している会社に向けて、導入で失敗しないためのポイントを紹介します。
生産管理システム導入で失敗しないためのポイント<配合業編>
2020年10月12日公開
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目次
配合業における生産管理 三つのポイント
配合業とは、釜などの生産設備・装置に原材料を投入して製品を製造する業種で、主に化学製品や食品などを製造しています。配合業の生産管理においては次の三つが重要です。
- レシピ(配合表)の管理
- 原材料などの在庫管理
- 製造工程における品質管理
1.レシピ(配合表)の管理
配合業ではレシピ(配合表)の管理がポイント
まず、製品を作ったり配合したりするのに必要な原材料をまとめたレシピ(配合表)の管理が重要です。組立業におけるBOM(部品構成表)と似ていますが、食品などの配合業におけるレシピ(配合表)は製品一つに対する内容が異なります。
組立業では、製品一つに対して各部品がn個という管理がほとんどですが、配合業では釜などに投入する仕込み量mに対する各原材料がnとなります。
| 組立業のBOM(部品構成表) | 製品:部品=1:n |
|---|---|
| 配合業のレシピ(配合表) | 製品:各原材料=m:n |

組立業との違いとして、配合業が扱う製品は生ものであることが多いため、各原材料の合計が100にはならなかったり、歩留まりや夏冬の季節や気温で量が変わったりします。
さらに、製造工程に合わせた投入順序なども考慮する必要があります。
食品製造では、同じ原料なのに製品によって入れる順番が違うことも多く、そのため管理も複雑になります。

エクセル管理の問題点
レシピ(配合表)をエクセルで管理すると、原材料ごとに量の単位(トン/kg、リットル/ml、個/袋など)が異なるため、管理が複雑化します。エクセルでマクロを組んで対応している会社もありますが、管理が属人化してしまい、担当者が変わったときにデータをうまく引き継げない恐れがあります。
生産管理システム導入でできること
生産管理システムであれば、異なる単位の原材料の管理が容易にでき、原料ごとに歩留まり率を入れることも可能です。投入順序に合わせた原材料の管理も、生産管理システムの配合マスターで管理できます。

2.原材料などの在庫管理
原材料などの在庫管理がポイント
1.単位換算を行いながら管理すること
原材料ごとにトン/kg、リットル/ml、個/袋などを区別して管理します。
2.製造工程を考慮しながら管理すること
異なる製品に共通の原材料を使用する場合は、各製品の工程や進捗(しんちょく)状況を把握しながら共通原材料を管理しなければなりません。また、完成品だけでなく、製造途中で生じる中間品、仕掛品なども分けて管理することが必要です。
3.発注の仕方に応じて管理すること
まとめて事前に発注しておくべきものや、受注してから発注すればよいものなど、発注方法に応じた個別管理が求められます。

エクセル管理の問題点
共通材料はさまざまな製品に使われるだけでなく工程もまちまちなため、エクセルでは在庫の管理が非常に難しくなります。「枚」「kg」といった単位換算も考慮する必要があり、日々の変動も激しいので記入漏れや共有漏れの恐れや属人化してしまうというデメリットも出てきます。在庫管理も含めた賞味期限の管理も必要です。
生産管理システム導入でできること
生産管理システムでは「枚」「kg」など複数の単位換算も可能で、複雑になりがちな共通材料の在庫管理が簡単に行えます。各製品の製造状況をすぐに確認できますので、共通在庫の現状もリアルタイムで把握でき、賞味期限内の有効在庫管理も可能です。
3.製造工程における品質管理
品質管理に重要な要素
配合中心の製造業にとって、製品や原材料、あるいはその製造工程における品質管理は非常に重要な課題です。品質管理においては、原材料から販売経路までを追跡する「トレーサビリティー」、食の安全の観点から品質管理とともに求められる衛生管理「HACCP(ハサップ)」、地球環境保全の観点から化学物質などの危険有害性における品質管理「GMP」「GHS」への対応が強く求められるようになっています。

トレーサビリティーとは
トレーサビリティーとは、trace(追跡)することが可能な状態をいい、日本語で「追跡可能性」ともいわれます。製造業であれば、製品や原材料の流通経路を追跡できる状態を指します。トレーサビリティーは原材料から販売経路までを全て確認できる状態にすることで、品質管理を徹底する考え方です。
HACCP(ハサップ)とは
2018年6月13日に食品衛生法が改正され、2020年6月1日から施行されました。これにより、原則として全ての食品事業者に、「HACCPに沿った衛生管理」の実施が義務化されています。
HACCPとは、Hazard Analysis(危害分析)and Critical Control Point(重要管理点)の頭文字の略です。食品の製造や管理の過程におけるさまざまな危害要因を分析し、その危害要因を除去、低減するのに特に重要な工程を管理することで食品の安全を確保する手法です。
従来の抜取検査による衛生管理に比べ、より効果的に問題のある製品の事前チェックが可能で、問題が発生した場合の原因の追及も行いやすいというのが特徴です。

GMP(適正製造基準)とGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)
GMP(Good Manufacturing Practice)とは、製造業者(国外の製造業者含む)および製造販売業者に求められる「適正製造規範」(製造管理・品質管理基準)のことで、適正な品質の製品を製造するための要件をまとめたものです。GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)とは、化学品の危険有害性(ハザード)に関する分類および表示方法の世界的な統一ルールです。
アナログ管理の問題点
HACCPなどによって、より厳密な品質管理が求められるようになると、検査履歴などこれまでよりも多くのドキュメントを作成・保管する必要が出てきます。これを手書きの紙で文書管理(バインダー管理)行おうとすると、保管スペースが確保できなかったり、文書・ドキュメントをスピーディーに検索できなかったりという問題が発生します。
生産管理システム導入でできること
トレーサビリティーに関しては、生産管理システムが活躍します。出荷された製品において品質上の問題があったときには、製品から製造、原材料へと追跡していく「(正)展開」と、入荷した原材料や製造工程において品質上の問題があったときに、原材料から製造、製品へと追跡していく「(逆)展開」の両面から追跡をして、品質に問題がないかをいち早くチェック。リコールなどの早急な対応を行うことが可能です。
そのほかにも、品質検査表や温度管理チェック表など、文書類を管理するドキュメント管理システムと生産管理システムを連動させることで品質管理を効果的に実行でき、有効期限の管理も可能です。有効期限が過ぎそうな原材料のリストも抽出できます。
生産管理システム導入事例(配合業編)
生産管理システム導入によって、自社のさまざまな課題を解決した配合を中心とした業態の企業様の事例を幾つかご紹介します。
東邦化研工業株式会社
事業内容
真空蒸着用塗料・一般工業用塗料の開発・製造・販売
塗料製造業。本社工場移転に伴い、配合型生産管理システムのバージョンアップを実施。現場の意見を取り入れることで生産管理業務のさらなる効率アップを図り、データセンターの利用でBCP対策も強化。
まとめ
今回は、配合業における生産管理の三つのポイント「配合表(レシピ)の管理」「原材料などの在庫管理」「製造工程における品質管理」についてご紹介しました。生産管理システムを導入する際は、どのような課題をどう解決したいのかが重要です。自社の業態や特性なども踏まえ、あらためて検討してみてはいかがでしょうか。
世の中の生産管理システムは組立業向けが多く、配合業向けに特化したシステムはほとんどないため、導入に二の足を踏んでいるケースも少なくありません。どの生産管理システムが良いか悩んだら、業種・業態に特化したさまざまな生産管理パッケージシステムを取り扱っている大塚商会までお気軽にご相談ください。
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