生産管理システムとは? 機能や種類、製造業が導入するメリットをご紹介

2023年 8月 8日更新

製造業の現場では、納期、在庫、工程、原価など、さまざまな困りごとが生じます。そうした困りごとを解決する手段の一つが「生産管理システム」です。特に最近では、業務効率化、生産性向上、働き方改革の観点からもあらためて注目されています。企業のニーズに合わせた生産管理システムを導入することで、どのような課題をどのように解決できるのか、生産管理システムの機能や種類の詳細、導入のメリットも併せてご紹介します。

生産管理システムとは?

生産管理システムとは、製造業における「モノの流れ」と「情報の流れ」を管理するシステムです。生産管理システムには、納期、在庫、工程、原価といった基本的な情報を管理する機能と共に、生産計画、受注管理、発注管理、外注管理、品質管理などの豊富な機能が用意されています。これにより、モノづくりに関する情報を一元管理することが可能です。

生産管理システムを導入することで、効率的かつ精度の高い生産管理が実現し、業務フローの最適化が図れます。近年では、製造業におけるデジタル化・DXが進む中で、これまでのExcelや紙媒体での管理から脱却し、生産管理システムを導入する企業が規模を問わず増えている状況です。

生産管理とは?

生産管理とは、モノづくりの現場で行われる生産・製造業務において、品質(Quality)、原価(Cost)、納期(Delivery)のQCDを最適化することをいいます。モノづくりの現場では、どのような材料をいつ・いくらで・どれくらい調達し、いつまでに幾つの製品を製造し、納品するかという計画や指示に基づいた生産が行われます。在庫の過不足を調整しながら納期までに製品を正しく製造し納品することが重要であり、これを管理するのが生産管理です。

生産管理とは?

生産管理システムの必要性

生産管理システムが必要な理由

モノづくりを管理するうえでは、特に、納期、在庫、工程、原価の四つを重点的に管理する必要がありますが、生産管理システムでは、それを統合的かつ総合的に管理することができます。

1)納期管理の課題

  • どのくらいの受注残/発注残があるのか把握したい
  • 納期を短縮したい or 納期遅延を防止したい
  • 発注部品や材料が納期どおりに入ってきているかどうかチェックしたい

2)在庫管理の課題

  • 材料や部品、製品の在庫をきちんと管理したい
  • 材料や部品、製品のムダな在庫を減らしたい
  • 材料や部品、製品の欠品を減らしたい

3)工程管理の課題

  • 予定どおりか遅れているのか、工程の進捗(しんちょく)を管理したい
  • 工程の負荷状況を把握したい
  • 忙しい工程と忙しくない工程の平準化を図りたい

4)原価管理の課題

  • 製品の原価を案件別、品目別などで把握したい
  • 製品の原価(材料費・労務費・外注費・経費)をできるだけ抑えたい
  • 標準原価と実際原価を的確に把握したい

このような悩みが生じる理由の一つが、管理方法にあります。Excel・Accessなどを使った属人的な管理を行っている企業が多く、部署間で統一管理ができない、担当者が不在の場合は誰も分からないといった問題が起こってしまいます。

生産管理システムと販売管理システム

生産管理システムは導入していなくても、販売管理システムは導入しているという製造業の企業も多くあります。すなわち、売り上げ・請求・入金や仕入れ・買い掛け・支払いの管理業務のシステム化です。

ただし、在庫管理については別です。なぜなら販売管理システムの一般的な考えは卸売業向けであって、仕入れるモノと販売するモノが同じ「商品」を想定しているからです。

製造業の場合、仕入れるモノと販売するモノが異なり、その間に「製造」という付加価値作業が介在します。この「製造」を管理するのが生産管理システムとなります。さらに、生産管理と販売管理が一体となったシステムであれば、製販一気通貫による管理も可能です。

生産管理システムと販売管理システム

ファブレス企業と生産管理システム

ファブレス企業とは、自社で生産設備(fabrication facility)を持たず、外部の協力企業に100%生産委託しているメーカーのことです。

ファブレス企業は、主に次の二つの形態に分かれます。

  1. 製品を製造する際に必要となる材料や、部品などの調達も全て外注工場に委託する形態
  2. 材料や部品は自社で調達し、それを外注工場に支給して製造を委託する形態

2.の形態の場合は、材料や部品の調達手配、在庫管理、外注支給管理といった観点からも生産管理システムの導入がおすすめです。

ファブレス企業と2つの形態

生産管理システムの機能

生産管理システムには、生産管理に必要なさまざまな機能が備わっています。ここでは、生産計画、受注管理、所要量計算、発注管理、在庫管理、製造管理、工程管理、進捗(しんちょく)管理、外注管理、品質管理といった代表的な機能とその概要を簡単にご紹介します。

代表的な機能概要
生産計画受注情報や販売計画を基に、いつ・何を・幾つ・いつまでに製造するかの計画を立案します。
受注管理得意先からの受注情報や、出荷できていない受注残の管理を行います。
所要量計算受注情報や生産計画、各製品の構成情報などを基に、製造に必要な材料・部品の所要量を算出します。
また、材料・部品の在庫が不足している場合は、発注予定を立てます。
発注管理製造に必要な材料・部品の発注情報や、受入できていない発注残の管理を行います。
在庫管理材料・部品・中間品・製品などの在庫情報や、適正在庫・有効在庫の管理を行います。
製造管理受注情報や生産計画、各種マスター情報などを基に、製造現場に対して生産指示書を発行します。
また、生産指示書に基づいて製造した実績を登録します。
工程管理製造工程ごとに、生産指示や実績の管理を行います。
また、1日の生産能力に対する負荷状況などを見ながら、平準化を行います。
進捗管理生産指示や納期に対する進捗状況の管理を行います。
外注管理製造工程の一部を外注先に委託する際の発注・受入や、支給品の管理を行います。
品質管理仕入先・外注先からの受入検査や、各製造工程での品質検査を行います。
また、不良品が発生した場合はその数量や原因などを管理します。

生産管理システムの種類

生産管理システムには、生産管理に必要なさまざまな機能が備わっています。ここでは、生産計画、受注管理、所要量計算、発注管理、在庫管理、製造管理、工程管理、進捗管理、外注管理、品質管理、といった代表的な機能とその概要を簡単にご紹介します。

業態・生産形態による違い

業態・生産形態繰返生産個別生産
組立業
(機器、機械、装置など)
あらかじめ仕様が決まった製品を、複数の部品や材料を基に組み立てる顧客の要求に合わせた個別仕様の製品を、複数の部品や材料を基に組み立てる
加工業
(金属製品、樹脂・ゴム製品、
ガラス製品など)
あらかじめ仕様が決まった製品を、複数の加工工程を経ながらまとめて製造する顧客の要求に合わせた個別仕様の製品を、加工を中心として少量ずつ製造する
配合業
(化学薬品、食料品など)
あらかじめ仕様が決まった製品を、複数の原材料を基に配合する顧客の要求に合わせた個別仕様の製品を、複数の原材料を基に配合する

一般的には、組立業向けの生産管理システムが最も多い傾向にあります。どの業態・生産形態を得意としているかによって、用意されている機能が大きく異なることを知っておくとよいでしょう。

企業規模による違い

生産管理システムは、大企業向け、中堅企業向け、中小企業向けなど、企業規模によっても必要となる機能や特徴が異なります。

基本的には、企業規模が大きくなるほど機能面も充実していく傾向にありますが、その一方で、導入・運用にかかるコストが高くなったり、自社に必要のない機能が増えて操作が複雑になったりする恐れがあります。自社の企業規模や必要とする機能、費用対効果などを総合的に踏まえたうえで、生産管理システムを比較するようにしましょう。

提供方式(オンプレミス型・クラウド型)による違い

代表的な提供方式内容
オンプレミス型自社でサーバーを導入してシステムを運用する方式
クラウド型インターネット上で提供会社が管理するサーバーにアクセスし、システムを運用する方式

生産管理システムの提供方式は、自社でサーバーを導入してシステムを運用するオンプレミス型と、インターネット上で提供会社が管理するサーバーにアクセスしてシステムを運用するクラウド型の二種類に大きく分けられます。

オンプレミス型のメリットは、自社ネットワーク内で運用するためセキュリティ面の管理がしやすい点や、機能のカスタマイズがしやすい点です。デメリットとしては、サーバーの管理を自社で実施しなければならないこと、導入までの期間とコストが比較的かかりやすいことなどが挙げられます。

クラウド型のメリットは、サーバーを自社で管理する必要がない点や、導入までの期間とコストを抑えられる点です。デメリットとしては、社外ネットワークで運用するためセキュリティ面での懸念があること、機能のカスタマイズがしにくいことなどが挙げられます。

このように、オンプレミス型とクラウド型は一長一短であり、どちらが明確に優れているというものではありません。それぞれの特徴を正しく理解したうえで、自社のニーズに合った方式を選ぶようにしましょう。

生産管理システムのメリット

生産管理システムの導入でできること

生産管理システムは、製造業の生産管理に関する課題を解決することに特化したシステムです。導入することで、製造管理に関わる一連の流れが「見える化」できるので、さまざまな成果が期待できます。管理が一体化・全社化できるので、Excel・Access管理による属人化、分散化リスクを避けることも可能です。また、QCD( Quality:品質/Cost:原価/Delivery:納期)のバランスを取ることも容易になります。

【生産管理システムでできること】

 把握できること期待できること
納期いつまでに用意すればいいのか
いつまでに作ればいいのか
納期遵守率向上(D)納期短縮(D)
在庫何を幾つ作ればいいのか/どの材料・部品が幾つあればいいのか余剰在庫削減(C)欠品防止(D)
工程どのような工程・手順で作ればいいのか/今どこまで進んでいるのか品質向上(Q)納期短縮(D)
原価何にいくらかかるのか/いくらかかったのか原価低減(C)

【導入効果やメリット】

  • これまで手作業で行ってきた在庫確認に加え、発注手配まで自動化できる
  • 社員間の情報共有体制が構築され、業務の役割分担が柔軟にできる
  • 先々の有効在庫数を考慮した最適な在庫管理ができるようになる
  • 受注から納品までの業務が改善でき、得意先への対応の質が向上する

生産管理システム導入による中堅・中小企業のメリット

「システム導入は、中堅・中小企業にとってハードルが高い」と敬遠する企業も多いかもしれません。しかし、実は中堅・中小企業だからこそ、ITの助けを大いに借りるべきなのです。

例えば、生産管理システムがうまく稼働すればこれまで煩雑だった業務が大幅に効率化されるため、限られた人員の中で生産性の高いモノづくりを実現することができます。

生産管理システムの検討・選定・導入におけるポイント

大きな成果が期待できる生産管理システムですが、コストと時間をかけて導入したものの、システムをうまく生かし切れていないという会社も少なくありません。生産管理システムの検討・選定・導入を成功させるためのポイントは大きく分けて三つあります。

目的を明確にしたうえでシステムを導入する

システムを最大限に活用するには、自社のモノづくり経営における戦略に沿った「導入目的」を明確にすることが重要です。システムはあくまでも道具(=ツール)であり、その道具をどのように使っていくのか、何のために導入するのかという導入目的が明確でないと、結局は宝の持ち腐れになりかねません。

全社的なプロジェクトとして取り組む

生産管理システムは生産フロー全体を管理するもので、営業や設計、調達、製造などさまざまな部門にまたがります。そのためにも、システム導入を全社プロジェクトにし、経営トップ層が自らプロジェクトリーダーとなって、部署横断的に取り組むとよいでしょう。

自社の規模や業務に合った最適なシステムを選ぶ

自社の企業規模や業務の内容に合わないシステムを導入してしまうと、余計に業務が複雑化してしまったり、カスタマイズ費用がかさんでしまったりする恐れがあり、注意が必要です。導入を検討する際は、そのシステムの導入事例などを確認し、同業他社や同じ規模感の企業でどのような実績があるかを確認するとよいでしょう。

システム導入に役立つ記事

生産管理システム導入で失敗しないためのポイント<組立業編>

生産管理システム導入で失敗しないためのポイント<加工業編>

生産管理システム導入で失敗しないためのポイント<配合業編>

生産管理システム導入による改善事例

生産管理システムを導入して、効率的な生産管理を実現させた企業の例をいくつか紹介します。

製品原価の正確な把握で、売価の妥当性に確信

製販一気通貫システム+5S活動で在庫と原価の管理精度が格段にアップ。明確な納期回答で顧客への信頼性向上。
導入企業:川辺農研産業株式会社
事業内容:農業用トレンチャー、破砕・深耕用バイブロスーパーソイラー等の製造・販売

短期スパンの生産計画変更に対応。ロットトレースの管理強化で顧客満足度向上

短期スパンの生産計画変更に対応するため、生産管理システムを『Ryu-jin』に刷新。トレーサビリティーや在庫管理精度も向上した。
導入企業:本田工業株式会社
事業内容:自動車部品等のプレス・溶接加工および金型設計・製作、研究開発・試作等

上記以外にも、数多くの導入事例を紹介していますので興味のある方はぜひご覧ください。

生産管理システム導入事例

製造業におすすめの生産管理システム

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生産管理システム「生産革新ファミリー」

生産管理システム「生産革新ファミリー」 製品ラインアップ

まとめ

モノづくりを行う企業にとって、生産管理を最適化することは生命線ともいえる重要な課題です。生産管理システムはその課題を解決できる重要なシステムとなりますので、機能や種類、メリットを正しく理解した上で導入を検討してください。

また、生産管理システムで最適化すべきポイントは企業によって異なります。自社の課題を解決するには、専門的なノウハウを持つ良いパートナーと共に、最適なシステムを選択・導入・運用することが重要です。

大塚商会では、製造業の問題解決に特化した専門チーム「製造SP」が、お客様の導入目的の設定から課題の抽出、最適な業務フロー策定などを、パートナーとしてご支援しています。

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