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生産管理システムとは
製造業の現場では、納期・在庫・工程・原価など、さまざまな困りごとが生じます。そうした困りごとを解決する一つの手段として「生産管理システム」があり、特に最近では、業務効率化、生産性向上、働き方改革の観点からも注目されています。企業のニーズに合わせた生産管理システムを導入することで、どのような課題をどのような方法で解決できるのか、導入の際のポイントも含めて解説します。
目次
1.生産管理とは?
1-1.生産管理とは
生産管理とは、モノづくりの現場で行われる生産・製造業務において、品質(Quality)、原価(Cost)、納期(Delivery)のQCDを最適化することをいいます。モノづくりの現場では、どのような材料をいつ・いくらで・どれくらい調達し、いつまでに幾つの製品を製造し、納品するかという計画や指示に基づいた生産が行われます。在庫の過不足を調整しながら納期までに製品を正しく製造し納品することが重要であり、これを管理するのが生産管理です。
2.生産管理システムとは?
2-1.生産管理システムとは
製造業によくある生産管理の課題解決に特化したシステムが、生産管理システムです。生産管理システムは、製造業における「モノの流れ」と「情報の流れ」を統合的かつ総合的に管理するシステムで、効率的かつ精度の高い生産管理を実現し、生産における業務フローを最適化します。
2-2.生産管理システムが必要な理由
モノづくりを管理するうえでは、特に、納期、在庫、工程、原価の四つを重点的に管理する必要がありますが、生産管理システムでは、それを統合的かつ総合的に管理することができます。
1)納期管理の課題
- どのくらいの受注残/発注残があるのか把握したい
- 納期を短縮したい or 納期遅延を防止したい
- 発注部品や材料が納期どおりに入ってきているかどうかチェックしたい
2)在庫管理の課題
- 材料や部品、製品の在庫をきちんと管理したい
- 材料や部品、製品のムダな在庫を減らしたい
- 材料や部品、製品の欠品を減らしたい
3)工程管理の課題
- 予定どおりか遅れているのか、工程の進捗(しんちょく)を管理したい
- 工程の負荷状況を把握したい
- 忙しい工程と忙しくない工程の平準化を図りたい
4)原価管理の課題
- 製品の原価を案件別、品目別などで把握したい
- 製品の原価(材料費・労務費・外注費・経費)をできるだけ抑えたい
- 標準原価と実際原価を的確に把握したい
このような悩みが生じる理由の一つが、管理方法にあります。Excel・Accessなどを使った属人的な管理を行っている企業が多く、部署間で統一管理ができない、担当者が不在の場合は誰も分からないといった問題が起こってしまいます。
2-3.生産管理システムと販売管理システム
生産管理システムは導入していなくても、販売管理システムは導入しているという製造業の企業も多くあります。すなわち、売り上げ・請求・入金や仕入れ・買い掛け・支払いの管理業務のシステム化です。
ただし、在庫管理については別です。なぜなら販売管理システムの一般的な考えは卸売業向けであって、仕入れるモノと販売するモノが同じ「商品」を想定しているからです。
製造業の場合、仕入れるモノと販売するモノが異なり、その間に「製造」という付加価値作業が介在します。この「製造」を管理するのが生産管理システムとなります。さらに、生産管理と販売管理が一体となったシステムであれば、製販一気通貫による管理も可能です。
2-4.ファブレス企業と生産管理システム
ファブレス企業とは、自社で生産設備(fabrication facility)を持たず、外部の協力企業に100%生産委託しているメーカーのことです。
ファブレス企業は、主に次の二つの形態に分かれます。
- 製品を製造する際に必要となる材料や、部品などの調達も全て外注工場に委託する形態
- 材料や部品は自社で調達し、それを外注工場に支給して製造を委託する形態
2.の形態の場合は、材料や部品の調達手配、在庫管理、外注支給管理といった観点からも生産管理システムの導入がおすすめです。
3.生産管理システムのメリット
3-1.生産管理システムの導入でできること
生産管理システムは、製造業の生産管理に関する課題を解決することに特化したシステムです。導入することで、製造管理に関わる一連の流れが「見える化」できるので、さまざまな成果が期待できます。管理が一体化・全社化できるので、Excel・Access管理による属人化、分散化リスクを避けることも可能です。また、QCD( Quality:品質/Cost:原価/Delivery:納期)のバランスを取ることも容易になります。
【生産管理システムでできること】
把握できること | 期待できること | |
---|---|---|
納期 | いつまでに用意すればいいのか いつまでに作ればいいのか | 納期遵守率向上(D)納期短縮(D) |
在庫 | 何を幾つ作ればいいのか/どの材料・部品が幾つあればいいのか | 余剰在庫削減(C)欠品防止(D) |
工程 | どのような工程・手順で作ればいいのか/今どこまで進んでいるのか | 品質向上(Q)納期短縮(D) |
原価 | 何にいくらかかるのか/いくらかかったのか | 原価低減(C) |
【導入効果やメリット】
- これまで手作業で行ってきた在庫確認に加え、発注手配まで自動化できる
- 社員間の情報共有体制が構築され、業務の役割分担が柔軟にできる
- 先々の有効在庫数を考慮した最適な在庫管理ができるようになる
- 受注から納品までの業務が改善でき、得意先への対応の質が向上する
3-2.生産管理システム導入による中堅・中小企業のメリット
「システム導入は、中堅・中小企業にとってハードルが高い」と敬遠する企業も多いかもしれません。しかし、実は中堅・中小企業だからこそ、ITの助けを大いに借りるべきなのです。
例えば、生産管理システムがうまく稼働すればこれまで煩雑だった業務が大幅に効率化されるため、限られた人員の中で生産性の高いモノづくりを実現することができます。
4.システム導入を成功させるポイント
大きな成果が期待できる生産管理システムですが、コストと時間をかけて導入したものの、システムをうまく生かし切れていないという会社も少なくありません。システム導入を成功させるためのポイントは大きく分けて三つあります。
4-1目的を明確にしたうえでシステムを導入する
システムを最大限に活用するには、自社のモノづくり経営における戦略に沿った「導入目的」を明確にすることが重要です。システムはあくまでも道具(=ツール)であり、その道具をどのように使っていくのか、何のために導入するのかという導入目的が明確でないと、結局は宝の持ち腐れになりかねません。
4-2.全社的なプロジェクトとして取り組む
生産管理システムは生産フロー全体を管理するもので、営業や設計、調達、製造などさまざまな部門にまたがります。そのためにも、システム導入を全社プロジェクトにし、経営トップ層が自らプロジェクトリーダーとなって、部署横断的に取り組むとよいでしょう。
4-3.自社の業種・業態に合ったシステムを選ぶ
一言で製造業向け生産管理システムといっても、業種・業態によって管理するポイントは大きく異なってきます。自社の業態に合っていないシステムを導入してしまうと、余計に業務が複雑化してしまったり、カスタマイズ費用がかさんでしまったりすることもありますので、導入検討する際は同業他社での導入事例なども参考にするとよいでしょう。
業種例 | 主に管理するポイント | |
---|---|---|
組立を中心とした業態 | 機器、機械、装置など |
|
加工を中心とした業態 | 金属製品、樹脂・ゴム製品、ガラス製品など |
|
配合を中心とした業態 | 化学製品、食料品など |
|
システム導入に役立つ記事
生産管理システム導入による改善事例
生産管理システムを導入して、効率的な生産管理を実現させた企業の例をいくつか紹介します。
製販一気通貫システム+5S活動で在庫と原価の管理精度が格段にアップ。明確な納期回答で顧客への信頼性向上。
導入企業:川辺農研産業株式会社
事業内容:農業用トレンチャー、破砕・深耕用バイブロスーパーソイラー等の製造・販売
短期スパンの生産計画変更に対応。ロットトレースの管理強化で顧客満足度向上
短期スパンの生産計画変更に対応するため、生産管理システムを『Ryu-jin』に刷新。トレーサビリティーや在庫管理精度も向上した。
導入企業:本田工業株式会社
事業内容:自動車部品等のプレス・溶接加工および金型設計・製作、研究開発・試作等
上記以外にも、数多くの導入事例を紹介していますので興味のある方はぜひご覧ください。
まとめ
モノづくりを行う企業では、生産管理フローを最適化することは、いわば生命線ともいえる重要課題です。生産管理システムは、まさにその課題を解決できる重要なシステムです。一言で生産管理システムといっても、業種・業態ごとに最適化すべきポイントが異なります。自社の課題を解決するには、良いパートナーと共に、最適なシステムを選択・導入・運用することが重要だといえるでしょう。
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