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生産管理システム導入で失敗しないためのポイント<加工業編>
生産管理システムの導入で失敗を防ぐには、自社の業種・業態に合ったシステムを選ぶことが重要です。一言で製造業向け生産管理システムといっても、業種・業態によって管理のポイントは大きく異なり、自社の業態に合わないシステムを導入してしまうと思ったような成果が得られません。ここでは、加工を中心とした業態において、生産管理システムを導入する際に留意すべきポイントをご紹介します。
目次
加工業における生産管理三つのポイント
加工中心の製造業においては、三つの管理が重要となります。
- 工程管理
- 共通材料の在庫管理
- 工程間の仕掛在庫管理
1.工程管理
加工中心の製造業では工程計画と進捗管理がポイント
モノを加工していくうえでは、どのような工程を経て加工していくかという工程の管理が重要です。具体的には計画と進捗(しんちょく)の二つの管理が重要になります。ポイントは、各工程の生産能力(キャパシティー)に対する負荷状況を確認しながら作業の優先順位をつけ、進捗を管理していくことです。
工程計画 | 何をいくつ、いつまでに作るか。製造指示の基になる計画。 |
---|---|
工程進捗管理 | 作業を開始してから現在どこまで進んでいるのか。製造指示通りかの確認。 |
エクセル管理の問題点
工程管理と進捗管理をエクセルで行っている会社は少なくありません。しかし、品目ごとや工程ごと、機械ごとなど、それぞれ別のファイルやシートで管理していると、いざというときに必要な情報をすぐ引き出すことができません。また、案件や担当者ごとにそれぞれ別々のファイルで管理していると、社内での共有がうまくいかないケースも多々見受けられます。さらに、入力作業を繰り返しているうちに、別案件や過去の情報を誤って上書き保存してしまう恐れもあるでしょう。
生産管理システム導入でできること
生産管理システムを導入すると、工程と進捗がひと目で管理できるようになります。品目ごとの主な工程内容や各工程内の作業手順、使用機械、使用部材、生産ロットなどを登録することによって、各工程の生産能力に合った工程計画が立てられ、製造指示書の発行も可能です。また、製造現場にてハンディターミナルやタブレットで生産指示に対する実績を登録したり、IoTを活用したりして生産設備から実績を収集することによって、各工程の進捗状況をリアルタイムで把握、共有できるようになります。
2.共通材料の在庫管理
共通材料の在庫管理がポイント
加工業の場合、同じ材料を複数の製品作りに利用することも多く、通常、共通材料が安く手に入るときにまとめて発注しておきます。組立業の場合と同様に、加工業においても在庫の有無、在庫管理の必要性があるかどうかが、生産管理システムを検討するうえでは非常に重要になります。
エクセル管理の問題点
共通材料はさまざまな製品に使われるだけでなく工程もまちまちなため、エクセルでは在庫の管理が非常に難しくなります。また「枚」「kg」など、さまざまな単位換算も考慮する必要があります。
日々の変動が激しい現場では、記入漏れや共有漏れも生まれやすく、在庫管理が属人化してしまうことでほかの人に引き継げないというデメリットもあります。
生産管理システム導入でできること
生産管理システムなら、複雑になりがちな共通材料の在庫管理もスムーズです。「枚」「kg」など複数の単位換算も可能で、共通材料を使う製品の製造状況をすぐに確認でき、共通在庫の現状をリアルタイムで把握できます。
3.工程間の仕掛在庫管理
中間加工品や仕掛品の管理が重要
加工中心の製造業の場合、途中の中間工程までは同じ品目で、途中から工程が枝分かれして別々の製品になるということもよくあります。つまり、中間加工品の管理が加工業のポイントになります。
工程間在庫が発生するのは、共通品としての中間加工品在庫が発生する場合だけではありません。各工程での生産ロットの違いによっても仕掛在庫が発生します。
例えば、工程1ではプレス機によって1日あたり3,000個製造できるけれど、工程2の組み立ては人が行うため1日あたり500個しか製造できない。そうなると、その間に仕掛在庫が発生します。
仕掛在庫は「原価管理」にも大きな影響を与えます。製造途中の部品や原材料である仕掛品は、そのまま販売することができません。そのため、しっかり管理していないとキャッシュフローにも影響を及ぼす恐れがあるので注意が必要です。
このように、加工業の中では、共通材料などの在庫や共通の中間加工品としての在庫、工程間の生産ロットの違いによる仕掛在庫などを考慮しなければなりません。それぞれの在庫管理が必要な場合は、生産管理システムも加工業の在庫管理に適したシステムを検討する必要があります。
エクセル管理の問題点
そもそも途中の仕掛在庫の管理ができていない会社は少なくありません。また、管理しているとしても、エクセルで管理している会社も多く、入力が複雑になり管理しづらいのが現状です。マクロを組むなど複雑化してしまうと、属人化してしまい、ほかの人に引き継げない可能性も高くなります。
生産管理システム導入でできること
生産管理システムなら、仕掛品の在庫管理も簡単になります。工程間在庫数量の上限下限の設定もできるため、仕掛品の在庫コントロールがしやすくなります。
生産管理システム導入事例(加工業編)
生産管理システム導入によって、自社のさまざまな課題を解決した加工を中心とした業態の企業様の事例を幾つかご紹介します。
本田工業株式会社
事業内容
自動車部品・電機工具部品・その他機械部品等のプレス・溶接加工および金型設計・製作、研究開発・試作等
短期スパンの生産計画変更に対応するため、生産管理システムを「生産革新 Ryu-jin」に刷新。月2回が精いっぱいだった生産計画変更への対応が、システムの刷新で毎日でも可能になった。トレーサビリティーや在庫管理精度も向上した。
豊盛工業株式会社
事業内容
自動車用のパイプ部品や精密ネジ部品などの製造・販売
繰返・量産加工型生産管理システム「生産革新 Ryu-jin」で生産状況の「見える化」を実現、基幹業務システムとの統合化とデータセンター化で、ものづくりを支えるさらなる業務改善を図っている。
進栄化工株式会社
事業内容
タック紙、両面テープ、印刷用フィルムなどの製造・販売、ラミネート加工、貼り合わせ、抜き加工全般・ハーフカット、断裁加工
生産管理システムを新規に立ち上げ、進捗状況や在庫数を正確に把握し、生産管理の効率がアップしたことで多品種少量生産・即日納品にも対応できるようになった。情報漏えい対策やBCP対策も同時に実現。
まとめ
一言で製造業向け生産管理システムといっても、業種・業態によって管理のポイントは大きく異なります。今回は、加工業における生産管理三つのポイント「工程管理」「共通材料の在庫管理」「工程間の仕掛在庫管理」についてご紹介しました。生産管理システムを導入する際は、どのような課題をどう解決したいのか現状を把握することが重要です。自社の業態や特性なども踏まえ、あらためて検討してみてはいかがでしょうか。
最も、世の中の生産管理システムは組立業向けが多く、加工業向けに特化したシステムはほとんどありません。そもそも自社が組立業メインなのか、加工業メインなのかも分からず、最適なシステムを検討することができないという会社も多く見られます。どの生産システムが良いか悩んだら、業種・業態に特化した複数の生産管理パッケージシステムを取り扱っている大塚商会までお気軽にご相談ください。
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「生産革新 Ryu-jin」は、自動車・電気部品や、金属・樹脂・食品などを量産加工する製造業に特化した生産管理システムです。内示・フォーキャスト・確定受注などの情報を基に、変化に強い柔軟な生産計画が行え、工程間の仕掛在庫なども含めた在庫の適正コントロールが可能です。
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生産管理システムを導入することで、製造業にとって大切な納期・在庫・工程・原価の四つの管理ができるようになります。中でも工程の管理は、製造の現場で非常に重要なものです。
生産管理システムの導入で失敗しないためには、自社の業種・業態に合ったシステムを選ぶことが重要です。一言で製造業向け生産管理システムといっても、業種・業態によって管理のポイントは大きく異なり、自社の業態に合わないシステムを導入してしまうと、思ったような効果が得られません。
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