製造業の現場でよく耳にする 5S。重要性はわかっていても継続して維持することができないと悩んでいる会社も多いのでは? 5Sは掃除の延長や単なる片付けではありません。しっかりとした目的を持って取り組む必要があります。うまく実践することで生産性を大きく向上させ、安定経営へとつなげることができます。今回は、5S活動の目的と具体的な進め方について、実例アイデアを交えて解説します。
5S活動とは? 製造業の現場における実施目的と効果的な進め方
2022年 5月30日公開
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目次
5S活動とは
5S活動とは、五つの視点から職場環境を整備する活動のことです。整理・整頓・清掃・清潔・しつけの五つの頭文字をとって 5Sと呼ばれています。製造業・建設業の現場や病院などで取り組みがはじまり、近年ではさまざまな職場で実践されるようになりました。
まず、5Sの具体的な内容を押さえておきましょう。
| 5Sの要素 | 内容 |
|---|---|
| 整理 | 必要な物と不要な物を区別したうえで、不要な物は処分すること。在庫や書類のほか、データのような見えない物も含みます。 |
| 整頓 | 使う物を決められた場所に置き、使いやすいように置き方を工夫します。そして、表示をつけて、必要な物がすぐに取り出せるようにします。 |
| 清掃 | 整理・整頓がなされていることを前提に、清掃を徹底すること。 |
| 清潔 | 整理・整頓・清掃により、常に清潔な状態を維持すること。 |
| しつけ | 整理・整頓・清掃・清潔のルールを習慣づけること。身だしなみも含みます。 |
五つの要素のうち特に重要なのは「整頓」です。実は、製造現場で意外と多いのが、工具や設計図など、製造に使う物を“探す”時間。全ての工程で、その都度、物を探しながら製造していたら生産性は大きく下がってしまいます。最適な置き場を決めて、物を探す手間と時間を削減することが重要になります。
5S活動の目的
5S活動を成功させるには、組織として目的を持って全社的に取り組むことが大切です。ただ「整理整頓する」「掃除をする」というのでは、なかなか思ったような成果を上げることができません。
5Sの目的は、次の3段階に分けて考えられます。
| 段階 | 目的 | ねらい |
|---|---|---|
| 第1段階 | 5Sによる直接的な成果 | 5S活動そのものにより、安全、生産性、品質の向上、在庫削減、リードタイム短縮といった直接的な成果を得ることができます。5S活動では、まずこの段階のクリアを目指します。 |
| 第2段階 | 5Sによる間接的な成果 | 第1段階が実現すると、 5Sというチーム活動を通じて、リーダーのリーダーシップを養成し、良好なチームワークを築き、職場を活性化することが可能になります。 |
| 第3段階 | 5Sによる最終的な成果 | 第1段階、第2段階が実現すると、自律性の高い人材の育成や管理・改善活動を継続できる組織が作れます。 |
つまり、 5Sにしっかり取り組めば、職場環境を改善して生産性を高めるだけでなく、自律的に行動する人材を育てて良好なチームワークを社内に築き、継続的に改善していける職場を作れるのです。こうした目的をしっかり意識したうえで、 5Sに取り組みましょう。

PQCDSMとは
5Sの第1段階、すなわち 5Sによる直接的な成果は「PQCDSM」と呼ばれています。
PQCDSMは製造業の生産管理指標の一つで、次の六つの頭文字をとったものです。これら六つを高い次元で実現することで、生産性の高い現場を作ることができます。
- P(Productivity)
- 生産性の向上
- Q(Quality)
- 品質の向上
- C(Cost)
- 原価低減
- D(Delivery)
- リードタイム短縮・在庫削減と納期順守
- S(Safety)
- 安全性の向上
- M(Morale)
- 組織の活性化とモラルの向上/企業イメージの向上
5Sは、具体的にこのPQCDSMを意識して行いましょう。例えば、整頓であれば安全に作業ができ、生産性を向上させてリードタイムを短縮できるように工具などを配置したり、作業動線を組んだりしていきます。
5S活動の進め方
製造業の5Sで特に重要なのは、生産性向上(P)、リードタイム短縮・在庫削減(D)の二つです。具体的にどのように進めていけば良いのか、幾つかのアイデアとともに解説します。
生産性の向上を目指す 5S活動の進め方
製造業における生産性の向上とは、「無駄を排除してお金になる仕事の割合を高くする」こと。すなわち、「非稼働時間を減らして稼働時間を増やす」ことです。
製造現場には、次のような無駄な時間が多く発生しています。一つ一つは大した時間ではないかもしれませんが、合計するとかなりのロスタイムになりえます。5S活動により、こうした無駄な時間を削減する整頓を行います。
| 無駄な時間 | 無駄な時間を削減する整頓 |
|---|---|
| 段取り作業時間 | 段取り作業に使用する治具・工具をすぐに探して取り出せ、確実に元の場所に戻せるように整頓しておく |
| 設備故障などによる停止時間 | 設備故障した際に、すぐに必要な工具や交換部品が探せるように整頓しておく |
| 品質トラブルによる停止時間 | 所定の工具・道具が正しく使えるよう、作業場を常に使いやすい状態に整備しておく |
| 管理の不備などによる手待ち時間 | 必要な情報を適切に発信することで、現場がムダなく仕事ができるようにする |
リードタイム短縮と在庫削減を目指す 5S活動の進め方
リードタイムとは、仕事にかかる時間(期間)のことです。製造現場における製造リードタイムは、製造着手から製造完了までの期間を指します。
この製造リードタイムが長いと納期に間に合わせるために在庫を余計に持ったり、納期に間に合いそうもないと諦めて受注チャンスを逃してしまったりすることも。製造リードタイムは生産管理レベルの一種のバロメーターともいえます。
製造リードタイムの短縮方法
製造リードタイムを製品ベースで分解すると、「加工・検査・運搬・停滞」の四つに分けることができます。生産性の向上(P)でも、リードタイム短縮と在庫削減(D)でも、ポイントは非稼働時間を減らして稼働時間を増やすこと。この観点から「加工・検査・運搬・停滞」の四つを分類すると、次のようになります。
加工・検査・運搬=稼働時間
停滞=非稼働時間
製造現場をチェックしてみると、実は「停滞」のウエートが高いことが少なくありません。停滞を削減するポイントは、仕掛品の整頓。仕掛品を整頓できれば、工程間仕掛品在庫も削減できます。
在庫削減のための仕掛品の整頓方法
仕掛品の整頓で大事なのは、予定を過ぎた仕掛品や区画線をはみ出した仕掛品といった「異常」がすぐにわかるようにすることです。そのためには、次のような仕組みが有効です。

例えば、仕掛品置き場を次工程近くに設置し、仕掛品スペースを区画線できちんと制限しておきます。このような仕組みを作っておけば、今、仕掛品がどれくらいたまっているのかひと目でわかります。もし仕掛品が箱いっぱいにたまってしまっても、これ以上は箱を増やしてはいけません。最大在庫数を半日(午前・午後で)3箱まで、などとルールを決めたら、ルールに沿ってそれ以上は作らないようにしましょう。
5Sを取り入れた製造業の事例
ここでは、5Sを取り入れた製造業の具体的な事例をご紹介します。
川辺農研産業株式会社
事業内容
農業用・土木用トレンチャー、硬盤破砕・地中深耕用バイブロスーパーソイラー、各種根菜類収穫用オプションアタッチメントなどの製造・販売
自社開発の特殊農機を製造・販売し、栽培農家の作業負担軽減に貢献している川辺農研産業株式会社は、原価計算と部品の在庫管理を適正にすることが長年の業務課題でした。そこで、生産管理と販売管理を一元化するため、製販一気通貫システム「Fu-jin」を導入。
以前は部品の保管場所がわからず、探すための無駄な時間が発生していましたが、システム導入と5Sの成果があいまって、探しものをする無駄な時間を削減することにも成功した事例です。
まとめ
5Sにしっかり取り組めば、職場環境を改善して生産性を高めるだけでなく、自律的に行動する人材を育てて良好なチームワークを社内に築き、継続的に改善していける職場の実現につながります。目的をしっかり社内で共有したうえで5Sに取り組むことが重要です。生産管理システムの導入が成功するかどうかは、5Sがきちんとできているかにかかっています。生産管理システムを導入する前に、まずは5Sを徹底し、製造現場の改善から取り組んでいきましょう。
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