AIによる歩留まり改善と品質予測

2022年 6月 9日公開

製造現場にとって、歩留まり改善は重要なテーマの一つです。しかし、実際に歩留まり改善に取り組もうとしても、不良原因が複雑で特定できず失敗することが多いという課題があります。
昨今、AIを活用した歩留まり改善や品質予測の実現で、製造業へのAI導入も進んできました。実際にAIを活用することで今まで明確化されていなかった不良原因を特定し、歩留まり改善を実現できた事例もあります。
本記事では、AIによる歩留まり改善・品質予測の概要や導入方法、事例などについて紹介します。

歩留まりとは

歩留まりとは、原材料の投入量に対して実際に得られた製品数の比率のことを指します。製造業において、歩留まりは生産ラインの生産性や効率性を測るための重要な指標の一つです。

歩留まりは「歩留まり率」として%で表すのが一般的であり、「製品数÷原材料数×100」で計算できます。例えば、100個分の原材料を生産ラインに投入して製品が90個できた場合、歩留まり率は90%です。基本的に歩留まり率の数値が高ければ高いほど優れた生産ラインであると認識されています。

歩留まり改善のメリットと重要性

製造現場にとって、歩留まり改善がなぜ重要なのかをあらためて考えてみましょう。

歩留まり率が低いということは、製品として扱えない不良品の発生率が高いことを意味します。つまり、本来製品になるはずだった原材料や、その製造コストをムダにしてしまったということです。また、不良品を管理する手間や廃棄コストなど、余計なコストもかかってしまいます。

昨今の製造業は厳しい競争にさらされ、生産性や利益率を向上させて競争力を高めていかなくてはなりません。歩留まり改善に取り組んで不良品の発生率を下げていけば、あらゆるムダがなくなり、生産性や利益率の向上を実現できます。

製造業における歩留まり改善方法

歩留まりを改善するためには、まずは不良品が発生する原因を特定しなければなりません。不良原因を特定し、その原因に応じた対策を立てることで、少しずつ歩留まりは改善されていきます。

例えば、不良の原因が設備の不具合にある場合は、メンテナンスを定期的に実施したり、設備のパラメーターを変えたりすることで、歩留まりを改善できるかもしれません。また、原材料の質に問題がある場合は、仕入れ先を変えたり、品質水準を見直したりすることで不良品の発生率が減る可能性があります。

製造業における歩留まり改善の基本的な流れは、次の通りです。

  1. 不良品の発生状況を記録する
  2. 記録を基に、不良品の発生数や内容を集計する
  3. 集計結果を基に、不良原因を分析する
  4. 不良原因に対して改善を行う

しかし、実際に歩留まり改善に取り組もうとしても、不良品の記録をするだけで終わってしまったり、不良原因がうまく特定できなかったりと、失敗するケースが少なくありません。特に、さまざまな条件が複雑に絡み合って発生している不良品については、人が集計結果を見ただけでは傾向がつかめないという悩みが多いのが実情です。

そこで昨今では、不良原因の特定や品質予測をサポートするためにAIが活用され始めています。

AIによる歩留まり改善とは

AIは膨大な量のデータ(ビッグデータ)を分析し、データの傾向を基に不良原因の特定や品質予測を行えます。いつ、どこで、どのような不良が、どのような条件で発生したか、といった不良品の発生に関連するデータをインプットすると、AIはさまざまな分析手法を用いて不良品が発生しやすい条件を推測します。その結果を基に対策を打つことで、歩留まりが改善できるという流れです。

AIを活用すれば、人が時間と労力をかけて行ってきたデータの分析作業を自動化でき、スピードや精度も高くなります。また、熟練担当者の持つ経験や勘、現場の暗黙知をAIで可視化することにより、技術継承の課題も解決することができます。

AIによる分析を行う際には、次のようなデータサイエンスのプロセスを経ることになります。

  1. 課題設定
  2. データ収集
  3. 分析用データ加工
  4. 特徴量設計
  5. 機械学習
  6. 可視化
  7. 運用

一般的なAIでは、このデータサイエンスのプロセスにおいて、データ分析の専門知識と数カ月もの期間が必要になります。特にAIによる分析・予測に役立つ特徴量を設計する作業は難易度が高く、データサイエンティストと呼ばれる専門家の試行錯誤が必要です。そのため、AIによる歩留まり改善は効果的な手法であるにもかかわらず、あまり普及していません。

しかし、最先端のデータ分析ツール「dotData」は、上述したデータサイエンスのプロセスの大半を自動化することで、製造業がAIを気軽に活用できるようになっています。

歩留まり改善におけるAIの導入方法や進め方

歩留まり改善でAIを活用したい場合、どういった手順で導入を進めればよいのでしょうか。ここでは、大塚商会が提供する「dotData AI分析サービス」を基にAIの導入方法や進め方をご紹介します。

【Step1】アセスメント

課題を整理する

AIを導入する前に、まずは自社の製造現場の課題を整理しましょう。どの製品・どの工程で歩留まりが低いのか、歩留まりが低いことでどういった問題があるのか、なぜ歩留まりが低いのか、といった課題を洗い出し、深堀りしていくことが重要です。

改善施策と優先順位を設定する

課題を整理したうえで、適切な改善施策を検討していきます。このときにAIの活用が有効的かどうかも含めて検討するようにしましょう。また、AIを活用すると決めた課題の中で、歩留まり低下による影響度の高いものから優先順位を設定しておくと効率的に改善を進められます。

必要なデータを確認する

課題を解決するためにどういったデータが必要になるのかを特定します。歩留まり改善の場合は、不良品の品質記録や使用した原材料の情報などのデータが必要になるでしょう。また、データの中に欠損が存在していると、AIによる分析がうまくいかない恐れがあります。問題のあるデータの補完方法なども同時に検討していかなければなりません。

【Step2】PoC(概念実証)

必要なデータを収集する

適切なデータがなければ、AIによる分析を行うことはできません。Step1で確認した必要なデータをIoTや自社のデータベースなどから収集し、もし欠損があれば補完していきます。また、もし現時点で十分なデータがそろっていなければ、追加で収集する必要があります。

AIの分析モデルを生成し、分析結果を評価する

収集したデータを基に、大塚商会が保有する「dotData」環境を利用して分析モデルを生成し、実際にAIによる分析を行います。AIの分析結果は、レポートにまとめて提供し、大塚商会のコンサルタントや中小企業診断士がアドバイスします。

【Step3】実装

分析結果を基にAI分析モデルを実装する

AIの分析結果が不良原因の特定や品質予測に実用できると判断したら、実際にAIの分析モデルを実装して、改善活動を行っていきます。

【Step4】分析モデル継続利用

継続的に分析・改善を行う

「dotData」では、一度作成した分析モデルは継続的に利用できるので、追加でデータを与えながら分析の精度を高めていけます。また、歩留まり改善がうまくいった場合にも、その後の経過観察や類似製品へ転用する際に役立てられます。

製造業がAI導入で失敗しないためのポイント

AIの導入は増加傾向にありますが、実際にAIを活用して大きな成果を挙げている企業はまだまだ少ないのが現状です。ここでは、製造業がAI導入で失敗しないために押さえておきたいポイントを解説します。

課題と目的を明確にする

「AIが話題だから導入してみたい」「AIを導入して何かやってみたい」といったように、明確な課題や目的がない状態でAIを導入すると失敗しやすくなります。製造現場や経営に与える影響度が大きい課題を抽出し、その課題がAIで解決できるかどうかや、どのようなメリットを得られるかまで精査したうえで導入するようにしましょう。

大塚商会が提供するアセスメントサービスでは、お客様の課題のヒアリングやAIの有効性確認などを行っています。歩留まり改善以外にも製造業でAIを活用できる領域は数多くありますので、それらも踏まえた総合的な提案が可能です。

十分なデータを用意する

AIによる分析の精度を上げるためには、十分な量のデータが必要です。データが足りていない状況で分析をすると的外れな結果が出てしまい、歩留まりをうまく改善できない恐れがあります。

例えば、紙の帳票にしか記録が残っていない場合は、AIが分析できるようにデジタルデータ化する必要があります。また、分析に必要なデータを生産設備から取得できていない場合は、IoTセンサーを取り付けるなどしてデータを収集しなければなりません。

大塚商会では、生産管理システムやIoT機器といったデータ収集に役立つさまざまなソリューションを提供しています。お客様の課題解決に必要なデータを特定したうえで、そのデータを収集する具体的な方法まで提案できますので、AIの導入効果を高められます。

継続的な分析・改善に取り組む

せっかくAIを導入しても、分析だけで終わってしまっては意味がありません。分析によって得られた情報を基にして、実際に歩留まり改善に取り組むようにしましょう。分析・改善は一度だけではなく、継続的に実施することでより効果が高まります。製造現場は日々変化していくため、最初の分析で使ったデータには含まれていなかった原因によって新たな不良品が発生しているかもしれません。

大塚商会では、AIを継続利用しやすいサービスを提供しています。一度作った分析モデルは大塚商会が管理しており、初回よりもコストを抑えて再利用できます。定期的に品質状況を見直したり、類似製品への横展開をしたりすることで、歩留まりのさらなる改善が期待できます。

AIによる歩留まり改善・品質予測の事例

ここでは、AIによる歩留まり改善や品質予測の具体的な事例をご紹介します。

【事例】配合型製造業

化粧品・化学薬品・食品・香料・薬品などを配合する製造業では、AIによる品質予測を実施できます。品質基準が厳しく、1ロットの生産量が多い傾向にある配合業にとって、歩留まり改善のメリットは大きいものです。

品質記録・原材料情報・配合表(レシピ)情報・設備の稼働情報といったデータをAIにインプットすると、品質への影響度の大きい要因を分析し、不良品が発生しそうな条件を推測できます。一定の品質を保つための推奨パラメーター設定値や推奨原材料投入量を得られるので、その情報を基に生産することで、不良の発生を未然に防げるようになります。

また、設備の故障記録や稼働情報、周辺環境などのデータを基にAIによる故障予測を実施することもできます。設備の故障は生産ラインの予定外の停止を招き、大きな損害を与える恐れがありますが、AIの故障予測に基づいてメンテナンスを実施すれば設備停止に伴う影響を最小限に抑えられます。

【事例】金属加工業

AIによる歩留まり改善は金属加工業でも実施できます。

例えば、工作機械で金属を加工していますと、工具の摩耗によって製品の品質は徐々に悪化していきます。不良品の発生を防ぐためには定期的に工具を交換する必要がありますが、交換するタイミングが早すぎるとまだ十分に使える工具を交換してしまうことになり、ムダが大きくなります。

しかし、工具の交換時期や製品の品質情報、設備の稼働状況などのデータをAIにインプットして分析すれば、適切な交換時期を把握できるようになります。不良品の発生を防ぎつつ、工具交換の手間やコストを削減することにより、歩留まり改善が期待できます。また、工具が摩耗する原因も推測できるため、工具寿命を延ばす改善も行うと効果的です。

製造業のAI導入には「dotData」がおすすめ

今回は、製造業の歩留まり改善・品質予測におけるAIの活用方法をご紹介しました。歩留まり改善は製造現場の生産性や利益率の向上につながり、企業の競争力を高められます。AIを導入して、歩留まり改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

大塚商会が提供している最先端のデータ分析ツール「dotData」は、AI活用において最も難しいデータサイエンスのプロセスの大半を自動化することで、飛躍的な生産性の向上を実現しています。複雑なデータ加工が必要なく、すぐに分析結果を得られますので、歩留まり改善に素早く着手することが可能です。大塚商会では「dotData」によるAI分析サービスを独自に提供しており、最新のAIをローコストで活用できます。アセスメントサービスによる課題抽出や必要データの確認、データ収集に役立つ各種システムやIoTの提案も併せて行っていますので、AIの導入が初めてというお客様であっても安心してご利用いただけます。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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[2022年 7月20日公開]

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