AIによる故障予測と異常検知とは

2022年 7月20日公開

製造業において、生産ラインの停止はできる限り避けたいトラブルの一つです。しかし、従来の人の手に頼った管理手法では、設備の突発的な故障や異常の発生を防ぐのが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。

昨今では、AIによる故障予測・異常検知の手法が確立し、製造業への導入が進んでいます。実際に、AIを活用することで今まで分からなかった故障の傾向・要因を特定し、生産ラインの稼働率を向上できた事例もあります。

本記事では、AIによる故障予測・異常検知の概要や導入方法、事例などについて紹介します。

故障予測・異常検知とは

まずは、故障予測・異常検知とは何かを整理しておきましょう。

故障予測とは、設備が故障する予兆を捉え、故障する前の適切なタイミングで対応することです。また、異常検知とは、設備の稼働ログなどを分析することで、故障の予兆となる異常の発生を検知することを指します。

製造業における設備保全の手法は次の3種類に大きく分けられます。

事後保全
設備が故障した後に修理をしたり、故障要因を特定して改善したりする手法です。設備の故障によって生産ラインが停止した場合は迅速に復旧しなければならないため、リスクの高い手法といえます。
予防保全
設備ごとの保全計画に従って、定期的に点検やメンテナンスを行う手法です。一定期間使用した部品を交換する時間基準保全と、部品の状態を点検して必要に応じて交換する状態基準保全の2種類にさらに分けられます。設備の故障を未然に防ぐことはできますが、点検やメンテナンスに多くの手間がかかる傾向にあります。
予知保全
設備の状態を監視・分析し、故障する予兆が出たら点検やメンテナンスを行う手法です。予防保全と比べて点検やメンテナンスの回数を減らせるため、設備保全担当者の負担を軽減したり、部品交換にかかるコストを削減したりできます。

この3種類の中で、予知保全は最も新しい手法であり、IoT・AIを始めとするテクノロジーの進歩によって実現できるようになりました。予知保全を実施するためには故障予測・異常検知が必須となっており、多くの企業が導入を進めています。

故障予測・異常検知の手法

では、故障予測・異常検知はどのようにして行われているのでしょうか。よく使われている手法は、次の三つです。

外れ値検出
ほかのデータから著しく乖離(かいり)した値になっているデータを検出する手法です。例えば、設備の稼働中に平常時よりも大きく振動したり、大きな音がしたりする場合に異常が発生したと判断します。
変化点検出
データを時系列で見たときに、急激にパターンが変化するタイミングを検出する手法です。例えば、製品の不良率が突然上がった場合に、その変化を検知して異常が発生したと判断します。
異常部位検出
データを時系列で見たときに、時系列の中での外れ値を検出する手法です。上述した外れ値検出では異常なデータを点で捉えますが、異常部位検出では時系列の中での特定の期間を異常なデータとして捉えます。

どの手法も膨大なデータの中から通常とは異なるデータを見つけ出す仕組みになっていますが、これを人の手で行い、さらに原因を特定していくのは困難です。そのため、AIを活用してデータの分析を任せるのが徐々に主流になりつつあります。

AIによる故障予測・異常検知とは

昨今では、機械学習やディープラーニングなどのAI技術が進歩した結果、AIによる故障予測・異常検知が実現しています。設備の故障に関連するデータをAIにインプットすると、上述した外れ値検出・変化点検出・異常部位検出などを組み合わせながら、故障する可能性の高い設備や時期、そして故障の傾向・要因を導き出してくれるのです。AIが導き出した情報をもとに設備の点検やメンテナンスを行うことで、最小限の手間で設備保全を実施でき、生産ラインの停止を未然に防げるようになります。

IoTの普及によって、今では何らかの形で設備からデータを収集できるようになりました。しかし、データ収集まではできていても、分析が難しくてせっかく収集したデータを十分に活用できていない企業が多いのが実情です。

このような背景から、多くの企業がAIを導入して故障予測・異常検知を実現しようとしています。しかし、AIによる分析にはデータサイエンスの専門知識が求められます。膨大なデータの中から分析・予測に役立つ特徴を抽出してAIに教えなければならないため、IT人材の確保に課題を持っている企業では、AIの活用が思うように進んでいません。

最先端のデータ分析ツール「dotData」は、データサイエンスの専門知識がなくても使えるように大半のプロセスが自動化されているため、ITに詳しい専門スタッフがいない企業でもAIを気軽に活用できるようになっています。

AIによる故障予測・異常検知の事例

最先端のデータ分析ツール「dotData」を活用することで、AIによる故障予測・異常検知を実施できます。具体的には、次のような内容です。

AIによる故障予測・異常検知を実施するためには、設備の故障に関連するさまざまなデータをAIにまとめてインプットすることになります。

  • 故障記録
  • 設備の稼働ログ
  • 設備の設定情報
  • センサーデータ
  • 周辺温湿度
  • 生産実績

など

これらのデータをもとに、AIが正常稼働モデルを作成します。正常稼働モデルの作成後にさらにデータを与えると、AIが正常稼働時との乖離度を検出し、故障予測・異常検知を実施するという仕組みです。

センサーデータの具体例としては、モーターの回転数、振動、音、電流値、AE波(弾性波)などが挙げられます。例えば、モーター速度と電流やトルクの正常状態の相関を学習し、正常状態との乖離度を算出することで故障の発生を予知することができます。

「dotData」では、故障する可能性の高い設備や時期に加えて傾向・要因の分析もできます。その結果、適切な点検やメンテナンスの時期を把握し、生産ラインの停止につながる設備の故障を未然に防ぐことが可能です。故障の予想時期だけでなく、どういった条件で故障するといった要因まで分かるので、より本質的な改善ができる点も大きなメリットとなります。

故障予測・異常検知におけるAIの導入方法や進め方

AIによる故障予測・異常検知を実施するにあたって、どういった手順で導入を進めればよいのでしょうか。ここでは、大塚商会が提供している「dotData AI分析サービス」を基にAIの導入方法や進め方をご紹介します。

【Step1】アセスメント

現状の課題を整理する

いきなりAIを導入するのではなく、まずはどの生産ラインの停止が多いのか、どの設備の故障が多いのか、といった自社の製造現場の課題を整理するようにしましょう。同時に現在の設備保全の方法やかかっている工数、生産ラインが停止したときの影響度なども整理しておくのがおすすめです。

改善施策や優先順位を設定する

次に、課題に対する改善施策を検討していきます。AIの導入はあくまでも施策の一つであり、現在の設備保全の方法を見直したり、設備を入れ替えたりすることで改善できる場合もあります。視野を広く持ったうえで、取り組んでいく施策を選定すべきです。

また、課題となっている生産ラインや設備が複数ある場合は、優先順位をつけることをおすすめします。生産ラインの停止による影響度の高いものから優先的に取り組んでいきましょう。

必要なデータを確認する

AIによる分析を実施するために、どういったデータが必要になるのかを特定します。例えば、故障予測・異常検知の場合は、故障記録、設備の稼働ログ、設備の設定情報、各種センサーデータなどが必要になります。設備や想定される故障要因によって分析に必要なデータは異なるため、もし自社だけで特定するのが難しければ専門家に相談するのがおすすめです。

【Step2】PoC(概念実証)

必要なデータを収集する

Step1で確認した、分析に必要なデータをそろえていきます。この時に十分なデータがそろわなければ、追加でデータを収集しなければなりません。

新しい設備であれば、データ収集する機能があらかじめ備わっていることもあります。しかし、データ収集する機能が備わっていない古い設備に対しては、追加でセンサーなどを取り付けなくてはなりません。大塚商会では、既存設備に後付けできるセンサーの提案も可能です。

AIによる分析モデルを生成し、分析結果を評価する

大塚商会では、収集したデータを基に、大塚商会が保有するdotData環境を利用して設備の正常稼働モデルを生成し、AIによる分析を実施します。分析結果はレポートにまとめて提供し、大塚商会のコンサルタントや中小企業診断士が実装に向けたアドバイスを行います。

【Step3】実装

分析結果を基にAI分析モデルを実装する

AIの分析結果が故障予測・異常検知に実用できると判断したら、実際にAIの分析モデルを実装して、設備保全を行っていきます。「dotData」では分析結果の根拠まで示されるので、設備保全の方法を決定する際に役立ちます。

【Step4】分析モデル継続利用

継続的に分析・改善を行う

「dotData」では、一度生成した分析モデルは継続的に利用できます。数カ月ごとや1年ごとに追加のデータを与えて分析を繰り返せば、より高精度な分析結果を得られるようになっていきます。

製造業がAI導入で失敗しないためのポイント

製造業がAIの導入で失敗しないための三つのポイントを解説します。

課題や目的を明確にする

AIの導入にあたっては「AIが話題だから導入してみたい」「AIを導入して何かやってみたい」といった曖昧な動機だと失敗しやすくなります。「生産ラインが頻繁に停止して困っている」「設備保全を担える人材が足りない」といったように、課題や目的が明確であれば、AIの導入によってメリットを得られる可能性が高いでしょう。

大塚商会ではアセスメントサービスを提供しており、お客様の課題のヒアリングやAIの有効性確認などを行っています。故障予測・異常検知以外にも、製造業でAIを活用できる領域は数多くあるので、それらも踏まえた総合的な提案が可能です。

十分なデータを用意する

AIによる分析の精度を上げるためには、十分な量のデータが必要です。故障予測・異常検知の場合は、設備の稼働ログやセンサーデータだけでなく、故障記録や生産実績といった関連情報も含めて分析することで精度が上がり、真の故障要因を特定しやすくなるため、なるべく多くのデータを用意するようにしましょう。

大塚商会では、各種業務システムやIoTセンサーといったデータ収集に役立つさまざまなソリューションを提供しています。お客様の課題解決に必要なデータを特定したうえで、そのデータを収集する具体的な方法まで提案できるので、AIの導入効果を高められます。

継続的な分析・改善に取り組む

せっかくAIを導入しても、データを収集したり、AIで分析したりするだけでは意味がありません。分析によって得られた有益な情報を参考にしながら、実際に改善を実施していきましょう。AIによる分析・改善は一度だけでなく、継続的に実施することでより効果が高まります。

故障予測・異常検知の場合は、まずは優先度の高い一部の生産ラインや設備でのみAIを活用し、効果を実感してから横展開していくのがおすすめです。類似の設備であれば追加の手間もほとんどなく、AIによる分析を行える可能性があります。

大塚商会では、AIを継続利用しやすいサービスを提供しています。一度作った「dotData」の分析モデルは大塚商会が管理しており、初回よりもコストを抑えて再利用できます。

製造業の故障予測、異常検知は「dotData」がおすすめ

今回は、製造業の故障予測・異常検知におけるAIの活用方法をご紹介しました。故障予測・異常検知によって設備の故障を未然に防ぎ、生産ラインの停止がなくなれば、安定した生産体制を整えられます。不良品の発生や設備保全の手間もなくなり、生産性が大きく向上するでしょう。AIを導入して、故障予測・異常検知に取り組んでみてはいかがでしょうか。

大塚商会が提供している最先端のデータ分析ツール「dotData」は、AI活用において最も難しいデータサイエンスのプロセスの大半を自動化することで、飛躍的な生産性の向上を実現しています。複雑なデータ加工が必要なく、すぐに分析結果を得られるので、故障予測・異常検知をすぐに実施することが可能です。また、設備データだけでなく関連情報もまとめて分析にかけることで、複雑な要因分析もしやすくなり、根本的な対策を打てるようになります。

大塚商会は「dotData」によるAI分析サービスを独自に提供しており、最新のAIをローコストで活用できます。アセスメントサービスによる課題抽出や必要データの確認、データ収集に役立つ各種業務システムやIoTセンサーの提案も併せて行っているので、AIの導入が初めてというお客様であっても安心してご利用いただけます。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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