現場帳票の電子化が製造業DXの第一歩! 電子化のメリットや事例を紹介

2023年 3月 1日公開

現在、製造業各社はDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいますが、その中でも紙からデジタルデータへの変換が大きな課題となっています。紙の現場帳票の電子化は、製造業DXの第一歩ともいえる重要な取り組みです。そこで、日本の製造業DXの現状、日本の製造業でDXが進まない理由、現場帳票を電子化するメリットや具体的な方法、事例などを紹介します。

製造業のDXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)は広い意味を持つ言葉であり、世界共通の明確な定義はありません。日本においては、経済産業省により「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

現在の製造業では、ITツールの導入やIoT・AIといったデジタル技術を活用したDXが進められています。デジタル技術を活用して業務効率を向上させたり、顧客ニーズに対応した製品・サービスを生み出したりできる点が、製造業がDXに取り組むメリットです。

製造業のDXへの取り組み状況

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発刊した「DX白書2021」によると、日本の製造業のDXはアメリカに比べてやや遅れ気味ということが分かります。例えば、「DXへの取組状況(業種別)」の調査結果を見ますと、アメリカでは何らかの形でDXに取り組んでいる企業の割合が約80%を占めていますが、日本では60%にとどまっています。

DX白書2021(IPA Webサイト)

特に「アナログ・物理データのデジタル化」については大きな差があります。アメリカの企業では60%近い企業がアナログ・物理データのデジタル化によって「既に十分な成果がでている」と回答していますが、日本の企業では同じ回答をした企業の割合が20%弱とまだまだ少ない状況です。

では、なぜ日本の製造業ではDXが思うように進んでいないのでしょうか。その理由としては、次のような理由が考えらます。

【日本の製造業でDXが進まない理由】

  • 欧米と比べて現場の改善力が以前から強く、膨大なアナログ・物理データが蓄積されていて手がつけにくい
  • IT人材が不足しており、デジタル化を推進できていない
  • 欧米ほどトップダウンが強くなく、現場主導のため、DXのような全社的な取り組みではどうしても慎重になってしまう

以前から、日本の製造業は現場の改善活動によって国際的な競争力を高めてきました。現時点ではアメリカ企業に比べて「DXが進んでいる」とは言えないものの、長年積み重ねてきたモノづくりの経験やノウハウは膨大なアナログ・物理データとして現場に蓄積されています。今後、デジタル化に取り組むことでそれらのデータを最大限活用できるようになれば、競争力をさらに高めていくことができるでしょう。

製造業DXの第一歩は現場帳票の電子化

日本の製造業がDXを実現するためには、製造現場で発生する情報を最大限に活用していかなくてはなりません。しかし、多くの現場では次のような情報が紙の現場帳票に記録され、有効に活用できていないという課題があります。

【紙の現場帳票例】

  • 設備や作業者の稼働状況
  • 生産日時や生産数などの生産実績
  • 不良数や不良内容といった品質記録
  • 作業手順や製造条件といったノウハウ
  • 設備の点検やメンテナンスなどの保全記録

紙の現場帳票には「扱いやすい・書きやすい・持ち運びしやすい」といった大きなメリットがあります。実際に、日本の製造現場は現場帳票を駆使して高度なモノづくりを行っており、ノウハウを蓄積してきました。その一方で、現場帳票が複雑になってしまい、システム化が難しくなっているのです。

現場帳票には、製造現場のノウハウが集約されています。現場帳票の電子化に取り組み、現場で発生する情報を有効に活用できるようになれば、製造業のDXは一気に進んでいくでしょう。

現場帳票を電子化するメリット

ここでは、現場帳票の電子化に取り組むことで得られる主なメリットを解説します。

データを活用しやすくなる

紙の現場帳票に書かれている情報は、当然ですがその紙を見なければ分かりません。そのため、何か調べ物をしたいと思った際に帳票を探す手間が発生してしまいます。また、紙の破損や紛失によって貴重なノウハウが失われてしまう恐れもあります。

しかし、現場帳票を電子化してデータとして保管しておけば、知りたい情報を検索してすぐに活用できます。集計も容易に行えるため、過去の生産実績を分析して問題点を見つけ出し、改善していくことも可能です。現場帳票に蓄積されたノウハウを有効に活用していけば、製造業DXに大きく近づくでしょう。

リアルタイムに情報共有できる

例えば、製造現場での生産実績が紙の現場帳票に書かれていると、あとで集計するまで現場の状況が分かりません。何らかのトラブルが発生していても、その事実を管理者以外の人が知るのは夕方や翌日の集計後になってしまう恐れもあり、全体としての素早い対処ができなくなってしまいます。

しかし、現場帳票を電子化していれば、作業者が記録すると同時に情報共有されるため、管理者や関係者が現場の状況をリアルタイムに把握できるようになります。トラブルが発生しても素早く適切な対処ができるため、生産の遅れによる納期遅延や不良品の発生を防止することが可能です。

コストを削減できる

紙の現場帳票を使った運用には、次のようにさまざまなコストがかかっています。

【紙の現場帳票を使った運用でかかるコスト】

  • 集計のための転記作業や二重入力にかかる工数
  • 紙を探したり、仕分けしたりする工数
  • 紙を印刷するコスト
  • 保管場所の確保や管理にかかるコスト
  • 郵送やFAXにかかるコスト

現場帳票を電子化すれば、これらのコストを削減できます。製造現場の管理にかかるコストが削減されれば利益率が向上し、企業の競争力を高められるでしょう。

現場帳票を電子化する方法

現場帳票を電子化するためには、一般的に「ペーパーレスシステム」と呼ばれるシステムを導入します。これは、パソコンやタブレットの画面上に現場帳票を表示し、作業者が入力することでデータを蓄積していく仕組みです。

現在、さまざまなペーパーレスシステムが提供されていますが、製造現場で活用する場合は、タブレットに帳票を表示して作業者が現場で作業をしながら直接記録できるシステムがおすすめです。タブレットであれば気軽に持ち運ぶことができ、専用のペンで書き込むこともできるため、紙の現場帳票に近い感覚で使用できます。

また、現場帳票を電子化する手間を最小限に抑えられるシステムであることも、導入検討の際に重要なポイントです。ペーパーレスシステムによっては、フォーマットや入力可能な項目がある程度決まっているなど、自由にカスタマイズできない場合があります。使い慣れた現場帳票が急に変わってしまうと、作業者にとって負担になったり、従来は記録できていた情報が記録できなくなったりする恐れがあるので、注意が必要です。

ペーパーレスシステムの中には、Excelで作られた現場帳票をそのままタブレットで電子化できるものもあります。難しい設定が不要で現場帳票を簡単に電子化できる、Excelベースのため必要に応じて帳票の改善がしやすい、といったメリットがあり、導入・運用の手間を大きく削減できます。

現場帳票の電子化の事例

大塚商会では、現場帳票の電子化システム「i-Reporter(アイレポーター)」を提供し、製造現場のDXを支援しています。「i-Reporter」はExcelで作成した帳票をそのまま電子化するシステムであり、日ごろ使い慣れた現場帳票を変えることなく導入できます。チェック・数値選択・マスター入力・カメラ・音声など、入力するデータの種類に応じて直感的に使えるため、現場の作業者が負荷なく・間違いなく・簡単に入力できるのも特長です。

また、現場帳票の電子化は生産管理システムやBIツールなどと連携させることで、さらに効果を高められます。例えば、大塚商会では生産管理システム「生産革新 Fu-jin」や「生産革新 Raijin」を「i-Reporter」と次のような手順で連携することができ、リアルタイムな情報共有や分析を実現しています。

【生産管理システム「生産革新 Fu-jin/Raijin」と「i-Reporter」の連携】

  1. 「生産革新 Fu-jin/Raijin」に登録された製造指示データが「i-Reporter」に連携する
  2. 「i-Reporter」で製造指示情報が反映された製造指示書が表示される
  3. 製造指示書を基に作業者が作業を実施し、「i-Reporter」で実績情報を入力する
  4. 「i-Reporter」に登録された実績データが自動で「生産革新 Fu-jin/Raijin」へ連携する
  5. BIツールで進捗(しんちょく)状況をリアルタイムに「見える化」することができる

このように、現場帳票を電子化すればリアルタイムに情報共有ができるようになります。また、リアルタイムに製造現場で必要な情報が「見える化」されることで、データを活用した管理や改善がスピーディーになり、DXに大きく近づくと考えられます。

「生産革新 Fu-jin/Raijin」と「i-Reporter」の連携を実現する「i-Repo Link」はノーコード(プログラミングレス)のため、カスタマイズや専用プログラムの開発が必要なく、現場が主体になって業務効率化に取り組めます。

まとめ

今回は、製造業DXの第一歩といえる現場帳票の電子化について紹介しました。現場帳票の電子化は、既存の運用を大きく変えずにDXを進められるため、「DXと言っても、何から取り組めばいいか分からない」と悩んでいる企業には特におすすめです。まずは現場帳票の電子化に取り組み、アナログな情報のデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

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