Excelで生産管理を行う製造業では、「在庫が合わない」「手配が遅れてしまう」といった共通の課題が見受けられます。Excelは自由度が高く、手軽に使えるというメリットがありますが、生産管理をするうえではデメリットが多いのも事実です。今回は、Excelによる生産管理から脱却し、在庫適正化・納期順守率向上・原価低減につながる生産管理システムの導入について解説します。
脱Excel! 在庫適正化、納期順守率向上、原価低減につながる生産管理システム導入
2023年 6月20日公開
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目次
Excelによる生産管理でよくある課題
Excelで生産管理を行う製造業では、在庫が合わない、大まかな製造管理しかできない、社内での情報連携がうまくいかない、などの課題があります。
在庫数が合わない
有効在庫は「実際に使うことができる在庫」のことで、「現在の実在庫数+入庫予定数−出庫予定数」で計算できますが、日々変化する予定をExcelでリアルタイムに更新し続けるのは困難です。その結果、どの部材をどれだけ手配すべきかが分からなくなり、過剰在庫や欠品が多々発生してしまいます。
また、現場の作業者が勝手に在庫を持ち出して報告が漏れていると、Excelに記載されている在庫数が実態と合わなくなってしまいます。その結果、都度現場に確認したり、頻繁に棚卸しをしたりしなければならず、実際の在庫数を調べるのに手間が発生します。
ほかにも、Excelでは在庫の引き当て処理ができないので、確保していたはずの在庫を先に使われてしまい、必要なときに在庫が足りないといったトラブルも発生してしまいます。
大まかな製造管理しかできない
Excelでは、工程ごとの詳細な製造管理はできず、案件ごとの納期管理までしかできていないケースがほとんどです。その場合、どの工程をいつまでにすべきなのかが明確ではないため、優先順位が現場任せになってしまう傾向にあります。
また、作業実績を手書きの帳票で記録していると、紙を集めてExcelに転記・集計する必要があるため、タイムラグやミスが発生します。何らかの原因で作業が遅れていてもすぐに気づけないため、納期遅延が発生しやすくなるのです。
ほかにも、Excelによる生産管理では工程ごとの作業時間を集計するのが難しいため、正確な製造原価が分からないという課題もあります。案件や製品ごとに利益がでているのかを判断できず、赤字のまま生産を続けてしまう恐れがあります。
社内での情報連携がうまくいかない
生産管理では、受注・発注・製造・出荷といった多くの部門が関わりながら自社のものづくりを管理することになります。生産管理を最適化するには各部門の担当者が密接に連携しながら業務を遂行する必要がありますが、各部署・各担当者が個別にExcelで管理していると情報の連携がうまくできません。その結果、ムダなやり取りや二重管理が発生してしまい、企業全体の業務効率が悪くなってしまう傾向にあります。
Excelならではのミスが多い
Excelは優れた表計算ソフトですが、間違って上書き保存してしまったり、ファイルを探すのに手間取ったりすることがあります。また、Excelは初期設定のままでは複数人による同時編集ができないので、同じファイルが複製され、どれが最新で正しいデータか分からなくなってしまう傾向にあります。
Excelはデータ量が多いと重くなってしまい、立ち上げや操作に時間がかかるといったデメリットもあります。生産管理はものづくりに関するあらゆる情報を扱うため、Excel内のデータ量が膨大になり、ムダな待ち時間が発生してしまうことも少なくありません。
さらに、Excelは属人化しやすいという特徴もあります。マクロや関数を駆使して業務の効率化を行っても、作成者以外の人が編集できず、更新できなくなる恐れもあります。
生産管理システムとは
Excelでの生産管理による課題を解消し、効率的かつ精度の高い生産管理の実現に役立つのが、生産管理システムです。
生産管理システムは製造業の「モノの流れ」と「情報の流れ」を統合的かつ総合的に管理するシステムであり、製造業の業務フローを最適化するのに役立ちます。生産管理の中にはさまざまな業務が含まれていますが、生産管理システムは各業務に対応した機能を備えているのが特長です。
【生産管理システムの主な機能】
- 受注管理
- 品目・数量・納期といった得意先からの受注情報を管理する機能
- 生産計画
- 受注情報や販売計画を基に、何を・幾つ・いつまでに作るかを計画する機能
- 購買外注管理
- 必要な部材を適切な数量・納期で仕入先に発注したり、外注先に製造を委託したりする機能
- 在庫管理
- 部材・中間品・製品などの在庫を管理する機能
- 製造管理
- 何を・幾つ・いつまでに・どのように作るのかを現場に指示する機能
- 工程進捗管理
- 工程ごとの進捗(しんちょく)状況を把握し、納期どおりに生産できるように管理する機能
- 出荷管理
- 受注情報を基に、製造した製品を得意先へ出荷する機能

生産管理システムの導入メリット
Excelでの生産管理から脱却し、生産管理システムを導入することで生まれるメリットには、在庫の適正化、納期順守率の向上、原価低減、リアルタイムでの情報連携などがあります。
在庫の適正化
生産管理システムには受注・発注・製造・在庫の情報が集約されているため、実在庫と入出庫予定を加味した有効在庫を時系列で管理できます。どの部材が・いつまでに・幾つ必要になるのかをシステムが自動で計算してくれるので、発注業務の最適化が可能です。その結果、過剰在庫や欠品を防止できるようになり、適切な在庫管理が実現します。
また、システムの導入を通じて在庫管理のルールが明確になれば、現場の作業者が勝手に在庫を持ち出すことがなくなり、在庫数のズレを軽減できます。在庫管理の精度が上がれば、都度現場に確認したり、頻繁に棚卸しをして実在庫数を把握したりする必要がなくなるため、業務の効率化にもつながります。
納期順守率の向上
生産管理システムでは、各製品の工程情報や標準時間を登録できます。完成品の納期から逆算し、工程ごとの完了期日を含んだ適切な製造指示をシステムが自動で出してくれるので、現場の作業者はそのデータを参考に作業を進められます。
また、生産管理システムに直接作業実績を記録すれば進捗状況がすぐに分かるため、予定より遅れている場合に素早く調整することも可能です。その結果、納期順守率が向上して顧客からの信頼も高まるでしょう。
原価低減
生産管理システムを活用すれば、案件や製品ごとの製造原価を集計しやすくなります。例えば、各工程の作業実績を記録する際に作業時間も集計すれば、実際の労務費を計算することが可能です。また、実際に使用した数量で部材を引き落とすことで、実際にかかった材料費を把握できます。
正確な製造原価が分かれば、標準原価の見直しや、効果の大きい部分に絞って原価低減を図れるようになり、利益率の向上につながります。
リアルタイムでの情報連携
生産管理システムには、受注から出荷に至るまでのものづくりに関する全ての情報が集約されています。従来はExcelで個別に管理されていた情報をリアルタイムに連携できるようになるため、都度担当者に確認したり、二重管理したりする手間がなくなります。
例えば、得意先から受注した際にシステム上で在庫状況を確認し、引き当てされていない製品在庫が十分にあることが分かれば、すぐに出荷指示を出せます。反対に、製品在庫が不足している場合でも、製造指示や部材の発注指示を出して素早く製造に移ることができます。
このように、各部門や各担当者が必要なタイミングで正確な情報を確認できるようになれば、企業全体の業務効率化につながります。
脱Excelを実現した生産管理システム導入事例
大塚商会では、業種・業界に特化した製販一体型の生産管理システム「生産革新ファミリー」を扱っており、製造業の「脱Excel化」をサポートしています。実際に「脱Excel化」を実現した企業の導入事例をご紹介します。
株式会社マグトロニクス
製造品目
産業機械装置の制御盤、ハーネスなど
株式会社マグトロニクスは以前から生産管理システムを導入していましたが、事業規模が拡大するにつれて従来の仕組みでは対応しきれなくなっていました。具体的には、受発注処理の入力作業に多くの時間がかかっており、効率改善が求められていました。また、二つの工場ではExcelによる原価管理や在庫管理を行っていたため、全社で情報を共有できないという課題もありました。
新システムの構築に当たっては、社内の6部署から選抜したメンバーによるプロジェクトチームを発足。チームが一丸となって最適なシステムを構築しました。

その結果、受発注業務の自動化に始まり、製造実績の自動取り込み、QRコードでの検収作業など、トータルで200時間/月の業務時間が短縮されました。また、受注段階で必要な部材を自動で引き当てることで各工場の在庫数を正確に把握できるようになり、ムダな発注が減少して在庫数を16.8%も削減しました。

まとめ
製造業が生産管理システムを導入し、生産管理の脱Excelを行えば、在庫適正化・納期順守率向上・原価低減などの多くのメリットを得られます。自社の課題や目的を明確にしたうえで、自社に合った最適な生産管理システムを導入しましょう。
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