製造業DXの第一歩は現場のアナログな管理をデジタル化してデータを収集・活用することであり、段階的に取り組んでいかなくてはなりません。本記事では、製造業におけるデータ活用のメリットや進め方に加えて、食品・化学品製造業で役立つデータ収集・トレーサビリティソリューションについてご紹介します。
製造業におけるデータ活用とは? データ収集とトレーサビリティの実現方法を解説
2024年 6月26日公開
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目次
製造業DXの実現に欠かせないデータ活用

製造業全体では、若者離れや高齢化が加速し、人手不足が深刻化しています。また、働き方改革などの影響で労働時間が短くなり、業務の効率化が急務となっています。このような背景から製造業ではDXが推進されていますが、DXは一足飛びに実現できるものではありません。DXの推進には三つのステップがあると考えられています。
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- デジタルトランスフォーメーション
第一ステップであるデジタイゼーションでは、アナログ・物理データのデジタル化を推進することになります。製造業の多くの現場は今でも手書き・手入力・目視チェックといったアナログな管理が中心であり、データの活用が進んでいないのが実情です。製造業がDXを実現するためには、まずこのようなアナログな管理から脱却し、データを活用できる基盤を作っていく必要があります。
製造業におけるデータ活用のメリット
製造業の現場に眠っているデータを活用することで得られる、代表的なメリットを三つご紹介します。
メリット1:業務の平準化・効率化
手書き・手入力・目視チェックといったアナログな管理をデジタルに置き換えることで、それらの業務の平準化・効率化を図ることができます。例えば、在庫の入出荷時にラベルに記載されたバーコードをスキャナーで読みとって記録すれば、品目間違いや誤記といったヒューマンエラーを防止でき、誰でも同じ品質で業務を遂行できます。また、記録自体にかかる時間や二重チェックなどの手間も削減されるため、作業者が働きやすい環境を構築できます。
メリット2:管理精度の向上
製造現場のあらゆる情報をデータとして「見える化」することで、次のような生産管理や在庫管理の精度が向上します。管理精度の向上によって無駄な業務や在庫を削減することができれば、製造業の収益性向上にもつながります。
- 生産の進捗(しんちょく)状況や負荷をリアルタイムに把握でき、納期遅延などのトラブルを未然に防ぐことができる
- 生産設備から収集したデータを分析して不良の発生要因を特定し、対策することで歩留まりが改善する
- 生産設備の状態をリアルタイムに監視して適切なタイミングでメンテナンスすることで、生産ラインの停止を未然に防ぐことができる
- 品目別・ロット別・期限別で正確な在庫状況が分かり、過不足のない適正な在庫数を維持できる
メリット3:トレーサビリティの実現
アナログな管理をデジタルに置き換えれば、モノの流れや作業の結果がすぐにデータ化されるようになります。その結果、製造業にとって重要なトレーサビリティを実現できる点も大きなメリットです。トレーサビリティが確保されていれば、万が一不良品が発生・流出した場合にも影響範囲や発生要因を素早く特定でき、適切な対処が取れるようになります。昨今では消費者の品質意識が高まっているため、製造業は企業規模にかかわらず、トレーサビリティの強化に取り組むべきです。
製造業がデータを活用するための三つのフェーズ

製造業がデータ活用を進める際には、与える・つなぐ・活かすの三つのフェーズを意識しながら取り組むと成功しやすくなります。ここでは、三つのフェーズでそれぞれどのようなことを行うべきかを解説します。
フェーズ1:与える
まずは、現場にある原材料や部品、製品などのあらゆるモノに対して正確な情報を与えることから始めます。手書きの帳票などを使ったアナログな管理ではなく、次のような自動認識技術を活用しましょう。例えば、ラベルに記載したQRコード内に品目コード・ロット・期限などの情報を保持しておき、管理対象に貼り付けることで、「モノ」と「情報」がひも付けられます。
- バーコード
- QRコード
- RFID(ICタグ)
- 音声認識
- 画像認識
- 位置測位
フェーズ2:つなぐ
次に、ハンディターミナルやタブレットを使って情報を収集し、システムにつなぎます。例えば、原材料を使用する際に貼り付けられたQRコードをスキャンすれば、いつ・どの材料が・幾つ・どの製品に使用されたのかをシステム上ですぐに確認できます。また、スキャンした際に品目や数量の間違いがないかをシステム上でチェックしてエラーを出すことで、ヒューマンエラーを削減することも可能です。
フェーズ3:活かす
最後に、システム上に集まった情報を分析し、課題の発見・解決や業務の効率化に活かします。上述した業務の平準化・効率化や管理精度の向上、トレーサビリティの実現など、データ活用によって多くのメリットを得られるでしょう。従来は人の手で情報を分析する必要があったため、「専門的な知識が求められる」「大量のデータを扱いきれない」などの問題がありました。しかし、昨今ではAIを活用した情報分析のソリューションも提供されており、よりデータを活かしやすい環境が整ってきています。
製造現場の課題を解決するトレーサビリティソリューション
大塚商会では、食品・化学品製造業向けのトレーサビリティソリューション「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」を提供しています。「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」はさまざまな自動認識ソリューションを扱う株式会社サトーが開発したシステムであり、原材料の入荷から製品出荷までの工場内のモノの動きを管理することが可能です。
「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」は、上述したデータ活用の三つのフェーズにのっとった仕組みです。
- サプライチェーンの川上で、バーコードやQRコードが記載されたラベルを原材料に貼り付ける(=タギング)
- 入荷、払い出し、計量、配合・投入、製品出荷といった各フローでラベルをスキャンして記録を残し、システムでトレースできるようにつなげる
- 製品からのトレースバック/原材料からのトレースフォワードの実現や、作業実績を基[漢字表記可]にしたダッシュボードによる課題の「見える化」と改善で、DXを推進する
食品・化学品製造業でよくある課題とデータ活用による改善事例
ここでは、食品・化学品製造業でよくある課題と「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」による改善事例をご紹介します。
原材料に関する課題と改善事例
食品・化学品製造業は取り扱う原材料の種類が多い傾向にあり、在庫数量を正確に把握するのが困難です。そのため、製造するタイミングで在庫不足が発覚する、棚卸業務に多くの時間が割かれる、といった課題を抱えています。また、多くの原材料には有効期限が設定されていますが、目視チェックでは先入れ先出しを徹底できず、廃棄ロスが発生している現場も多いでしょう。
「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」では、原材料のラベルをスキャンして各作業時に漏れなく記録することで、在庫状況がリアルタイムに「見える化」されて適正な在庫量を維持できるようになります。また、ラベルをスキャンする際に先入れ先出しや有効期限切れのチェックを行うため、廃棄ロスを削減することが可能です。
製造に関する課題と改善事例
食品・化学品製造業では、レシピ/処方に合わせた原材料を準備して計量した後に、配合・加工して製品を製造します。その際に目視でチェックをしていますと、原材料や重量を間違えたり、二重投入・順番間違い・入れ忘れなどのミスが発生したりする可能性があります。これらのミスは廃棄ロスや市場クレームに直結するため細心の注意を払う必要があり、現場の作業者にとって負担になっています。
「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」では、製造時に原材料のラベルをスキャンしてチェックすることで、レシピ/処方にない材料の投入を防げます。また、計量器との連携によって重量が適正値かどうかをチェックできるため、計量ミスの防止も可能です。実際にある食品メーカーでは、年に数回発生していた計量ミスがなくなり、準備工程や残量のチェックといった付帯作業も削減できた事例があります。
製品に関する課題と改善事例
食品・化学品製造業では、誤出荷の防止やトレーサビリティの確保の多くの工数が割かれています。例えば、取引先に事前に通知したロットと違うロットを出荷したり、ロットの新しい製品より古い製品を先に出荷したりすると誤出荷になるため、厳しくチェックしなければなりません。また、万が一不具合が発生した場合は、使用した原材料や製造プロセスを正確かつ素早く回答する必要があります。
「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」では、製造後の製品にもラベルを発行して品番別・ロット別・有効期限別の管理ができるようになっており、出荷時にラベルをスキャンすることで品目間違いやロット間違いを防止できます。また、製造現場の各フローで記録を行うことで、製品ロットの情報からいつ・どこで・誰が・どの原材料を使って製造したのかが素早く特定でき、取引先への対応力が高まります。
まとめ
製造業がDXを実現するには、手書き・手入力・目視チェックを中心としたアナログな管理から脱却してデータ収集から進める必要があります。データが集まれば、現場のさまざまな課題や経営課題を解決する糸口を発見できるようになり、AIを始めとした新しいデジタル技術も活用しやすくなるでしょう。本記事を参考に、製造業DXの第一歩としてデータ収集に取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事に関連する製品
Trace eye FOOD-Pro/Material-Pro
「Trace eye FOOD-Pro/Material-Pro」は、食品・化学品製造業の原材料入荷から製造、出荷まで工場内のモノの動きを管理するトレーサビリティシステムです。QRコードなどの自動認識技術を駆使してあらゆるモノに正確な情報を付与し、作業の効率化や標準化、品質向上を実現します。基本モジュール+三つの任意モジュールで構成されているので、目的に合わせた部分的に導入することが可能です。
生産革新Blendjin(Trace eye連携オプション)
「生産革新 Blendjin」は、化学製品・食品・香料・化粧品・薬品などを配合する製造業向けの生産管理システムです。配合表・レシピを基に材料手配、製造指示、製品・材料・資材などの在庫管理や、ロットトレース機能による品質管理、品質検査の記録管理などをトータルにサポートします。オプションで「Trace eye FOOD-Pro / Material-Pro」との連携が可能であり、各種マスターや入荷予定/実績・在庫情報・製造指示/実績などのデータを連携しながらトレーサビリティの強化を図れます。
本記事の監修者

渡辺 真 氏(株式会社サトー 営業本部 ソリューション推進部 エキスパート)
2004年株式会社サトーに入社。営業本部にてソリューション製品の企画・開発を行う。
2015年より食品製造業様向け業務支援パッケージ「Trace eye FOOD-Pro」の企画・開発に携わり、現在は推進担当として全国のお客様に対して提案から導入までを支援。
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