ファブレス企業とは? 工場を持たないファブレス化の特徴とメリット・デメリット

2023年 5月25日公開

昨今、製造業のビジネスモデルの一種であるファブレス企業に、あらためて注目が集まっています。半導体以外の業界や中小企業でも工場を持たないファブレス化が進む中、ファブレス企業にマッチした生産管理システムの導入・活用も求められています。

この記事では、ファブレス化の特徴やメリット・デメリット、ファブレス化を成功させるためのポイントや事例などをご紹介します。

ファブレス企業とは

ファブレス企業とは、自社で生産設備を持たず、外注先に100%製造委託しているメーカーおよびビジネスモデルです。工場などの施設を英語で「fabrication facility」といいますが、それらを持たない(less)という意味からファブレス(fabless)と表現されるようになりました。

ファブレス企業は製品の企画・設計・販売などを行い、製造は外注工場に委託します。ものづくりを自社で行わないことから、業種分類上では「卸売業」や「サービス業」となっているケースも少なくありません。

ファブレス企業と対になる存在として、製造のみを行うファウンドリ企業があります。ファブレス企業が企画・設計した製品をファウンドリ企業が製造し、完成した製品をファブレス企業が仕入れて販売するという流れが一般的です。

ファブレス化のメリット・デメリット

ここでは、ファブレス化のメリット・デメリットについて解説します。

ファブレス化のメリット

ファブレス化には次のようなメリットがあります。これらのメリットから、ファブレス企業は高収益・高利益率であることが多く、世界規模のブランド力を持つ企業も数多く存在しています。

  • 自社で工場や生産設備を持たないため、初期投資や固定費を抑えられる
  • 製造に特化したファウンドリ企業に委託することで、スケールメリットによるコストダウンが期待できる
  • 企画・設計といった自社の得意分野に対して資本や人材を集中投資できる
  • 新製品をスピーディーに開発できるようになり、市場の変化に柔軟に対応できる
  • 外注工場を分散することで、サプライチェーンのリスクを低減できる

ファブレス化のデメリット

一方で、ファブレス化には次のようなデメリットもあります。製造のすべてを外部に委託することによって発生するこれらのデメリットは、軽視できません。信頼できる外注先を見極め、協力しながらものづくりに取り組むべきでしょう。

  • 自社で製造しないため、品質・コスト・納期を管理するのが難しい
  • 自社にものづくりのノウハウが蓄積されない
  • 製品や技術に関する機密情報が漏洩するリスクがある

代表的なファブレス企業

1980年代のアメリカで誕生したといわるファブレス企業は、当初は半導体業界が中心でしたが、現在ではさまざまな業界でファブレス・ファウンドリの分業体制が広がりました。

例えば、IT機器メーカーのアップル、半導体メーカーのクアルコム、スポーツ用品メーカーのナイキといったアメリカ企業は、ファブレス企業として世界的に有名です。いずれも各業界で圧倒的なブランド力を誇っており、ファブレスのメリットを最大限に発揮しています。日本においても、任天堂・キーエンス・無印良品・ユニクロ・エレコムなどがファブレス企業として知られています。

上述したファブレス企業はいずれも大企業ですが、昨今ではコロナ禍における事業再構築などの影響もあり、中小企業がファブレス化する事例が増えています。初期投資を抑えられるファブレスは企画・設計に強みを持つ企業にとって効率的なビジネスモデルであり、今後さらに普及していくと考えられます。

ファブレス企業の主な形態

ファブレス企業は製品の製造を外注工場に委託しますが、委託する範囲によって二つの形態に分けられます。

すべて外注工場に委託する形態

一つは、部材の調達も含めてすべて外注工場に委託するパターンです。自社で企画・設計した製品の製造を外注先に委託し、完成品を仕入れるという流れになります。自社製品を企画・設計・販売する製造業ではあるものの、実態としては卸売業に近い形態といえるでしょう。

メリットとしては、製品の製造に関するすべての業務を外注先に委託できるため、手間がかからないことです。反対に、部材の原価や品質が分からずコントロールが難しい、自社にノウハウが蓄積されないので外注先を柔軟に切り替えられない、といったデメリットもあります。

製造のみを外注工場に委託する形態

もう一つは、部材の調達は自社で行い、外注工場に支給して製造のみを委託するパターンです。部材の調達や在庫管理を自社で行うため、すべて外注工場に委託する形態に比べて手間がかかります。しかし、次のようなメリットを得られることから、昨今ではこちらの形態をとるファブレス企業が増加しています。

  • 部材の原価を自社で把握しているため、原価のコントロールがしやすい
  • 調達先と直接交渉することで、コストダウンや品質向上を図れる
  • 自社で部材を調達しているので、状況に応じて製造委託先を切り替えやすい
  • 複数の調達先を持つことで、サプライチェーンのリスクを低減できる

製造業では、原材料費の高騰や高機能部品の調達難などが昨今課題となっています。そういった背景からも、部材の調達を自社で行うファブレス企業は増えていくでしょう。

ファブレス化を成功させるポイントは「生産管理システム」

ファブレス企業の中には、「自社では製造しないので生産管理システムは必要ない」と誤解している企業もあります。確かに、部材の調達も含めてすべて外注工場に委託するのであれば、実態としては卸売業に近いので販売管理システムがあれば十分かもしれません。

しかし、部材の調達を自社で行うのであれば、生産管理システムを活用すべきでしょう。生産管理システムにはさまざまな機能が備わっていますが、部材の調達を自社で行うファブレス企業では「製造管理」以外のほぼすべての機能を使うことになります。

例えば、部材を調達する際には生産計画や受注にもとづいて部材の所要量を計算し、過不足のないように手配しなければなりません。また、調達した部材の在庫を管理したり、外注先への支給品や進捗状況を管理したりする仕組みも必要です。

一般的な生産管理システムは自社工場での製造を前提としているため、ファブレス企業での生産管理にはマッチしない可能性があります。ファブレス企業向けの生産管理システムに求められる要件は次の通りです。

  • 外注工場への手配や管理機能が備わっている
  • 在庫引当や部材支給など、在庫管理に関する機能が充実している
  • 販売・購買に関する機能が充実している

ファブレス企業にマッチした生産管理システムを導入・活用することで、部材の調達や外注工場を適切に管理でき、ファブレス化のメリットを最大限に得ることができるでしょう。

まとめ

昨今、製造業では業態転換やサービス化が進み、自社の強みを最大限に発揮するためにファブレス化する事例が増えています。ファブレス企業においても、生産管理システムを導入して適切な管理を行うことで、原価や品質をコントロールして自社製品の競争力を高めることにつながります。ファブレス企業で部材調達や外注先の管理に課題を感じている場合は、生産管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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