ものづくりの現場に欠かせない業務の一つが、購買業務です。購買業務の見直しには、業務改革やDX推進も欠かせません。工場ごと、事業部ごとに独自のルールで受発注していると、思わぬトラブルを招くことになります。この記事では、製造業における購買業務の流れやよくある課題、クラウド型 調達・購買業務支援サービスを活用した改善事例をご紹介します。
購買業務とは? 業務の流れ、製造業の課題やクラウドサービスを活用した改善事例をご紹介
2024年 1月22日更新
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目次
製造業を取り巻く環境の変化
昨今の製造業では、原材料費や燃料などの物価高騰や人手不足が深刻化しています。このような状況下で製造業が十分な利益を確保していくには、価格転嫁やコストの見直し、生産性向上といった取り組みが欠かせません。
また、デジタル化やDXが推進されている中で、データを活用した業務改善にも取り組んでいく必要があります。直近では、インボイス対応や電子帳簿保存法のように、購買業務にかかわる法改正が重なっていることから、購買業務の見直しが注目を集めている状況です。
製造業の購買業務とは
購買業務とは、製品の製造やサービスを提供するために必要なものを外部から購入することです。よく似た言葉に「調達」がありますが、調達にはレンタルやリースも含まれるため、購買よりも広い概念であるという違いがあります。
購買の対象となるものは、直接材・間接材の二種類に大きく分けられます。
- 直接材:生産に直接かかわる資材・購買品(原材料や部品など)
- 間接材:生産に直接的にかかわらない資材・購買品(工具や保安資材、消耗品など)
製造業における購買業務には、原材料や部品などの直接材の購入だけではなく、作業着や備品などの間接材も含まれることを忘れてはなりません。直接材と間接材の購買業務を効率化することによってコストダウンが実現し、会社の利益率向上へとつながります。
購買業務の基本的な流れ
製造業の購買業務は、一般的に次のような流れで行います。
| 1.購買申請 | 各部署や担当者が購入したいものの情報をまとめて、購買部門に申請します。 |
|---|---|
| 2.見積依頼 | 購買申請に基づき、購買部門が仕入先(サプライヤー)に対して見積りを依頼します。複数の仕入先が取り扱っているものであれば、相見積りを行うこともあります。 |
| 3.仕入先の選定 | 仕入先各社の見積結果を品質・納期・価格などの観点から比較し、どの仕入先に発注するかを決定します。 |
| 4.発注 | 見積書の内容を基に注文書を作成し、メールやFAXで仕入先に送付します。 |
| 5.納品・検収 | 発注したものが納品されたら、品質や数量を確認します。もし納期どおりに納品されない場合は、仕入先に対して督促を行います。 |
| 6.支払い処理 | 仕入先から請求書が届いたら、経理部門に依頼して支払い処理をします。 |
製造業の購買業務でよくある課題
購買業務の現場では、次のような問題がしばしば発生しています。
購入手法や取引条件が工場や営業所によってバラバラ
本社、工場、営業所がそれぞれ必要なときに、必要なものをバラバラに購買しています。仕入先も統一されていないため、どこで・誰が・何を・どこから購入しているのかを把握できていません。工場や営業所の数が多ければ多いほど、購買の「見える化」が困難になってきます。

購買申請・承認、注文書発行などに手間がかかる
購買業務をアナログな手法で行っており、ワークフローも統一されていないため、購買申請や承認、注文書の発行といった業務が煩雑になっています。社内外でのやり取りも紙やメール・FAXで行っているため、手間や時間がかかるだけでなく、ミスも発生しやすくなっています。

購買ルールや承認ルールがあいまいで分かりづらい
社内に購買の統一ルールがないため、ボリュームディスカウントのような効率的な購買ができません。特に製造業は間接材の購買業務が属人的になっていたり、承認に独自のルールがあったりする傾向にあり、統制が取りづらいと言われています。

本社で工場や営業所の購買状況を把握できていない
M&Aを行った会社などでよく問題になるケースです。M&Aによって新たに加わったグループ会社がそれぞれ昔からのやり方を継続しているため、購買業務をなかなか標準化できません。そのままにしておくとコスト意識が低下したり、コンプライアンス上の問題が発生したりするため、できるだけ速やかに改善する必要があります。

テレワークでは購買申請・承認、注文書発行などが行えない
製造業でも事務作業であればテレワークが可能なはずですが、購買業務のために出社せざるをえないケースがあります。例えば、購買申請・承認、注文書発行などのワークフローがテレワークに対応できていない場合は、出社して処理することになったり、承認者が出社しない日は承認プロセスがストップしたりしてしまいます。働き方改革の課題としても、早急に解決すべきです。

購買業務の課題解決のための改善策
購買業務の現場でよくある問題を解決するには、以下の改善策が考えられます。
- 購買の集約化・一元化ができる環境(体制や手順)を構築する
- 標準品や推奨購買品を設定して社内の購買を標準化する
- 発注手配や会計処理など、購買における業務の効率化を社内外でも行う
- 申請・承認ルールの徹底や仕入先を管理し、適正な取引を推進する
- 各事業所の購買を「見える化」し、透明性や妥当性を確保する
- 購買予算を設定するなどして、コスト意識の向上や無駄買いの抑制につなげる
- テレワークにも対応可能なシステムを導入・活用する
ただし、何でも集約化・一元化すべきというわけではありません。集約化・一元化しすぎると、サプライチェーンが断絶された場合などのリスクヘッジができなくなるため、バランスよく行うことが重要です。
それぞれの特徴から、直接材は「分散化」、間接材は「集約化」に向いていると言えるでしょう。生産に直接かかわる直接材は現場ごとの状況を見ながら発注したり、リスクヘッジのために分散化したりする必要があります。一方で、生産に直接かかわらない間接材は積極的に集約化することで、業務効率を高められます。
これらの改善策を実現する一つの方法として、購買業務の改革を推進するクラウドサービスが挙げられます。
購買業務の改革を推進するクラウドサービスとは
購買業務の効率化、管理強化、BCP対策強化、コスト抑制などを目的に業務改革やDX推進に取り組む企業が増えています。購買システムをクラウド上で提供されるサービスを活用することで購買ルールの統制や購買・調達に関する情報が「見える化」され、仕入先管理も含めた業務の効率化を図れます。
例えば、大塚商会のクラウド型 調達・購買業務支援サービス「たのめーるプラス」を利用すると、各仕入先と連携して購買商品・条件を標準化できたり、申請・承認処理が全てインターネット上で完結できるようになったり、仕入先を複数選択して相見積りを取ったりすることが可能です。また、生産管理システムと連携させることで、直接材を中心に購買業務を効率化できます。

クラウド型 調達・購買業務支援サービス「たのめーるプラス」活用のメリット
| 業務効率化 |
|
|---|---|
| 内部統制強化 |
|
| コスト削減 |
|
クラウド型 調達・購買業務支援サービス「たのめーるプラス」活用事例
直接材を対象とした活用事例
| 導入前の課題 | 生産に必要な原材料や部品の中で特定のカテゴリーや高額なものを発注する際には、必ず相見積りを行う必要があり、仕入先への見積依頼や交渉に工数がかかっていた。また、生産管理システムで注文書などの帳票を発行したり、納期回答の結果を登録したりしていたが、都度メール・FAXで仕入先とやり取りをする必要があった。 |
|---|---|
| 導入後の効果 |
|
導入後の効果1:見積依頼の業務フローを構築

導入後の効果2:仕入先に注文書の一括送信が可能

間接材を対象とした活用事例
| 導入前の課題 | 工場内の消耗品は各工場や事業所の裁量で自由に購入しており、割高になっているケースがあった。また、作業着や事務所内の備品は購買部門が各工場や事業所の申請を取りまとめて手配していたが、紙ベースでのやり取りで手間がかかっていた。 |
|---|---|
| 導入後の効果 |
|
導入後の効果:間接材注文情報の一元管理により、申請者が仕入先と直接交渉できる仕組みを構築

まとめ
日々行われている購買業務の効率化は、会社の利益にも直結する重要な取り組みです。購買業務の改革を推進するクラウドサービスの中には、既に導入している生産管理システムと連動できるサービスもあります。購買業務の課題をスピーディーに解決するために、クラウドサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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