在庫管理の課題とは? 生産管理システムを活用した改善事例のご紹介

2023年 2月15日公開

製造業では、「どの製品が幾つあるのか」「生産に必要な部品が幾つあるのか」を正確に把握できなければ、欠品による納期遅れや、余剰在庫によるキャッシュフローの悪化につながる恐れがあるため、部品の在庫量を適切に管理する必要があります。この記事では、製造業における在庫管理の課題や生産管理システムを活用した管理方法、改善事例などをご紹介します。

製造業における在庫管理の考え方

製造業における在庫管理の大きな特徴は、仕入れるモノと売るモノが異なることです。例えば、卸売業の場合はメーカーなどから仕入れた商品を在庫として倉庫に保管しておき、小売店などに対して販売します。一方、製造業の場合は部品を仕入れて加工や組み立てを行い、付加価値のついた製品に変えて販売することになります。

仕入れるモノと売るモノが異なる製造業では、製品の在庫管理だけでなく、製造前の部品や製造途中の半製品・中間品・仕掛品、製造時に使用する資材などの在庫管理も行わなくてはなりません。このように、在庫管理すべき対象が多いことが、製造業の在庫管理を難しくする要因となっています。

製造業の在庫管理における課題とは

ここでは、製造業の在庫管理でよくある課題をご紹介します。

部品の出庫管理ができていない

製造業では、製品が完成するまでの一連のプロセスにおいて部品の入出庫、製品の入出庫が発生します。その中でも、特に重要かつネックとなっているのが、部品の出庫管理です。

部品の在庫状況を把握するには、生産に必要な部材がいつ・どこに・幾つ払い出されたのかを正確に記録しなければなりません。また、使われなかった部材が戻ってくる場合もあるため、実際に製造現場で幾つ使われたのかも正確に記録しておく必要があります。

しかし、製造現場の担当者が倉庫から部材を勝手に持ち出してしまったり、実際の使用数を記録していなかったり、部品の出庫管理を正しく実施できていない場合がよくあります。そのため、欠品による生産の遅れや余剰在庫が発生しやすく、利益率を下げる要因になっています。特に、必要な部品点数が多い組立業では、部品の管理が複雑になるため出庫管理の仕組みを見直すべきでしょう。

仕掛在庫の状況が分からない

倉庫から払い出された部品は、製造途中の仕掛品として製造現場で管理されます。短期間で完成する製品であれば仕掛在庫の管理が不要なケースもありますが、製造リードタイムが長い製品では製造現場に部品が滞留し続けることになりますので、仕掛在庫を管理する必要があります。

仕掛在庫を把握するためには、まずは上述した部品の出庫管理をしっかりと行ったうえで、製造現場で実際に部品が使用されるタイミングや、生産の進捗(しんちょく)状況を把握しなければなりません。卸売業などで使われている在庫管理システムでは生産の進捗状況までは把握できないため、仕掛在庫の管理がうまくいかないケースも多くあります。

共通ユニット・共通品の在庫管理ができていない

昨今の製造業では、ユニットや部品の共通化・標準化が重要視されています。同じユニットや部品を複数の製品で使用することで、原価低減・納期短縮・品質向上といったメリットを得られるため、各企業が取り組みを進めています。この動きはサプライチェーンの寸断や異常納期が頻発したコロナ禍以降、さらに加速しつつあります。

しかし、共通のユニットや部品が増えますと、所要量計算や発注業務が複雑になってしまうという課題があります。例えば、次の図のような製品群を生産する場合に、各ユニットや部品が幾つ必要になるのかを都度計算して生産数や発注数を決めなくてはなりません。

こういった計算を人の手で行っていますと、計算ミスや考慮不足によって欠品や余剰在庫を招く恐れがあります。また、各製品の構成情報を全て把握する必要があるため、一部の担当者しか計算ができず、業務が属人化しやすくなります。ユニットや部材の共通化・標準化を推進するためには、在庫管理のあり方も見直す必要があります。

在庫管理におけるシステムの重要性と活用方法

こうした課題の背景には、製造業で行われているアナログな在庫管理の存在があります。Excelや手書きの帳票を使って在庫管理では、手間やミスが多く、正しい管理ができていないケースが多く見られますが、生産管理システムを活用することにより在庫管理を適切に行うことができます。ここでは、生産管理システムを活用した在庫管理の方法についてご紹介します。

部品の出庫管理ができる

大塚商会が提供している生産管理システム「生産革新ファミリー」では、生産指示に基づく部材の出庫指示票を発行し、それを見ながら現場の作業者は部品のピッキングを行えます。出庫指示票には製品を作るために必要な部材の種類と数量に加え、どこの倉庫から持ってくればよいかも記載されているため、ピッキングミスを防止することが可能です。

また、システム上で部品の出庫処理を行えば、部品の在庫数や所在地情報が更新されるため、倉庫にある部材の正確な在庫状況をリアルタイムに把握できる仕組みになっています。

倉庫から出庫処理された部材は製造現場に存在する仕掛在庫として管理され、製品が完成したタイミングで引き落とされます。引き落とされる数量は製品ごとの構成マスターによってあらかじめ決まっているため、都度計算する必要がありませし、実際に出庫した実数で引き落とすこともできます。

このように、生産管理システムを活用すれば部品の出庫記録を手間なく行うことができ、記録漏れや数量間違いといったミスも防止できます。

入庫予定や出庫予定を加味した有効在庫管理ができる

生産管理システムでは、発注指示に基づく入庫予定や、受注および生産指示に基づく出庫予定を加味した有効在庫の管理ができます。ここでいう有効在庫とは「実際に使うことができる在庫」のことであり、「現在の在庫数量+入庫予定数量-出庫予定数量」で計算します。在庫数や入出庫予定は日々変化するため、有効在庫をExcelなどで管理するのは困難です。共通ユニットや共通部品がある場合は、有効在庫の計算がさらに複雑になります。

しかし、生産管理システムには受注・生産・発注・在庫の情報が一元管理されているため、有効在庫の計算を自動で行えます。受注や生産指示の情報から部品の所要量を計算し、入出庫予定やリードタイムを考慮して必要な部品の種類や数、必要な時期を自動で出してくれますので、人の手で複雑な計算を行う必要がありません。

昨今では部品の長納期化が深刻になっており、先々を見据えた部品の調達が求められます。欠品による納期遅れを防ぐためにも、生産管理システムを活用した有効在庫管理が今まで以上に重要になっていくでしょう。

生産管理システムを活用した改善事例

生産管理システムを活用することで、どのような在庫管理の課題を解消できるのか、実際に「生産革新ファミリー」を導入していただいている企業様での改善事例をご紹介します。

株式会社マグトロニクス

  • 事業内容

    電子機器・通信機器と周辺機器の製造販売業務

株式会社マグトロニクスでは、各工場がExcelを使って個別に原価管理や在庫管理を行っていたことで、全社で情報を共有できないという課題がありました。また、得意先の要望で製造段階の直前になってから仕様を変更するケースが増えてきたことから、在庫情報の共有化を図り、無駄な在庫を抱えることなく、必要な部品を必要なタイミングで各工場に供給できる体制を整える必要がありました。

そこで、工場を新設することになったことを機に生産管理システムの再構築に着手。受注段階で必要な部品の在庫数を自動的に引き当てることで、各工場の在庫数を正確に把握できるようになり、無駄な発注が減少して在庫数を13.1%も削減することに成功しました。さらに各工場の余剰在庫の「見える化」とその流用により、16.8%の在庫削減につながりました。

株式会社マグトロニクス

日本特殊光学樹脂株式会社

  • 事業内容

    プラスチック製光学部品の製造・販売

日本特殊光学樹脂株式会社では、現場状況を手書き日報によって管理していたため、ごく一部の人間にしか生産や在庫状況などの全容をつかめないという課題がありました。また、注文を受けるたびに必要量の共通部品を製造していたため、丸め生産によるコスト削減や納期短縮が実現できていないという悩みも抱えていました。

そこで同社は、繰返・量産型生産管理システム「生産革新 Ryu-jin」と販売管理システム「SMILE 販売管理」を導入し、紙の日報に記入していた生産実績や不良品の発生数などをPCでの入力に変えるプロジェクトを開始。また、共通部品を受注生産するのではなく、計画生産によって効率良く生産するための取り組みも進めています。

日本特殊光学樹脂株式会社

まとめ

製造業では、在庫管理すべき対象が多いことから、利益を確保する適切な在庫管理を行うことが難しい傾向にあります。また、多品種少量生産への対応や共通化・標準化のニーズなどにより、在庫管理の難易度はさらに上がっているため、Excelや手書き帳票によるアナログな管理方法では限界があります。さまざまな在庫管理の課題を解消するため、生産管理システムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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[2020年 2月18日公開]

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