2021年6月1日より、食品衛生法におけるHACCP制度が完全に義務化されました。その影響を受け、食品卸・小売事業者が仕入先となる食品製造業に対してJFS-B規格の取得を要求する可能性が高まっています。
JFS-B規格は、2021年12月末時点で1,700件以上取得されている食品安全マネジメント規格であり、HACCP制度化に伴って直近2年間での取得数が大幅に増えています。今回は、食品製造業が取得しておきたいJFS-B規格がどういったものか、構築・運用のポイントを解説します。
2022年 9月13日公開
2021年6月1日より、食品衛生法におけるHACCP制度が完全に義務化されました。その影響を受け、食品卸・小売事業者が仕入先となる食品製造業に対してJFS-B規格の取得を要求する可能性が高まっています。
JFS-B規格は、2021年12月末時点で1,700件以上取得されている食品安全マネジメント規格であり、HACCP制度化に伴って直近2年間での取得数が大幅に増えています。今回は、食品製造業が取得しておきたいJFS-B規格がどういったものか、構築・運用のポイントを解説します。
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目次
JFS規格は、一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)が運営する認証規格です。食のグローバル化とそれに伴う世界的な食品安全の標準化が進む中で、日本製食品の国際競争力強化とさらなる食品安全管理レベルの向上などを目的に策定されました。日本発の食品安全マネジメント規格のため、日本の企業文化や食文化になじみやすい点が特徴です。
食品製造業は、JFS-A規格、JFS-B規格、JFS-C規格の三つの中から自社の状況に応じたものを取得し、食品安全レベルの向上に取り組むことができます。HACCP制度化に伴い、多くの食品製造業ではまずJFS-B規格の取得を目指すことになります。その後、食品安全レベルのさらなる向上や海外展開を目指し、JFS-C規格の取得に取り組んでいくという流れです。
HACCPの弾力的運用による衛生管理に対応した規格です。比較的規模の小さい会社が取得しやすい規格であり、HACCPの項目は、HACCP制度化の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に近い内容になっています。
HACCPの項目は、HACCP制度化の「HACCPに基づく衛生管理」の内容に対応しています。国内取引を中心とする食品製造業が主な対象となっており、HACCP制度化に伴って取得数が大幅に増えています。
GFSI(世界食品安全イニシアチブ)が承認する国際的な食品安全規格「FSSC22000」に相当する規格です。取得者が国際水準レベルの食品安全管理マネジメントシステムを有していることを認証します。食品安全レベルのさらなる向上や海外輸出などの国際取引を行う食品製造業が主な対象であり、2022年7月時点での取得数は約90件となっています。

JFS規格は、組織のマネジメントに対する要求事項であるFSM(食品安全マネジメントシステム)、危害要因制御の手法であるHACCP(ハザード制御)、一般衛生管理の要求事項であるGMP(適正製造規範)の3要素で構成されている食品安全マネジメント規格です。三つの要素は独立して機能するのではなく、それぞれが相互に影響を及ぼしています。

FSMは、食品安全の運営とHACCP・GMPを動かすための仕組みです。主に組織のマネジメントについての要求事項が定められており、JFS-B規格の場合は次のような要求があります。
HACCPは、「Hazard(危害要因)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)」の頭文字を取った言葉です。原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、食品安全を脅かす危害要因を分析(HA)し、危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理(CCP)する手法となっています。HACCPを構築するための手順はCodex(国際食品規格)委員会が「7原則12手順」を示しており、JFS-B規格もそれに基づいて要求事項を定めています。
GMPは、食品安全における基本的な衛生管理です。HACCPを実施するための前提と考えられており、安全な食品を作るための製造管理や品質管理の基準が定められています。JFS-B規格では次のような要求事項を定めています。
ここでは、JFS-B規格を構築・運用する際に押さえておきたいポイントを二つ紹介します。
JFS-B規格に沿った食品安全管理において、FSM・HACCPを実施するためにはGMPが必要です。さらに、これら全体の土台となるのは、5S(整理、整頓、清掃・洗浄・殺菌、清潔、しつけ)です。
食品安全マネジメントシステムの構築では、ルール・文書の作成が重視されがちです。しかし、作成したルールが遵守されているかは、現場で働く従業員の意識次第となります。そのため、ルール・文書の作成を進めるとともに、日ごろから5S活動や衛生管理活動を推進し、現場従業員の衛生意識を高めておくことが重要です。

JFS-B規格に沿った食品安全マネジメントシステムの運用では、CCPのモニタリング記録、清掃・洗浄記録、入室記録といった日常的な記録を確実に行うために、記録帳票を常に見えるようにしておく必要があります。
また、JFS-B規格に沿ったシステムを生きたものにしていくためには、VM(Visual Management)手法の活用をおすすめします。VM手法は、企業の全部門において「見えるマネジメント」を推進し、PDCAを回しながら日常の管理・改善活動を展開し、改善・改革を図っていく経営・管理の手法です。例えば、食品安全におけるクレーム数の低減、虫の侵入数の低減、といった目標達成のために実行計画、実施結果、反省、対策といったPDCAを回し、成果を出していくことが重要であるといえます。
以下は、上記に基づく食品安全マネジメントシステムの構築・運用スケジュールの例です。

JFS規格は日本発の食品安全マネジメント規格であり、分かりやすいガイドラインも用意されているため、日本企業が取得しやすくなっています。JFS規格の取得は、HACCP制度化への対応、取引先や消費者からの信頼性向上、食品安全レベルの向上を同時に実現できる効果的な取り組みです。まだ取得できていない食品製造業は、HACCP制度化に対応したJFS-B規格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
中部産業連盟 Webサイト
本記事の提供および監修者
伊東 辰浩(一般社団法人中部産業連盟 東京事業部 所長 主任コンサルタント)
主に食品製造業に対して、5S・VM、JFS-A/B規格、ISO/FSSC22000、生産性向上、工場活性化などの指導に従事している。全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント、経済産業大臣登録中小企業診断士、JFS-A/B規格監査員・判定員
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