製造業の品質管理に役立つAI画像判定とは? 事例や手順を解説

2022年12月19日公開

製造業では、自社製品の品質を担保するためにさまざまな手法で品質管理が行われています。例えば、ほとんどの製造現場では製品の外観上の不具合を確認するための外観検査を実施していますが、こういった検査は今でも人の手で行われているのが現状です。

しかし、昨今では品質管理に画像判定技術などのAI技術を取り入れて、省人化・自動化を進める企業が増えつつあります。本記事では、製造業の品質管理における課題のほか、課題解決に役立つAI技術やAIの導入事例、導入手順などを紹介します。

製造現場が抱える品質管理の課題

製造現場では、今でも目視による外観検査が数多く行われています。目視検査の主な課題は次の通りです。

  • 見逃しや見落としといったヒューマンエラーが発生する
  • 作業者の体調や経験の違いによって、検査精度がバラつく
  • 長時間連続して検査できず、多くの人員を確保する必要がある
  • 検査結果を詳細に記録できず、トレーサビリティ対応が難しい

これらの課題を解消するために、一部の製造現場では画像検査装置を用いた外観検査の自動化が行われていますが、画像検査装置では白か黒かの判別しかできず、閾値(いきち)を超えたものは全てNGと判定してしまいます。そのため、人のように柔軟な判断をすることができず、製品によっては不良を検知できなかったり、不良が大量に出てしまったりする恐れがあるのです。均一な製品であれば画像検査装置を適用できますが、食品のように個体差が出やすい製品の検査に適用するのは困難であることから、今でも目視による外観検査が数多く行われています。

AIによる品質管理とは

昨今では、製造業の品質管理においてAIによる画像判定技術が積極的に活用されています。AIの画像解析技術が発達した結果、従来の画像検査装置では適用できなかった製品の外観検査も自動化できるようになっており、人の手に頼った外観検査を解消できると期待が高まっている状況です。

AIによる画像判定でできることは、異常検知・レベル判定・分類の三つに大きく分けられます。

異常検知

異常検知は、キズ・割れ・欠け・汚れ・変形といった製品の外観上に現れている不具合を検出する技術です。製造業における外観検査だけでなく、ドローンによる施設点検などにも用いられています。

AIが従来の画像判定と異なる点は、食品のように個体差が大きく、不具合の種類が多いものであっても、正確かつ素早く異常を検知できることです。カメラで撮影した画像の前処理をした後に、ディープラーニングによって作られた判別モデルをもとにした不具合判定を瞬時に行うことで、人による目視検査以上の高精度の判別を実現しています。

レベル判定

レベル判定とは、画像に映っている検査対象物を検知し、あらかじめ設定した度合いに合わせて不具合判定を行う技術です。
例えば、食品工場において、食品の焼き色をもとに焼き加減の微妙な違いを判断し、良品・不良品の判定を行うといった使い方ができます。従来の画像判定技術では焼き色のように、明確な数値やロジックで定義できないものを判定するのは困難でしたが、AIはディープラーニングで学習することでこれを実現しています。

分類

分類とは、画像に映っている製品の種類や数を瞬時に識別する技術です。
最近では、小売店やコンビニエンスストアのセルフレジなどで活用されているため、なじみのある技術といえるでしょう。製造業においては、異物混入の検知や出荷前検査などの用途で導入されています。また、上述したレベル判定と組み合わせることで、画像に映っている野菜の等級分類などを行うこともできます。

品質管理でAIを活用するメリット

外観検査にAIを活用することで、製造業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、目視検査やカメラを用いた従来型の画像検査装置と比較したAI画像判定のメリットを紹介します。

人による目視検査と比較したメリット

目視検査と比較したメリットの一つ目は、検査品質が安定することです。作業者の体調や経験の違いによるバラつきを排除できるため、常に同じ基準にもとづいた外観検査を行うことができます。また、作業者は「不良品を流出させてはいけない」という意識からグレーゾーンの製品を不良品と判別する傾向にありますが、AIはそういった考えを持たないため、ロスを削減できます。

二つ目のメリットは、長時間の検査に対応できることです。AIは人のように疲れることもなく、長時間連続して検査を行えます。目視検査の場合、稼働時間の長い製造現場では交代要員として作業者を複数人確保しておく必要がありますが、AIで自動化していればその必要はありません。結果として、人件費の削減や人手不足の解消につながります。

三つ目のメリットは、トレーサビリティ対応ができることです。AIによる外観検査では判定した画像や判定結果を履歴データとして蓄積しておけますので、不具合が発生したロットの特定や原因解明を行いやすくなります。

画像検査装置と比較したメリット

画像検査装置と比較したメリットの一つ目は、個体差のある製品であっても検査できることです。ディープラーニングによってAIが学習し、人間によるあいまいさを含んだ判定を再現することで、人と同等かそれ以上に高精度な判別が実現します。

二つ目のメリットとしては、導入のしやすさが挙げられます。カメラ検査を導入する場合は、高度な画像処理技術の知識をもとにパラメーター設定をしなければならないため、誰でも簡単に導入できるわけではありません。しかし、AI画像判定の場合は、学習用の画像データを用意し、モデル作成や検証を重ねることによって、外観検査を自動化できます。

品質管理におけるAIの導入事例

ここでは、製造業の品質管理におけるAIの導入事例を紹介します。

【事例1】食品製造業

個体差の大きい食品の製造現場では、AI画像判定のメリットを最大限に得ることができます。異物混入、変色、盛り付けの不具合、等級判定、梱包(こんぽう)の過不足判定といったあらゆる用途にAI画像判定を適用することで、品質の安定化やコスト削減を実現可能です。

また、AIとピッキングロボットと連携させて不良品を自動で除去する、AIと設備を連携させて製造条件などのパラメーターを自動で調整する、といったように、AIの判定結果をもとにして周辺業務の自動化も行えます。

【事例2】金属加工業

金属加工業においても、加工後の製品のキズ・欠け・バリ・異物付着といった外観上の不具合を検査するためにAI画像判定を活用できます。溶接ビードのように目視検査では良品・不良品の判定が難しいものであっても、AIであれば高精度に検査することが可能です。

また、全数検査を実施後に不良品をピッキングロボットで取り除くといった形で、検査工程を完全に自動化している製造現場もあります。AIは画像判定だけでなく、品質予測や設備の故障予測にも用いられ、金属加工業の生産性向上に大きく貢献しています。

品質管理AIの導入手順

品質管理にAIを導入する際には、どういった手順で進めていけばよいのでしょうか。ここでは、大塚商会が提供しているAI画像判定サービス「MMEye」を導入する場合を参考に、AIの導入手順を解説します。

【Step1】アセスメント

まずは自社の製造現場で行われている外観検査の現状を把握し、課題を整理しましょう。対象となる製品の種類や検査内容、作業者の人数、かかっている工数などの情報をまとめていき、AIを導入する目的を明確にします。

また、AIの技術が進化しているといっても、あらゆる外観検査を自動化できるわけではありません。そのため、アセスメントの段階で製品のサンプル画像を準備して簡易的な検証を行い、AIによる良品・不良品の判定が可能かどうかを確認しておく必要があります。

【Step2】PoC(概念実証)

外観検査における課題が大きく、AIでの判定が可能であることが分かれば、PoC(概念実証)に移ります。PoCでは、AIを学習させるためのサンプル画像を収集し、AIにインプットして画像判定モデルを作成していきます。AIの判定精度を上げるためには大量のサンプル画像が必要ですが、品質水準の高い日本の製造現場では十分な量を収集できないというケースもよく聞きます。そういった場合は、自動画像生成技術(GAN)などを活用するとよいでしょう。

画像判定モデルの作成後は、実際の生産ラインへ試験的に導入して判定精度や導入効果を検証することになります。

【Step3】導入

PoCでAI画像判定が実用レベルであることが検証できれば、本格的に導入を進めていきます。生産ラインへのカメラの設置や、パソコンを始めとするエッジ端末のセットアップ、担当者への教育などを行い、実運用を開始するための環境を整備しましょう。場合によっては、エッジ端末のソフトに対してカスタマイズを行うこともあります。

【Step4】運用開始

AI画像判定の運用を開始し、実際の生産における外観検査を自動化します。運用開始後も判定精度や導入効果の測定を継続しつつ、必要に応じて画像判定モデルの追加学習や設定変更を行いましょう。

品質管理におけるAIソリューション

大塚商会では、製造業における外観検査を自動化し、検査品質の向上を実現するAI画像判定サービス「MMEye」を提供しています。「MMEye」はGPUを搭載したエッジ端末を利用して、製造現場でリアルタイムにAI画像判定を行うサービスです。サンプル画像を基にクラウド上で画像判定モデルを作成し、最新のAI技術によって高精度な画像判定を実現します。また、自動画像生成技術によって不良品のサンプル画像を自動生成して学習できますので、学習に必要な大量のデータを収集する手間を大幅に削減することも可能です。

社外にデータを持ち出したくない、社内で自由にAI画像判定モデルを作成・検証したいといった要望のあるお客様には、クラウドではなくオンプレミスで利用可能な「MMEye Box」も提供。専門知識が不要かつ操作も簡単なため、今までAIを使ったことのないお客様でも安心してご利用いただけます。

製造業の品質管理には「MMEye」シリーズがおすすめ

昨今の品質要求の高まりや人手不足の影響により、製造現場には今まで以上に生産性向上が求められるようになりました。目視による外観検査は製造現場の中でも特に手間がかかっている業務の一つであり、AIによって自動化できる余地があります。AI技術の進化によって、従来は自動化できないと思われていた領域にも適用できるようになっているため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

大塚商会が提供している「MMEye」は、食品製造業のように今まで自動化が難しかった外観検査にも適用できる画像判定サービスです。手間のかかっている外観検査を自動化し、品質向上やコスト削減を実現したいという方は、お気軽にお問い合わせください。

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