工場の「見える化」とは?メリットや現場の課題、具体的な方法、成功事例を紹介

2024年 2月16日公開

業務効率化や収益性向上を目的に工場の「見える化」を推進している企業も多いでしょう。しかし、「見える化」はただデータを収集するだけでは不十分であり、データをどのように活用するかも考えながら進めなければなりません。今回は、工場の「見える化」のメリットやよくある課題、実現するための具体的な方法を解説すると共に、生産管理システムやBIダッシュボードを活用した成功事例もご紹介します。

工場の「見える化」とは

工場の「見える化」とは、工場の稼働状況や生産実績などをいつでも・どこでも・誰でもすぐに把握できるようにすることです。人や設備から必要なデータを収集して整理・加工したうえで、現場の作業者や管理者が理解しやすい形で見せることを指します。具体的には、次のような情報を把握できるようにする取り組みです。

  • 設備のリアルタイムな稼働状況
  • 設備の異常や故障
  • 設備や作業者の負荷状況
  • 生産計画に対する進捗状況
  • 製品・原材料・部材の在庫状況
  • 製品別や顧客別の収益状況

工場の「見える化」の目的とメリット

工場の「見える化」に取り組む主な目的は、全体の最適化を図ることです。ここでは、データに基づいた的確な判断や改善を行うことで、製造業がどのようなメリットを得られるのかをご紹介します。

工場の課題を正確に把握できる

「見える化」によって生産の進捗(しんちょく)状況や不良の発生率、在庫状況などを素早く正確に把握できるようになれば、工場の「ムダ」「ムリ」「ムラ」などの課題が浮き彫りになります。課題を早期に発見して迅速に改善するサイクルを回すことで、工場の生産性は飛躍的に高まっていくでしょう。現状を正確に把握しなければ効果的な改善活動は行えないため、「見える化」は工場にとって非常に重要なプロセスといえます。

業務の属人化・ブラックボックス化を防止できる

工場には、特定の作業者しか実施できない作業や把握していない情報が数多くあります。そのまま放置していると作業者の退職や転職によってノウハウが失われてしまい、工場を円滑に運営できなくなるかもしれません。特に中小製造業では、作業者の不在により業務が止まってしまうこともあります。しかし、「見える化」によって作業のやり方や情報を客観的なデータに置き換えられていれば、ほかの作業者にも共有しやすくなり、属人化やブラックボックス化を防ぐことができます。

作業者の意識向上につながる

「見える化」によって工場の状況や課題を明確なデータで把握できるようになれば、工場全体が同じ目標に向かって行動しやすくなります。改善の成果もデータで明確に比較できるため、作業者一人一人のモチベーションアップにつながります。実際に、現場や事務所に設置したモニターで工場の状況をリアルタイムに表示することで、従業員の意識を高めている企業は多くあります。

工場の収益性向上に貢献する

工場の「見える化」を通じて業務効率化やコスト削減を実施すれば、工場全体の収益性向上が期待できます。例えば、設備の故障を予知して故障前にメンテナンスをすれば、生産ラインが停止してムダなコストが発生するのを防げます。また、製品ごとの原価を詳細に把握してコストダウンに取り組めば、適切な利益を確保することも可能です。ほかにも、「見える化」によって課題や収益へのインパクトを正確に把握できるため、投資判断がつきやすくなるというメリットもあります。

工場の「見える化」における問題点や課題

「見える化」のメリットを認識していても、実際に取り組めている工場はまだまだ少ないのが現状です。ここでは、工場がデータを活用して工場の「見える化」に取り組むうえで、よくある問題点や課題をご紹介します。

データが収集できていない

多くの中小製造業では紙の帳票やExcelでの管理がまだまだ主流であり、現場の情報がアナログなままデータ化されていないという問題があります。紙やExcelは情報の共有が難しいため、各部門や作業者が個別に管理するだけで、工場全体では共有できていないケースが多く見られます。また、何らかのシステムを導入していたとしても、紙の帳票で記録した内容をシステムに手入力で転記しているケースが多く、入力ミスや記録漏れが発生して正確性に欠ける恐れがあります。

データが活用できていない

昨今のデジタル化に伴ってシステムを導入したものの、伝票発行などの限られた業務にしか使っておらず、せっかく蓄積したデータを有効に活用できていない工場も多く見られます。また、データは蓄積しているものの、分かりやすく可視化できずに単なる数字の羅列になっている、リアルタイムに共有できる仕組みがないため改善活動に生かしきれていない、といったお悩みもよく聞きます。

データをどう活用すべきか分からない

「見える化」に取り組もうとデータを収集・蓄積したけれど、それらをどのように活用すべきなのかイメージがつかないという悩みもよく聞きます。データから傾向を読み取ったり、課題を発見したりするのにもノウハウが必要です。また、工場全体の最適化を図るためには、さまざまなデータを組み合わせて見る必要がありますが、複数のシステムにデータが分散しており、活用できる状態になっていないケースも多く見られます。

工場を「見える化」する方法とは? 具体的なステップを紹介

工場の「見える化」はすぐに実現できるものではなく、段階を踏みながらじっくり取り組んでいく必要があります。ここでは、紙の台帳やExcelなどで情報を管理している企業が「見える化」を効果的に進めるためのステップをご紹介します。

  • * 図はあくまでイメージです。必ずしもこのステップどおりに進む必要はありません。

Step1:基幹業務システムによる業務全体のシステム化

まずは、生産管理システムなどの基幹業務システムを導入し、工場の業務全体のシステム化を図りましょう。生産管理システムは製造業における「モノの流れ」と「情報の流れ」を管理するシステムです。生産計画、受注管理、発注管理、外注管理、品質管理などの各業務で求められる機能が網羅されています。

生産管理システムでは各業務のデータが一つのシステム内のデータベースに蓄積されるため、データを一元管理できます。データの一元管理により、いつでも・どこでも・誰でもすぐにデータを確認できるようになります。

Step2:タブレット端末やIoTによるペーパーレス化・デジタル化

基幹業務システムを導入しても、現場の作業者が紙の帳票に生産実績を記録してから後でシステムに転記している場合、データ収集に手間がかかり、タイムラグや転記ミスも発生してしまいます。

そこで次のステップでは、タブレット端末などを使って作業者が生産実績を現場で記録したり、IoTで設備から自動でデータを取得したりする仕組みを整えます。そうすることでタイムラグや転記ミスがなくなり、現場のデータをリアルタイムに収集できるようになるでしょう。品質検査や設備点検の結果も現場からリアルタイムに報告できるため、異常が発生した際に素早く判断できるようになります。

Step3:BIツールによるデータの可視化・分析

ここまでのステップでデータを収集・蓄積していても、有効に活用できなければ単なる数字の羅列になってしまいます。そこで次のステップでは、基幹業務システムに蓄積されたデータやタブレット端末・IoTで現場から収集したデータを、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどを使って加工・集計します。

BIツールを使ってデータをグラフやチャートの形式でビジュアル化することで、実際に業務に携わる担当者でなくてもデータを読み解けるようになります。工場全体のデータをダッシュボードやレポートの形式などで可視化しておけば、リアルタイムで経営の意思決定や現場の改善活動に役立てることができます。

Step4:AIによる予測・シミュレーション

従来の「見える化」では、Step3まででも十分な成果を得ることができました。しかし、昨今では、収集・蓄積したデータをAIに学習させることで、将来予測やシミュレーションも行うことができます。今まで多くの時間をかけて人が行っていたデータ分析をAIがスピーディーに行うことで、戦略立案や意思決定をより素早くできるようになっていくと期待されています。

工場の「見える化」を実現するBIダッシュボード「MotionBoard」

工場の「見える化」においては、データを収集・蓄積するだけでなく、それらのデータを人が理解しやすいように可視化することが重要です。大塚商会では、BIダッシュボード「MotionBoard」を提供し、製造業の「見える化」をサポートしています。ここでは、「MotionBoard」の概要や用途例をまとめてご紹介します。

「MotionBoard」とは

「MotionBoard」は、さまざまなデータをリアルタイムに可視化する国産のBIツールです。製造現場に導入されている多種多様なツールとの連携実績があり、製造現場に強いBIツールとなっています。「MotionBoard」の主な特長は下記のとおりです。

  • ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作のみでダッシュボードを作成でき、ノンプログラミングで多彩なグラフ表現が可能
  • データの収集・蓄積・分析・可視化・報告・共有まで、データ活用に必要な機能を一つのプラットフォームで提供
  • 製造業独自の管理図や分析ロジックにも対応しており、製造現場で使いやすい
  • 社内に散在するさまざまなデータと連携し、リアルタイムに可視化
  • ダッシュボードで使用しているデータやアイテムをExcel、PowerPointの帳票として出力でき、現場の改善報告に活用できる

工場における「MotionBoard」の用途例

1.生産進捗の「見える化」

作業者や設備から収集した生産実績の情報を基に工程別に生産目標数に対する実績数を表示し、達成率を一目で把握できます。また、製品の品質が規格値内に収まっているかをリアルタイムに可視化することで、異常の発生時にすぐに気付けるようになります。

2.設備の「見える化」

設備の停止要因やチョコ停・ドカ停の割合、停止時間などをグラフで分かりやすく把握できます。把握した情報を基に設備の点検計画を立案すれば、設備が要因の生産ライン停止を未然に防ぐことが可能です。また、IoTで取得した設備の状態と検査結果の相関関係を分析することで、品質の安定化に役立てるといった用途もあります。

3.在庫の「見える化」

入出庫の記録から品目ごとに在庫の滞留状況を可視化し、どの在庫が滞留しやすいかを把握できます。在庫数の推移や入出庫予定データを基に適正な在庫数を導き出せば、過剰発注・過剰生産を防止でき、キャッシュフローの改善につながります。

4.収益状況の「見える化」

原材料・部品の仕入実績や生産実績などのデータから製品ごとの原価を算出し、売上データと結びつけることで収益性を把握できます。利益の出ていない製品や取引先を特定し、原価構成から利益が出ていない原因を把握して重点的に改善していけば、効率的に収益性を高められます。

工場の「見える化」事例

BIダッシュボード「MotionBoard」を導入して工場の「見える化」に取り組んだ企業の事例をご紹介します。

株式会社日本自動調節器製作所

  • 事業内容

    流体を制御する各種自動調節弁の製造・販売

紙ベースでの運用によって発生していた「業務の属人化」「二重入力・二重チェック」「紙による集計作業」などの非効率な業務を改善するために、生産管理システム「生産革新 Raijin」を導入。さらに、BIダッシュボード「MotionBoard」とのデータ連動によって限界利益率や工程別納期順守率、残業時間、営業予算達成状況、不良率などのデータを「見える化」することで、社員の業務改善の意識が高まり、データドリブン経営を実現しました。

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株式会社武井製作所

  • 事業内容

    商用車や建設機械部品分野の精密機械加工

ものづくりDXの先進企業として、生産管理システムの導入、IoTによる設備稼働状況の可視化、現場のペーパーレス化、グループウェアによる情報共有などの多様な取り組みを実施。データ分析基盤に蓄積された情報を基に生産進捗や顧客別の在庫金額などをBIダッシュボード「MotionBoard」で「見える化」し、業務改善に役立てています。

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BIダッシュボード「MotionBoard」

さまざまなデータを価値ある情報に変える、情報活用ダッシュボード(国産BIツール)。専門知識を必要としない直感的に使える操作性や柔軟性のある表現力で、現場でのデータ分析・活用を強力に支援します。

まとめ

工場の「見える化」は製造現場にとって多くのメリットがあり、取り組む企業が増えています。しかし、やみくもに取り組むのではなく、正しいステップを踏みながら進めていくことが重要です。大塚商会は、生産管理システム「生産革新ファミリー」やBIダッシュボード「MotionBoard」など、「見える化」の各ステップで役立つツールを提供しています。工場の「見える化」に興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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